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マンション購入時は「実質返済比率」に注目!住宅ローン+管理費+修繕積立金を一括把握する方法

マンション購入時は「実質返済比率」に注目!住宅ローン+管理費+修繕積立金を一括把握する方法

マンションは「維持費まで計算」しないと危険

ローン返済比率だけでは足りない理由

  • マンション特有の「管理費」「修繕積立金」を見落としがち
  • 将来的な値上げリスクを織り込まずにローンを組むと家計圧迫
  • 実質返済比率を確認すれば破綻リスクを抑えやすい
マンション購入を検討する際、多くの人は住宅ローンの返済額だけに着目しがちです。 しかし、マンションには毎月のローン返済に加え、管理費と修繕積立金の支払いが必須です。 とりわけ、頭金が少なくフルローンや高額ローンを検討しているケースでは、これらの維持費を含めた「実質返済比率」を見なければ、無理な買い物になりやすいでしょう。 「家賃と同じくらいだから大丈夫」という認識で物件を決めてしまうと、入居後に管理費や修繕積立金の値上げがのしかかり、家計破綻を招く恐れがあります。 また、マンションは共用部分の設備が充実しているほど管理コストがかさみます。 コンシェルジュサービスやジム、ラウンジなどがある高グレード物件は、豪華な共用施設分の管理費が上乗せされることが多いのです。 さらに、築年数が経つほど修繕積立金も上昇する傾向にあります。 そうした継続的な出費を加味せずに購入すると、将来的に資金ショートしてしまうリスクが高くなります。

管理費+修繕積立金の平均額(2025年度・住宅金融支援機構)

  • 2025年度時点での全国平均額:管理費約11,500円/月、修繕積立金約13,000円/月
  • 首都圏は平均より高め(合計で2万5,000円前後/月)
  • 小規模・高経年ほど1戸あたりの負担が増大
2025年度・住宅金融支援機構の統計によれば、マンションの管理費は全国平均で約11,500円/月、修繕積立金は13,000円/月ほどと報告されています。 とくに首都圏は管理費や修繕積立金が高くなる傾向があり、合計で毎月2万5,000円前後になる事例も珍しくありません。 一方で、地方の小規模マンションは全戸数が少ないため、エレベーター維持費や清掃費を戸数で割る結果、1戸あたりの負担額が大きくなるケースもあります。 築年数の経過によって修繕積立金が1.5〜2倍に引き上げられる事例も報告されており、購入後も値上げリスクは常に存在します。 このように、マンション特有の維持費は把握しにくい側面があります。 ですから、物件を検討する際は「今の管理費・修繕積立金」だけでなく、「将来の値上げ予定」や「管理組合の財政状況」まで確認することが重要です。 それらを踏まえたうえで、手取り年収に対する返済+維持費の比率、すなわち実質返済比率を算出すれば、買っても大丈夫かどうかの目安が明確になります。

実質返済比率の計算式と安全圏ライン

計算式と入力サンプル

  • 実質返済比率=(ローン元利+管理費+修繕積立金) ÷ 手取り年収
  • 手取り年収は「年収の約75〜80%」が目安
  • 管理費と修繕積立金は将来値上げ幅を織り込むこと
マンションの実質返済比率は以下のように計算します。 「実質返済比率(%)=(年間ローン返済額+年間管理費+年間修繕積立金)÷手取り年収×100」 たとえば、月々のローン返済が8万円、管理費と修繕積立金が合計2.5万円なら、年間合計は(8万円×12)+(2.5万円×12)=126万円です。 手取り年収を400万円とすると、実質返済比率は126万円÷400万円=0.315(31.5%)となります。 もしこれが30%を超えているなら、家計にかなりの負担がのしかかっていると言えるでしょう。 また、手取り年収は「額面年収×0.75〜0.80」で概算できる場合が多いですが、個人の税制や家族構成によって異なります。 正確な実質返済比率を算出するためには、事前に源泉徴収票や給与明細などで差し引かれる税金・社会保険料をしっかり確認することをおすすめします。 さらに、管理費や修繕積立金は物件によって大きく変動するので、購入前に「今後の修繕計画」「段階増額積立方式の有無」「管理組合の財政状況」などを必ず確認して、数千〜数万円の値上げを想定しておきましょう。

年収 400/600/800 万円モデル試算表

  • 年間ローン返済額は「金利1.3%、返済期間35年、頭金少なめ」を想定
  • 管理費+修繕積立金は月2.5万円で固定(将来値上げは別途考慮)
  • 手取り年収は年収の約80%で計算
項目 年収400万円 年収600万円 年収800万円
手取り年収 320万円 480万円 640万円
年間ローン返済額 84万円 (月7万円想定) 120万円 (月10万円想定) 156万円 (月13万円想定)
年間管理費+ 修繕積立金 30万円 (2.5万円×12) 30万円 30万円
合計年間支出 114万円 150万円 186万円
実質返済比率 (114÷320)×100=35.6% (150÷480)×100=31.3% (186÷640)×100=29.0%
上の試算表はあくまでも一例ですが、実質返済比率が30%を超えると家計が圧迫されやすいと言えます。 年収400万円の場合は管理費・修繕積立金を合わせると35%超と高めで、何か予期せぬ出費があるとあっという間に家計が赤字化しかねません。 一方、年収800万円なら返済負担率が3割を切るため、比較的余裕がありますが、将来的に修繕積立金が上がったり、金利が上昇したりすれば、この数字はすぐに変動する点に要注意です。

金融機関が見る「返済負担率」×「維持費負担率」

  • 一般的に、金融機関の審査はローン返済負担率だけを見る
  • 実際の負担は「管理費+修繕積立金」も加算される
  • 総合的に見れば30〜35%を超えると危険ゾーン
住宅ローンの審査では、年収に占めるローン返済額の比率「返済負担率」を重視します。 しかし多くの場合、管理費や修繕積立金は審査対象から外れるため、実際よりも審査基準が甘く見えてしまうことがあるのです。 ローンの通過ラインは年収400万円以上の場合、35%前後で設定されることが多いですが、そこに維持費を足せば実質返済比率はさらに上がります。 例えばローン返済比率がギリギリ35%だったとしても、管理費・修繕積立金を合算すると40%超になるケースもあります。 金融機関の視点では「返済負担率」をクリアしていれば融資をするというスタンスですが、買い手としてはそれだけでは安心できません。 実質返済比率を常に意識し、返済+維持費の合計が「手取り年収の3割以内」に収まるようにプランを立てるのが理想です。 もし3割を超える場合は、購入時期を再検討したり、物件価格を下げるなどの対策が求められます。

管理費・修繕積立金が上がる3つのトリガー

  • トリガー1:大規模修繕時の見積もりオーバー
  • トリガー2:資材・人件費などの物価上昇
  • トリガー3:管理組合の財政不足・滞納問題
マンションの管理費や修繕積立金が上がる背景には、いくつかのトリガーが存在します。 ひとつめは、最初の大規模修繕で見積もり以上の費用がかかった場合です。 当初の予想を上回る工事費が必要になれば、修繕積立金だけでは賄いきれず、管理組合が積立金の増額を議決する可能性があります。 ふたつめの要因としては、資材コストや人件費の高騰が挙げられます。 2025年時点でも建築資材の価格は上昇し続けており、10年前に比べると大規模修繕の工事費が1.2〜1.5倍に増えたとの報告もあります。 これによって、修繕積立金は5年ごと、10年ごとに大幅に引き上げられているマンションも見受けられます。 そして三つめは管理組合の財政問題。 滞納住戸が多いマンションでは、管理費や修繕積立金を通常より高く設定しないと合計額が足りず、管理不全に陥るリスクが高いのです。

コスト高騰を抑える管理組合チェックリスト

  • 1. 長期修繕計画の内容を年1回は点検
  • 2. 理事会・総会の議事録を読み、積立不足に注意
  • 3. 管理会社の見積もりを相見積もりで比較
  • 4. 管理費の内訳(人件費・清掃・警備など)を精査
  • 5. 段階増額方式でいつ増額されるかを把握
管理費や修繕積立金のコスト高騰を抑えるためには、管理組合の活動がカギを握ります。 まず、長期修繕計画がしっかりしているかどうかを理事会や総会の資料で確認しましょう。 築10年、20年、30年といった節目で、どの程度の工事が必要か、いつどのくらいの増額が発生するのかを把握しておくと安心です。 次に、管理会社へ支払っている費用の内訳をチェックすることが重要です。 管理員の勤務形態や清掃頻度、共用設備のメンテナンス契約などを見直すだけでも、管理費を適正化できる余地があります。 また、大規模修繕の工事費用は管理会社や施工会社によって見積もり金額が大きく異なることもあるため、必ず複数社の相見積もりを取るのが定石です。

ケーススタディ3選 – 買っていい物件・ダメな物件

ケース1:築10年、高額管理費でも積立計画が充実した物件

  • 管理費:月2.0万円、修繕積立金:月1.5万円
  • 長期修繕計画が明確で、管理組合の積立残高に余裕
  • 将来値上げ幅も5年ごとに1割程度と少ない
築年数がまだ浅いものの、管理費がやや高めに設定されている例です。 それでも管理組合が堅実に資金を積み立てており、将来的な増額幅が小さい見込みであれば、家計リスクは大きくありません。 「将来の修繕費が不足しそうだから、あとで大幅値上げ」という懸念が少ない物件は、安定感があると言えるでしょう。 手取り年収に対して実質返済比率が3割以内に収まるなら、買っても安心度が高いケースです。

ケース2:築15年、管理費・修繕積立金ともに低く見える物件

  • 管理費:月8,000円、修繕積立金:月6,000円
  • しかし築15年経過しており、そろそろ大規模修繕が近い
  • 積立金不足により、将来倍増するリスクが大
分譲当初から修繕積立金を低く抑え、そのまま据え置いている物件に多いパターンです。 管理費・修繕積立金が低額に見えるため一見お得に感じますが、実際は積立不足を抱えている可能性があります。 いざ大規模修繕が必要となったタイミングで、一気に2倍・3倍へと値上げされるリスクがあり、そうなると家計負担は急増します。 このようなケースは、購入前に管理組合の長期修繕計画と現在の積立残高をよく調べましょう。

ケース3:築30年、管理組合の滞納率が高い物件

  • 管理費の滞納住戸が全体の10%超
  • 修繕積立金の値上げを決議できず、大規模修繕が遅延
  • 外観やエントランスの劣化が進み、資産価値が下落傾向
築30年前後のマンションは、2度目・3度目の大規模修繕に直面する時期です。 管理費・修繕積立金を滞納している住戸が多いと、管理組合の運営が立ち行かなくなり、必要な修繕もままならないケースが散見されます。 建物の劣化や設備の老朽化が進んでも修繕工事ができない結果、資産価値が大幅に下がってしまう恐れがあります。 このような物件は「割安だ」と思って飛びつくと、後々高額な修繕費を請求されるリスクが高いと言えるでしょう。

まとめ – “実質返済比率”で家計を守る

マンション購入時は、ローン返済だけでなく管理費と修繕積立金を合算した「実質返済比率」を必ずチェックすることが鉄則です。 手取り年収の3割以内に収まるかどうかで、家計の安全圏が大きく変わります。 さらに、管理費・修繕積立金の値上げリスクを読み解くには、長期修繕計画・管理組合の財政状況・段階増額方式の有無などをしっかり見極める必要があります。 大規模修繕が近づくにつれ、思わぬ高額負担が発生するケースは少なくありません。 今後も建築資材や人件費の高騰は続くと予想され、維持費の上昇は避けられない可能性が高いです。 「このマンションなら将来の値上げ幅はどれくらいか」を想定したうえで、住宅ローンを含めた実質返済比率を試算し、無理なく支払える範囲での購入を心がけましょう。 これが、マンション購入後も家計を守るための最善策と言えます。

FAQ

  • Q:管理費と修繕積立金は今後どのくらい上がる? A:国交省の2024年調査では、築5年刻みで平均15%前後ずつ増額。段階増額方式なら最終的に3倍超になるケースもあるため、長期修繕計画を必ず確認してください。
  • Q:適正な実質返済比率の目安は? A:手取り年収に対する比率25%以下が安全圏。ローン審査基準(30〜35%)は限界値なので、維持費の上昇分も織り込んでシミュレーションしましょう。
  • Q:修繕積立金が足りない場合、どうなる? A:不足分は一時金徴収や管理組合の借入で賄うため、戸当たり50〜100万円を急に請求されるリスクがあります。残高と不足率を事前にチェックしましょう。
  • Q:管理費が高い物件は避けるべき? A:単純な金額よりサービス内容とコストの内訳が重要。24時間有人管理や大規模共用施設を望むなら費用は割高になります。費用対効果を比較して判断してください。
  • Q:管理組合の健全性をチェックする方法は? A:長期修繕計画の期間が25年以上か、修繕積立金残高が年間計画費用の1.5倍以上あるか、管理計画認定を取得しているかを確認すると安心です。
  • Q:実質返済比率が高い場合の対策は? A:頭金を増やす、管理費・修繕積立金の安い物件に乗り換える、または繰上返済で元本を減らし比率を下げる――の三択が基本です。

参考サイト

初心者のための用語集

  • 実質返済比率:ローン元利に管理費・修繕積立金を加え、手取り年収で割った家計負担割合。
  • 返済負担率:金融機関審査で用いる、ローン元利だけを年収で割った割合。
  • 管理費:共用部の清掃・設備保守など日常管理サービスに充てられる月額費用。
  • 修繕積立金:将来の大規模修繕に備えて毎月積み立てる資金。築年数に応じて増額されやすい。
  • 段階増額積立方式:修繕積立金を数年ごとに段階的に引き上げる方式。最終的に初期額の数倍になることも。
  • 均等積立方式:期間中ずっと同額を積み立てる方式。家計の見通しが立てやすい。
  • 長期修繕計画:25〜30年先までの修繕工程と費用を示す管理組合の計画書。
  • 管理計画認定制度:自治体が管理組合の計画・財務を評価し、適正管理マンションとして認定する制度(2022年開始)。
  • 一時金徴収:修繕費不足を補うために臨時で各戸から集金する方法。数十万〜百万円規模になることも。
  • 管理委託費:管理会社へ支払う業務委託料。見直して削減し、修繕積立金に回すことが可能。

編集後記

先日、あるお客様からマンション購入についてのご相談をいただきました。年収500万円で3,500万円のマンションを検討していたそうです。当初は「住宅ローンの審査も通ったので大丈夫」と安心されていました。 しかし、実質返済比率の計算をしてみると、ローン返済だけで年収の32%、そこに管理費と修繕積立金を合わせると実に38%に達することが判明。しかも検討中の物件は築15年で、長期修繕計画によると2年後に大規模修繕が控えていました。 お客様は「将来的な修繕積立金の値上げリスク」を全く考慮していなかったとのこと。そこで一緒に管理組合の財政状況も確認したところ、修繕積立金が明らかに不足気味で、近い将来倍増する可能性も高いと分かりました。 結局このお客様は、同じエリアでより小規模な物件に切り替え、頭金も増やすことで無理のない返済計画を立て直されました。手取り年収の30%以内という安全圏に収まる買い物ができて大変喜ばれていました。 マンション購入では「今の返済額」だけでなく、「将来の維持費増加」まで見据えた計画が欠かせません。とくに築年数が進んだ物件は修繕積立金の動向に注意が必要です。実質返済比率をしっかり押さえて、後悔のない住まい選びをしたいものですね。

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松田 悠寿
㈱ビーシーアップ代表。宅建士・FP2級。人材採用・営業・Webマーケ・資産形成を支援し、採用コンサルやマネープラン相談も対応。株12年・FX7年のスイングトレーダー兼占い師歴15年。四柱推命・風水などで運気と経営を高める情報をブログで発信し、ビジネス・投資・開運術を多角的に発信し、豊かな人生を後押しします。