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団信オプションをどう選ぶ?がん・三大疾病・全疾病付の落とし穴と必要度を徹底解説

団信オプションをどう選ぶ?がん・三大疾病・全疾病付の落とし穴と必要度を徹底解説

Contents

そもそも団信とは?── 住宅ローン利用者が“自動加入”する保険

標準団信の仕組みと保険料の支払い方法(上乗せ金利)

住宅ローンを利用する際、多くの金融機関が「団体信用生命保険(団信)」への加入を条件としています。これは、ローン契約者(被保険者)が死亡または高度障害状態になったとき、保険金によって住宅ローン残高がゼロになる仕組みです。加入者本人はもちろん、家族にも大きなメリットがあるため「自動加入」的な位置づけで扱われるケースが一般的です。 団信の保険料は、表向きは「金融機関が負担する」形が多いですが、実際には住宅ローンの金利に上乗せされる形で利用者側が支払っていると考えられます。たとえば標準団信の場合、メガバンクやネット銀行では「上乗せ金利なし」「特約なしプラン」を提供するところが多いのが特徴です。

団信と生命保険の違い── 死亡・高度障害のみカバーが基本

団信は、あくまで住宅ローンの返済を保険金でまかなうためのものです。一方、一般的な生命保険(死亡保険)は、保険金の使途が自由であり、万一の場合に家族の生活費や教育費など、広範な目的に充当できます。 標準団信の保障範囲は「死亡」または「高度障害」のみであり、がんや脳卒中・心筋梗塞などの病気によって就業不能になったとしても、死亡や高度障害状態に至らない限りは保険金は支払われません。こうした「就業不能リスク」や「治療費リスク」を手厚くカバーするために、オプション特約としてがん保障付団信、三大疾病付団信、全疾病付団信などが各金融機関から提供されています。

銀行別オプション特約ラインナップ早見表

金融機関 標準団信 がん保障付 三大疾病付 全疾病付 上乗せ金利
みずほ銀行 ○(「がん団信」) △(要商品選択) × +0.1%~0.3%前後
auじぶん銀行 ○(4疾病付等) ○(4疾病・三大疾病) ○(全疾病長期入院) プランによりなし~+0.2%超
住信SBIネット銀行 ○(全疾病) +0.2%~+0.4%
ソニー銀行 ○(がん50・がん100) ○(三大疾病) × +0.1%~+0.2%程度
フラット35 △(加入任意) 特約商品あり ○(新3大疾病付) × +0.24%(三大疾病付)
(2025年4月最新版各社資料より)

がん保障付団信 vs 三大疾病付団信── 保障範囲と上乗せ金利を徹底比較

上乗せ金利 +0.1 % vs +0.3 % ― 実際の利息増は総額いくら?

がん保障付団信や三大疾病付団信を付けると、多くの金融機関で住宅ローン金利に0.1%~0.3%程度の上乗せが発生します。この差は一見わずかに見えますが、借入金額や返済期間が大きい場合、総返済額では数十万~数百万円の差になることも珍しくありません。 たとえば、借入3,500万円・35年返済・基準金利0.5%の変動ローンで、+0.1%+0.3%の総返済差をシミュレーションすると以下のようになります。
ケース 金利 月々の返済額 総返済額 基準金利との差
標準団信 0.5%(変動) 約8.6万円 約3,600万円
がん保障付(+0.1%) 0.6% 約8.8万円 約3,690万円 +90万円
三大疾病付(+0.3%) 0.8% 約9.1万円 約3,800万円 +200万円
(2025年4月時点の概算シミュレーション) このようにわずか0.2%の差でも、トータルでは100万円以上の追加負担となるケースもあります。金利上昇局面であれば、さらに差は開くため注意が必要です。

診断給付金・就業不能要件の“引受基準”をチェック

がん保障付団信や三大疾病付団信には、単に「ローン残高がゼロになる」だけでなく、一時金の給付就業不能状態で返済免除といった特則がついている商品もあります。しかし、こうした特約には「診断確定時」か「就業不能60日経過」かなど、引受基準や支払い条件に細かな違いがあります。 がん診断一時金が受け取れる商品でも、「非浸潤がん(上皮内がん)は対象外」などの除外条項が設定されることが多く、また急性心筋梗塞や脳卒中でも「60日以上の就業不能」が保障発動の要件となる商品が一般的です。短期で復職できた場合は支払われない可能性があり、ここを見落とすと「つけていたのに保障が受けられない」事態にもなりかねません。

がん 5 年生存率・三大疾病発症率データで必要度を定量評価

近年の国立がん研究センターや厚生労働省の統計(2024~2025年公表)によれば、日本人の生涯がん罹患率は男性約62%・女性約49%とされ、ほぼ2人に1人ががんになる計算です。ただし、医療技術の進歩により5年相対生存率は64%を超えるとも報告されています。 一方、三大疾病(がん・心筋梗塞・脳卒中)は日本人の死因の約5割を占めるというデータ(2023~2025年調査)もあります。ただし心筋梗塞や脳卒中の場合は、後遺症リスクや長期入院リスクががんとは異なり、短期で職場復帰できるケースもあれば重篤な障害が残るケースもあります。自分自身の家族歴や生活習慣などを照らし合わせて必要度を判断することが大切です。

落とし穴1 ─ がん診断でも「軽微がん」は保障対象外?

上皮内がん・皮膚がんなど非浸潤がんの除外条項

がん保障付団信の注意点として多く挙げられるのが、「上皮内がん」や「皮膚の悪性黒色腫以外の皮膚がん」は保障対象外とする除外規定です。これは、保険会社の引受リスクを抑える目的で、死亡リスクや進行リスクが低い軽微がんを支払い対象から除外しているためです。 上皮内がんは粘膜内にとどまる非浸潤がんであり、一般に進行度も低いとされています。とはいえ、本人にとっては「がん」と診断されたショックに違いはありません。「非浸潤でも給付対象にする」と明記した団信も一部存在するため、契約時に約款の細部をしっかりと確認しておくことが大切です。

診断給付金一時金受取後も「残高ゼロにならない」商品に注意

がん保障付団信によっては、がん診断時にローン残高がゼロになるのではなく、「一時金」を先に受け取るだけという仕組みの商品があります。これは例えば「がんと診断されたら100万円を給付、その後も返済は続行」などのパターンで、結果的にローンが完済されず、むしろ給付金を治療費に使ってしまった結果、ローン返済が残ってしまうという可能性があります。 「診断確定したら残高がゼロ」をメイン保障とするプランなのか、もしくは一時金のみのプランなのか――この点は混同しやすいので、事前に商品パンフレットの保障内容をよく読みましょう。

落とし穴2 ─ 三大疾病付団信の「就業不能 60 日要件」で支払われないケース

急性心筋梗塞から 30 日で復職→給付対象外になった事例

三大疾病付団信では、急性心筋梗塞脳卒中において「60日以上の就業不能状態」が保険金支払の発動条件として定められることが多々あります。たとえば、急性心筋梗塞で発症後30日程度で復職できた場合、60日の要件を満たさず保障対象外になってしまうのです。 実際に「軽度の心筋梗塞で入院は2週間ほど、術後も安定し30日程度で職場復帰したため、給付なし」となった事例があります。三大疾病付団信に加入していても、こうした要件の盲点によって支払いゼロになるケースは珍しくありません。

脳卒中後遺症の等級認定基準と審査プロセス

脳卒中(脳梗塞・脳出血・くも膜下出血など)でも、保険金支払いのためには後遺症認定長期就業不能の判断が必要となる場合が多いです。たとえば「発症後の後遺症で介助なしには日常生活が困難」といった高度障害認定になれば、ローン残高がゼロになるケースもあります。 ただし、等級認定は非常に細かい審査プロセスを経て判断されます。軽度麻痺や感覚障害程度では等級が低くなり、団信の支払対象とならない可能性もあるため、「三大疾病団信を付ければ何でも保障されるわけではない」という点には留意が必要です。

落とし穴3 ─ 上乗せ金利で総返済額○○万円増!家計シミュレーション

年収 500 万円・借入 3,500 万円・35 年 変動 0.5 % ケース

世帯年収 500 万円の共働き家庭が3,500 万円35年返済、基準金利0.5%変動で借りる想定をします。ここに三大疾病付(+0.3%)の団信を付けると、金利は0.8%になります。返済期間全体で見た場合、総返済額は約3,800万円にのぼり、標準団信(0.5%)の約3,600万円に比べ200万円前後余分に支払うことになります。 年収500万円の家庭にとって200万円の追加負担は小さくありません。しかも家計では教育費老後資金など、ほかにも大きな支出を抱える可能性があるため、単に「病気リスクが怖いから」と付けると家計を圧迫するリスクがあります。

+0.3 % の保険料総額 vs 既存医療保険を充実させる場合

もしオプション特約を付けず、代わりに既存の医療保険やがん保険を強化した場合、毎月の保険料はもちろんかかりますが、ローン金利を大幅に引き上げるほどの負担にはならないケースもあります。がん保険の先進医療特約就業不能保険で対応する方が、結果的に少ないコストで十分な保障が得られる場合も。 「住宅ローン自体の金利を上げる」か、「既存保険や他の民間保険で対策する」か──家計全体でトータルコストを比較検討するのが賢明です。

オプション特約の「要/不要」判断フローチャート

既存保険の保障額確認

まずは、自分の生命保険医療保険就業不能保険などの保障内容をすべて洗い出しましょう。すでに入っている保険で万一の死亡時・高度障害時・重病時の保障が十分なら、団信オプションは必ずしも不要かもしれません。逆に、手薄な部分があれば補完の意味でオプション特約が有効になります。

家系・持病・禁煙歴など発症リスク評価

がんや心臓疾患、脳卒中などは生活習慣だけでなく家族歴の影響も大きいとされています。親・兄弟に同じ病気が多いなら、発症リスクは高まる可能性があり、リスクヘッジとしてがん特約や三大疾病特約の必要性が高いと考えられます。逆に健康診断で特に指摘がなく、禁煙習慣が長い人はリスクが相対的に低いかもしれません。

勤務先の休業補償・団体保険を加味する

会社員や公務員であれば、傷病手当金長期休業制度など公的・私的な保障がある場合もあり、それらとオプション特約が重複する可能性があります。また、大企業などでは団体保険として三大疾病保障や医療費補助を設けている場合もあるため、オプション特約との二重加入にならないよう注意が必要です。

教育費・老後資金プランとのバランス

教育費や老後資金も考慮し、家計のシミュレーションをするのが重要です。月々のローン返済+オプション特約の金利上乗せにより、教育費や老後資金が不足するリスクもあります。「もしもの病気」への備えと「確実に必要な資金」の両方をバランスよく検討することが不可欠です。

よくある Q&A── 持病がある場合のワイド団信・団信フラット 35 S など

Q1:持病があって一般団信に入れない場合は? A:健康状態や持病によって一般団信に加入できない場合、ワイド団信(引受条件緩和型)を検討する手があります。ワイド団信は引受基準がやや緩和されている分、金利が+0.2~0.3%ほど上乗せされることが多い点に注意しましょう。 Q2:フラット35は団信加入が任意と聞いたが? A:フラット35は団信に必ずしも入る必要はありません。ただし、団信非加入の場合、万一のリスクを自身や遺族で負担することになるため、別途生命保険などの検討は必要です。また、フラット35 Sなどでは、新3大疾病付機構団信(+0.24%)を選択できる商品もあります。 Q3:がん保障付団信と、別途がん保険の併用はアリ? A:両者は補償範囲や使い道が異なります。団信のがん保障は住宅ローン残高の返済にフォーカス、一方がん保険は治療費や生活費を賄う目的がメインです。多くの場合重複加入しても保険金は両方から受給可能ですが、保険料負担が大きくなるため、必要性とのバランスを考えましょう。 Q4:金利上乗せを回避するには? A:オプション特約を付けない、または付けても最小限にする、あるいは別の民間保険で対応する方法があります。特にネット銀行では、無料で「全疾病保障」や「がん50%保障」などを付帯しているところもあるため、金融機関の比較が有効です。

まとめ ── 「保険を足す」のではなく「ライフプラン全体で適正設計を」

住宅ローン団信のオプション特約は「もしもの時にローン残高がゼロになる」という強力な安心材料ではありますが、必ずしも全員に必要とは限りません。上乗せ金利による総返済額増を冷静に見つつ、既存の生命保険や医療保険、公的保障、そして家計の将来設計とのバランスを総合的に考えることが大切です。 「病気のリスク=オプション団信一択」ではなく、家族の健康状態や勤務先福利厚生、今後の教育資金・老後資金を含めたライフプラン全体を見直し、最適な保険設計を組み立てていきましょう。

参考サイト

初心者のための用語集

  • 団信:住宅ローン借入者が死亡または高度障害になった際、残債を保険で弁済する仕組み。
  • 上乗せ金利:標準金利に追加で加算される保険料相当の金利。
  • 標準団信:死亡・高度障害のみをカバーする基本プラン。
  • ワイド団信:持病や既往症がある場合にも加入しやすい、引受条件緩和型プラン。
  • がん保障付団信:がん診断確定時に住宅ローン残高をゼロにする特約付きプラン。
  • 三大疾病付団信:がん・急性心筋梗塞・脳卒中をカバーし、所定の要件で残債を弁済するプラン。
  • 診断給付金:がんなどの診断確定時に一時金として支払われる給付金。
  • 就業不能要件:給付金支払いのために「一定期間働けない状態」であることを示す条件。
  • 責任開始日:保険責任が発生する日で、通常はローン実行日の91日後。
  • 免責期間:給付金支払い開始までの待機期間(例:就業不能60日要件など)。

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【編集後記】

今回の住宅ローン団信特集を執筆しながら、いろいろ気づきがありました。「万が一のための保険」程度の認識だったのです。しかし本記事の取材過程で、がん保障や3大疾病保障の重要性、そして各金融機関によって異なる保障内容の違いを改めて学び直しました。特に印象的だったのは、お客様から「団信のおかげで治療に専念できた」という体験談です。数字やデータだけでは伝わらない、生活に密着した安心感こそが団信の本質なのかもしれません。皆さんの住宅ローン選びの一助となれば幸いです。

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松田 悠寿
㈱ビーシーアップ代表。宅建士・FP2級。人材採用・営業・Webマーケ・資産形成を支援し、採用コンサルやマネープラン相談も対応。株12年・FX7年のスイングトレーダー兼占い師歴15年。四柱推命・風水などで運気と経営を高める情報をブログで発信し、ビジネス・投資・開運術を多角的に発信し、豊かな人生を後押しします。