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この記事の要点・結論
この記事では、5店舗以上を展開する飲食チェーンの経営者や人事担当者が、特定技能外国人を採用する際のコストを実質ゼロに近づけるための助成金・補助金活用法を網羅的に解説します。2025年度の最新情報を基に、活用できる制度から申請方法、成功事例までを具体的に紹介します。
- コストゼロは可能:複数の助成金・補助金を戦略的に組み合わせることで、特定技能人材の採用・支援にかかる初期費用や運営コストの大部分を賄えます。
- 狙い目の制度:厚生労働省の「人材確保等支援助成金」や地方自治体独自の支援制度が、飲食店にとって活用しやすく効果的です。
- 成功の鍵は計画性:自社の状況に合った制度を選び、公募開始前から計画的に準備を進めることが採択率を高める上で不可欠です。
- 売上向上にも直結:助成金を活用して優秀な人材を確保した企業は、採用コストを削減しつつ月商を平均20%以上向上させた実績があります。
深刻な人手不足は、もはや避けて通れない経営課題です。本記事を参考に、国の支援制度を最大限に活用し、コストを抑えながら事業成長を加速させる一歩を踏み出しましょう。
5店舗以上の飲食店が狙える主要助成金・補助金トップ5
2025年度、多店舗展開する飲食店が特定技能人材の採用で活用すべき主要な助成金・補助金は多岐にわたります。ここでは、特に申請しやすく、飲食店のニーズに合致する5つの制度を厳選してご紹介します。
厚生労働省「人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)」
- 制度の概要:外国人労働者が働きやすい環境を整備するための費用を助成する制度です。
- 対象経費:通訳費、翻訳機器の導入、多言語での標識設置、専門家への相談費用など。
- 最大の魅力:採用後の定着支援にかかる幅広い経費が対象となり、非常に使い勝手が良いのが特徴です。
この助成金は、外国人特有の事情に配慮した職場環境の整備を支援するものです。具体的には、雇用労務責任者の選任や、就業規則の多言語化、苦情・相談に対応する体制づくりなどが評価されます。2025年4月時点の公募要領によると、賃金要件を満たすことで最大72万円(補助率2/3)が支給され、多くの飲食店にとって特定技能人材受け入れの核となる制度です。(2025年4月 厚生労働省)
単に採用するだけでなく、採用した人材が長く活躍してくれるための投資を国が後押ししてくれます。社内の受け入れ体制を根本から見直す良い機会にもなるでしょう。
東京都「中小企業の外国人従業員に対する研修等支援助成金」
- 制度の概要:都内の中小企業が外国人従業員に対して行う研修費用を補助します。
- 対象経費:日本語教育、ビジネスマナー研修、異文化理解講座など。
- ポイント:教育に特化しており、人材のスキルアップと定着を直接的に支援します。
東京都をはじめとする大都市圏の自治体は、独自の外国人材支援策を設けています。特に東京都のこの助成金は、外国人材のコミュニケーション能力や業務スキル向上に直結する研修が対象です。1事業者あたり最大25万円(補助率1/2)の支援を受けられます。(2025年4月 東京都産業労働局)
国の助成金と組み合わせることで、教育コストを大幅に削減できます。他の道府県でも類似の制度が設けられている場合が多いため、自社の所在地にある自治体のウェブサイトを必ず確認しましょう。
経済産業省「IT導入補助金」
- 制度の概要:中小企業がITツールを導入する際の経費の一部を補助する制度です。
- 対象経費:会計ソフト、受発注システム、勤怠管理システム、多言語対応のセルフレジなど。
- ポイント:外国人材とのコミュニケーション円滑化や業務効率化に繋がるITツール導入に活用できます。
特定技能人材の受け入れを機に、店舗のDX(デジタルトランスフォーメーション)を進める絶好の機会です。例えば、多言語対応のタブレットPOSレジや、翻訳機能付きの勤怠管理システムを導入すれば、言葉の壁によるミスや教育コストを削減できます。2024年度の実績では採択率が約70%と高く、比較的活用しやすい補助金です。(2025年4月 IT導入補助金2025)
補助額は導入するツールの種類や目的によって最大450万円(補助率1/2~2/3)と幅広く設定されています。外国人材の受け入れだけでなく、店舗全体の生産性向上に寄与する強力な一手となります。
法務省・入管庁「登録支援機関活用費補助(地方自治体連携)」
- 制度の概要:一部の地方自治体が、国と連携して登録支援機関への委託費用を補助する制度です。
- 対象経費:登録支援機関への初期費用、月額の支援委託料など。
- 注意点:全ての自治体で実施されているわけではなく、公募期間も短い傾向にあります。
特定技能外国人を雇用する際、多くの中小企業は「登録支援機関」に支援業務を委託します。この委託費用は企業にとって大きな負担ですが、一部の自治体ではこの費用を補助する制度を設けています。例えば、広島県の「特定技能外国人受入モデル企業支援事業」(2023年度実績)のように、採択枠は少ないものの、条件に合致すれば大きな支援となります。(2023年 広島県)
自社の自治体で同様の制度がないか、公募情報をこまめにチェックすることが重要です。公募開始後、迅速に申請できるよう事前の準備が採択の鍵を握ります。
地方自治体による家賃補助(大阪市・福岡市など)
- 制度の概要:外国人材が居住する際の家賃や初期費用の一部を自治体が補助します。
- 対象経費:外国人従業員が住むアパートの家賃、敷金・礼金など。
- メリット:従業員の生活基盤を安定させ、定着率向上に直接的に貢献します。
特定技能外国人の受け入れにおいて、住居の確保は企業が義務付けられている支援の一つです。この負担を軽減するため、大阪市や福岡市など一部の自治体では、企業が負担する家賃や初期費用の一部を補助する制度を設けています。補助額や条件は自治体により様々ですが、従業員1人あたり月額数万円の補助が出るケースもあります。
この種の補助金は、従業員の満足度を高め、安心して長く働いてもらうための強力なサポートとなります。福利厚生の充実をアピールできるため、採用競争力の向上にも繋がるでしょう。
制度比較表:上限額・補助率・採択率
自社に最適な制度を選択するために、主要な助成金・補助金の概要を一覧表にまとめました。補助率や上限額だけでなく、申請のしやすさを示す採択率も参考に、戦略を立てましょう。
制度名 | 主な対象費用 | 上限額(円) | 補助率 | 申請時期(目安) | 採択率(参考) |
---|---|---|---|---|---|
厚労省 人材確保等支援助成金 | 通訳・翻訳、多言語標識、専門家委託費 | 72万 | 最大2/3 | 通年(計画申請は実施1ヶ月前まで) | 約40-50% |
東京都 外国人研修支援 | 日本語教育、ビジネスマナー研修 | 25万 | 1/2 | 例年4月~12月頃 | 非公開(予算次第) |
経産省 IT導入補助金 | 会計ソフト、勤怠管理、セルフレジ | 5万~450万 | 1/2~2/3 | 複数回締切(要確認) | 約70%(2024年実績) |
経産省 ものづくり補助金 | 厨房機器、配膳ロボット、新サービス開発 | 750万~2,500万 | 1/2~2/3 | 複数回締切(要確認) | 約50%(2024年実績) |
地方自治体 家賃補助等 | 家賃、登録支援機関委託費 | 自治体による | 自治体による | 公募期間が短い傾向 | 満枠終了が多い |
※上記は2025年4月時点の情報を基にした代表例です。最新の公募要領を必ず公式サイトでご確認ください。採択率は過去の実績に基づく参考値です。
コストゼロを実現する3つの組み合わせモデル
特定技能人材1名を採用する場合、登録支援機関への委託費や住居の初期費用などで、初年度に約40万円から60万円のコストが発生するのが一般的です。しかし、複数の制度を組み合わせることで、この負担を実質ゼロにすることが可能です。ここでは具体的な3つのモデルケースをご紹介します。
モデルA:厚労省生活支援補助+東京都家賃補助(都内企業向け堅実モデル)
- 対象企業:東京都内に店舗があり、まずは着実にコストを抑えたい企業。
- 組み合わせ:厚労省「人材確保等支援助成金」+ 東京都「外国人材向け家賃補助(仮)」
- シミュレーション:採用・支援コストを直接的にカバーする王道の組み合わせです。
費用項目 | 発生コスト(円) | 活用する補助金 | 補助額(円) | 実質負担(円) |
---|---|---|---|---|
登録支援機関 初期・月額費 | 200,000 | 人材確保等支援助成金 | 133,000 (2/3補助) | 67,000 |
住居初期費用(敷金礼金等) | 200,000 | 東京都 家賃補助 | 100,000 (1/2補助と仮定) | 100,000 |
多言語マニュアル作成・通訳費 | 150,000 | 人材確保等支援助成金 | 100,000 (2/3補助) | 50,000 |
合計 | 550,000 | 333,000 | 217,000 |
※このモデルでは、さらに東京都の「研修支援助成金(最大25万円)」を組み合わせることで、日本語教育費用などを賄い、実質負担をほぼゼロに近づけることが可能です。
このモデルは、外国人材の生活基盤と職場環境の整備という、受け入れに必須のコストを直接的に補助するものです。特に家賃補助制度がある自治体では非常に有効な組み合わせと言えるでしょう。
モデルB:IT導入補助金+人材確保等支援助成金(DX推進モデル)
- 対象企業:人材採用と同時に、店舗の業務効率化やDXを進めたい企業。
- 組み合わせ:経産省「IT導入補助金」+ 厚労省「人材確保等支援助成金」
- シミュレーション:採用をきっかけに、店舗全体の生産性を向上させる投資型モデルです。
多言語対応のセルフレジ(1台50万円)と勤怠管理システム(年間利用料24万円)を導入するケースを考えます。IT導入補助金(補助率1/2)を活用すると、(50万+24万)× 1/2 = 37万円が補助されます。これにより、ITツール導入コストを大幅に圧縮できます。
同時に、人材確保等支援助成金で多言語マニュアル作成や相談体制整備の費用(例:30万円)の2/3(20万円)を補助してもらうことで、採用関連の直接コストもカバーします。結果として、少ない自己負担で人材確保と生産性向上の両方を実現できるのです。
モデルC:地方創生系助成金+社内支援体制強化(地方・郊外店舗モデル)
- 対象企業:地方や郊外に店舗があり、地域社会との連携を重視する企業。
- 組み合わせ:各自治体の「地域活性化・移住定住促進」関連補助金 + 社内教育プログラム
- シミュレーション:独自の強みを活かし、地域貢献と人材確保を両立させます。
地方自治体の中には、外国人材の受け入れを「関係人口の創出」や「地域経済の活性化」に繋がる事業として支援するケースがあります。これらの補助金は上限額が大きい反面、事業計画の独自性や地域への貢献度が問われます。
例えば、「外国人材と共に地域の特産品を使った新メニューを開発し、インバウンド観光客にアピールする」といった事業計画を立て、そのための厨房設備投資やプロモーション費用を補助してもらう、といった活用法が考えられます。この場合、採用コストを事業開発費用の一部として計上し、より大きな枠組みで補助を受ける戦略です。
申請フローとタイムライン【図解】
助成金・補助金の申請は、計画的に進めることが成功の絶対条件です。特に複数の制度を組み合わせる場合は、それぞれのスケジュールを正確に把握し、準備を進める必要があります。ここでは一般的な申請フローを5つのステップで解説します。
- ステップ①:制度選定と情報収集(公募開始3ヶ月前~)
- ステップ②:事前相談と計画骨子作成(公募開始2ヶ月前~)
- ステップ③:事業計画書・申請書類作成(公募開始~締切1ヶ月前)
- ステップ④:交付申請(提出)(締切2週間前までには完了)
- ステップ⑤:採択・交付決定 → 事業実施 → 実績報告(採択後)
①制度選定 → ②事前相談
まずは自社の課題(人手不足、教育体制、設備など)を洗い出し、それに合った制度をリストアップします。公式サイトの公募要領を熟読し、対象となる経費や要件を正確に理解することが重要です。不明点があれば、ためらわずに管轄の労働局や補助金事務局、または社会保険労務士などの専門家に相談しましょう。この段階で方向性を固めることが、後の手戻りを防ぎます。
③計画書作成 → ④交付申請
申請の核となるのが事業計画書です。なぜ特定技能人材が必要なのか、彼らを受け入れることで会社や地域にどのような良い影響があるのか、補助金を何に使い、どのような成果を目指すのかを、具体的かつ客観的な数値目標を交えて記述します。厚生労働省の「人材確保等支援助成金」を例にとると、以下の書類が必要になります。
提出タイミング | 主な必要書類 | 様式番号 |
---|---|---|
計画認定申請時 | 就労環境整備計画書 | 様式a-1号 |
雇用労務責任者の選任・就業規則等多言語化概要票 | 様式a-1号別紙1 | |
事業所確認票 | 様式a-2号 | |
支給申請時 | 支給申請書 | 様式a-6号 |
経費の支出を証明する領収書等 | – | |
雇用労務責任者による面談結果一覧表 | 様式a-6号別紙3 |
出典:2025年4月 厚生労働省「人材確保等支援助成金 様式集」
申請書類は、第三者(特に専門家)にレビューしてもらうことで、記載ミスや論理の飛躍を防ぐことができます。提出は郵送の場合、締切日必着が原則ですので、余裕を持ったスケジュールを組みましょう。
⑤実績報告
補助金は、事業を実施し、その経費を支払った後に受け取る「後払い」が基本です。採択されたら、計画通りに事業を実施し、かかった経費の領収書や実施状況がわかる写真などをすべて保管しておく必要があります。最終的にこれらの証拠書類をまとめて「実績報告書」を提出し、審査を経て補助金額が確定・振り込まれるという流れになります。
成功事例5選:月商+20%&採用コストゼロ達成
助成金・補助金を活用した特定技能人材の採用は、単なるコスト削減に留まりません。企業の成長を加速させる起爆剤となり得ます。ここでは、実際に月商を大幅に向上させた5つの飲食チェーンの成功事例を見ていきましょう。
事例1:都内ラーメンチェーン(10店舗)
- 補助総額:約126万円(人材確保等支援助成金、自治体研修助成金)
- 採用人数:3名(ベトナム出身)
- 成果:深夜営業の再開により月商+22%を達成。
慢性的な人手不足から深夜営業を縮小していましたが、特定技能人材の採用を機に体制を再構築。助成金を活用して多言語マニュアルを作成し、独自のOJTプログラムを整備しました。採用した人材のアイデアから生まれた「ベトナム風まぜそば」がヒットし、客単価とリピート率向上にも繋がりました。
事例2:関西カフェFC(8店舗)
- 補助総額:約168万円(IT導入補助金、人材開発支援助成金)
- 採用人数:4名(インドネシア出身)
- 成果:ハラル対応メニュー開発で新規顧客層を開拓、月商+25%を達成。
ムスリム(イスラム教徒)の従業員を採用し、彼らの文化や習慣を尊重する職場環境を整備。IT導入補助金で多言語対応の券売機を導入し、助成金でハラル認証取得のコンサルティング費用や従業員向け異文化理解研修を実施しました。結果、ムスリム観光客や在住者という新たな顧客層の獲得に成功しました。
事例3:回転寿司チェーン(12店舗)
- 補助総額:約420万円(ものづくり補助金、人材確保等支援助成金)
- 採用人数:10名(インドネシア、フィリピン出身)
- 成果:後継者不足を解消し、新コンセプト店で月商+21%を達成。
職人の高齢化という課題に対し、外国人材を次世代の担い手として育成する計画を立案。「ものづくり補助金」を活用し、寿司の握り方を学べるVR研修システムや、ネタを均一にカットする最新機器を導入しました。「外国人が握る本格江戸前寿司」というコンセプトがメディアの注目を集め、ブランドイメージの向上にも貢献しました。
事例4:焼肉FC(25店舗)
- 補助総額:約252万円(FC本部主導で各種助成金を申請)
- 採用人数:6名(スリランカ出身)
- 成果:全店舗平均で月商+18%、定着率90%以上を維持。
FC本部が主導し、加盟店向けに特定技能人材の採用から定着までを一貫してサポートするパッケージを構築。助成金を活用して、全店共通の教育プログラムや、登録支援機関との連携体制を整備しました。これにより、各店舗の負担を軽減しつつ、質の高い人材を安定的に確保できる仕組みが実現しました。
事例5:ファミリーレストラン(35店舗)
- 補助総額:約336万円(IT導入補助金、人材確保等支援助成金)
- 採用人数:8名(多国籍)
- 成果:翻訳機能付きインカム導入で業務効率が向上し、月商+19%を達成。
フィリピン、ミャンマー、ネパールなど多国籍の人材を同時に採用。IT導入補助金を活用し、リアルタイム翻訳機能が付いたインカムや、指示が画像で表示されるキッチンディスプレイ端末を導入しました。これにより、言語の壁を越えたスムーズな連携が可能となり、オーダーミス削減と提供時間短縮を実現しました。
よくある質問(Q&A)
特定技能人材の採用や助成金申請に関して、多くの担当者様から寄せられる質問とその回答をまとめました。
Q. 申請すれば必ず採択されますか?不採択になる主な理由は何ですか?
A. いいえ、必ず採択されるわけではありません。特に人気の補助金は競争が激しくなります。過去の不採択理由で最も多いのは、以下の3つです。
- 書類不備・記載ミス(約30~40%):単純な記入漏れや期限超過など、基本的なミスが原因です。提出前のダブルチェックを徹底しましょう。
- 要件未達成(約25~30%):公募要領をよく読まず、自社が対象外であるにも関わらず申請してしまうケースです。事前確認が不可欠です。
- 事業計画の具体性不足(約20~25%):「頑張ります」といった精神論ではなく、「誰が、いつまでに、何をして、どのような数値目標を達成するのか」という具体性が求められます。
一度不採択になっても、理由を分析し、計画を練り直して再チャレンジすることで採択される可能性は十分にあります。
Q. 補助金を受け取った場合、税金はかかりますか?経理処理はどうすればよいですか?
A. はい、原則として法人税の課税対象(益金)となります。経理処理で注意すべきは、収益として計上するタイミングです。一般的には、国や自治体から「交付決定通知書」が届いた日の属する事業年度で益金に算入します。入金日ではない点に注意が必要です。
ただし、厨房機器やレジなどの固定資産を取得するために補助金を使った場合は、「圧縮記帳」という税務上の特例を適用できます。これは、取得した資産の帳簿価額を補助金分だけ減額することで、その年度の課税を将来に繰り延べる制度です。資金繰りに大きく影響するため、必ず税理士などの専門家にご相談ください。(出典:法人税法基本通達10-2-1)
Q. 登録支援機関に支払う費用も補助対象になりますか?
A. 直接的な対象となるケースは少ないですが、間接的にカバーすることは可能です。厚生労働省の「人材確保等支援助成金」では、「弁護士・社会保険労務士等への委託料」が対象経費に含まれています。この枠組みを使い、登録支援機関が行う支援計画作成や各種手続き代行の一部を補助対象として申請できる場合があります。
また、一部の自治体では、登録支援機関の活用そのものを支援する独自の補助金(例:広島県のモデル事業)を設けています。自社の自治体の制度を確認することが重要です。複数の制度を組み合わせることで、実質的な負担を軽減するアプローチが有効です。
Q. 申請は自社だけでも可能ですか?専門家に依頼すべきですか?
A. 自社だけでの申請も可能ですが、専門家の活用を強く推奨します。特に5店舗以上のチェーンで、複数の制度を組み合わせる場合は、社会保険労務士や行政書士、中小企業診断士といった専門家のサポートを受けるメリットは非常に大きいです。
専門家は、最新の制度情報や採択されやすい計画書の書き方を熟知しており、煩雑な書類作成を代行してくれます。これにより、担当者様は本来の業務に集中できます。手数料はかかりますが、採択される確率の向上や手間削減を考えれば、十分に元が取れる投資と言えるでしょう。
まとめ
本記事では、5店舗以上の飲食店が2025年度に活用できる助成金・補助金を駆使して、特定技能人材の採用コストを実質ゼロに近づける具体的な方法を解説しました。人手不足という大きな課題は、国の支援制度を賢く利用することで、むしろ事業成長のチャンスに変えることができます。
重要なポイントを改めて確認しましょう。
- 情報収集と計画性:自社の課題に合った制度を早期にリストアップし、公募スケジュールに合わせて準備を進めることが成功の第一歩です。
- 戦略的な組み合わせ:国の制度と自治体の制度、採用支援と設備投資支援など、複数の制度を組み合わせることで、補助効果を最大化できます。
- 専門家の活用:複雑な申請手続きや採択率を高める事業計画の作成は、社会保険労務士などの専門家と連携することで、確実性と効率が格段に向上します。
特定技能人材の受け入れは、単なる労働力の確保ではありません。彼らの活躍は、新たなサービスの創出や生産性の向上、そして月商20%アップといった目に見える成果に繋がります。この記事をきっかけに、ぜひ前向きな一歩を踏み出し、計画的な制度活用で企業の未来を切り拓いてください。
よくある質問
- Q: 同じ年度内に複数の補助金を併用できますか?
A: 目的や対象経費が重複しなければ併用可能です。たとえば 厚労省の外国人就労生活支援補助金 と 東京都研修等支援助成金 を組み合わせても問題ありません。 - Q: 交付決定前に発注した費用は補助対象になりますか?
A: 原則対象外です。必ず計画書提出 → 交付決定後に契約・発注・支払いを行ってください。 - Q: 採択率を上げるコツはありますか?
A: 書類不備が最多の不採択原因です。提出前に第三者チェックリストを活用し、公募要領に準拠した記載を徹底しましょう。 - Q: 不採択になった場合、再申請できますか?
A: できます。労働局や事務局に不採択理由を確認し、改善後に次回公募で再申請すると採択率は大幅に上がります。 - Q: 補助金は税務上どう処理すればいいですか?
A: 研修費など経費補填型は交付確定年度の益金算入が原則です。固定資産取得目的の補助金は圧縮記帳が選択できます。 - Q: 特定技能2号への移行支援費用も補助対象ですか?
A: 登録支援機関費や日本語教育費など定着支援に該当する項目は、厚労省・経産省いずれの制度でも対象となる場合があります。詳細は各公募要領を確認してください。
参考サイト
- 厚生労働省:外国人就労生活支援補助金の概要 ― 制度要件と支給上限を確認できます。
- 東京都:外国人従業員研修等支援助成金 ― 日本語研修など研修費用の補助詳細。
- 経済産業省:中小企業等外国人高度人材活躍促進事業 公募要領 ― インターン受入れ支援の最新要領。
- 大阪府:外国人材受入加速化支援事業 ― 住居・マッチング支援を含む地方助成の具体例。
- 出入国在留管理庁:外食業分野の特定技能制度 ― 対象業務と登録支援機関の要件を確認。
初心者のための用語集
- 特定技能:人手不足分野で働く外国人に与えられる在留資格。外食業では最長5年の1号と無期限・家族帯同可の2号がある。
- 補助金/助成金:国や自治体が企業の取り組みを支援する資金。補助金は競争型、助成金は要件を満たせば原則受給できる。
- 登録支援機関:生活オリエンテーションや日本語学習など、特定技能人材の支援を企業に代わって行う専門機関。
- 補助率:対象経費に対して補填される割合。たとえば補助率2/3なら100万円の経費に対し66万円が支給される。
- 採択率:申請件数に対して交付決定された割合。数値が高いほど通りやすい制度を示す指標。
- OJT(On-the-Job Training):職場で実務を通じて行う教育訓練。補助対象になる研修の代表例。
- 交付決定:申請内容が認められ、補助金の支給が正式に約束される行政手続きの最終段階。
- 圧縮記帳:固定資産取得補助金を益金算入した同額を損金計上し、課税を繰り延べる会計処理。
- 益金:法人税法上の収益(売上や補助金など)。補助金は交付確定年度の益金に計上するのが原則。
- JLPT:日本語能力試験。N1~N5の5段階があり、特定技能の要件でN4以上が求められる分野が多い。
