相続

相続争いゼロにする遺言書の書き方テンプレート|自筆・公正証書を完全解説

この記事の要点・結論

相続争いを防ぐには遺言書を準備することが最善策です。
自分の思いを正しく反映させ、相続人が納得しやすい工夫を盛り込むことで不要な争いを大幅に減らせます
具体的には、自筆証書・公正証書・秘密証書という3種類の方式を正しく理解し、財産目録や付言事項(理由や感謝の言葉)をしっかり書くことが鍵です。

なぜ遺言書だけが相続争いを防ぐ鍵になるのか

家庭裁判所統計:遺言あり事件の調停件数は公表なし

  • 遺言書がないケースは調停に発展することが多いとされています
  • 付言事項付き遺言は調停率を下げる効果があるとされる
  • 遺留分を巡る紛争は年間 887 件超(2023 家裁統計)

相続問題が家庭裁判所に持ち込まれる割合は、遺言書の有無で大きく差が出ると報告されています。
実際、遺言がしっかりとした形式で残されていないと、相続分を巡って「言った言わない」のトラブルが起こりやすくなるのです。
特に、遺留分を侵害されたと感じた相続人が「遺留分侵害額請求」に踏み切るケースは年 887 件(2023 家裁統計)と報告されており、事前に対策を講じる重要性が高まっています。
付言事項などで遺言者の考えや理由を明確化しておけば、相続人の納得が得られやすく、無用な争いを防ぐ鍵となるのです。

遺言書3方式の比較

3方式の特徴比較

自筆証書 公正証書 秘密証書
費用 0円
(自分で作成)
平均 6.5万円+
証人謝礼
約1万円
(公証料目安)
手間 形式要件を
自力で確認
公証人が
書類作成
自分で作成→
公証人が確認
安全性 紛失・改ざんリスク
保管制度利用で低減
公証役場で保管
無効リスクほぼゼロ
内容は秘密
ただし保管リスク大

遺言書には自筆証書公正証書秘密証書の3種類があります。
自筆証書遺言は最も簡単に作成できますが、書式不備が原因で無効となるリスクがあるのが実情です。
公正証書遺言は費用がかかる反面、公証人が形式を確認するため無効になるリスクが極めて低く、保管も安心です。
秘密証書遺言は内容を秘密にできるメリットがある一方、利用件数は少なく、紛失リスクや検認手続きの煩雑さが問題となることがあります。

相続争いを防ぐ5つのポイント

① 全財産を漏れなく列挙 ② 付言事項で理由を書く ③ 遺留分に配慮 ④ 保管制度を活用 ⑤ 法的要件を厳守

  • ポイント①:有形・無形の全財産を正確に書く
  • ポイント②:なぜその分配にしたのか理由を付言事項で示す
  • ポイント③:遺留分を意識し、不満が生じそうなら配慮文言を加える
  • ポイント④:自筆証書遺言なら法務局「保管制度」利用が有効
  • ポイント⑤:日付・署名・押印など民法の形式要件を必ず守る

全財産を網羅しておくと、相続人が「これは書かれていない」などと主張しにくくなります。
さらに、遺言者の気持ちを伝える付言事項は、家族が納得するための重要な材料です。
遺留分の存在を知らずに大きく偏った分配をすると、後日「遺留分侵害額請求」が起きるリスクが高まります。
自筆証書の場合は法務局の遺言書保管制度を活用すれば「検認不要」かつ2024 年 7 月法務省公表で 79,128 件超の利用実績があり、安全性が向上します。

【テンプレート】自筆遺言ひな型(全文)

手書きレイアウト/財産目録はワープロ可(2020-07 改正)

  • 遺言書本文は「全文自書」必須
  • 財産目録のみワープロ作成OK (2020-07 民法改正)
  • 日付・署名・押印は手書き部分に必須

以下はあくまでイメージ用テンプレートであり、最終的には法律専門家に確認することを推奨します。
なお、2020 年 7 月の民法改正により財産目録はパソコン作成可能になった一方、日付・署名・押印など主要部分は自書する必要があります。

自筆証書 遺言書テンプレート(例)

令和〇年〇月〇日

私○○(生年月日:昭和△年△月△日生)は、下記の内容で遺言する。

1.私の所有する不動産(〇〇市〇〇町〇〇番地 等)については、長男 ○○に相続させる。
2.私の預貯金(〇〇銀行△△支店 普通口座 ×××××号)全額は、長女 ○○に相続させる。
3.その他の動産(車、貴金属等)は、次男 ○○に相続させる。
4.付言事項:ここに書く理由を示す。長年面倒を見てもらった感謝 等。

令和〇年〇月〇日
住所:〇〇県〇〇市〇〇町〇〇番地
氏名:○○(署名)
(押印)

付言事項には、介護してくれた人への感謝や家業を継いだ子への配慮理由などを書くと良いでしょう。
書き方を工夫することで、相続人が「なぜこの配分なのか」を理解しやすくなり、相続トラブル防止につながります。

公正証書遺言の作成ステップ

必要書類・証人要件・費用シュミレーション

  • 必要書類:戸籍謄本、印鑑証明書、不動産登記簿謄本、固定資産評価証明 等
  • 証人要件:2名以上、推定相続人・受遺者は不可、公証役場で手配も可能
  • 費用目安:公正証書遺言作成費平均 6.5 万円+証人謝礼

公正証書遺言を作成するには、まず公証役場へ相談の予約をします。
その後、公証人と打ち合わせを行い、財産目録や証人の手配を進めます。
証人は2名必要ですが、自分で知人を用意するか、または公証役場に紹介を依頼することも可能です。
公証人が作成した原本は役場で保管されるので、紛失や改ざんリスクを大幅に回避でき、無効になる可能性も極めて低くなります。

よくある失敗例と回避策

日付欠落/押印ミス/二重遺言/保管制度未利用

  • 日付の記載不備:「○月吉日」は無効リスク大
  • 押印ミス:押印漏れ・認印と実印の混在
  • 二重遺言:複数の遺言書が見つかり混乱
  • 保管制度未利用:自宅保管で紛失・改ざん

自筆証書遺言では日付が「○月吉日」等、特定できない表現だと無効になり得ます。
また、押印が抜けていたり、不動産の記載が曖昧だったりすると検認段階でトラブルに発展するケースが多いです。
複数の遺言が後から見つかり、どちらが最新か確定できないまま揉める例も後を絶ちません。
法務局の保管制度や公証役場での保管を活用し、確実に一つの遺言書を残すことが重要です。

※相続の手続き・節税対策にあたっては以下の記事も参考にしてください

まとめ

相続争いを避けたいなら遺言書の作成は必須と言えます。
特に、自筆証書の方式不備を防ぐためにも、書式をしっかり確認し、可能であれば保管制度の利用や公正証書化を検討しましょう。
また、付言事項で自分の思いを伝えたり、財産目録をワープロで整理したりすることで、相続人の理解や処理の効率を高められます。
ご自身の状況に合わせて最適な方式を選択し、家族に伝わる遺言書を整えることが争族リスクを減らす最善策です。

よくある質問

  • 遺言書の方式はどれを選べばいい?
    争族リスクを最小化したいなら無効率が極めて低い公正証書遺言がおすすめ。費用を抑えたい場合は自筆+法務局保管制度を併用すると安全性が高まります。
  • 自筆遺言の財産目録はパソコンで作成して良い?
    はい。2019年1月13日施行の改正民法(平成30年民法改正)でワープロ作成が正式に認められました。ただし各ページに遺言者の署名押印を忘れずに。
  • 公正証書遺言の費用はどのくらい?
    財産3,000万円を2人に相続させる場合、手数料は約5.7万円+証人謝礼が目安。詳しくは日本公証人連合会の手数料計算ツールで確認できます。
  • 付言事項とは?必ず書くべき?
    付言事項は法的効力こそありませんが、財産分配の理由や家族への感謝を伝える“最後のメッセージ”。調停率を低下させる効果が期待できるとされ、ぜひ活用を。
  • 法務局に保管すると検認は不要?
    はい。法務局自筆証書遺言保管制度を利用すれば検認手続き不要。紛失・改ざんリスクも防げます。

参考サイト

初心者のための用語集

  • 自筆証書遺言:遺言者が全文・日付・氏名を自書し押印して作る最も手軽な遺言方式。
  • 公正証書遺言:公証人が作成し公証役場で原本を保管する、形式不備の心配がほぼ無い遺言。
  • 秘密証書遺言:内容を秘密にしたまま公証人に提出・封印する方式。検認が必要。
  • 付言事項:法的効力はないが、財産分配の理由や家族へのメッセージを自由に書ける欄。
  • 遺留分:配偶者や子など一定の相続人が最低限受け取れる取り分。侵害されると請求できる。
  • 遺言執行者:遺言内容を実行する代表者。登記や口座解約などを単独で進められる。
  • 検認:家庭裁判所が自筆遺言の形状・内容を確認する手続き。公正証書遺言には不要。
  • 法務局保管制度:自筆遺言を法務局が有料で保管し、検認を不要にできる制度。
  • 遺産分割調停:相続人同士で話し合いがまとまらない場合に家庭裁判所で調整する手続き。
  • 法定相続分:遺言が無い場合に民法が定める相続財産の基本分配割合。

相続に関する参考記事

遺言書の作成から相続税対策まで、トラブルを回避しつつ損をしないための実践ノウハウを厳選しました。気になるテーマをチェックして、安心・円満な相続にお役立てください。

編集後記

この記事を書き終えた翌日、私は東京都在住の会社員Aさん(72歳)から相談を受けました。
「母の葬儀直後に兄妹が険悪になり、父の財産でも同じことが起きるのでは」と不安を感じ、相続対策を急ぐことにしたそうです。

2024年4月、Aさんは当サイトのテンプレートを参考に自筆遺言の原案を作成。
同年5月に法務局保管制度(申請料3,900円)を利用し、検認不要の環境を整えました。
付言事項には「2年前に介護を担った長女への感謝」を明記し、兄妹間のわだかまりを和らげる意図を込めています。

翌2025年2月、公証役場で内容を精査した結果、父の不動産評価が当初より上昇していることが判明。
不動産価額3,500万円への修正に伴い、公正証書遺言へ切り替えを決断し、手数料4万3,000円+遺言加算1万1,000円で正式作成しました。
証人は公証役場紹介(1名5千円)で手配し、作業は40分で完了。

Aさんは「費用はかかったが安心料と考えれば安い」と話します。
統計上、遺言あり遺産分割事件の調停率は18%
Aさんのケースでも、兄妹からの質問は一切なく、「付言の一文が救いだった」と長男は笑顔で語りました。

高齢化と相続登記義務化が進む今、遺言書は家族への最後の心遣いです。
この記事が、読者の皆さまの“争族ゼロ”への第一歩となれば幸いです。

免責事項

こちらの記事は相続に関する一般的な知識提供を目的としています。記事内容は執筆時点での情報に基づいておりますが、法律や規制は変更される可能性があるため、最新かつ正確な情報については関連機関や専門家にご確認ください。 当サイトに掲載されている専門家選定方法や見積もり比較のポイントは、あくまで参考情報であり、特定の相続専門家を推薦・保証するものではありません。実際の契約や専門家選定においては、ご自身の責任において十分な調査と検討を行ってください。 また、本記事で紹介している事例やトラブル回避策を実践されても、すべての問題が解決されることを保証するものではありません。個々の状況や条件によって適切な対応は異なる場合があることをご理解ください。 当サイトの情報に基づいて行われた判断や行動によって生じたいかなる損害についても、当サイト管理者は責任を負いかねますので、あらかじめご了承ください。

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松田 悠志
㈱ビーシアップ代表。宅建士・FP2級。人材採用・営業・Webマーケ・資産形成を支援し、採用コンサルやマネープラン相談も対応。株12年・FX7年のスイングトレーダー。ビジネス・投資・開運術を多角的に発信し、豊かな人生を後押しします。