宅建

宅建と賃貸不動産経営管理士のダブルライセンスで収入アップを目指す方法

「宅建士(宅地建物取引士)の資格を取ったものの、さらに収入を伸ばしたい」「ダブルライセンスを考えているが、なるべくコスパ良く資格を取りたい」――そんな方に近年注目されているのが、賃貸不動産経営管理士という国家資格です。2021年に国家資格化されたことで知名度・重要性が高まり、宅建士と合わせて取得することで業務の幅や年収アップを狙えると話題になっています。

本記事では、宅建士をすでにお持ちの方を対象に、賃貸不動産経営管理士の概要や資格取得のメリット・難易度、学習方法、そして具体的な収入アップの可能性について詳しく解説します。どのようなキャリアパスを描けるのか、どのように学習を進めれば最短で合格を目指せるのか、ぜひ参考にしてみてください。

賃貸不動産経営管理士とは?

賃貸不動産経営管理士の役割と国家資格化の背景

賃貸不動産経営管理士とは、賃貸物件の管理に関する専門知識と技能を持ち、オーナー(貸主)と入居者(借主)の双方をサポートする国家資格です。具体的には、以下のような業務に携わります。

  • 入居者募集、審査、契約締結
  • 家賃・敷金などの金銭管理
  • 設備の維持管理・修繕計画
  • クレーム・トラブル対応
  • 退去時の立ち会い、原状回復精算

以前は民間資格でしたが、2021年4月より国家資格に昇格しました。これは賃貸住宅の管理業務が高度化・複雑化しており、適正な管理やオーナー・入居者保護を図る必要性が高まったためです。また、賃貸住宅管理業法により一定規模以上の賃貸住宅管理業者には「業務管理者」の設置が義務付けられていますが、賃貸不動産経営管理士は業務管理者の有資格者として位置づけられており、まさに賃貸管理業界で需要が急増しています。

宅建士との違いと補完関係

宅建士は、不動産の売買や賃貸借契約を結ぶ際に必要となる「重要事項の説明」を独占業務とする資格です。一方で、賃貸不動産経営管理士は入居後の管理業務を専門とします。

  • 宅建士: 入居者募集や契約締結など、取引前後の重要事項説明や法令対応が中心
  • 賃貸不動産経営管理士: 契約締結後、入居~退去までの管理実務が中心

このように「入居前(取引)~入居後(管理)」まで一貫してカバーできるのが、宅建士+賃貸不動産経営管理士のダブルライセンスの特徴です。

宅建士が賃貸不動産経営管理士を取得するメリット

1. 業務範囲の拡大とワンストップサービス

宅建士は不動産取引の専門家として、売買・賃貸借の仲介や重要事項説明に携わります。しかし、その後の入居者管理や退去時の精算業務、設備トラブルへの対応など、不動産管理にはまた別の専門知識が必要です。

賃貸不動産経営管理士を取得すれば、契約締結後の賃貸管理業務も自分でフォローできるようになります。これによって、

  • オーナー様への提案で「契約から管理まで一手に任せてほしい」とアピールできる
  • 売買契約後に賃貸管理を希望する投資家やオーナーの相談にも応じやすい

といったサービスの一貫性が大きな強みとなり、顧客満足度の向上に繋がります。

2. 収入アップのチャンス

不動産会社では宅建士に加えて賃貸不動産経営管理士も保有している人材を優遇するケースが増えています。理由としては、賃貸物件の管理業務はストック型収益であり、会社として安定収益を得やすいためです。会社規模によっては資格手当が支給される場合もあり、ダブルライセンス手当として毎月の給与に上乗せされるところもあります。

また、昇進や管理職登用の際に資格が評価されることも少なくありません。宅建士資格だけでなく、賃貸管理まで分かる人材は社内でも貴重な存在となりやすいのです。

3. 独立・起業の幅が広がる

宅建士として不動産仲介をメインに独立する方もいますが、賃貸管理のノウハウがあれば、さらにオーナー代行賃貸住宅管理業を独立開業で行いやすくなります。特に地方では人口減少や空き家問題などもあり、専門家による適切な物件管理の需要が拡大しています。ダブルライセンスであれば、「仲介+管理」の二本柱で安定した売上を確保できる可能性があります。

4. 市場ニーズの高まり

賃貸住宅管理業法の施行により、一定規模以上の賃貸管理業者は事務所ごとに業務管理者を配置しなければなりません。業務管理者になれるのは、賃貸不動産経営管理士または一定の要件を満たす宅建士です。
この背景から、業務管理者として働ける人材を求める企業が増えており、結果として賃貸不動産経営管理士のニーズが急速に高まっています。

賃貸不動産経営管理士試験の概要と難易度

試験の基本情報

  • 試験実施: 一般社団法人 賃貸不動産経営管理士協議会
  • 試験日: 毎年11月頃(年1回)
  • 出題形式: マークシート(四肢択一式)、全50問
  • 試験時間: 2時間(120分)
  • 受験料: 12,000円

国家資格化された2021年以降、試験問題数が40問→50問に増加し、法改正に関する知識や賃貸住宅管理業法の詳細などがより厳しく問われる傾向にあります。そのため、合格率は20%台後半から下がり気味であり、油断できない難易度です。

合格率と合格点の目安

近年の合格率はおよそ20~30%前後、合格点はおおむね50点中30~35点程度と言われています。年度ごとに変動があるため、試験後に発表される正式な合格点を確認しましょう。
ただし、宅建と比較すればまだ合格しやすい部類ではありますが、近年は受験者数の増加と出題範囲の拡大で一筋縄ではいかない難易度になりつつあるのも事実です。

出題範囲

大きく以下の6分野から出題されます。

  1. 管理受託契約に関する事項
  2. 賃貸住宅の維持保全に関する事項
  3. 家賃・敷金管理に関する事項
  4. 賃貸住宅の賃貸借に関する事項(借地借家法など)
  5. 法令(民法、宅建業法、賃貸住宅管理業法など)
  6. 管理実務その他の賃貸住宅管理に関する実務

宅建試験で学んだ民法や借地借家法と重なる部分は多いですが、賃貸の実務知識や建物設備管理、クレーム対応など、宅建では触れない内容が問われます。

宅建士が合格を目指す際の学習ポイント

1. 宅建知識の再確認

最初に、宅建試験で学んだ民法・借地借家法・宅建業法をサッと振り返るところから始めましょう。とくに借地借家法は賃貸契約の根幹となる法律で、宅建試験でも必須分野ですが、賃貸不動産経営管理士試験ではさらに詳しく掘り下げられます。

2. 賃貸管理実務に特化した知識の習得

賃貸不動産経営管理士試験の特徴は、入居者募集~退去精算までの一連の実務を細かく問う点です。以下のようなテーマに注目してください。

  • 家賃管理:滞納リスクや督促手順など
  • 建物設備:設備不良時のクレーム対応、大規模修繕計画
  • 入居者対応:騒音・モラル問題などクレーム事例
  • 原状回復:ガイドラインに基づく負担区分(オーナー・入居者)

宅建とは違い、こうした現場目線のトラブル解決力が問われるのが賃貸不動産経営管理士の学習の要になります。

3. 賃貸住宅管理業法や関連法令の最新情報

賃貸不動産経営管理士試験では、賃貸住宅管理業法など最新の法改正動向に関する問題が頻出です。たとえば、業務管理者の配置義務やサブリース(転貸借)契約に関する規制強化など、毎年のように改正ポイントが追加されています。
必ず最新年度対応のテキストや教材を使い、法改正情報を収集しましょう。

4. 過去問と模擬試験の活用

合格への近道としては、過去問演習が重要です。ここ数年で問題数が増えたことに伴い、出題傾向を把握するには複数年分の過去問に取り組むのがおすすめです。
また、模擬試験を使って制限時間内で解く練習を行うことも大切。実際の試験は2時間で50問を解く必要があり、時間配分のミスは失点に直結します。

賃貸不動産経営管理士試験の勉強スケジュール(例)

宅建資格を保有している方を想定し、3~6ヶ月程度の学習期間で合格を狙うスケジュール例を紹介します。日々忙しい方でも、平日1時間+休日3時間ほど確保できれば十分に対応可能です。

  1. インプット期(1~2ヶ月目)
    市販テキストや通信講座で主要分野をざっと学習。まずは宅建知識との共通点を確認し、賃貸管理特有の項目を把握しましょう。
  2. 演習期(3~4ヶ月目)
    過去問・問題集を中心に繰り返し解き、苦手分野を洗い出す。模擬試験も実施し、2時間の時間管理を意識。
  3. 仕上げ期(5~6ヶ月目)
    直前期には法改正点や間違いやすい論点を総ざらい。過去問を再度解き直し、30点台後半を安定して取れるレベルを目指します。

もちろん学習時間は人によって異なりますが、宅建知識がベースにある人なら、効率よく学べば2~3ヶ月集中でも合格可能です。
短期合格のポイントは、「宅建との共通範囲はスピーディーに復習し、賃貸管理特有の内容に時間を割く」ことです。

ダブルライセンス取得後のキャリアと収入アップ戦略

1. 不動産会社での昇進・資格手当

すでに不動産会社にお勤めの場合、会社によっては「宅建手当」「賃貸管理手当」といった形で月数千円~数万円の資格手当が支給されることがあります。また、ダブルライセンス保持者は、業務管理者として会社の重要なポジションを担うことができ、役職への昇進や給与アップのチャンスが増えるでしょう。

2. 賃貸管理部門へのキャリアチェンジ

売買仲介中心の部署から賃貸管理部門に移動するなど、業務範囲を広げることで収入源を増やすのも手です。賃貸管理は景気に左右されにくく安定しやすい特徴もあり、自分の仕事をストック収入化しやすいメリットがあります。

3. 独立開業で「仲介+管理」二刀流

宅建士として独立開業する場合、通常は売買仲介や賃貸仲介がメインとなることが多いですが、そこに賃貸管理も加えることでビジネスの幅が格段に広がります。
オーナーとの契約形態によっては、管理料として毎月数%の手数料収入が継続的に入る仕組みを構築できるでしょう。大規模化すればスタッフを雇い、管理戸数を増やすことで安定収益を拡大できます。

4. 賃貸コンサルティング・不動産投資アドバイザー

宅建+賃貸不動産経営管理士の知識を活かして、不動産投資家向けのコンサルティング業務を行うのも魅力です。入居率アップや家賃設定、リフォーム提案など、不動産投資に関する包括的なアドバイスを提供できるため、コンサル料や成功報酬といった形で収益を得られます。

学習方法・教材の選び方

独学 vs. 通信講座 vs. 通学講座

  • 独学: 費用を抑えて自由度の高い学習が可能。ただしスケジューリングやモチベーション管理が課題になる。
  • 通信講座: スマホやPCで学習でき、質問サポートや模擬試験が充実。費用は数万円が目安。
  • 通学講座: 直接講師から指導を受け、学習仲間と切磋琢磨できる。費用は高めだが短期間で集中学習しやすい。

宅建士の知識がある方なら、独学や通信講座で合格を狙う人が多い傾向にあります。主に市販のテキスト+過去問題集で学習し、わからない部分を通信講座やオンラインQ&Aなどで補うと効率的です。

おすすめの教材・問題集

  • みんなが欲しかった! 賃貸不動産経営管理士の教科書(TAC出版)
  • 賃貸不動産経営管理士 合格のトリセツ テキスト&一問一答(LEC)
  • 賃貸不動産経営管理士 過去問題集(各社から発売)

いずれもフルカラーや図表が豊富で初心者にも分かりやすい構成。宅建資格保有者向けに要点をコンパクトにまとめたテキストもあり、「これだ!」と思える教材を1~2冊選び、繰り返し使うのがポイントです。

賃貸不動産経営管理士テキストのイメージ画像
※イメージ画像(alt属性: 賃貸不動産経営管理士テキストのイメージ画像)

合格後の登録手続きも忘れずに

無事に試験合格後は、賃貸不動産経営管理士として資格登録を行わなければ、正式に名乗ることはできません。登録にあたっては以下の要件・手続きがあります。

  • 2年以上の管理業務の実務経験、または登録講習の修了
  • 試験合格後1年以内の登録(経過した場合は講習が必要)
  • 登録料や講習受講料が必要

宅建士と同様に、登録してはじめて「業務管理者」や資格者として名乗れる点は要注意です。

まとめ|宅建士×賃貸不動産経営管理士で最短収入アップを目指そう

宅建士が次の収入アップを考えるとき、賃貸不動産経営管理士とのダブルライセンスは非常にコスパが良く、現場での需要も高い資格選択と言えます。契約業務から管理業務まで一貫してサポートできる点は、大手企業だけでなく、中小規模の不動産会社や独立開業でも大きな武器になります。

近年の合格率はやや下がり気味ですが、宅建の知識をうまく活かせば、短期間での合格も十分可能。試験範囲が「管理実務」に及ぶため、現場経験や各種トラブル事例の理解も重要ですが、教材・過去問・模擬試験を活用して効率的に学習できます。

ぜひ本記事を参考に、ダブルライセンス取得→キャリアアップ→収入増という流れを実現してください。不動産業界でさらに飛躍するための一歩として、賃貸不動産経営管理士の取得をぜひ検討してみましょう。


参考情報(主な参照元)

  • アガルートアカデミー「賃貸不動産経営管理士とは?仕事内容や資格の概要、将来性を徹底解説」
  • TAC出版「みんなが欲しかった! 賃貸不動産経営管理士の教科書」
  • 一般社団法人 賃貸不動産経営管理士協議会 公式サイト
  • スタディング「賃貸不動産経営管理士の独学に必要な勉強時間や試験内容解説」
  • モアライセンス「宅建からダブルライセンスに挑戦しよう!【次に取るおすすめ資格8選】」
  • LEC「賃貸不動産経営管理士 合格のトリセツ テキスト&一問一答」
  • ビーバーズ「賃貸不動産経営管理士試験の効果的な勉強方法と独学で合格するコツを解説」
  • 伊藤塾「宅建士の独立開業 成功のコツと失敗しやすい4つの要因を解説」

この記事が、宅建士の皆様が新たな収入源やキャリアアップの道を切り開くきっかけとなれば幸いです。ダブルライセンスを取得し、不動産業界での専門性と存在感をさらに高めていきましょう。