外国人採用

飲食店が気をつけたい外国人採用の法的リスクとコンプライアンス【2025年版】

この記事の要点と結論

結論:飲食店の外国人採用は「在留資格確認」「雇用契約」「支援体制」の3点を守ればリスクを防げます。

飲食業界で外国人材の採用は不可欠ですが、法的リスクへの備えがなければ事業存続の危機に繋がります。しかし、遵守すべきポイントは明確であり、正しい知識と手順を踏めば、安心して外国人材に活躍してもらえます。本記事では、その具体的な方法を分かりやすく解説します。

まず、採用活動の根幹となるのが、在留カードによる就労資格の厳格な確認です。次に、日本人従業員と同様に、労働条件を明記した雇用契約を締結し、労働関連法規を遵守することが求められます。さらに、在留資格によっては生活支援などの特別な義務も発生するため、制度の理解が不可欠です。

これらのコンプライアンスを怠ると、不法就労助長罪などの重い罰則が科されるだけでなく、企業の社会的信用も失墜します。本記事を通じて、2025年最新の法令に対応した、盤石な外国人雇用体制を構築するための知識を習得してください。

  • 在留カードの就労制限の有無有効期限を必ず原本で確認する。
  • 労働時間や賃金など、契約内容は書面で明示し双方で合意する。
  • 資格外活動や支援義務違反は、懲役・罰金だけでなく営業停止のリスクもある。

飲食店で発生しやすい法的リスクとは

不法就労助長罪が最も深刻なリスクです

リスク内容 発生原因 罰則・影響
不法就労助長罪 在留カードの確認不足、在留資格で認められない業務(単純労働など)、留学生の週28時間超過労働 5年以下の拘禁刑または500万円以下の罰金、行政処分、特定技能外国人の受入停止、社会的信用の失墜
労働基準法違反 最低賃金以下の給与、残業代未払い、不適切な労働時間管理、差別的待遇 6か月以下の懲役または30万円以下の罰金、未払い賃金の支払い命令、従業員とのトラブル
特定技能の支援義務違反 支援計画の未実施、定期面談の不履行、生活サポートの欠如、虚偽の届出 改善命令、登録支援機関の登録取消、特定技能外国人の5年間受入不可、行政指導

(条件・出典:出入国管理及び難民認定法 第73条の2、労働基準法 第119条、2025年6月時点、当サイト編集部作成)

飲食店で外国人採用における法的リスクは、大きく分けて3つに分類されます。最も重い罰則が科されるのは、不法就労助長罪です。これは、就労資格のない外国人を雇用したり、許可された活動範囲や時間を超えて働かせたりした場合に適用されます。

ラーメンチェーン「一蘭」や「串かつだるま」で留学生を法定の週28時間を超えて働かせた事件は、飲食業界に大きな衝撃を与えました。これらの事件では、経営陣が書類送検されたり、法人に罰金刑が科されたりしています。人手不足を理由とした安易な長時間労働は、決して許されません。

また、日本人従業員と同様に、労働基準法最低賃金法の遵守も当然の義務です。さらに、特定技能の在留資格を持つ外国人を雇用する場合は、生活支援などの特別な支援義務が課せられます。これらの義務を怠ると、将来的に特定技能外国人を受け入れられなくなるなど、事業運営に深刻な影響を及ぼします。

違法就労を防ぐための「在留カード確認」手順

原本確認とICチップ読み取りが必須です

確認項目 見る箇所(在留カード) 注意点
在留資格 表面・中央 「特定技能」「留学」など。飲食店の業務内容と一致するか確認します。
就労制限の有無 表面・中央 「就労不可」は原則雇用できません。「在留資格に基づく就労活動のみ可」などを確認します。
在留期間(満了日) 表面・下部 有効期限切れは不法滞在です。期限管理を徹底し、更新手続きを促します。
資格外活動許可欄 裏面・下部 留学生アルバイトの場合、「許可:原則週28時間以内」の記載があるか必ず確認します。

(条件・出典:出入国在留管理庁「在留カード等読取アプリケーション」、2025年6月時点、当サイト編集部作成 https://www.moj.go.jp/isa/applications/procedures/rcc-support.html)

不法就労を防ぐための第一歩は、採用面接時に在留カードの原本を必ず提示してもらうことです。写真やコピーでの確認は、偽造を見抜けないため絶対に行ってはいけません。カードのホログラムや透かし文字などを目視で確認することが基本となります。

特に重要なのは、「就労制限の有無」欄の確認です。「就労不可」と記載されている場合、原則として雇用はできません。また、留学生をアルバイトで雇う場合は、カード裏面の「資格外活動許可欄」に「許可」の印字があること、そして週28時間以内の就労制限を守ることを本人と確認し合う必要があります。

近年、精巧な偽造在留カードが出回っており、目視だけでは限界があります。そこで、出入国在留管理庁が提供する無料の「在留カード等読取アプリケーション」をスマートフォンに導入し、ICチップ情報を読み取る対策が不可欠です。このアプリを使えば、カードの真偽を高い精度で確認できます。

さらに、同庁のウェブサイトにある「在留カード等番号失効情報照会」も併用すると万全です。これにより、紛失・盗難などで失効したカードでないかを確認できます。これら「原本の目視確認」「ICチップ読み取り」「失効情報照会」の3ステップを徹底することが、企業をリスクから守る生命線となります。

特定技能・技能実習・留学生アルバイトの違い

制度の目的を理解し、適切に雇用しましょう

在留資格 飲食業での就労範囲 雇用形態 注意点
特定技能1号(外食) 調理、接客、店舗管理など、外食業の業務全般に従事可能。 フルタイム(正社員など)。日本人と同等以上の報酬が必要。 受入企業に支援計画の作成・実施義務あり。登録支援機関への委託が可能。
技能実習 「惣菜製造業」など、認定された技能実習計画の範囲内に限定される。 フルタイム(実習生として)。監理団体を通じて受け入れる。 本来は技能移転が目的。労働力確保のための雇用は不可。2027年以降「育成就労」へ移行
留学(資格外活動) 調理補助、ホール業務、清掃など、一般的なアルバイト業務が可能。 パート・アルバイトのみ。週28時間以内(長期休暇中は週40時間以内)の厳守が必須。 学業が本分であり、労働者ではない。風俗営業関連の店舗では清掃業務も不可。

(条件・出典:出入国在留管理庁「特定技能ガイドブック」、厚生労働省「技能実習制度 移行見込分野」、2025年6月時点、当サイト編集部作成)

飲食店で働く外国人の在留資格は主に3種類あり、それぞれ目的やルールが全く異なります。特定技能は、日本の人手不足解消を目的とした就労資格です。「外食」分野では、調理や接客、店舗管理まで幅広い業務をフルタイムで任せることが可能です。

一方、技能実習は、日本の技術を母国に持ち帰ってもらう国際貢献が目的の制度です。そのため、定められた計画以外の業務はできず、労働力不足を補うための安易な採用は認められていません。なお、この制度は段階的に廃止され、2027年からは人材育成と確保を目的とする「育成就労制度」へ移行します。

飲食店で最も身近な存在である留学生のアルバイトは、「資格外活動許可」を得て行われるものです。あくまで学業が本分であり、収入を得る活動には週28時間以内という厳格な時間制限が設けられています。この時間を1分でも超えれば不法就労となり、雇用主も厳しく罰せられます。

採用前に必要な法的確認と書類一覧

雇用契約書は二言語併記でトラブルを防止

書類名 確認・作成内容 提出先・保管 保管期間の目安
在留カード(写し) 原本確認後、本人同意の上でコピーを取得。就労可否、在留期間を確認。 社内保管 退職日から5年間(当面は3年)
雇用契約書・労働条件通知書 賃金、労働時間、業務内容を明記。母国語併記が望ましい。 本人へ交付・社内保管 退職日から5年間(当面は3年)
外国人雇用状況届出書 氏名、在留資格、在留カード番号などを記載。 管轄のハローワーク 届出義務のみ(保管義務なし)
パスポート(旅券) 身分確認、氏名表記の確認(任意)。 確認のみ(保管は原則不可) 保管不可

(条件・出典:労働基準法第109条、労働施策総合推進法第28条、2025年6月時点、当サイト編集部作成)

外国人を採用する際には、トラブルを未然に防ぎ、法令を遵守するために、いくつかの書類を確実に準備・確認する必要があります。最も重要なのは、前述の通り在留カードの確認です。確認後は、本人の同意を得て両面のコピーを取得し、労働者名簿の一部として保管します。

次に、日本人と同様に雇用契約書または労働条件通知書を作成し、書面で交付します。賃金や労働時間、休日などの労働条件を明確に記載することが義務付けられています。特に外国人従業員の場合、言語の壁による誤解が生じやすいため、母国語を併記した書面を用意することがトラブル防止に極めて有効です。

さらに、事業主には外国人雇用状況届出書をハローワークへ提出する義務があります。これは、雇用保険の加入手続きとは別に行う必要がある場合もあります。届出を怠ると30万円以下の罰金が科される可能性があるため、雇入れ・離職の都度、忘れずに手続きを行いましょう。

なお、身分確認のためにパスポートを預かる行為は、強制労働に繋がりかねないため原則として禁止されています。必要な情報を確認した後は、速やかに本人へ返却してください。

特定技能採用時の支援義務と責任

登録支援機関への「丸投げ」は危険です

支援項目(一部抜粋) 具体的な支援内容 実施頻度・タイミング 担当
事前ガイダンス 雇用契約の内容、日本での活動内容、入国手続きについて説明。 雇用契約締結後、来日前 受入企業 or 登録支援機関
生活オリエンテーション 日本のルール、交通機関、医療、防災、役所手続きなどを説明。 入国後、遅滞なく 受入企業 or 登録支援機関
定期的な面談 労働状況や生活上の悩みを聞き、問題があれば指導・助言。 3か月に1回以上 受入企業の監督者、支援担当者
相談・苦情への対応 仕事や生活の相談に対し、本人が理解できる言語で対応できる体制を整備。 随時 受入企業 or 登録支援機関

(条件・出典:出入国在留管理庁「1号特定技能外国人支援に関する運用要領」、2025年6月時点、当サイト編集部作成 https://www.moj.go.jp/isa/content/930004944.pdf)

特定技能1号の在留資格を持つ外国人を雇用する場合、受入企業には「支援計画」を作成し、それに基づき外国人の職業生活上、日常生活上、社会生活上の支援を行う法的な義務が課せられます。これは、外国人が日本で安心して働き、生活するための重要なセーフティネットです。

支援内容は、来日前の情報提供から、空港への送迎、住居の確保、銀行口座の開設、携帯電話の契約サポートまで多岐にわたります。入国後も、日本のルールやマナーを教える生活オリエンテーションの実施や、3か月に1回以上の定期的な面談が義務付けられています。

これらの支援業務は、専門的な知識を持つ登録支援機関に全て委託することも可能です。しかし、委託した場合でも、支援が適切に行われているかを監督する最終的な責任は受入企業にあります。実際に、洋菓子メーカーのシャトレーゼでは、支援を委託していたにもかかわらず休業手当の未払いが発生し、行政から改善命令を受ける事態となりました。

支援機関に任せきりにするのではなく、企業自身も定期的に外国人従業員とコミュニケーションを取り、問題がないかを確認する姿勢が重要です。適切な支援は、従業員の定着率向上にも直結します。

違反時の罰則と企業責任

2025年6月から不法就労助長罪は厳罰化されました

違反内容 罰則・処分 根拠法令
不法就労助長罪 5年以下の拘禁刑または500万円以下の罰金(または併科)。法人はさらに重い罰金刑の可能性あり。 出入国管理及び難民認定法 第73条の2
資格外活動許可違反 外国人本人は3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金。退去強制の対象となる。 出入国管理及び難民認定法 第70条
外国人雇用状況の届出義務違反 30万円以下の罰金。行政指導の対象。 労働施策総合推進法 第28条、第40条
労働基準法・最低賃金法違反 6か月以下の懲役または30万円以下の罰金など、違反内容に応じた罰則。 労働基準法、最低賃金法

(条件・出典:出入国管理及び難民認定法 改正法(令和6年法律第61号)、2025年6月10日施行。当サイト編集部作成)

外国人雇用に関する法令違反には、厳しい罰則が定められています。特に注意すべきは不法就労助長罪で、技能実習制度に代わる育成就労制度の創設に伴い、2025年6月10日から罰則が大幅に強化されました。従来の「3年以下の懲役または300万円以下の罰金」から、「5年以下の拘禁刑または500万円以下の罰金」へと引き上げられています。

この罪は、外国人本人が不法就労者であることを「知らなかった」としても、在留カードの確認を怠るなどの過失があれば適用される可能性があります。つまり、確認義務を果たさなかったこと自体が罪に問われるのです。違反が発覚すれば、経営者や採用担当者個人だけでなく、法人も処罰の対象となります。

刑事罰だけがリスクではありません。違反企業は、数年間にわたり特定技能外国人を受け入れられなくなるなどの行政処分を受けることがあります。さらに、企業名が報道されることによる社会的信用の失墜やブランドイメージの低下は、売上減少や人材採用難に直結し、事業の存続そのものを脅かす計り知れないダメージとなります。

コンプライアンス体制の構築方法

チェックリストと管理台帳で「うっかり」を防ぐ

施策 目的 実施頻度 責任者
外国人採用チェックリストの導入 在留カード確認、書類準備、届出などの手順を標準化し、確認漏れを防ぐ。 採用活動開始時、面接時、採用決定時など各段階で実施。 店長、採用担当者
在留資格管理台帳の作成・運用 全外国人従業員の在留資格、在留期限、更新状況を一元管理する。 月1回以上の定期的な更新と確認。期限切れの3か月前にアラート。 人事担当者、店長
多言語対応の就業規則・マニュアル整備 労働条件や業務ルールに関する誤解を防ぎ、円滑なコミュニケーションを促進する。 新規採用時、ルール改定時に周知。 経営者、人事担当者
定期的な社内研修の実施 店長や採用担当者に対し、入管法や労働法の最新情報を共有し、知識レベルを維持する。 年1〜2回 経営者、外部専門家

(条件・出典:各企業の事例を基に当サイト編集部作成、2025年6月時点)

法的リスクを回避し、安定した外国人雇用を実現するためには、場当たり的な対応ではなく、組織としてのコンプライアンス体制を構築することが不可欠です。まずは、採用プロセスを可視化し、誰が担当しても同じ手順を踏めるように「外国人採用チェックリスト」を作成・運用しましょう。

次に、雇用している全外国人スタッフの情報をまとめた「在留資格管理台帳」を作成します。氏名、在留資格の種類、そして最も重要な在留期間の満了日を一覧にし、定期的に更新します。これにより、「うっかり更新を忘れて不法就労になっていた」という最悪の事態を防ぐことができます。

大手飲食チェーンのすかいらーくやゼンショーホールディングスでは、外国人専用の相談窓口を設けたり、多言語対応の労務管理システムを導入したりして、きめ細やかなサポート体制を構築しています。中小規模の飲食店でも、就業規則の要点をまとめた資料を母国語で用意するなど、できることから始めることが重要です。登録支援機関や社会保険労務士などの専門家と連携することも有効な手段です。

まとめ

本記事では、飲食店が外国人を採用する際に直面する法的リスクと、遵守すべきコンプライアンスについて、2025年最新の情報を基に解説しました。人手不足が深刻化する中、外国人材は飲食店の運営に欠かせないパートナーですが、その雇用には大きな責任が伴います。

改めて、重要なポイントは「在留資格の厳格な確認」「法令に準拠した雇用契約と労働条件」「在留資格に応じた支援体制の整備」の3つです。特に、在留カードの確認は、無料アプリや公式サイトの活用を含めた多角的なチェックが不可欠であり、留学生アルバイトの週28時間ルールは徹底して遵守しなければなりません。

不法就労助長罪の罰則強化に見られるように、国は外国人労働者の人権保護と適正な雇用管理を一層厳しく求めています。法令違反は、懲役や罰金といった直接的な罰則に加え、営業停止処分や風評被害など、事業の根幹を揺るがす事態に発展しかねません。採用時のチェックリストや管理台帳を常に最新の状態に保ち、盤石なコンプライアンス体制を構築することが、企業の持続的な成長と発展に繋がります。

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免責事項

本記事は、特定技能・技能実習に関する一般的な情報提供を目的としており、法的助言や個別具体的な対応策を提供するものではありません。

在留資格や採用制度、助成金の活用等については、法令や行政の通達・運用により内容が変更される場合があります。また、企業や外国人本人の状況により必要な手続きや判断が大きく異なります。

本記事の内容を基に行動された結果生じたいかなる損害(不許可・助成金不支給・法令違反による指導・その他の不利益)についても、当サイトおよび執筆者は一切の責任を負いかねます。

必ず以下の点をご確認ください:

  • 最新の入管法・技能実習制度・特定技能制度の情報を、出入国在留管理庁・厚労省・自治体等の公的機関で確認する
  • 制度利用前には、行政書士・社労士などの専門家に相談する
  • 助成金や補助制度については、地域の労働局・支援機関へ事前に問い合わせる

本記事は執筆時点での情報に基づいています。法改正や制度変更により情報が古くなる可能性があるため、実際の手続きや判断は必ず最新の公式情報に基づいて行ってください。

注意:不適切な雇用・申請・制度運用は、指導・罰則・企業名公表等の対象となることがあります。制度の活用は自己責任にて、慎重に対応してください。

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松田 悠志
㈱ビーシアップ代表。宅建士・FP2級。人材採用・営業・Webマーケ・資産形成を支援し、採用コンサルやマネープラン相談も対応。株12年・FX7年のスイングトレーダー。ビジネス・投資・開運術を多角的に発信し、豊かな人生を後押しします。