宅地建物取引士(以下、宅建士)の資格をお持ちの方の中には、「もっと収入を上げたい」「キャリアアップを図りたい」「独立開業して安定的に稼ぎたい」などと考えている方が少なくありません。そこで注目されているのが、行政書士の資格をプラスしてダブルライセンスを取得する方法です。
不動産のプロである宅建士と、法律手続きの専門家である行政書士を組み合わせることで、より広範囲の業務をカバーできるのはもちろん、収入アップや独立・起業といったキャリアの可能性を大きく広げられます。本記事では、宅建士と行政書士のダブルライセンスを取得するメリット、学習方法、具体的な業務内容、収入アップのコツ、そして独立開業のポイントなどを詳しく解説します。ぜひ参考にしていただき、資格取得&キャリアアップの一助としてください。
Contents
宅建士×行政書士ダブルライセンスとは
法律系国家資格の組み合わせで業務の幅を拡大
宅建士(宅地建物取引士)は、不動産取引の専門家として重要事項説明や契約の仲介業務を行う資格です。一方の行政書士は、官公署に提出する書類の作成・代理、その他法的書類の作成等を業務とする法律手続きの専門家です。それぞれ得意とする分野が異なりつつも、共通して法律に基づく実務を担うという特徴があります。
この2つの資格を組み合わせることで、下記のようなメリットが生まれます。
- 不動産関連と法的手続きをワンストップで扱える
- 業務の幅が広がり、収入源の多角化が可能
- 他の専門家との差別化や付加価値の向上
- 宅建士試験で学んだ民法などの法律知識を行政書士試験に活かせる
特に「宅建士としては既に活動しているが、さらなる売上を伸ばしたい」「将来的に独立開業や起業を考えている」という方にとっては、大きなチャンスとなるダブルライセンスです。
宅建士が行政書士を取得するメリット
1. 不動産取引と法的手続きを一括サポート
宅建士は不動産取引に精通しており、売買仲介や賃貸管理、土地・建物の評価など幅広く対応できますが、相続や契約書の作成・チェック、許認可の取得といった「法的な手続き」については行政書士の職域にあたるものが多くあります。
ダブルライセンスを取得すれば、たとえばこんなワンストップサービスが実現します。
- 相続が発生した際の遺産分割協議書作成、不動産の名義変更、売却または賃貸の仲介
- 開発行為や農地転用の許可申請から実際の売買仲介まで
- 外国人投資家のビザ申請&不動産投資アドバイス
- 企業や個人事業主の会社設立や営業許可申請、不動産活用コンサル
顧客は、別々の専門家に依頼する手間や費用をかけずに済むため、大きな付加価値を提供できます。
2. 収入アップ&リスク分散
不動産取引は景気変動の影響を受けやすいため、宅建士の収入はときに波がある場合もあります。しかし、行政書士業務を同時に展開することで、景気が停滞して不動産仲介件数が落ち込んだとしても、許認可の取得や相続関連の書類作成、各種法務手続きなどから安定的な収入が得られます。
また、行政書士業務だけに集中するよりも、宅建士としての不動産知識や人脈を活かして高額案件を獲得できる可能性が高まることも大きな利点です。単価の高い仕事(相続や企業法務関連など)を受注できれば、短期間で大幅な収益増を狙うことも不可能ではありません。
3. 他の専門家との差別化
行政書士のみの資格所有者は全国に多数います。また、宅建士についても登録者数は多いです。しかし、この両方を持っている人はまだ少数派と言えます。差別化としては非常に大きく、特に不動産関連の業務に強い行政書士として「不動産×法務」を強みに打ち出すことができます。
「相続や遺言作成を依頼したいけど、不動産絡みの相談もしたい」「農地転用や開発許可をワンストップでお願いしたい」というニーズを持つ方が多いため、顧客から選ばれやすい存在になれるでしょう。
4. 試験範囲の重複による学習効率
宅建士と行政書士は、民法をはじめ一部科目が重複しているため、ゼロから法律を学ぶ初学者より短期合格を目指しやすいのが特徴です。
- 宅建士試験で学んだ民法の基礎知識が行政書士試験にも活きる
- 法律用語や条文を読む習慣が既に身についている
- 独学や通信講座でもスムーズに学習を進められる
行政法や憲法といった新たに覚える分野もありますが、宅建士時点で持っている知識をベースにすれば、十分に短期合格が可能です。
行政書士試験の概要と勉強法
試験の基本情報
- 試験日:例年11月の第2日曜日
- 試験形式:択一式(5肢択一・多肢選択)、記述式3問
- 試験科目:行政法、民法、憲法、商法・会社法、一般知識
- 合格率:おおむね10%前後
宅建士試験よりもやや難易度は高いですが、しっかりと学習すれば合格は十分に狙えます。
効率的な学習のポイント
- 行政法を重点的に
行政書士試験では、行政法が最も配点が高く、出題数も多め。行政書士業務の根幹にもなる科目なので、理解を深める必要があります。行政手続法、行政不服審査法、行政事件訴訟法などを体系的に押さえましょう。 - 民法は発展的な知識を強化
すでに宅建士試験で学んだ民法の基礎があるとはいえ、行政書士試験ではより応用的な問題や判例が出題されることがあります。事例演習や過去問の解説を丁寧に読み込み、条文をしっかり確認して理解を深めましょう。 - 過去問演習で傾向を把握
行政書士試験は出題傾向が比較的安定しているため、過去問の活用が非常に有効です。少なくとも過去5年分、理想を言えば10年分程度を徹底的に解き、解説を読み込むことで実戦力が身に付きます。 - 記述式対策を早めに始める
宅建士試験はマークシート方式のため、記述式に慣れていない方も多いはずです。行政書士試験の記述式は3問出題され、それぞれ40字程度で法律の条文や判例を正確に書き下す力が求められます。文章構成力やキーワードの使い方も重要なので、早い段階から演習しておきましょう。 - スケジュール管理を徹底
働きながらの受験や宅建士業務と並行しての学習となる方も多いでしょう。1日2〜3時間の勉強時間をコツコツ積み重ね、試験までの学習計画を定期的に見直すことが成功のカギです。通信講座やスクールを活用するのも良い方法です。
ダブルライセンス取得後の働き方・収入アップ戦略
1. 不動産業務と行政書士業務を両立
宅建士として不動産仲介やコンサルティングを行いながら、行政書士業務(許認可申請、相続手続きなど)も並行して請け負う方法です。既存の顧客に対して、新たなサービスを提案できるので顧客単価の向上が見込めます。
たとえば、不動産売却を依頼してきた顧客が「実は相続で取得した土地で遺言書の内容についても相談したい」となった際に、宅建士×行政書士ならスムーズにトータルサポートが可能です。1つの案件から複数の業務報酬を得ることができ、収益を上げやすい体制を築けます。
2. 行政書士事務所を開業して専門特化
宅建士資格を活かしつつ、行政書士事務所として特定分野に特化するのもおすすめです。特に不動産関連や相続・遺言、農地転用などは需要が高く、宅建士の知見が活きる場面が多く存在します。
たとえば、農地法関連の許認可申請・土地活用コンサルに特化した行政書士事務所を作れば、農家や土地オーナーからの相談を幅広く受けられます。都市近郊の農地を活用したい、宅地転用したいという依頼は少なくありません。こうした専門性の高い領域を攻めるほど、報酬単価も高くなる傾向があります。
3. 他士業との連携でさらに広がるチャンス
ダブルライセンス取得によって「不動産と行政手続き」をカバーできるようになりますが、案件によっては税理士や司法書士、弁護士など他の士業の力が必要になる場面も出てきます。そこで、業種を越えた人脈を作っておくと、相互に案件を紹介し合えます。
- 相続税申告が必要な場合:税理士との連携
- 相続登記や会社登記が必要な場合:司法書士との連携
- 訴訟や紛争解決が必要な場合:弁護士との連携
チームを組むことでワンストップサービスの幅がさらに広がり、顧客が安心して依頼できる環境を整えられます。
4. Web集客とマーケティングの重要性
行政書士として独立を考えるなら、集客の仕組みを作ることが必須です。資格の取得だけでは仕事は自然に舞い込んできません。WebサイトやSNSを活用した情報発信、SEO対策による検索エンジンからの流入獲得、異業種交流会や地域のビジネスネットワークへの参加など、積極的な取り組みが重要です。
特に、「宅建士×行政書士」という明確な強みを打ち出せるホームページを作り、ブログや事例紹介などを通じて役立つ情報を発信すれば、検索エンジン経由で集客しやすくなります。「農地 転用 行政書士」「相続 不動産 ワンストップ」などのキーワードを狙ったコンテンツを作るのも効果的です。
実際にどのくらい稼げるの?収益事例を紹介
事例1:相続業務+不動産売却
相続が発生した際、遺産分割協議書の作成を行政書士として受任し、報酬を10〜15万円ほどいただくケースがあります。さらに、その相続物件を売却したいという依頼を受ければ、宅建士としての仲介手数料(物件価格の3%+6万円が目安)を獲得可能。仮に2,000万円の売却であれば、仲介手数料は約66万円ほどになります。
つまり、ひとつの相続案件で数十万円レベルの報酬につながることも珍しくありません。これが定期的に発生すれば、大きな収入源になります。
事例2:農地転用+開発許可
農家や土地オーナーから「農地を宅地にしたいが、どのような手続きが必要かわからない」「建物を建てる際の開発許可を取得してほしい」という相談を受けるケースです。行政書士として許可申請代行を請け負うだけでなく、その後の売買や賃貸などの不動産取引まで一貫して支援できれば、合わせて大きな収益を得られます。
農地転用許可の申請手数料として数万円〜十数万円程度を設定している事務所も多く、プラスでコンサル料や不動産仲介手数料が加算されるため、単発ながら高単価な案件になることがあります。
行政書士取得後、独立開業する手順と注意点
1. 行政書士登録の手続き
行政書士試験に合格した後は、日本行政書士会連合会への登録が必要です。登録費用や入会金は各都道府県の行政書士会により異なりますが、トータルで20〜30万円程度かかるケースが多いです。
- 試験合格後の合格証明書を受け取る
- 所属を希望する都道府県の行政書士会に登録申請
- 入会金や会費を納付し、登録完了
登録が完了すると晴れて行政書士として活動が可能になります。
2. 事務所の設立
独立開業する場合、事務所を用意する必要があります。自宅を事務所にすることも可能ですが、看板の設置や周辺環境の要件など、各都道府県会の規定に従う必要があります。宅建士としての不動産業務も並行する場合は、宅地建物取引業の免許や保証協会への加入金などを考慮し、数百万円の資金が必要になることもあります。
3. マーケティング戦略の立案
開業しただけでは顧客は集まりません。ホームページやSNS、ブログなどを活用し、SEO対策を行うことで、あなたの事務所を見つけてもらう仕組みを作る必要があります。特に「不動産に強い行政書士」「相続や農地転用に特化」など専門性を明確に打ち出すと、ターゲット顧客が見つけやすくなるでしょう。
4. 他士業とのネットワーク作り
前述の通り、行政書士業務を行うにあたっては他士業との連携が効果的です。弁護士や司法書士、税理士との連携により、より広範囲の案件を受けられるようになります。初期のうちは、地域の異業種交流会や士業向けの勉強会などに参加し、人脈を積極的に広げていくことが大切です。
宅建士×行政書士ダブルライセンスを目指す方への学習スケジュール例
宅建士資格をすでに保有している方を想定した、1年間の学習スケジュール例を紹介します。
0〜1か月目:基礎情報の収集と計画策定
- 行政書士試験の概要を把握する(合格率、科目、出題傾向など)
- 教材の選定(市販テキスト・問題集、通信講座など)
- 1年間の大まかな学習スケジュールを作る
2〜4か月目:インプット中心(民法・憲法・行政法)
- 民法:宅建試験の知識を再確認し、判例や応用的な箇所も学習
- 行政法:行政手続法、行政不服審査法、行政事件訴訟法などを体系的に学ぶ
- 憲法:基本的人権、統治機構などの基礎を把握
5〜7か月目:過去問演習+アウトプット強化
- 過去5年分の問題を通しで解き、解説を熟読
- 記述式問題に慣れるための演習開始
- 理解不足や苦手分野を重点的に復習
8〜9か月目:応用力&弱点補強
- 模擬試験や予備校の模試を受験し、時間配分を確認
- 苦手科目(商法など)を集中的に補強
- 合格者の体験談や勉強法を参考に学習効率を高める
10〜11か月目:総仕上げ&記述式対策
- 全科目の総復習を実施し、ポイントをまとめる
- 記述式問題の反復練習(模範解答を分析し、要点を確実に押さえる)
- 直前対策講座や予想問題集も活用
12か月目:直前対策&本試験
- 試験直前に過去問を再度通しで解き、イメージを固める
- 試験前日は体調管理を徹底し、睡眠をしっかり確保
- 本試験に臨む
モチベーション維持のために
宅建士と行政書士を両立しながら勉強となると、時間的・精神的に大変なこともあります。モチベーション維持のために、以下の点を意識してみましょう。
- 学習目的を明確にする:「行政書士取得で年収を上げる」「不動産会社をワンストップ事務所にする」など目標を言語化
- 小さな成功体験を積む:過去問1回分を解き終わるたびに自分を褒める、SNSや学習記録アプリで進捗を可視化する
- 休日にご褒美を設定する:好きなスイーツや少し良い食事で達成感を味わう
- 同じ目標を持つ仲間を見つける:SNSや勉強会、オンラインコミュニティで情報交換
まとめ:ダブルライセンスはあなたの未来を広げる最強の武器
宅建士×行政書士のダブルライセンスは、多くのメリットが期待できます。
- 不動産の専門知識と法律手続きのスキルを掛け合わせて顧客満足度を高める
- 景気変動に強い安定収入を確保できる
- 他者との差別化や高単価業務の獲得が容易に
- 起業・独立が比較的しやすい
- 宅建士の民法知識を活かして学習時間を効率化できる
もちろん、行政書士試験の合格にはそれなりの勉強時間や努力が必要です。しかし、その努力を乗り越えた先には、不動産と行政手続きの両輪で利益を生み出すという大きなリターンが待っています。
「さらに収入を伸ばしたい」「独立開業をして安定を得たい」「不動産+法律のプロとしてブランドを確立したい」という熱い想いがある方は、ぜひ今すぐ行動を開始してみましょう。あなたの未来を切り開く鍵となるのが、宅建士×行政書士のダブルライセンスなのです。
最後までお読みいただきありがとうございました。この記事がダブルライセンス取得を検討している方の参考になれば幸いです。ぜひ、一歩踏み出して行政書士の学習を始め、宅建士の知識と合わせて活躍の場を広げてください。あなたの挑戦を応援しています!