Contents
なぜ“離婚・相続”の不動産売却は難しい?まずは全体像を理解しよう
通常の売却とは違い、当事者が多い or 感情面が複雑
不動産を売るときは、ふつうは持ち主と買主の間で話を進めます。ところが離婚や相続の場面では、当事者が複数になることが多いです。たとえば、
- 離婚する夫婦それぞれに権利がある
- 相続人が兄弟姉妹、親戚を含めて多数いる
など、人数が増えるほど話し合いも長引きやすく、感情のすれ違いも起こりがちです。さらに「思い出の詰まった家を手放すなんて……」「自分の取り分はどれくらい?」など、精神的な負担や悩みが重なるので、ふつうの売却より慎重さが必要になります。
法律や税金の絡みも特殊(財産分与、遺産分割)
離婚の場合は財産分与や連帯債務といった制度が関わり、相続の場合は遺産分割や相続登記を行わないと売れないことがあります。
特に相続では「相続人が何人もいるのに、誰も名義変更をしていない」状態だと、話し合いが進まなければ売却ができないケースも多いです。離婚でも、ローンが残っている物件をどうするかでトラブルになりやすいので、法律や税金の面での注意が必要です。
中学生でも分かる「特別な事情があるときは慎重に」のポイント
離婚や相続で不動産を売るときは、ふつう以上に多くの人の同意や手続きが必要です。
だからこそ、早めに相続人や相手方と話し合い、それぞれが納得するルールを決めておかないと、あとで感情的にこじれる可能性が高まります。「時間がかかりそうだな」と感じても焦らず、専門家や信頼できる人に相談しながら進めることが大切です。
離婚での売却:財産分与や連帯債務に注意
①共有名義の場合、両者の同意が必要
夫婦が共有名義で家を持っているなら、売るときには原則として夫婦ふたりの合意が必要です。どちらかが「売りたくない!」と反対すれば、売却は難しくなります。財産分与の話し合いがスムーズに進まなければ、元パートナーとの間でトラブルになりやすいので、できるだけ早期に相談しましょう。
②住宅ローンが残っているとき、どちらが払うか要協議
ローンの名義が夫だけ、妻だけ、連帯債務になっているなど、さまざまなケースがあります。ローンが残っていると売却金で完済できるかどうかや、どちらがローンの責任を負うのかといった点を決めなければなりません。
- オーバーローン(売却額よりローン残高が多い)だと、追加でお金を用意しないといけない
- 連帯債務になっている場合、離婚しても銀行の同意なしでは片方だけ責任を外れられない
こうした問題を解消するため、住宅ローンを借り換えしたり、売却金で完済する方法を検討したりする必要があります。
③売却して得たお金の分け方(財産分与)の考え方
一般的には、婚姻中に築いた財産は半分ずつ分けるのが原則とされています。ただし、夫婦によって事情はさまざまなので、
- 頭金を片方が全額出した場合
- リフォーム費用をどちらが負担したか
- 住宅ローンを支払った割合
などを踏まえて協議書を作り、確実に話し合いを残しておくことが大切です。書類にしておかないと、離婚後に「そんなこと聞いてない」と言われるリスクもあります。
相続での売却:まず“誰が相続人か”をしっかり確認!
①遺産分割協議で不動産をどう扱うか決める
相続が始まったら、まず「相続人が誰か」を確定して遺産分割協議を行います。協議では、
- 不動産を誰が相続して、最終的に売却するか
- 売却したお金をどう分けるか
をみんなで合意しなければなりません。もし全員の合意が得られなければ、裁判所の調停や審判に進むこともあります。
たとえば、相続人が5人いて「あの土地は誰がもらうの?売る?保有する?」と話がまとまらないと、先へ進めません。事前に親族内で話し合いを重ね、意見を揃える努力が必要です。
②相続登記をして名義を整理
2024年(令和6年)からは相続登記が義務化されます。名義を被相続人(亡くなった方)のままにしておくと、売却したくても売れないケースが出てきます。相続人が複数いる場合は、誰がどの持分を持つかを明確にし、そのうえで相続登記(名義変更)を行わないと、正式な売買ができません。
③共有名義になった場合は相続人全員の同意が必要
兄弟や親族が共有名義で不動産を相続すると、「売るか持ち続けるか」で意見が合わないケースが増えます。もし売りたいときは、全員の同意を取る必要があります。
- 1人でも反対すれば売却は進まない
- 同意を得るまでに時間がかかり、不動産価値が下がることもある
最初の段階でしっかりと方針を決め、共有状態を長引かせないようにするのがポイントです。
どんな手続きが必要?離婚&相続売却の流れ
(離婚)協議書の作成、財産分与合意、ローンや名義変更の確認
離婚の際に物件を売却するときは、次のような手順が一般的です。
- 離婚協議書を作成し、不動産や預金などの分け方を明文化
- 売却したあとのお金の配分を決定(どちらがいくら受け取るか)
- 住宅ローンが残っているなら、完済計画を立てたり、名義変更や借り換えの可能性を検討
- 不動産会社に査定を依頼し、市場価格を把握
- 売却活動スタート~買主との契約~決済・引き渡し
(相続)相続人調査、遺産分割協議書の作成、相続登記→売却活動
相続で売却をするなら、以下のような流れになります。
- 被相続人の戸籍を取り寄せて相続人を全員確定
- 遺産分割協議書を作成して、全員が署名・押印
- 不動産を相続登記し、名義を相続人へ変更
- 不動産会社に査定を依頼し、市場価格を把握
- 売却活動を開始し、買主と契約→決済・引き渡し
図やフロー図を入れて、初めての人にもわかりやすく
文字だけだとイメージしづらい方も多いと思います。フロー図などを作って「どのステップで誰が何をするのか」を明確にすると、親族間や元夫婦間で混乱せずに進められるのでおすすめです。
税金面の要注意ポイント – 譲渡所得税や相続税など
離婚時は通常の譲渡所得税がかかる可能性
離婚で家を売って利益(譲渡益)が出た場合、基本的には譲渡所得税がかかります。ただし、実際には
- 家の購入時より売却額が下がって利益が出ない
- 「3000万円の特別控除(居住用)」を受けられるケース
などがあれば税金を抑えられるかもしれません。詳しくは税理士などの専門家に相談するのがおすすめです。
相続時は相続税や売却後の譲渡所得税も検討必要
相続した不動産を売る場合、相続税を払ったうえで譲渡所得税も発生する可能性があります。一見「二重課税?」と感じるかもしれませんが、税法上は別の課税根拠に基づいています。
ただし、「相続税の取得費加算」という特例があって、相続税の一部を売却時に経費として加算できることがあります。こちらもかなり複雑なので、税理士などに早めに確認しましょう。
3000万円控除や居住用特例が使えるケースも
家やマンションに住んでいた場合に限り、売却益が最大3000万円まで非課税になる特別控除があります。ただし、
- 実際に自分が住んでいた家である
- 売却する時期
- 配偶者など親族に対しての売却ではない
など、細かい条件があるため、必ず専門家に確認してください。条件さえ満たせば、かなりの節税効果が期待できます。
トラブル回避のコツ – 親族や元配偶者との話し合い
感情的なもつれを防ぐため、第三者(弁護士やFP)を交える
離婚や相続はどうしても感情が絡みやすいので、当事者同士だけで話し合うと行き詰まることが少なくありません。そんなときは、
- 弁護士:法律的に正しい視点でアドバイス
- ファイナンシャルプランナー(FP):家計やライフプランの面から提案
- 司法書士:登記など事務作業の専門家
など、第三者を交えて客観的に話を進めるのがベターです。「元配偶者と一対一で話すと、ついヒートアップしてしまう」という方には特におすすめです。
契約書や協議書を文書化して後の揉め事を防ぐ
言葉だけの約束だと「そんな約束してない」「言った言わない」でトラブルになりやすいです。
- 離婚協議書(必要に応じて公正証書)
- 遺産分割協議書
を必ず作り、細かい取り決めを盛り込んで双方が署名・押印することで、あとあと「聞いてなかった」トラブルを防ぎやすくなります。
共有名義やローンの連帯債務は特に要注意
共有名義は、持分のある全員の同意がないと売れません。連帯債務は、離婚しても契約上は責任を外れられない場合があります。
こうした複雑な状況を整理するためには、不動産会社だけでなく弁護士や司法書士の助力が欠かせません。特にローンの連帯問題は「離婚後も支払い義務が残る」ことがあるので、よく話し合うことが肝心です。
実例 – 離婚&相続での売却成功・失敗談
成功例:早めに弁護士相談、親族みんなが納得→スムーズ成約
あるケースでは、離婚すると決めた段階で弁護士に相談を始め、離婚協議書を作成。どちらがいくら受け取るのか、ローンはどう清算するかを細かく明記しました。
その後、不動産会社に査定を依頼して売却活動を進めた結果、
- ローンの残債を完済できる価格で売却
- 残ったお金を当事者2人で納得できる割合で分配
という形になり、揉めずに無事成約。「とにかく事前に専門家を入れるのがカギ」という好例です。
失敗例:共有者の1人が同意せず売れないまま放置、価格下落
相続で実家を相続した兄弟が4人おり、そのうち1人が「やっぱり売りたくない」と反対し続けたため、売却がストップ。結局、何年も放置している間に建物が老朽化し、市場価格がどんどん下がってしまいました。
最終的には「遺産分割調停」へ持ち込んで裁判所で決着しましたが、時間も手間もかかり、当初よりも売却額が大幅に下がる結果に。早めの話し合いと専門家の助けがあれば、もっとスムーズに売れたかもしれません。
教訓:専門家に早めに相談し、全員で合意を得る大切さ
どちらの例も、「早めの話し合い+専門家のサポート」がカギになることを示しています。全員が納得しない限り前に進まないのが離婚・相続の特徴。
「後回しにすると、気づいたときには価値が下がっていた……」ということも多いので、なるべく早く行動しましょう。
具体的な行動ステップ – 今すぐできること
①法的専門家(弁護士や司法書士)や不動産会社に相談
迷ったらまず相談です。離婚前であれば夫婦問題に強い弁護士を、相続なら相続案件に詳しい司法書士や弁護士を探しましょう。
不動産会社も離婚・相続物件の売却に慣れているところを選ぶと、スムーズに話が進むケースが多いです。
②名義やローン状況を確認、共有者と話し合い
売却を検討し始めたら、
- 不動産登記簿を取り寄せて名義や持分をチェック
- ローン残高や連帯債務の有無を金融機関に確認
- 共有者や相続人が複数いる場合は、なるべく早く全員と話し合う
こうした準備をすることで、「誰が同意する必要があるか」や「どれくらいローンを返さないといけないか」が見えてきます。
③査定をして相場把握→売却計画書を作る
不動産会社に査定を依頼して相場をつかみ、どれくらいで売れそうかを把握しましょう。売却計画書を自分用に作り、
- いつまでに売りたいか
- 最低いくらで売りたいか
- 諸費用や税金はどれくらいかかるか
などを整理しておくと行動しやすくなります。
まとめ – 特別な状況下での売却は“情報&相談”がカギ
離婚・相続のケースは手続きや合意が複雑
通常の不動産売却とちがい、離婚や相続に関する特別な手続きと多くの合意が必要になります。元配偶者や親族同士で意見が食い違ったり、住宅ローンの返済や相続税・譲渡所得税の問題が絡んだりして、一筋縄ではいかないことも多いです。
争いなくスムーズに進めるためにしっかり準備
離婚・相続での不動産売却は、とにかく事前準備が重要です。
- 早めの話し合いと専門家への相談
- 協議書・契約書などの書面化
- 税金やローン残高のチェック
こうした一つひとつのステップを丁寧にこなし、スムーズな合意形成を目指すと、後のトラブルをかなり防げます。
関連記事・専門家紹介・免責表現
もっと詳しく知りたい方や、実際に売却を進めたい方は、離婚問題に強い弁護士や相続専門の税理士、不動産会社などに相談してみてください。
この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事情に対する法的・税務的アドバイスではありません。実際の手続きを進める際は、必ず専門家へ相談していただくようお願いいたします。
また、自治体や法務局などの公的機関にも無料相談窓口がある場合がありますので、ぜひ活用してみましょう。
免責事項:本記事は一般的な解説を目的としたものであり、個別の事例に適用できるかどうかは保証いたしかねます。法的・税務的な判断が必要な場合は、弁護士や税理士、司法書士など専門家にご相談ください。
参考サイト
- 離婚と不動産売却|スムーズな財産分与のために(三幸住宅株式会社) 離婚時の不動産売却の流れや財産分与の注意点を解説しています。
- 離婚による不動産売却 ポイントを不動産屋が解説(葉山不動産) 離婚による売却時の名義やローン残債などの実務的なポイントをまとめています。
- 【尼崎市編】「離婚が原因の不動産売却」事例(阪神不動産) 離婚に伴う実際の売却事例を紹介し、現場での対応方法がわかります。
- 相続した不動産を売却するときに適用できる3つの特例とは?適用要件を徹底解説(チェスター税理士法人) 相続不動産売却時の税制特例や控除について詳しく解説しています。
- 【相続不動産を売却】手続きの流れや税金・特別控除を解説(チェスター税理士法人) 相続登記や売却手続き、税金のポイントをわかりやすくまとめています。
- No.3552 収用等により土地建物を売ったときの特例(国税庁) 公共事業等での不動産売却時の税制特例を国税庁が公式に解説しています。
- 物納された底地について(ミノラス不動産) 相続税の物納で発生する底地の扱いについて専門的に解説しています。
- 離婚したい!と思ったときに「家を売るといくらになるか」調べる方法(ダイヤモンド不動産) 離婚前に不動産価格を調べる方法や注意点を実践的に紹介しています。
初心者のための用語集
- 離婚協議書:離婚の際に、親権、養育費、慰謝料、財産分与などの取り決めを記した文書。後のトラブルを防ぐために、必ず書面で残すことが大切です。
- 遺産分割協議書:相続人全員で話し合い、遺産をどう分けるかを決めた内容をまとめた書面。相続登記などの手続きの際に必要になります。
- 相続登記:亡くなった人から相続した不動産の所有者を、登記簿上で正しく自分の名前に変更する手続き。令和6年4月1日からは、法的に義務化されています。
- 連帯債務:複数の人が一緒に借り入れをして、どちらか一人が返済できなくなった場合でも全員が返済責任を負う仕組み。離婚や共有名義の場合に注意が必要です。
- 譲渡所得税:不動産や株式などの資産を売却して得た利益にかかる税金。売却益から経費や特別控除を差し引いた金額に対して課税されます。
- 財産分与:離婚時に夫婦で共有してきた財産を、公平に分け合うこと。通常はお互いに半分ずつ分けるのが基本ですが、状況に応じて割合が変わることもあります。
- 居住用特例:自分が住んでいた家を売却する際に、譲渡所得税の負担を軽減するための特別な控除制度。一定の条件を満たすと、控除額が適用されます。
- 共有名義:複数の人が一つの不動産の所有権を持つ状態。売却する際は、全員の同意が必要になります。
- 抵当権抹消:住宅ローンが完済したときに、銀行などに設定された抵当権(担保権)を登記簿から消す手続き。ローンが残っている場合は、抵当権の抹消ができません。
- 媒介契約:不動産売却を進めるために、不動産会社と結ぶ契約。一般媒介契約、専任媒介契約、専属専任媒介契約など、契約形態によって内容が異なります。
不動産選びをもっと深く知りたい方へ
不動産売却の後、 あなたのマイホームをお求めの方もいらっしゃると思います。 そんな方にオススメ情報を書いた、記事をご紹介します。
- 【保存版】失敗しないマイホーム購入完全ガイド・初心者でも安心!―住宅ローンの選び方から不動産契約の流れまで徹底解説
- 【マンション vs 戸建てどっちを選ぶ?】初めてのマイホーム比較ポイント
- 【新築 vs 中古住宅、結局どっちがお得?】初心者が知るべきメリット・デメリット
◇無料相談のご案内◇
不動産売却に踏み切る前に、お金のことや不動産上の手続きで不安や疑問をお持ちではありませんか?
- 最適な売却価格の設定方法や売却戦略
- 売却時にかかる税金や諸費用の計算
- 物件の価値を高めるための準備やアドバイス
- 法的チェックや契約時の注意点
など、資金面と不動産面の両方を一括サポートいたします。 「今の不動産市場でどれくらいの価格で売れるの?」「実際にどれくらいの費用がかかるの?」「売却後の住み替えや資金計画が不安…」――そんなお悩みをお持ちでしたら、ぜひお気軽にご連絡ください。
無料でご相談を受け付けておりますので、まずは下記のフォームまたはお問い合わせ先よりお気軽にメッセージをお寄せください。 みなさまが安心して理想の不動産売却を実現できるよう、全力でサポートいたします!