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速報 ── 今期「最高益更新」の全体像
- 2025年3月期(2024年度)決算は売上横ばいながら利益大幅増を達成
- 主要セグメントの収益性改善と構造改革・M&Aの成果が寄与
- 今期も増収増益予想、株主還元を強化し市場の注目度が高い
日立製作所が2025年4月28日に発表した2025年3月期決算(FY 2024)は、売上収益はわずかな伸びに留まりましたが、利益面では大幅な伸長を記録しました。中でも調整後営業利益が前年から約28%増の9,716億円となり、収益性の強化が際立ちます。要因としては、IT・エネルギー領域の高付加価値案件や新興国を中心とした公共投資需要の取り込み、そして為替前提の最適化や原価改善策などが挙げられます。 さらに日立の新中期経営計画「Inspire 2027」も同時公表され、今期(2026年3月期)についてはさらなる増収増益に加え、大規模な自社株買いを含む株主還元策を実行する見通しです。こうした好調な業績と積極的な還元姿勢が相まって、株価材料として投資家の注目を集めています。
通期ガイダンス & 増益率+15%のインパクト
- 2026年3月期は売上収益10兆1,000億円を計画
- 調整後営業利益は1兆50億円とさらなる拡大
- 親会社株主帰属利益は7,450億円、前年同期比+13.4%
2025年3月期において、売上収益は9兆7,834億円(前年同期比+0.6%)と横ばいながら、調整後営業利益が9,716億円(+28.6%)という大幅な増益を実現しました。そして2026年3月期については、売上収益10兆1,000億円(+3.2%)、調整後営業利益1兆50億円(+3.4%)というガイダンスが示されています。これは高付加価値分野へのシフトと効率的な原価構造の実現により、利益率がさらに高まるとの期待が込められている数字です。 実際、親会社株主帰属利益も7,450億円(+13.4%)を見込み、EPSは155.06円に上昇する計画です。なお配当予想は年間46円となり、これは前年の43円からの増配を伴うと同時に、自社株買いを最大3,000億円規模で実施する方針が発表されています。こうした利益成長と株主還元策がそろっている点が、投資家にとって大きな注目材料といえるでしょう。
売上・営業利益・最終利益の3点比較表(前期 vs 今期予想)
2025年3月期実績 | 2026年3月期予想 | |
---|---|---|
売上収益 | 9兆7,834億円 | 10兆1,000億円 |
調整後営業利益 | 9,716億円 | 1兆50億円 |
親会社株主帰属利益 | 6,157億円 | 7,450億円 |
(出典:2025年4月28日 日立IR発表) 売上収益は横ばいからやや上向きに推移する見通しですが、継続的な費用最適化や高付加価値サービス案件の拡充で、利益率の改善が進むと予想されています。最終利益においては、前年の6,157億円から約13.4%増の7,450億円と、2ケタ成長を維持する計画です。なお2025年3月期のEPSは133.85円と公表されています。
セグメント別業績スナップショット
- IT(Lumada)・エネルギー領域が利益成長を牽引
- モビリティも鉄道システム投資拡大で貢献度アップ
- オートモーティブはAstemo株式譲渡の影響あり
日立の事業は大きく「デジタルシステム&サービス」「グリーンエナジー&モビリティ」「コネクティブインダストリーズ」などのセグメントに分類されます。2025年3月期の連結決算では、これらコアセグメントがそれぞれ堅調に推移し、利益増加に貢献しました。 なお、オートモーティブ(Astemo株式)については、一部譲渡の影響で持分法適用会社化されており、今回の連結決算には外部売上高や利益が含まれていません。今後は同社との協業や合弁を通じたシナジー展開が注目されます。
IT&デジタル(Lumada)
- 売上高は2兆6,531億円(前年比+9%)
- 調整後EBITA3,974億円(+19%)
- Lumada事業を中心にDXソリューション需要が加速
IT&デジタルセグメントは、日立のデジタルトランスフォーメーション(DX)支援サービスであるLumadaが核となっています。国内外でのDX投資拡大に乗じて売上と利益がともに拡大し、セグメント全体の営業利益率も改善しました。特に金融機関や製造業向けのシステム更改・データ活用案件が増加し、安定的な収益源となっています。 また、クラウド型ソリューションやIoTプラットフォームなど高付加価値領域への展開が進んだことで、マージンが上昇。今後も日立グループ全体の成長ドライバーとして重要度を増す見込みです。
エネルギー(原子力・再エネ)
- グリーンエナジー&モビリティセグメントは売上3兆8,493億円(+29%)
- 調整後EBITA3,690億円(+85%)と大幅増
- 原発再稼働需要・再生可能エネルギー投資が加速
エネルギー関連事業は、原子力発電所の保守・再稼働需要と海外再生可能エネルギー案件の拡充が重なり、売上高・利益ともに大きく伸びました。特に北米・欧州市場での送配電設備や洋上風力などの再エネプロジェクト受注が急増し、高収益ビジネスとしての位置づけを強化しています。 さらに官民共同で進められるGX(グリーントランジション)需要を取り込むことで、今後も持続的な成長が期待されます。原子力領域も国内の安全審査体制が進む中、長期保守契約などの安定収益につながっています。
モビリティ(鉄道・防衛)
- 鉄道システム関連の海外大型案件が順調に進捗
- 欧州・アジアでの都市交通インフラ拡張に対応
- 防衛関連は政府予算増に伴う受注増を見込む
日立のモビリティ部門は主に鉄道を中心に、車両からシステム、信号、制御など幅広い領域をカバーしています。欧州を中心に高速鉄道や都市近郊路線で更新・新規導入が活発化しており、海外受注が拡大傾向です。 また、防衛分野では政府の防衛力強化方針(2023年末閣議決定)に沿って、長期的に調達額が拡大する見込みがあり、輸送・レーダーなどのシステム受注が見込まれています。日立は鉄道をはじめとするモビリティ技術を包括的に展開し、公共インフラの安全性・効率性を高めるソリューションとして差別化を図っています。
インダストリー・オートモーティブ
- コネクティブインダストリーズの売上2兆9,691億円(+4%)
- 調整後EBITA3,620億円(+13%)
- Astemo譲渡後は持分法適用会社として計上
インダストリー領域は製造装置や物流システムなどを含み、グローバルサプライチェーン再構築の流れの中で安定的に需要を獲得しています。一方、オートモーティブに関してはAstemoの株式譲渡が行われ、日立としては完全子会社から持分法適用会社へと切り替えました。 電動化や自動運転化が進む自動車業界での競争は激化していますが、日立はソフトウェア面の強みやパワートレイン関連技術を武器に、サプライヤーとしての立場を強化していく方針です。今後は構造改革の成果をどこまで利益に反映できるかが焦点となります。
数字で読む “好調ドライバー”
- 受注高・受注残は全セグメントで伸長
- 為替前提の最適化によるマージン改善
- M&Aや選択と集中でリターン拡大
ここでは日立の好調を裏付ける具体的な数字に注目します。為替相場や受注動向、さらにM&Aの成果がどの程度収益を押し上げているのかを把握することは、投資判断にも役立ちます。 日立が発表する四半期ごとの受注残高は、DXやインフラ更新需要を背景に堅調に推移しており、特にエネルギー・モビリティ分野の受注残が大きく積み上がっています。為替においては1ドル=130円程度を前提とし、円安トレンド下で海外売上高が円換算で増加することもマージン改善に寄与しました。
受注残高・受注高の四半期推移表
セグメント | 指標 | 2024Q1 | 2024Q2 | 2024Q3 | 2025Q1 |
---|---|---|---|---|---|
デジタルシステム&サービス | 受注残 | 8,727億円 | 9,727億円 | 9,924億円 | 10,500億円(推定) |
グリーンエナジー&モビリティ | 受注残 | 31,154億円 | 52,509億円 | — | — |
モビリティ(鉄道) | 受注残 | 9,108億円 | 13,008億円 | — | — |
(2025年4月28日 日立IR発表資料および関連レポートを基に一部推計) 四半期ごとの数値を見ても、デジタルシステム&サービスは継続的に受注残を積み上げており、今後の安定収益化につながる見通しです。グリーンエナジー&モビリティは再エネ案件や鉄道システム案件が拡大し、長期の案件が多いため受注残が膨らむ傾向にあります。
為替前提・マージン改善策
- 2026年3月期の為替レートは1ドル=130円前後を想定
- 原材料価格上昇分を案件価格に転嫁し利益率を確保
- 構造改革の進展でS&GA比率を削減
日立は従来から海外売上比率が高く、為替の変動に敏感です。特にドル円相場が1円円安になると数十億円規模で営業利益が押し上げられるため、現在の円安傾向はプラスに働いています。ただし急速な円安が進んだ場合、輸入原材料コストの上昇などデメリットも生じます。 一方、原材料価格の高騰に対しては、強い価格交渉力を背景にある程度コスト転嫁を進めているとのことです。またソフトウェアやサービス収益割合の増加も、利益率の改善に寄与しています。
M&Aと構造改革の成果
- 海外企業の買収でグローバル顧客基盤を拡大
- 鉄道事業ではタレス社買収が大きな話題
- 中核事業と周辺事業を整理し収益性向上
日立は近年、世界各地でのM&Aを通じて事業ポートフォリオを強化してきました。特に鉄道システム分野ではタレス社の鉄道事業買収によって欧州市場でのプレゼンスを高め、ITサービス分野ではグローバル規模で顧客基盤を拡大しています。 また、競争力の低いセグメントや収益貢献度の低い子会社の整理・統合を進める構造改革によって、資本効率の向上を図っています。2025年3月期の好調な利益成長には、こうしたM&Aやリストラクチャリングの成果が大きく貢献しているといえます。
財務健全性と株主還元策
- 自己資本比率は44.0%
- D/Eレシオは0.20倍前後で良好
- 年間配当43円に加え3,000億円の自社株買い
日立の財務基盤は、自己資本比率44.0%と比較的安定しており、D/Eレシオ(有利子負債/自己資本)も0.20倍前後で推移するなど、総じて財務の健全性が高い水準を保っています。今期は営業キャッシュフローも1兆円を超える規模となり、事業の安定したキャッシュ創出力が裏付けられました。 この豊富なキャッシュを背景に、増配と大規模な自社株買いを同時に発表するなど、株主還元にも積極的です。以下の項目で詳しく見ていきましょう。
自己資本比率・D/Eレシオ・ROE
- 自己資本比率44.0%(前年比-2.7pt)
- D/Eレシオ0.20倍(非支配持分含む)
- ROEは10.7%(前年超)
2025年3月期末時点で自己資本比率は44.0%と、前年からやや低下しました。しかしこれは大型投資やM&Aに伴う負債増の影響もあるため、事業成長のために必要な投資が進んでいると解釈できるでしょう。ROE(自己資本利益率)については10.7%に達し、前年を上回る水準です。 事業ポートフォリオの選択と集中によって効率性を高め、グローバル競合他社と遜色ない高ROE体質を目指す方針が示されています。資本効率の改善が続く限り、投資家の評価が一段と高まる可能性があります。
配当方針 & 自社株買いシナリオ
- 2025年3月期の年間配当は43円
- 1:5株式分割実施後の実質ベースでは増配
- 最大3,000億円の自社株買いを2026年3月期に実施予定
2025年3月期の配当は、中間21円・期末22円で合計43円となりました。加えて、2024年7月に1:5の株式分割を行ったため、実質ベースでは前年の36円からの増配となっています。さらに2026年3月期は年間配当46円(中間23円・期末未定)を予定し、連続増配方針を打ち出しています。 また、自社株買いについては最大3,000億円という大規模な取得枠を設定し、2025年4月30日から2026年3月31日までを取得期間としています。これによりEPS(1株当たり利益)の上昇が期待できるだけでなく、市場での株価下支え効果も見込まれます。
ESG投資家が注視するGX支出
- 脱炭素ソリューション開発に積極投資
- 再エネ・水素・CCSなど政府補助金も活用
- 2050年カーボンニュートラルに向けたロードマップ策定
日立はカーボンニュートラルや再生可能エネルギーといった環境関連領域への投資を積極的に展開しています。政府のGX(グリーントランスフォーメーション)投資計画に沿って、再エネ事業や水素エネルギー技術など、脱炭素関連事業へ研究開発と設備投資を拡大する方針を明確化しています。 これらの取り組みはESG投資家にとっての評価ポイントとなり、日立株への中長期的な資金流入を後押しする可能性があります。さらに国際的な脱炭素規制への対応力が競争優位に繋がるため、日立がGX領域での先行投資を継続する意味は非常に大きいと考えられます。
リスク&チャンス ── 投資家が押さえるべき5項目
- 半導体市況の変動とラピダス関連受注
- 原子力再稼働と官需拡大のインパクト
- 欧米景気減速リスクと為替ヘッジ策
- グリーンエナジーでの大型資本投下
- 構造改革の成否による利益変動
日立は幅広い事業ポートフォリオを展開する一方、外部環境の変化によるリスクにも直面しています。以下では特に投資家が注視すべき要素として、「半導体市況」「原子力再稼働・官需」「欧米景気」「GX関連投資」「構造改革」の5項目を整理します。
半導体市況 vs ラピダス向け装置需要
- 日立の半導体製造装置事業は設備投資拡大で恩恵
- ラピダスが2nm技術のパイロットライン開設を計画
- TSMCなど海外勢の投資増加が装置受注を押し上げる
2024年下期から2025年にかけ、ラピダスをはじめ国内外のファウンドリ大手が先端半導体向けの巨額投資を進めています。日立は半導体関連装置も手がけており、需要拡大の波に乗る可能性が高いです。 ただし半導体市況は景気動向や需要サイクルによるアップダウンが激しいため、短期的には受注が乱高下するリスクも存在します。投資家としては長期的な技術優位性や収益分散の状況を見極めることが重要です。
原子力再稼働・官需の潜在インパクト
- エネルギー自給率向上策で国内原発再稼働が進む可能性
- 保守・改修工事は安定収益源
- 公共インフラ投資で防衛・鉄道事業も恩恵
政府による原子力再稼働方針の推進が進む中、日立の原子力事業にとっては保守や運転支援などの長期収益機会が拡大します。また防衛分野や鉄道インフラも官需拡大の影響を受けるため、安定収入の確保が期待されます。 一方、政策や社会的議論の動向によっては再稼働スケジュールが変動するリスクもあるため、進捗を注視する必要があります。とはいえ中長期的には、エネルギー需給の逼迫やインフラ老朽化への対応を背景に官民共同の投資拡大が続くとみられます。
欧米景気減速リスクとヘッジ策
- 欧米を中心に金利上昇・インフレが景気を冷やす可能性
- 為替リスクをデリバティブでヘッジ
- 日立の多角化経営が分散効果をもたらす
米国や欧州での金利上昇や景気後退リスクが顕在化した場合、設備投資意欲が鈍化して日立の受注活動にも影響を及ぼす可能性があります。とりわけインダストリー領域の設備更新案件などは、景気局面で変動しやすい点に注意が必要です。 もっとも日立の場合、世界各地で幅広い事業を展開しているため、一部地域の景気後退による影響を他の地域・事業セグメントで補えるポートフォリオ効果が期待できます。為替リスクに関してはデリバティブを用いたヘッジも実施しており、大幅なレート変動への耐性を強化しています。
投資家向けチェックリスト
- 売買タイミングを見極める3指標
- 競合(富士通・三菱電機・ソニーG)との比較
ここでは日立株に投資する際、押さえておきたい売買タイミングの指標と、国内大手メーカーとの比較ポイントを整理します。事業領域が広いからこそ、どこに焦点を当てるかで投資リスクとリターンが変わってきます。
売買タイミングを測る3つの指標
- 受注残の推移:今後の業績見通しを示す先行指標
- 営業利益率:構造改革・付加価値ビジネスの浸透度を反映
- ROE(自己資本利益率):資本効率の改善度合いを確認
日立の決算発表資料ではセグメント別の受注高や受注残が公開されています。中でもエネルギー、鉄道、デジタルなど、長期案件の比率が高いセグメントでの受注残動向は注目度が高いです。受注が増加している局面では、将来の売上・利益拡大が期待しやすくなります。 また営業利益率やROEを追うことで、構造改革の成果が本当に数字に表れているかを確認できます。日立は近年、付加価値の高いDXサービスやインフラ事業を取り込みながら利益率を徐々に押し上げており、これが投資家目線での成長性と安全性の裏付けになると言えます。
競合比較(富士通・三菱電機・ソニーG)
- 富士通:ITサービスが主力、高ROEを維持
- 三菱電機:電機総合メーカー、FA(工場自動化)や空調で強み
- ソニーグループ:エンタメ・金融を含む多角化で高い営業利益率
日立を語る上で同業・関連セクターとの比較は欠かせません。富士通はITサービスに集中しており、日立のDX領域と競合しつつも事業構成はやや狭い範囲に特化しています。三菱電機は重電やFAシステムなどで日立と一部重なる事業を展開していますが、防衛・家電など差別化要素も多いです。 ソニーグループはエンタメや金融事業の存在感が大きく、日立のような社会インフラ・重電色は薄いものの、国内トップクラスの技術力とブランド力を持ち、株式市場での評価指標(PER・PBR)も高めです。日立株を選択する際には、「社会インフラ・DXの成長性」を重視するか、「エンタメ・電子部品・家電の競争力」を重視するかなど、投資方針の違いを意識すると良いでしょう。
日立製作所(6501)のチャート分析・シナリオ
日立製作所のチャートを見ていきましょう。日足チャートでは、4月23日に5日移動平均線(5MA)、25日移動平均線(25MA)、そして下値トレンドラインからきれいに反発し、そこから順調に値を上げています。この反発は出来高の増加を伴っており、買い圧力の強さを示しています。 現在の株価は3,747円で、4月中旬につけた安値2,800円台から約30%の大幅上昇を記録。直近では75日移動平均線(75MA)にタッチ後、調整の兆しがありますが、上昇トレンドは維持されています。 テクニカル指標からは以下のポイントが読み取れます:
- 移動平均線の配列 – 5MAが25MAを上抜け、ゴールデンクロスを形成。これは短期的な上昇トレンドの確立を示しています。
- RSIの状況 – 現在は約60と、まだ買われすぎ領域(70以上)には達していません。つまり、さらなる上昇余地があります。
- 出来高分析 – 底値形成時に出来高が増加し、その後の上昇局面でも比較的高い出来高を維持。これは上昇トレンドの信頼性を高めています。
チャートパターンとしては、3月下旬から4月にかけて形成された明確なV字回復パターンが見られます。このような力強い反発は、投資家の強い買い意欲を示唆しています。 重要な価格レベルとしては:
- サポートライン – 3,600円付近(5MAと25MAが位置)が重要なサポートとなります。
- レジスタンスライン – 75MA(約3,800円付近)が当面の上値抵抗線です。
明日の決算発表後は大きく動く可能性がありますが、2つのシナリオが考えられます: 強気シナリオ:決算好材料で75MAを突破すれば、4,000円を目指す展開に。75MAを上抜けると、移動平均線のゴールデンクロスが完成し、中期的な上昇トレンドへと転換する可能性があります。 弱気シナリオ:決算が市場予想を下回れば、5MAと25MAが位置する3,600円付近まで調整する可能性があります。ただしここは重要なサポートラインなので、ここで買い支えが入れば再度上昇トレンドを形成できるでしょう。 トレード戦略としては、5MA付近(約3,600円)への押し目買いが理想的です。この水準は心理的節目でもあり、サポートとして機能する可能性が高いです。または75MA(約3,800円)ブレイクアウト後のエントリーも有効でしょう。 チャート的には綺麗な波形を形成しているので、押し目を待ってエントリーするか、ブレイクアウト後に追いかけるかの二択が考えられます。いずれの場合も、5MAと25MAを下回る場合は損切りを検討すべきでしょう。
まとめ ── “日立らしさ×DX/GX” が次の成長を決める
- 2025年3月期は高収益化が進み、増配・自社株買いなど株主還元も拡大
- DX(Lumada)・グリーンエナジー領域が収益ドライバーとして存在感を強める
- 構造改革とグローバルM&Aの成果を数字で検証する姿勢が重要
日立製作所の決算を総合的に見ると、売上こそ横ばいに近いものの、大幅な増益を実現し「最高益更新」を達成した背景には、構造改革による効率化や高付加価値サービスの拡大など地道な取り組みがあるとわかります。 また新中計「Inspire 2027」でも明示されているように、DXソリューション(Lumada)やグリーンエネルギー・モビリティといった社会インフラ分野の成長ポテンシャルは大きく、GX投資や国際情勢の変化を追い風に、さらなる収益拡大が見込まれます。投資家としては、官需・原子力・鉄道・半導体など外部環境に左右されやすい要素をチェックしつつ、日立が培ってきた総合電機メーカーとしての技術力・信用力をどう活かしていくかを評価することが重要です。 株主還元という面でも増配、自社株買いの両面から積極策を打ち出し、ROE10%超を目標に資本効率の向上を目指す姿勢が見えます。日立らしい社会インフラの提供とDX・GX領域の融合が、今後の経営パフォーマンスを左右し、さらなる成長のカギとなるでしょう。
参考サイト
- 2025年3月期 決算短信〔IFRS〕(連結) ― 日立製作所 IR(2025/04/28)
- Hitachi Rail Investor Days ― Company & Strategy Presentation(2024/11/18)
- GX経済移行債を活用した投資促進策について ― 経済産業省
- World Economic Outlook Update, January 2025 ― IMF
- 武藤経済産業大臣 記者会見(ラピダス追加支援8,025億円等) ― 経済産業省
- 日立、発行済み株の3.06%・3,000億円上限に自社株買い ― Reuters(2025/04/28)
- 日立製作所、今期最終は15%増で3期ぶり最高益更新へ ― 株探ニュース(2025/04/28)
- サステナビリティレポート2024 ― 日立製作所
- Hitachi High-Tech、CDP「A List」選定に関するニュースリリース(2025/02/14)
- Digital Systems & Services Sector Profile Booklet(2025/02版)
よくある質問
- Q.今期(2026年3月期)の配当はいくらですか? A.年間46円(中間23円・期末23円予定)と発表されています。詳細は日立IR決算短信で確認できます。
- Q.自社株買いの規模と期間は? A.上限3,000億円(発行済株式の3.06%)を2025/4/30〜2026/3/31に実施予定です。背景はReuters報道でも解説されています。
- Q.為替が1円動くと利益にどのくらい影響しますか? A.USD/JPYが1円円安になると営業利益は約+80億円増える想定です(2025/4/28 決算説明資料)。
- Q.受注残はどのセグメントが最も多いですか? A.エネルギー(HVDC・送電網)が約6.5兆円で最多です。受注残推移は投資家向け説明資料に掲載されています。
- Q.半導体市況が悪化した場合のリスクは? A.装置投資が減速するとインダストリー部門の売上に影響しますが、受注の約8割がロジック系でメモリー偏重より耐性が高いと会社側は説明しています。
- Q.GX投資の具体的な取り組みは? A.日立エナジーによる蓄電・送電インフラや水素関連パワーエレ機器など、GX関連CAPEXは今期2,500億円を計画しています。政策背景は経産省GX経済移行債ページを参照してください。
初心者のための用語集
- 調整後営業利益(Adjusted EBITA):一時的な損益や減価償却費を除いて本業の採算力を把握する利益指標。
- 受注残:すでに契約済みで将来計上される売上の総額。多いほど先行きの業績が読みやすい。
- 総還元利回り:配当と自社株買いを合算し、株価で割って算出する株主還元の指標。
- 修正PER:自社株買いによるEPS押し上げ効果を織り込んで計算した株価収益率。
- GX(グリーントランスフォーメーション):脱炭素化を目的にした環境投資や事業変革の総称。
- DX(デジタルトランスフォーメーション):ITとデータ活用で業務やビジネスモデルを抜本的に改善する取り組み。
- ROE(自己資本利益率):純利益÷自己資本で算出し、株主資本の収益性を示す。
- HVDC:高電圧直流送電システム。遠距離でも送電ロスが少なく再エネ普及に不可欠。
- Lumada:日立のデータ活用プラットフォームブランドで、AI・IoTサービスの総称。
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