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住宅費と教育費 ── 二大コストが家庭を圧迫する構造
住宅ローンを抱えながら、子どもの教育費も同時に準備していくのは、多くのご家庭にとって大きな課題です。実際に「家を買ったものの、子どもが中学・高校に進むあたりから学費が重なって、家計が回らなくなるかもしれない」という不安の声は珍しくありません。 ここでは、2025年時点の国のデータをもとに、住宅費と教育費がなぜ「二大コスト」と呼ばれるのかを紐解きます。家計全体を見渡すために平均推移を理解し、次に「家計破綻を招きやすいNGパターン」にも触れていきましょう。・住宅費・教育費の平均推移(2025 文科省・国交省データ)
- 2025年2月時点で二人以上世帯の住宅関連支出が17,270円(実質9.5%増)
- 小・中・高の公立校で年間約50万〜60万円、私立校では100万円超も
- 修繕費や塾・習い事などの学校外活動費も増加傾向
・家計破綻を招く3つのNGパターン
- 返済負担率の読み違い:住宅ローン金利上昇やボーナス減を想定せず組む
- 教育費を後回し:高校・大学入学直前になって慌てて借入れ
- 複数ローンの債務重複:マイカーローンやカードローンも合わさり返済不能
まず把握すべき“安全返済ライン”の公式
住宅ローンと学費を無理なく併用するためには、どれくらいの割合が「安全ライン」なのかを知ることが重要です。返済に回せる限度額を把握し、そこに教育費の月額積立や学資ローン返済を組み込むことで、長期的な視点から家計を守れます。 ここでは、「返済負担率25%」と「教育費比率15%」を例に、固定費を抑える優先順位も合わせて見ていきましょう。・返済負担率 25% vs 教育費比率 15% の黄金バランス
- 返済負担率25%:年収に対して住宅ローン返済が25%以下が望ましい
- 教育費比率15%:子どもの年齢が高まるほど学費・塾代が割合を占める
- 可処分所得から固定費を先に差し引き、残りを生活費+貯蓄へ
・固定費カット優先順位チェックリスト
- 住居関連費の見直し(借り換え、繰上返済、保険付帯の見直し)
- 通信費(格安SIM・ネット回線プランの切替)
- 光熱費(電気・ガスの一括比較で最適プランを探す)
- 保険の内容(掛け捨て型に切り替えて保険料を抑える)
学資ローン・学資保険・ジュニアNISA 徹底比較
教育資金を確保する方法として、多くの方が迷うのが「学資ローンを借りるか、学資保険で積立てるか、それとも投資(ジュニアNISA等)で増やすか」という選択肢です。それぞれにメリット・デメリットがあり、金利や運用リスク、保障の有無が大きく異なります。 以下の早見表を参照しながら、ご自身のリスク許容度と返済計画に合った方法を見つけましょう。・金利・返済期限・保証内容の早見表
項目 | 学資ローン | 学資保険 | ジュニアNISA |
---|---|---|---|
金利 / 利回り | 1.5〜4%前後(変動・固定あり) | 返戻率 102〜118% | 運用次第(3〜5%想定も) |
返済期限 / 受取時期 | 〜15年程度(卒業後数年内など) | 満期は18歳 or 22歳など選択 | 18歳まで引き出し原則不可(2023年末で新規終了) |
保障内容 | 原則なし(借入のみ) | 契約者死亡で保険料免除 | 元本保証なし(投資リスク) |
特徴 | 必要時に一括借入、審査必要 | 元本確保型、保険機能あり | 非課税運用、リターン大きい |
・教育費を“積立”で作るか“借入”で備えるか判断基準
- ローン返済負担が大きい場合:無理に積立せず公的教育ローンも検討
- 安定収入・余剰資金あり:学資保険や投資で早めから積立
- 子どもが複数いる場合はローン重複に注意
年収別シミュレーション ── 住宅+教育資金を数値で検証
実際に、どの程度の年収でどれくらい借り入れすると教育費と両立できるのかは、かなり個別性が高い問題です。それでも大まかなシミュレーション例を見ておくことで、今の家計における返済負担や教育費積立の妥当性をチェックできます。 ここでは年収600万円、800万円の代表ケースを示し、さらに総借入金額と教育費累計の対比を解説します。・年収600万円・子2人・変動0.6%・学資積立1.5万円/月
- 住宅ローン残高3,000万円
- 毎月返済額(ボーナス払いなし)約8.5万円
- 子ども2人の学資積立:合計3万円/月(1人1.5万円×2)
・年収800万円・固定1.1%・私立高校想定ケース
- 住宅ローン残高4,000万円(固定1.1%)
- 毎月返済額約11.5万円
- 中学までは公立、高校から私立に進学
・借入総額 vs 教育費累計グラフ解説
- 公立メイン+国立大進学の累計教育費:約800万〜900万円
- 幼少期〜中学まで私立+私立大進学:1,400万〜2,000万円超
- 住宅ローン3,000万〜4,000万円+私立コース重複時は合計5,000万円以上
実例3選 ── 両立に成功した&失敗した家計
ここからは、実際に「住宅ローン+教育資金」を両立させる上で成功した事例と、失敗しかけた事例を3つ紹介します。いずれもご家庭の年収や家族構成、借入条件が異なるため、「自分の場合はどうなるか」をイメージする手掛かりにしてください。・35歳共働き・借換+積立投資で成功
- 世帯年収750万円(夫450万+妻300万)
- 住宅ローン残高2,800万円を1.3%→0.6%へ借り換え
- 浮いた月約2.5万円をジュニアNISAに積立
・シングル年収450万・学資ローン比率オーバーで破綻寸前
- 年収450万円のシングルマザー
- 住宅ローン返済額:月7万円
- 学資ローン・車のローンなど返済比率が40%超
・親からの教育資金贈与を活用し余裕確保
- 夫婦共働き(世帯年収800万円)+夫の両親からの贈与
- 住宅ローンは3,500万円、金利1.0%台
- 毎月の教育費を贈与分で補填、学資保険の掛け金負担減
家計シートの使い方 ── “見える化”で判断を早くする
「数年後にかかる教育費をどう捻出するか」「住宅ローンを完済するまでの家計収支は大丈夫か」── これらは頭の中だけで考えるとなかなか整理しきれません。ここで役立つのが、「家計シート」での見える化です。 ExcelやGoogleシートで家計を一元管理すると、月々のキャッシュフローはもちろん、年間累計や将来シミュレーションまで一括で確認しやすくなります。・入力欄・自動計算項目・可視化グラフを解説
- 収入欄:給与・副業・児童手当など
- 支出欄:住宅ローン、学費、生活費、娯楽費等を大分類で管理
- 自動計算項目:月次・年次合計、差額、累計貯蓄額など
- グラフ表示:支出カテゴリ別割合、推移グラフ
・キャッシュフロー赤字アラートの見方
- 毎月・毎年ベースで赤字が続く時期がいつかを把握
- 子どもが2人同時に大学進学する年に大きなマイナス
- 住宅ローン金利上昇リスクを織り込んだ試算
まとめ ── “固定費最適化+教育費先取り”で盤石の家計へ
要点3行まとめ
1. 住宅ローンと教育費を安全に両立するには返済負担率25%・教育費比率15%が一応の目安。 2. 固定費(住居費・通信費・保険)を優先的に見直し、浮いた分を学資保険や投資で先取り積立。 3. 家計シートで将来の赤字リスクを“見える化”し、借り換えや支援制度の活用を早期に検討する。次のステップチェックリスト
- 住宅ローン借り換えシミュレーションを行う
- 家計シート(Excel/Googleシート)をダウンロードし初期入力
- 奨学金・学資ローン・学資保険・NISA等を再検討
- 固定費(通信費・光熱費・保険料)を一括比較で割高プランがないか精査
- キャッシュフロー表で5〜10年先の収支を試算し、赤字期間があれば対策を
FAQ:よくある質問
- Q:住宅ローンと学資ローンを同時に組むのは可能ですか?A:金融機関によって審査基準が異なりますが、多くの場合は同時利用が可能です。ただし、それぞれの返済額を合算した返済負担率が大きくなると審査に通りにくくなるため、年収や他の借入状況を十分に考慮し、慎重に借入額を設定することが大切です。
- Q:返済負担率はどう計算すればよいのでしょうか?A:一般的には「年間ローン返済額(住宅ローン+学資ローンなど)÷年収×100」で求められます。安全に返済を続けるには25%以内が理想という意見も多く、30〜35%を超えると生活費や急な出費に対応しづらくなるため注意が必要です。
- Q:学資保険と学資ローンはどのように使い分ければいいですか?A:学資保険は早めに始めると返戻率が高くなり、親に万一があった場合でも保障が続くメリットがあります。一方、学資ローンは必要な時期にまとめて資金を用意しやすい反面、利息負担が生じます。家計のキャッシュフローやリスク許容度に合わせて組み合わせを検討するのがおすすめです。
- Q:ジュニアNISAが終了しましたが、今から投資で教育資金を作る方法はありますか?A:ジュニアNISAの新規投資は2023年末で終了しましたが、代わりに新NISAやつみたてNISAを活用して長期積立をする選択肢が挙げられます。投資信託などを選べば複利効果が期待できるため、比較的長い時間をかけて教育資金を増やしたい方には有効です。
- Q:家計シートはどのように活用するのがおすすめですか?A:毎月の収支だけでなく、年間累計や将来のキャッシュフローまで一括管理すると効果的です。ExcelやGoogleシートで月次の入力を続けながら、グラフ表示で支出の増減を視覚化すると、どこを削減すべきか一目でわかりやすくなります。また、子どもの進学時期にかかる学費ピークなど、長期的な出費予定も記入しておくと早めの対策が可能です。
参考サイト
- 住宅ローンと教育ローン、併用は可能?注意点は?(SBI新生銀行) 住宅ローンと教育ローンを同時に利用する際の注意点をわかりやすく解説しています。
- 教育ローンご利用イメージ_ケース1(日本政策金融公庫) 実際の家計シミュレーション例が掲載されており、数字でイメージしやすいです。
- 乳幼児期の返済がキモ! 将来の教育費と住宅ローン・両立ワザとは(ベネッセ) ファイナンシャルプランナーによる実践的な両立のコツが紹介されています。
- 「住宅ローン・教育費・老後資金」家計の3大プロジェクト(SUUMO) 住宅ローン・教育費・老後資金のバランスの取り方を詳しく解説しています。
- 教育費と住宅ローンはどっちを優先すべき?ケース別に現役FPが解説(マネーキャリア) 専門家が家計の見直しポイントや優先順位を丁寧に説明しています。
初心者のための用語集
- 返済負担率:ローンなど年間返済額が年収に占める割合。家計では25%以下が安全圏とされる。
- 教育費比率:教育関連支出が手取り収入に占める割合。目安は15%以下。
- ジュニアNISA:未成年名義で投資利益が非課税になる制度(2023年末で新規投資受付終了)。
- 学資保険:教育資金を元本保証で準備できる保険商品。返戻率は102〜118%程度。
- 変動金利:市場金利に連動して返済額が変わるローン金利タイプ。低金利だが上昇リスクあり。
- 固定金利:完済まで金利が変わらないタイプ。返済額が一定で計画を立てやすい。
- 借り換え:既存ローンをより低金利のローンへ組み替え、総返済額や月々負担を削減する手法。
- 先取り貯蓄:給料が入ったらまず貯蓄を確保し、残りで生活する資金管理術。
- キャッシュフロー表:将来の収入・支出を年単位で予測し、資金不足の時期を把握するシート。
- フラット35:民間金融機関と住宅金融支援機構が提供する全期間固定金利の住宅ローン。
編集後記
先日、あるお客様から「住宅ローンを組んだ後、子どもの教育費の準備ができず焦っている」というご相談をいただきました。 お子さんが中学生になり、この先の高校・大学への進学費用が大きな負担になることを実感されたそうです。ご家族の話を伺いながら、返済負担率と教育費比率のバランスを一緒に見直したところ、ご家庭の固定費があまりにも高すぎることが判明しました。 私たちは早速、住宅ローンの借り換えシミュレーションと固定費の見直しを提案。通信費や保険料の最適化だけで月に2万円以上の余裕が生まれることに、お客様も驚かれていました。 さらに家計シートを使って将来の収支をグラフ化したところ、「これなら子どもの進学も無理なく対応できそう」と安心されていました。 「数字が見える形になると、家族で話し合いがスムーズになった」というお声もいただき、家計の可視化の大切さを改めて実感。 住宅ローンと教育費という二大負担は、早めの対策と継続的な見直しがあれば、決して乗り越えられない壁ではありません。皆様もぜひ今回ご紹介したシミュレーションをご活用いただき、ゆとりある家計づくりを目指してください。不動産選びをもっと深く知りたい方へ
住宅ローンを調べているあなたは、マイホーム購入に関する情報もお役に立てると思います。 あなたにオススメ情報を書いた、記事をご紹介します。- 【保存版】失敗しないマイホーム購入完全ガイド・初心者でも安心!―住宅ローンの選び方から不動産契約の流れまで徹底解説
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