FP試験の科目の中でも、「不動産」は範囲が広く、特に「不動産の譲渡所得」に関する問題は計算も絡むため、苦手意識を持つ方が多いのではないでしょうか?
「取得費って何が含まれるの?」
「譲渡費用と取得費の違いがよくわからない…」
「短期譲渡所得と長期譲渡所得の税率、どうやって覚えたらいいの?」
「過去問ではどんな風に出題されるんだろう?」
こんなお悩みや疑問を抱えていませんか?
この記事を読めば、そんなあなたの悩みがスッキリ解決します!
Contents
この記事で分かること・解決できること
- FP試験における「不動産の譲渡所得」の重要性
- 譲渡所得の基本的な計算方法
- 「取得費」「譲渡費用」の具体的な範囲と間違いやすいポイント
- 「短期譲渡所得」「長期譲渡所得」の判定方法と税率
- 過去のFP試験(学科・実技)での出題傾向と対策
- 具体的な勉強法、学習スケジュール、記憶に残るコツ
- 試験当日に役立つ解答テクニック
この記事では、FP試験の「不動産の譲渡所得(取得費や譲渡費用)と譲渡所得の税率(短期譲渡所得と長期譲渡所得)」について、どこよりも分かりやすく、そして網羅的に解説します。
頻出論点であるこの分野をしっかり押さえることで、FP試験合格がぐっと近づきます。ぜひ最後までじっくり読んで、あなたの得意分野に変えていきましょう!
FP試験における「不動産の譲渡所得」の重要性と概要
まずは、なぜFP試験において「不動産の譲渡所得」が重要なのか、そしてこの分野で何を学ぶのかを明確にしておきましょう。
なぜ「不動産の譲渡所得(取得費や譲渡費用)と譲渡所得の税率(短期譲渡所得と長期譲渡所得)」がFP試験で重要なのか?
FPとしてお客様にアドバイスする際、不動産の売買に関する税金の知識は不可欠です。特に不動産を譲渡(売却)した際に得られる利益(譲渡所得)にかかる税金は、金額が大きくなることもあり、お客様のライフプランに大きな影響を与えます。
FP試験では、この実務上非常に重要な「不動産の譲渡所得」に関する知識が問われます。
不動産の譲渡所得は、FP試験(特に2級・3級)で毎回出題される「頻出分野」です。学科試験だけでなく、具体的な計算が求められる実技試験でも頻出するため、ここを攻略できるかどうかは合否を分けるポイントの一つと言えるでしょう。
ポイント!
- 実技試験では「取得費・譲渡費用の計上」「長期・短期の判定」「特別控除の適用」が主な論点。
- 学科試験では「取得費不明時の扱い」「短期・長期の区分」「仲介手数料の費用計上」などが出題。
(出典:当記事向け提供資料より)
近年の傾向として、単に計算ができるだけでなく、特例措置(居住用財産の3,000万円特別控除など)の理解や、実際の取得費と概算取得費のどちら有利かを選択させるなど、より実務に近い、深い理解を問う問題が増えています。
この記事でFP試験「不動産の譲渡所得」の何が学べるのか?
この記事では、FP試験合格に必要な「不動産の譲渡所得」に関する知識を体系的に学ぶことができます。
- 譲渡所得の基本的な計算式
- 計算に必要な「取得費」「譲渡費用」とは何か、何が含まれて何が含まれないのか
- 間違いやすい「減価償却」の考え方
- 取得費が分からない場合の「概算取得費」
- 税率が変わる「短期譲渡所得」と「長期譲渡所得」の判定基準とそれぞれの税率
- 過去の出題傾向を踏まえた具体的な対策方法
- 効率的な学習スケジュールや記憶術
など、合格に必要な情報を余すところなく提供します。計算問題が苦手な方でも理解しやすいように、具体的な例を交えながら解説していきますので、安心して読み進めてください。
FP試験「不動産の譲渡所得」の基礎知識:取得費・譲渡費用を徹底解説【ファイナンシャルプランナー試験頻出】
それでは早速、不動産の譲渡所得計算のキホンから見ていきましょう。ここをしっかり押さえることが高得点への第一歩です。
譲渡所得とは?基本の計算式を覚えよう【FP試験の基礎】
不動産の譲渡所得とは、土地や建物などを売却したことによって得られる利益(儲け)のことです。この譲渡所得に対して、所得税や住民税が課税されます。
FP試験でまず覚えなければならないのが、この譲渡所得の計算式です。
譲渡所得の計算式
譲渡所得 = 譲渡価額 - (取得費 + 譲渡費用) - 特別控除
それぞれの用語の意味は以下の通りです。
- 譲渡価額:不動産を売却した金額(売却代金)+固定資産税や都市計画税の清算金
- 取得費:売却した不動産を購入したときの代金や手数料など
- 譲渡費用:不動産を売却するために直接かかった費用
まずはこの基本的な計算式をしっかりと頭に入れてください。実技試験では、この式を使って実際に計算する問題が出題されます。
「取得費」とは?含まれるもの・含まれないもの【FP試験頻出ポイント】
次に、計算式の要素である「取得費」について詳しく見ていきましょう。取得費は、売却した不動産を手に入れるためにかかった費用のことです。
取得費に含まれる主なもの
- 土地や建物の購入代金、建築代金
- 購入時の仲介手数料(不動産会社に支払った手数料)
- 登録免許税、印紙税(契約書に貼った印紙代など)
- 借主がいる土地や建物を購入する際に、借主に支払った立退料
- 土地の造成費用、測量費
- 建物の設備費や改良費(リフォーム費用など)
(参考:国税庁「No.3252 取得費となるもの」)
注意! 取得費に含まれないもの
- 事業所得などの必要経費に算入されたもの
- 固定資産税や都市計画税(所有している期間中に毎年かかる税金)
- 不動産取得税
- 建物の修繕費や維持管理費(通常の維持管理のための費用)
ポイント! 特に固定資産税や都市計画税、修繕費は取得費に含めることができない、という点はFP試験でよく狙われるポイントなので、しっかり覚えておきましょう。
建物の場合の注意点(減価償却)
建物は、時の経過とともに価値が減少していくと考えられています。この価値の減少分を「減価償却費」といいます。建物の取得費を計算する際には、購入代金や建築代金から、この減価償却費相当額を差し引く必要があります。
建物の取得費 = 購入代金等 - 減価償却費相当額
減価償却費の計算は少し複雑ですが、FP試験(特に2級以上)では出題される可能性があります。
事業用不動産と非事業用(マイホームなど)で計算方法が異なりますが、FP試験では主に非事業用の計算が出題されます。
非事業用建物の減価償却費の計算式(定額法)
減価償却費 = 建物の取得価額 × 0.9 × 償却率 × 経過年数
※償却率や耐用年数は建物の構造(木造、鉄筋コンクリート造など)によって定められています。試験では問題文で与えられることが多いです。
※減価償却費の累計額は取得価額の95%が上限です。
ポイント!
- 土地は減価償却しません。価値が減らないと考えられるためです。
- 減価償却の計算は、FP2級以上の実技試験で出題されることがあります。計算方法を理解しておきましょう。
(参考:国税庁「No.3261 建物の取得費の計算」)
税率比較まとめ(表形式)
区分 | 所有期間(譲渡した年の1月1日時点) | 所得税率(復興特別所得税含む) | 住民税率 | 合計税率 |
---|---|---|---|---|
短期譲渡所得 | 5年以下 | 30.63% | 9% | 39.63% |
長期譲渡所得 | 5年超 | 15.315% | 5% | 20.315% |
オリジナル練習問題
問題1 取得時の仲介手数料の取扱い
土地・建物を購入した際に支払った不動産仲介手数料は、譲渡所得計算における「取得費」に算入できる。
解答:◯
解説:取得のために直接要した費用(仲介手数料・登録免許税・不動産取得税など)は取得費に含めることができる。
問題2 保有期間の判定基準日
譲渡所得の長期・短期判定における保有期間は、譲渡契約を締結した日現在で5年を超えているかどうかで判断する。
解答:×
解説:個人の譲渡所得では「その年の1月1日現在」の保有期間で判定する。譲渡日ではない点に注意。
問題3 保有期間5年ジャストの取扱い
取得日からちょうど5年が経過している不動産を譲渡した場合、その譲渡所得は長期譲渡所得として課税される。
解答:×
解説:長期譲渡所得となるのは「5年を超えて」保有している場合。5年ぴったりは短期に区分される。
問題4 短期譲渡所得の税率
短期譲渡所得に対する所得税・住民税の合計税率は、おおむね20.315%である。
解答:×
解説:短期(保有5年以下)は所得税30%+復興特別所得税0.63%+住民税9%=計39.63%が原則。
問題5 長期譲渡所得の税率
長期譲渡所得に対する所得税・住民税の合計税率は、おおむね20.315%である。
解答:◯
解説:長期(保有5年超)は所得税15%+復興特別所得税0.315%+住民税5%=計20.315%。
問題6 居住用3000万円特別控除の適用範囲
自宅を売却したときの「居住用財産の3000万円特別控除」は、長期譲渡所得だけでなく短期譲渡所得にも適用できる。
解答:◯
解説:保有期間を問わず、自分が住んでいた住宅を一定要件で売却すれば3000万円まで控除可能。
問題7 譲渡広告費の扱い
売却活動のために支出した広告掲載料やチラシ作成費用は、譲渡所得計算上「譲渡費用」に算入できる。
解答:◯
解説:譲渡を行うために直接要した費用は譲渡費用として控除できる。
問題8 新築建物の登録免許税の扱い
自ら新築した建物について保存登記をした際の登録免許税は、譲渡所得計算上「取得費」には含められない。
解答:×
解説:取得に直接要した登録免許税は取得費に算入できるため、本肢は誤り。
問題9 不動産取得税の扱い
土地・建物購入時に納付した不動産取得税は、譲渡所得計算上の取得費に加算できる。
解答:◯
解説:取得費は「購入代金+取得に直接要した経費」。不動産取得税もこれに該当する。
問題10 土地・建物一括売却時の費用配分
土地と建物を一括で譲渡する場合、譲渡費用の全額を建物の譲渡所得の計算にのみ充当しても差し支えない。
解答:×
解説:譲渡費用は土地・建物に合理的に按分してそれぞれの譲渡所得計算に反映させる必要がある。
よくある質問
- 譲渡所得と譲渡税の違いは何ですか?
譲渡所得は不動産売却で得た利益そのもの、譲渡税はその譲渡所得に課される税金(所得税・住民税)です。基本計算式は本文の「譲渡所得=譲渡価額−(取得費+譲渡費用)−特別控除」を参照してください。 - 取得費が不明な場合、概算取得費(売却価格の5%)と実額取得費のどちらを選べばよいですか?
税額が少なくなるほうを選択できます。試験では両方計算して有利なほうを採用する手順を押さえておきましょう。 - 居住用財産の3,000万円特別控除と軽減税率の特例は併用できますか?
はい、所有期間10年超の居住用財産なら併用可能です。適用順序は「3,000万円控除 → 軽減税率」の順です。 - 所有期間のカウント方法がよく分かりません。
譲渡した年の1月1日時点で所有期間が5年超なら長期、5年以下なら短期になります。購入日と譲渡日ではなく、1月1日基準で判定する点が頻出のひっかけです。 - 固定資産税や修繕費は取得費や譲渡費用になりますか?
いいえ。固定資産税・都市計画税・修繕費は取得費にも譲渡費用にも含められません。 - さらに詳しく学びたい場合は?
内部リンク記事独学でも最短合格!FP試験完全攻略ガイドやFP試験6科目徹底攻略をあわせてご覧ください。
参考サイト
- 国税庁タックスアンサー No.3208「土地や建物などを譲渡したとき」 ― 譲渡所得の計算式と短期・長期区分を公式解説。
- 国税庁タックスアンサー No.3255「譲渡費用となるもの」 ― どの費用が譲渡費用に該当するかを確認できます。
- 国税庁タックスアンサー No.3302「居住用財産を譲渡したときの3,000万円特別控除」 ― マイホーム売却時の特別控除要件を詳細に掲載。
- 三井のリハウス「不動産売却時にかかる税金まとめ」 ― 実務視点で譲渡所得税や控除をわかりやすく解説。
- 日本FP協会「1級学科試験科目・細目表」PDF ― 不動産分野で問われる論点を公式シラバスで確認。
初心者のための用語集
- 譲渡所得:不動産などを売却したときに発生する利益(売却益)。
- 取得費:購入代金や登記費用など、資産を手に入れるためにかかったコストの総称。
- 譲渡費用:売却時に直接かかった費用(仲介手数料・印紙税・測量費など)。
- 概算取得費:取得費が不明な場合に譲渡価額の5%を取得費として計算できる制度。
- 減価償却:建物などの固定資産の価値を耐用年数にわたって費用配分する会計処理。
- 所有期間:取得日から譲渡した年の1月1日までの保有年数。5年超で長期、5年以下で短期。
- 短期/長期譲渡所得:所有期間による区分。税率は短期39.63%、長期20.315%。
- 3,000万円特別控除:マイホームを売却した際に課税譲渡所得から最大3,000万円を差し引ける特例。
- 軽減税率の特例:所有期間10年超の居住用財産に適用できる低税率(14.21%など)の優遇措置。
- 居住用財産:本人が住んでいる家屋とその敷地。マイホームと同義。
- 申告分離課税:譲渡所得をほかの所得と合算せず、独立して税額計算する方式。
- 課税譲渡所得:譲渡所得から特別控除を差し引いた後、実際に課税対象となる金額。
ファイナンシャルプランナーの勉強に関する無料相談、随時受付中!
ここまでお読みいただき、誠にありがとうございます。当ブログでは、ファイナンシャルプランナー試験に関するあらゆるお悩みにお応えします。
無料とはいえ、もちろんファイナンシャルプランナー試験の資格の保有者である著者が直接お答えさせていただきます。
初学者から再受験を目指す方まで幅広く対応していますので、どうぞお気軽にご相談ください。無料で学習のコツやスケジュールの立て方などをアドバイスさせていただきます。あなたの合格を全力でサポートいたしますので、一緒に合格への最短ルートを走り抜きましょう!
