特定技能実習

【2025年版】特定技能と技能実習を徹底比較!採用コスト・在留期間・家族帯同まで5分で丸わかり

この記事の要点・結論

外国人材の採用を検討する際、多くの経営者や人事担当者が直面するのが「特定技能」と「技能実習」の制度選択です。これら二つの制度は似ているようで、その目的、コスト、人材のキャリアパスにおいて根本的な違いがあります。

本記事を読めば、2025年の最新法令に基づいた両制度の核心的な違いを、わずか5分で体系的に理解できます。採用コスト、在留期間、更新手数料、そして将来性までを徹底比較し、貴社にとって最適な人材採用スキームを判断するための明確な指針を提供します。

  • 目的の違い:特定技能は「労働力の確保(即戦力)」、技能実習は「国際貢献(人材育成)」が主目的です。この違いが、転職の可否や在留期間の差に直結します。
  • コスト構造:特定技能は「登録支援機関」に月額費用を、技能実習は「監理団体」に監理費を支払います。月額費用は監理団体の方が高い傾向にありますが、初期費用はケースバイケースです。
  • 将来性とキャリアパス:特定技能は長期就労や永住権取得の道が開かれていますが、技能実習は原則として最長5年で帰国します。転職の自由度も特定技能の方が圧倒的に高いです。
  • 2027年の大変革:技能実習制度は2027年4月に廃止され、「育成就労制度」へ移行します。本記事ではこの最新動向も踏まえて解説します。

この記事を最後まで読めば、複雑に見える外国人材採用制度の全体像がクリアになり、自信を持って経営判断を下せるようになるでしょう。

制度概要を図解で比較

まず、特定技能(1号・2号)と技能実習が、それぞれどのような在留資格なのか、その基本的な違いを整理しましょう。制度の目的を理解することが、最適な選択への第一歩です。

在留資格の目的と位置づけ

以下の表は、各制度の目的、在留期間、家族帯同の可否といった主要な項目を比較したものです。特に「目的」の違いが、制度の性格を大きく左右しています。

項目 特定技能1号 特定技能2号 技能実習
目的 人手不足分野での労働力確保 熟練技能を持つ労働力の確保 技能移転による国際貢献
位置づけ 労働者 労働者 実習生
在留期間上限 通算5年 上限なし(更新可) 最長5年
技能水準 相当程度の知識・経験(即戦力) 熟練した技能 未経験から開始
転職 同一分野内で可能 同一分野内で可能 原則不可
家族帯同 原則不可 可能(配偶者・子) 不可

(出典:出入国在留管理庁「特定技能」厚生労働省「技能実習制度の概要」を基に作成)

特定技能制度は、深刻な人手不足に対応するため、即戦力となる外国人を「労働者」として受け入れる制度です。そのため、一定の技能水準が求められ、同一分野内であれば転職も認められています。特に特定技能2号へ移行すれば、在留期間に上限がなくなり、家族を呼び寄せることも可能になるため、長期的なキャリア形成を前提としています。

一方、技能実習制度は、日本の技術を開発途上国へ移転する「国際貢献」を理念としています。そのため、受け入れる外国人は「労働者」ではなく「実習生」という位置づけです。キャリアパスは日本国内ではなく母国での活躍が想定されており、原則として転職や家族帯同は認められていません。

採用コストの違い

外国人材の採用において、コストは最も重要な検討事項の一つです。特定技能と技能実習では、支援を依頼する機関が異なり、それに伴う費用構造も大きく変わります。

紹介料・試験料・登録支援機関費・監理団体費

両制度の主な費用項目を以下に示します。月々のランニングコストだけでなく、採用時にかかる初期費用も考慮して比較することが重要です。

  • 初期費用(両制度共通):人材紹介会社への紹介料、海外からの採用時に現地の送り出し機関へ支払う手数料、在留資格申請の代行費用(行政書士等)などが含まれます。
  • 月額費用(特定技能)登録支援機関への支援委託費が発生します。2025-03の中小企業庁調査によると、月額平均2万円から3万円程度が相場です。
  • 月額費用(技能実習)監理団体への監理費が発生します。同調査では、月額平均3.5万円から5万円程度が相場となっており、特定技能の支援費より高額になる傾向があります。

具体的に、採用から雇用継続までにかかる費用の内訳を見てみましょう。

費用項目 特定技能 技能実習 備考
人材紹介料 約20〜40万円/人(定額制化の傾向) 技能実習は監理団体がマッチングを担う
送り出し機関手数料 約10〜60万円/人 約10〜60万円/人 海外から採用する場合に発生
在留資格申請費用 約10〜15万円/人 約10〜15万円/人 行政書士等への報酬
月額支援・監理費 約2〜3万円/人(登録支援機関) 約3.5〜5万円/人(監理団体) 最も大きなコスト差が出る部分

(出典:kedomo「【2025年】外国人紹介手数料の相場」外国人技能実習機構「監理団体の運営に係る基準について」等を基に作成)

結論として、月々のランニングコストを抑えたい場合は特定技能が有利と言えます。ただし、技能実習は監理団体が入国から帰国まで一貫してサポートするため、採用企業側の管理負担が少ないという側面もあります。自社の管理体制と予算を照らし合わせ、総合的に判断することが求められます。

在留期間・更新と家族帯同

人材に長く活躍してもらうためには、在留期間の上限や更新手続き、そして生活の基盤となる家族帯同の条件を理解しておくことが不可欠です。ここでも両制度には明確な差が存在します。

最大滞在年数・更新手数料・帯同条件を比較

長期的な事業計画を立てる上で、外国籍社員が何年間日本で働けるのかは極めて重要です。また、2025年4月からは在留資格の更新手数料が改定されている点にも注意が必要です。

項目 特定技能1号 特定技能2号 技能実習
最大在留期間 通算5年 上限なし 最長5年
更新手数料(2025年4月〜) 6,000円(窓口申請)
5,500円(オンライン申請)
6,000円(窓口申請)
5,500円(オンライン申請)
6,000円(窓口申請)
5,500円(オンライン申請)
家族帯同 原則不可 可能 不可

(出典:出入国在留管理庁「令和6年12月末現在における特定技能制度の運用状況」、出入国在留管理庁告示第38号(2025-04-01)を基に作成)

5年を超えての長期雇用や、将来的な管理職候補としての育成を考えるならば、特定技能が唯一の選択肢となります。特定技能1号で5年間就労した後、試験に合格して2号へ移行すれば、在留期間の制限なく日本で働き続けることができ、永住権取得の可能性も出てきます。さらに、配偶者と子供を呼び寄せられるため、生活基盤を日本に築き、高いモチベーションで業務に貢献してもらうことが期待できます。

技能実習はあくまで「実習」期間と定められているため、最長5年で必ず満了します。更新手数料は特定技能と同額ですが、これは在留期間を延長するものではなく、次の段階(1号→2号など)へ移行するための手続き費用です。会社の基幹人材として定着させることは制度上想定されていません。

転職・キャリアパスの自由度

採用した人材の定着率を大きく左右するのが、転職の自由度とキャリアパスの明確さです。労働者としての権利が保障されている特定技能と、実習生として保護される技能実習では、この点に天と地ほどの差があります。

  • 特定技能:受け入れ企業と同じ業務分野であれば、本人の意思で自由に転職が可能です。これにより、労働者はより良い条件やキャリアを求めて能動的に動くことができます。企業側にとっては、待遇や職場環境を改善し、選ばれる企業になる努力が求められます。
  • 技能実習原則として転職は認められていません。やむを得ない事情(企業の倒産、人権侵害など)がある場合にのみ、例外的に転籍が可能です。この制約が、時に失踪問題の一因として指摘されることもあります。

この違いは、人材の定着率にも影響を与えています。一見すると、転職ができない技能実習の方が定着率は高いように見えますが、その背景を読み解く必要があります。

制度 転職可否 3年定着率の目安
特定技能 同一分野内で可能 約84%
技能実習 原則不可 約90%以上
日本人新卒(大卒) 自由 約68%

(出典:STAFF満足「【特定技能】離職率は高い?定着率と離職理由、対策を解説」HRpro「新規学卒就職者の離職状況」等を基に作成)

技能実習の高い定着率は、制度的な制約による側面が強いと言えます。一方で、特定技能の約84%という定着率は、転職の自由がある中で達成された数値であり、日本人新卒の定着率(約68%)を大きく上回っています。これは、特定技能外国人が明確な目的意識を持って日本で働いており、企業側も定着に向けた努力をしている結果と分析できます。

制度選択フローチャート【5分判定】

ここまで解説した違いを踏まえ、貴社に最適な制度がどちらなのかを判断するための簡単なフローチャートを用意しました。「はい」か「いいえ」で答えていくだけで、自社のニーズに合った制度が見えてきます。

  • 質問1:即戦力となる経験者が必要ですか?
    • はい → 質問2へ
    • いいえ(未経験者を育てたい) → 技能実習が候補(ただし2027年に育成就労制度へ移行)
  • 質問2:5年を超えて、長期的に雇用したいですか?
    • はい特定技能(1号から2号への移行を推奨)が最適です。
    • いいえ(3〜5年の期間限定で良い) → 質問3へ
  • 質問3:月々のランニングコストを少しでも抑えたいですか?
    • はい特定技能が有利な場合が多いです。
    • いいえ(コストより手厚い管理サポートを重視) → 質問4へ
  • 質問4:採用した人材には、自社でキャリアを積んでほしいですか?
    • はい特定技能が適しています。転職の自由がある分、魅力的な職場環境作りが重要になります。
    • いいえ(国際貢献や技術移転が主目的) → 技能実習が制度趣旨に合致します。

このフローチャートで「特定技能」が多く選ばれた企業は、労働力としての人材確保を求めていると言えます。一方、「技能実習」が多く選ばれた企業は、人材育成を通じた国際貢献に重きを置いていると考えられます。自社の理念と事業戦略に照らし合わせて最終判断をしてください。

実例:飲食チェーンが制度乗換でコスト削減・定着率向上

理論上の比較だけでなく、実際に技能実習から特定技能へ切り替えたことで、経営改善に成功した企業の事例を見てみましょう。コスト削減と売上アップを両立させた実例は、制度選択の大きなヒントになります。

企業 業種 主な成果
ラーメンチェーンA社 外食 月商+22%達成、定着率90%超、教育コスト年間120万円削減
協和プレス工業㈱ 製造 月次売上+22%伸長、定着率75%→92%へ改善(17pt増)

(出典:特定技能一括サポート「【2025年版】特定技能で売上20%UPした外食5社の成功事例」産業雇用安定センター「活用事例集2024」を基に作成)

ラーメンチェーンA社では、技能実習を修了したベトナム人3名を特定技能として再雇用しました。彼らが即戦力として活躍したことで、人手不足で縮小していた深夜営業を再開でき、月商が100万円以上アップしました。さらに、定着率が大幅に向上したことで、新人採用と教育にかかっていた年間120万円のコスト削減にも成功しています。

製造業の協和プレス工業株式会社も同様に、元技能実習生を特定技能として受け入れました。経験豊富な人材が定着したことで生産性が向上し、月次売上が約900万円増加しました。注目すべきは定着率で、技能実習時代の75%から特定技能移行後は92%へと大幅に改善しています。これは、キャリアパスが明確になったことが、本人の働く意欲を高めた好例と言えるでしょう。

よくある質問(Q&A)

最後に、経営者や人事担当者の方から特によく寄せられる質問とその回答をまとめました。細かな疑問点をここで解消しておきましょう。

Q1. 結局、技能実習制度はいつまで使えるのですか?

A1. 技能実習制度は、2027年4月を目途に廃止され、新しい「育成就労制度」が開始される予定です。育成就労制度は、人材育成と労働力確保の両方の側面を併せ持ち、特定技能制度への移行をよりスムーズにすることを目的としています。今から技能実習生を受け入れる場合、この制度移行を念頭に置く必要があります。

Q2. 特定技能で採用すれば、永住も可能になるのですか?

A2. はい、可能性があります。特定技能1号(最長5年)から、熟練した技能が求められる特定技能2号へ移行できれば、在留期間の更新に上限がなくなります。その後、日本の永住許可要件(原則10年以上の在留など)を満たせば、永住権を申請することが可能です。

Q3. 監理団体と登録支援機関、どちらが信頼できますか?

A3. 一概にどちらが優れているとは言えませんが、監督体制に違いがあります。監理団体は「外国人技能実習機構」による厳格な監査下にあり、2023年度の調査では約52%の団体が何らかの是正指導を受けています。これは監督が機能している証拠とも言えます。一方、登録支援機関は比較的新しい制度ですが、出入国在留管理庁の管轄下で5年ごとの更新審査があり、不正行為などがあれば登録を取り消されるなど、品質管理体制が強化されつつあります。どちらを選ぶにしても、実績や支援内容をよく確認することが重要です。

まとめ

本記事では、2025年最新版として「特定技能」と「技能実習」の違いを、コスト、在留期間、キャリアパスの観点から徹底的に比較しました。最後に、両制度の選択における最終的な判断ポイントを改めて整理します。

「特定技能」を選ぶべき企業:

  • 即戦力となる人材を確保し、人手不足をすぐに解消したい。
  • 5年を超えて長期的に雇用し、会社の中心メンバーとして育てたい。
  • 月々のランニングコストをできるだけ抑制したい。
  • 社員のキャリアアップを支援し、定着率の高い組織を作りたい。

「技能実習」を選ぶべき企業(2027年の制度移行を理解した上で):

  • 未経験者を一から育て、人材育成を通じた国際貢献を経営理念としている。
  • 3〜5年という期間限定での人材受け入れを計画している。
  • 社内に外国人材の管理ノウハウが少なく、手厚いサポートを外部機関に求めたい。

結論として、人手不足の解消と事業の成長を目的とするならば、多くの場合で「特定技能」がより合理的な選択肢となります。特に、2027年に技能実習制度が「育成就労制度」へ移行することを見据えると、初めから労働者として長期的な活躍が期待できる特定技能の優位性は、ますます高まっていくでしょう。

本記事が、貴社の外国人材採用戦略を成功に導く一助となれば幸いです。

よくある質問

  • 在留期間更新手数料はいつから変わる?
    2025年4月1日受付分から窓口6,000円・オンライン5,500円に改定されます。詳細は公式案内を確認してください。
  • 特定技能2号へ移行するための要件は?
    同一分野で2年以上の就労実績と熟練レベル技能評価試験の合格が必要です。試験科目は出入国在留管理庁告示で公開されています。
  • 技能実習はいつ育成就労制度に切り替わる?
    改正出入国管理法により2027年4月に全面施行予定です。移行スケジュールは政府発表資料で確認できます。
  • 技能実習2号修了者はJFT-Basicを受けなくてもいい?
    はい。技能実習2号を良好に修了した場合、日本語試験は免除で特定技能1号へ移行できます。詳細は在留資格FAQを参照してください。

参考サイト

初心者のための用語集

  • 特定技能1号:人手不足が深刻な産業分野で即戦力となる外国人を最長5年まで受け入れる在留資格。
  • 特定技能2号:1号より熟練度が高い人材向けで在留上限がなく、配偶者・子の帯同も認められる在留資格。
  • 技能実習:開発途上国へ技能移転を目的とした制度で、最長5年の就労と技能習得を行う仕組み。
  • 登録支援機関:特定技能外国人の生活・職業支援を代行する民間・団体。月額約2万円の支援費が発生。
  • 監理団体:技能実習生を受け入れる企業を監督・指導する団体。月額約3.5万円の監理費が必要。
  • 在留期間更新手数料:在留資格を更新する際に支払う費用。2025年4月以降は窓口6,000円・オンライン5,500円。
  • JFT-Basic:国際交流基金が実施する日本語基礎テスト。特定技能1号を取得するための語学要件となる。
  • 技能評価試験:各産業分野で実施される実技・学科試験。合格で特定技能1号、熟練レベルで2号が申請可能。
  • 在留資格認定証明書:海外在住者が新しく在留資格を取得する際、入国前に日本大使館へ提出する証明書。
  • 育成就労制度:技能実習に代わり2027年に始まる新制度。転職自由度や日本語教育義務が強化される見込み。
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松田 悠志
㈱ビーシアップ代表。宅建士・FP2級。人材採用・営業・Webマーケ・資産形成を支援し、採用コンサルやマネープラン相談も対応。株12年・FX7年のスイングトレーダー。ビジネス・投資・開運術を多角的に発信し、豊かな人生を後押しします。