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マンションは「維持費まで計算」しないと危険
ローン返済比率だけでは足りない理由
- マンション特有の「管理費」「修繕積立金」を見落としがち
- 将来的な値上げリスクを織り込まずにローンを組むと家計圧迫
- 実質返済比率を確認すれば破綻リスクを抑えやすい
管理費+修繕積立金の平均額(2025年度・住宅金融支援機構)
- 2025年度時点での全国平均額:管理費約11,500円/月、修繕積立金約13,000円/月
- 首都圏は平均より高め(合計で2万5,000円前後/月)
- 小規模・高経年ほど1戸あたりの負担が増大
実質返済比率の計算式と安全圏ライン
計算式と入力サンプル
- 実質返済比率=(ローン元利+管理費+修繕積立金) ÷ 手取り年収
- 手取り年収は「年収の約75〜80%」が目安
- 管理費と修繕積立金は将来値上げ幅を織り込むこと
年収 400/600/800 万円モデル試算表
- 年間ローン返済額は「金利1.3%、返済期間35年、頭金少なめ」を想定
- 管理費+修繕積立金は月2.5万円で固定(将来値上げは別途考慮)
- 手取り年収は年収の約80%で計算
項目 | 年収400万円 | 年収600万円 | 年収800万円 |
---|---|---|---|
手取り年収 | 320万円 | 480万円 | 640万円 |
年間ローン返済額 | 84万円 (月7万円想定) | 120万円 (月10万円想定) | 156万円 (月13万円想定) |
年間管理費+ 修繕積立金 | 30万円 (2.5万円×12) | 30万円 | 30万円 |
合計年間支出 | 114万円 | 150万円 | 186万円 |
実質返済比率 | (114÷320)×100=35.6% | (150÷480)×100=31.3% | (186÷640)×100=29.0% |
金融機関が見る「返済負担率」×「維持費負担率」
- 一般的に、金融機関の審査はローン返済負担率だけを見る
- 実際の負担は「管理費+修繕積立金」も加算される
- 総合的に見れば30〜35%を超えると危険ゾーン
管理費・修繕積立金が上がる3つのトリガー
- トリガー1:大規模修繕時の見積もりオーバー
- トリガー2:資材・人件費などの物価上昇
- トリガー3:管理組合の財政不足・滞納問題
コスト高騰を抑える管理組合チェックリスト
- 1. 長期修繕計画の内容を年1回は点検
- 2. 理事会・総会の議事録を読み、積立不足に注意
- 3. 管理会社の見積もりを相見積もりで比較
- 4. 管理費の内訳(人件費・清掃・警備など)を精査
- 5. 段階増額方式でいつ増額されるかを把握
ケーススタディ3選 – 買っていい物件・ダメな物件
ケース1:築10年、高額管理費でも積立計画が充実した物件
- 管理費:月2.0万円、修繕積立金:月1.5万円
- 長期修繕計画が明確で、管理組合の積立残高に余裕
- 将来値上げ幅も5年ごとに1割程度と少ない
ケース2:築15年、管理費・修繕積立金ともに低く見える物件
- 管理費:月8,000円、修繕積立金:月6,000円
- しかし築15年経過しており、そろそろ大規模修繕が近い
- 積立金不足により、将来倍増するリスクが大
ケース3:築30年、管理組合の滞納率が高い物件
- 管理費の滞納住戸が全体の10%超
- 修繕積立金の値上げを決議できず、大規模修繕が遅延
- 外観やエントランスの劣化が進み、資産価値が下落傾向
まとめ – “実質返済比率”で家計を守る
マンション購入時は、ローン返済だけでなく管理費と修繕積立金を合算した「実質返済比率」を必ずチェックすることが鉄則です。 手取り年収の3割以内に収まるかどうかで、家計の安全圏が大きく変わります。 さらに、管理費・修繕積立金の値上げリスクを読み解くには、長期修繕計画・管理組合の財政状況・段階増額方式の有無などをしっかり見極める必要があります。 大規模修繕が近づくにつれ、思わぬ高額負担が発生するケースは少なくありません。 今後も建築資材や人件費の高騰は続くと予想され、維持費の上昇は避けられない可能性が高いです。 「このマンションなら将来の値上げ幅はどれくらいか」を想定したうえで、住宅ローンを含めた実質返済比率を試算し、無理なく支払える範囲での購入を心がけましょう。 これが、マンション購入後も家計を守るための最善策と言えます。FAQ
- Q:管理費と修繕積立金は今後どのくらい上がる? A:国交省の2024年調査では、築5年刻みで平均15%前後ずつ増額。段階増額方式なら最終的に3倍超になるケースもあるため、長期修繕計画を必ず確認してください。
- Q:適正な実質返済比率の目安は? A:手取り年収に対する比率25%以下が安全圏。ローン審査基準(30〜35%)は限界値なので、維持費の上昇分も織り込んでシミュレーションしましょう。
- Q:修繕積立金が足りない場合、どうなる? A:不足分は一時金徴収や管理組合の借入で賄うため、戸当たり50〜100万円を急に請求されるリスクがあります。残高と不足率を事前にチェックしましょう。
- Q:管理費が高い物件は避けるべき? A:単純な金額よりサービス内容とコストの内訳が重要。24時間有人管理や大規模共用施設を望むなら費用は割高になります。費用対効果を比較して判断してください。
- Q:管理組合の健全性をチェックする方法は? A:長期修繕計画の期間が25年以上か、修繕積立金残高が年間計画費用の1.5倍以上あるか、管理計画認定を取得しているかを確認すると安心です。
- Q:実質返済比率が高い場合の対策は? A:頭金を増やす、管理費・修繕積立金の安い物件に乗り換える、または繰上返済で元本を減らし比率を下げる――の三択が基本です。
参考サイト
- 返済負担率(返済比率)と諸費用について|auじぶん銀行 住宅ローンの返済比率や管理費・修繕積立金を含めた家計全体の考え方が分かりやすく解説されています。
- 修繕積立基金・修繕積立金の解説|SUUMO マンション購入時に必要な修繕積立金や管理費の基礎知識がまとめられています。
- 年収別の返済比率と管理費・修繕積立金|ポラスグループ 年収ごとの実質返済比率シミュレーションがあり、具体的なイメージがしやすいです。
- 修繕積立金の目安と計算式|マンション管理の教科書 国土交通省ガイドラインに基づく修繕積立金の目安や計算方法が解説されています。
初心者のための用語集
- 実質返済比率:ローン元利に管理費・修繕積立金を加え、手取り年収で割った家計負担割合。
- 返済負担率:金融機関審査で用いる、ローン元利だけを年収で割った割合。
- 管理費:共用部の清掃・設備保守など日常管理サービスに充てられる月額費用。
- 修繕積立金:将来の大規模修繕に備えて毎月積み立てる資金。築年数に応じて増額されやすい。
- 段階増額積立方式:修繕積立金を数年ごとに段階的に引き上げる方式。最終的に初期額の数倍になることも。
- 均等積立方式:期間中ずっと同額を積み立てる方式。家計の見通しが立てやすい。
- 長期修繕計画:25〜30年先までの修繕工程と費用を示す管理組合の計画書。
- 管理計画認定制度:自治体が管理組合の計画・財務を評価し、適正管理マンションとして認定する制度(2022年開始)。
- 一時金徴収:修繕費不足を補うために臨時で各戸から集金する方法。数十万〜百万円規模になることも。
- 管理委託費:管理会社へ支払う業務委託料。見直して削減し、修繕積立金に回すことが可能。
編集後記
先日、あるお客様からマンション購入についてのご相談をいただきました。年収500万円で3,500万円のマンションを検討していたそうです。当初は「住宅ローンの審査も通ったので大丈夫」と安心されていました。 しかし、実質返済比率の計算をしてみると、ローン返済だけで年収の32%、そこに管理費と修繕積立金を合わせると実に38%に達することが判明。しかも検討中の物件は築15年で、長期修繕計画によると2年後に大規模修繕が控えていました。 お客様は「将来的な修繕積立金の値上げリスク」を全く考慮していなかったとのこと。そこで一緒に管理組合の財政状況も確認したところ、修繕積立金が明らかに不足気味で、近い将来倍増する可能性も高いと分かりました。 結局このお客様は、同じエリアでより小規模な物件に切り替え、頭金も増やすことで無理のない返済計画を立て直されました。手取り年収の30%以内という安全圏に収まる買い物ができて大変喜ばれていました。 マンション購入では「今の返済額」だけでなく、「将来の維持費増加」まで見据えた計画が欠かせません。とくに築年数が進んだ物件は修繕積立金の動向に注意が必要です。実質返済比率をしっかり押さえて、後悔のない住まい選びをしたいものですね。不動産選びをもっと深く知りたい方へ
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