不動産

首都圏中古マンション、成約件数が18カ月ぶり減少。価格高騰の限界は近いのか?

「今が天井かもしれない。買うべきか、もう少し待つべきか」――首都圏の中古マンションをめぐって、そんな迷いを抱えている方は多いはずです。価格はまだ上がり続けているのに、成約件数は久しぶりに減少へ転じました。高値づかみは避けたい、けれど待っている間にさらに上がったら悔しい。数千万円の判断だからこそ、誰もが慎重になります。

この記事では、2026年に表面化した「成約件数の減少」という変化の正体を、公的データをもとに冷静に読み解きます。価格高騰がこのまま続くのか、それとも限界が近いのか。そして、売る側・買う側それぞれが今どう動くべきかまで、専門知識がなくても判断できるように整理しました。漠然とした不安を、根拠ある判断軸に変えていきましょう。

何が起きたのか:18カ月ぶりの成約減少

まずは事実を正確につかみましょう。「市場が崩れた」という話ではなく、これまで一本調子だった流れに最初の変化が現れた、というのが実態です。

成約件数は減少、しかし価格は上昇という「ねじれ」

2026年4月の首都圏中古マンションの成約件数は3,903件で、前年同月比1.2%減となり、18カ月ぶりに減少しました(2026年4月/東日本レインズ)。一方で価格はむしろ上がり続けています。成約㎡単価は86.34万円(前年同月比9.3%上昇)で71カ月連続の上昇、成約価格も5,521万円(前年同月比11.6%上昇)と17カ月連続のプラスでした(2026年/東日本レインズ)。

つまり今の市場は、「売れた件数は減ったのに、売れたものの価格は上がっている」というねじれた状態にあります。この食い違いこそが、市場の転換点を読むうえで最も重要なサインなのです。

2025年は絶好調だっただけに目立つ変化

この減少が注目される理由は、直前まで市場が非常に好調だったからです。2025年通年の首都圏中古マンションの成約件数は49,114件(前年比31.9%増)と3年連続で前年を上回っていました(2026年/東日本レインズ)。勢いよく増え続けてきた成約件数が前年割れに転じたことで、「潮目が変わったのでは」という見方が広がっています。

指標(首都圏中古マンション) 数値 傾向
2026年4月 成約件数 3,903件(前年比1.2%減) 18カ月ぶり減少
成約㎡単価 86.34万円(前年比9.3%増) 71カ月連続上昇
成約価格 5,521万円(前年比11.6%増) 17カ月連続上昇

※数値は東日本レインズの公表値に基づきます(2026年時点)。

なぜ件数が減ったのか:3つの要因

件数の減少は偶然ではなく、いくつかの構造的な要因が重なって起きています。一つずつ見ていきましょう。

要因1:金利上昇で買い手の予算が縮んだ

最大の要因は住宅ローン金利の上昇です。日本銀行(日銀)は2025年12月に政策金利を0.75%へ引き上げ、約30年ぶりの水準となりました(2026年/日本銀行)。金利が上がると、同じ月々の返済額でも借りられる金額が減ります。たとえば借入5,000万円・35年で金利が1.5%上がると、月々の返済負担はおよそ3万円台後半も増える計算です。結果として、これまでなら手が届いた価格帯に手が出せなくなる人が増え、成約件数を押し下げています。

要因2:価格が買い手の許容限界に近づいた

価格そのものが高くなりすぎた点も見逃せません。成約価格は5,000万円台半ばまで上昇しており、一般的な実需層(自分が住むために買う人)の収入では支払いが厳しい水準に達しつつあります。価格が上がり続けても、買い手の給料が同じペースで増えるわけではありません。この「価格と収入のギャップ」が、需要の頭打ちにつながっています。

要因3:在庫が増え始め、売り急ぎが弱まった

これまで品薄だった在庫にも変化が出ています。首都圏中古マンションの在庫は44,728件と、8カ月ぶりに増加しました(2026年/東日本レインズ関連データ)。在庫が増えれば買い手の選択肢が広がり、強気の価格では売れにくくなります。「価格は高いが、件数や在庫には一服感が出ている」というのが、今の市場を表す言葉です。

価格高騰の限界は近いのか:下げ要因と支え要因

ここが最も知りたいところでしょう。結論を急ぐ前に、価格を「下げる力」と「支える力」の両方を冷静に天秤にかける必要があります。

価格を下げる方向に働く力

下落圧力として大きいのは、やはり金利上昇です。金利が上がれば買い手の購買力が落ち、需要が弱まります。さらに在庫の増加と成約件数の減少が重なれば、売り手はいずれ価格を下げて対応せざるを得なくなります。実際、都心の一部では価格がピークを打ったとの見方も出ており、これらが同時に進めば調整局面に入る可能性があります。

価格を支える方向に働く力

一方で、価格を下から支える力も根強く残っています。建築費や人件費の高止まりで新築マンションの価格は下がりにくく、その割高感が中古に需要を向かわせます。加えて新築の供給戸数が少ないこと、そして都心部では投資や相続税対策、海外マネーの流入といった実需以外の買い手が存在することも、価格を底堅くしています。これらがある限り、全物件が一律に下がるとは考えにくいのが実情です。

結論は「二極化」

下げ要因と支え要因を踏まえると、今後は「全面高」でも「全面安」でもなく、物件ごとに明暗が分かれる二極化が進むと見るのが現実的です。立地が良く資産価値の落ちにくい物件は底堅く推移する一方、駅から遠い・築古・需要の薄いエリアの物件は調整が進みやすくなります。「マンション価格はこれからどうなるか」を一括りで語る時代は、すでに終わりつつあるのです。

買い手が今やるべきこと

市場が転換点にあるからこそ、買い手は受け身ではなく戦略的に動く価値があります。具体的な行動を整理しましょう。

在庫増加を「選べるチャンス」と捉える

在庫が増えるということは、買い手にとって選択肢が広がるということです。これまでは「出たらすぐ決めないと買えない」状況でしたが、今後は複数の物件をじっくり比較できる場面が増えます。焦って高値づかみをするのではなく、予算と希望に合う物件をしっかり見極める姿勢が大切です。

「価格が下がりにくい物件」を選ぶ

二極化が進む以上、選ぶ基準も「安いかどうか」より「将来売りにくくならないか」に置くべきです。駅からの距離、周辺の人口動態、管理状態、再開発の有無などを確認しましょう。資産価値が保たれやすい物件であれば、仮に市場全体が調整しても、あなたの資産は守られやすくなります。

金利込みの総返済額でシミュレーションする

物件価格だけでなく、上がった金利を前提に「総返済額」で考えることが欠かせません。返済負担率(年収に対する年間返済額の割合)は25%以下を目安に、無理のない範囲に収めましょう。価格が下がっても、金利が上がれば総支払額は増えることもあります。価格と金利はセットで判断してください。

売り手が今やるべきこと

売却を考えている人にとっても、この変化は無関係ではありません。むしろ動き方次第で結果が大きく変わります。

「売り手市場の終わり」を意識する

これまでは黙っていても高く売れる売り手有利の市場でした。しかし在庫が増え成約件数が減り始めた今、その前提は崩れつつあります。強気すぎる価格設定をすると、売れ残って結局値下げを繰り返す事態になりかねません。市場のピーク感を意識し、相場に合った価格で早めに動くほうが有利になる局面が増えています。

複数の査定で適正価格を見極める

適正な売り出し価格を知るには、一社だけでなく複数の不動産会社の査定を比較することが有効です。査定額には会社ごとの差が出るため、相場観を養ううえでも複数の意見を集める価値があります。高すぎる査定に飛びつくと売れ残りリスクが高まるため、根拠のある価格を見極めましょう。

まとめ:転換点だからこそ「個別に」判断する

2026年に表面化した首都圏中古マンションの成約件数減少は、価格高騰が永遠には続かないことを示す最初のサインです。金利上昇、価格の許容限界、在庫の増加という3つの要因が、これまでの一本調子の上昇に変化をもたらし始めました。

ただし、これは「暴落の前触れ」と短絡的に捉えるべきものではありません。建築費の高止まりや新築供給の少なさが価格を下支えしており、今後は物件ごとの二極化が進む可能性が高いのです。大切なのは、「市場全体」ではなく「自分が買う・売る一つの物件」に目を向けること。買い手は資産価値の落ちにくい物件を冷静に選び、売り手は相場に合った価格で早めに動く。市場が変わるときこそ、一括りの噂ではなくデータと個別の事情に基づいて判断することが、後悔しない選択につながります。

よくある質問

  • Q. 成約件数が減ったのに、なぜ価格は上がっているのですか?
    A. 売れた件数は減っても、実際に取引が成立した物件は立地や条件の良いものが中心で、それらが高値で売れているためです。2026年4月の成約㎡単価は前年同月比9.3%上昇と71カ月連続でプラスでした(東日本レインズ)。件数と価格が逆方向に動く「ねじれ」が、転換点のサインと見られています。
  • Q. これからマンション価格は暴落しますか?
    A. 全面的な暴落は考えにくい状況です。金利上昇は下げ要因ですが、建築費の高止まりや新築供給の少なさが価格を支えています。今後は全物件一律ではなく、立地や条件による二極化が進むと見るのが現実的です。
  • Q. 在庫が増えているのは買い手に有利ですか?
    A. はい、有利に働きます。首都圏中古マンションの在庫は44,728件と8カ月ぶりに増加しました(2026年/東日本レインズ関連データ)。在庫が増えれば選択肢が広がり、じっくり比較して選べるため、高値づかみを避けやすくなります。
  • Q. 今は買い時ですか、待つべきですか?
    A. 一律の正解はありません。待てば物件価格が下がる可能性はありますが、金利が上がれば総返済額はかえって増えることもあります。価格と金利をセットで考え、資産価値の落ちにくい物件を無理のない返済計画で買えるなら、合理的な選択になります。
  • Q. 売却を考えていますが、急いだほうがよいですか?
    A. 売り手有利の市場が変わりつつあるため、強気すぎる価格設定はリスクになります。複数社の査定で適正価格を把握し、相場に合った価格で早めに動くほうが、売れ残りや値下げの繰り返しを避けやすくなります。

初心者のための用語集

  • 成約件数
    実際に売買契約が成立した物件の数。市場で「どれだけ取引が動いたか」を示す指標で、需要の強さを測る目安になります。
  • 成約㎡単価
    成約した物件価格を専有面積(㎡)で割った1平方メートルあたりの価格。広さの違う物件どうしを公平に比べるための指標です。
  • レインズ(REINS)
    不動産会社が物件情報を登録・共有する国土交通大臣指定の不動産流通機構。その成約データは市場動向を知る代表的な公的統計です。
  • 在庫件数
    売り出されているが、まだ売れていない物件の数。増えると買い手の選択肢が広がり、価格が下がりやすくなる傾向があります。
  • 実需層
    投資目的ではなく、自分が実際に住むために物件を買う人々のこと。価格が収入に対して高くなりすぎると購入をためらう傾向があります。
  • 二極化
    価格や需要が物件によって明暗に分かれること。立地や条件の良い物件は底堅く、需要の薄い物件は調整が進みやすくなる状況を指します。
  • 返済負担率
    年収に対する年間返済額の割合。一般に25%以下が安全圏の目安とされ、無理のない購入額を判断する基準になります。

参考サイト

免責事項

本記事は情報提供を目的としたものであり、いかなる不動産取引を推奨・勧誘するものではありません。記載されている情報は作成時点のものであり、正確性・完全性を保証するものではありません。不動産市場の状況は常に変化しており、経済指標・地域開発・金融政策など外的要因によって、予想を大きく上回る価格変動や市場動向の変化が生じる可能性があります。 不動産取引に関する最終的な判断は、読者ご自身の責任とリスク負担のもとで行ってください。本記事の内容を利用したことで生じたいかなる損害についても、執筆者および当サイト運営者は一切責任を負いかねますので、あらかじめご了承ください。不動産投資や売買に際しては、専門家への相談や最新の情報収集と慎重なリスク管理を徹底することを強く推奨いたします。

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松田 悠志
㈱ビーシアップ代表。宅建士・FP2級。人材採用・営業・Webマーケ・資産形成を支援し、採用コンサルやマネープラン相談も対応。株12年・FX7年のスイングトレーダー。ビジネス・投資・開運術を多角的に発信し、豊かな人生を後押しします。