宅地建物取引士(以下、宅建士)は不動産業界の登竜門的資格として有名ですが、近年の不動産業界は専門性・多様性の要求がますます高まっています。そこで「宅建士の資格を活かしつつ、さらに収入を伸ばしたい」「宅建士を取得したはいいが、次の収入アップにはどの資格を取れば効果的?」と悩む方が増えてきました。
本記事では、宅建士が次に狙いたいダブルライセンス(=複数資格の保有)の魅力やメリット・デメリット、学習方法、そして具体的な資格と取得のコスパまで詳しく解説します。少しでも早く・確実に収入を伸ばすための最短ルートや、おすすめの資格取得プランもあわせてご紹介します。
さらに、ダブルライセンス以外の収入アップの手段も含めて解説し、皆さんが不動産業界で長く活躍できるよう役立つ情報を網羅しました。宅建士としてのキャリアに悩んでいる方や、これから不動産業界でステップアップしたい方はぜひ最後まで読んでみてください。
Contents
宅建士がダブルライセンスを狙うべき理由
まずは、宅建士がなぜダブルライセンスを狙うのか、その背景から確認していきましょう。現代の不動産業界では、売買や賃貸契約だけでなく、賃貸管理やマンション管理、相続・遺言などの手続き、建築知識、資金計画に関するコンサルティングなど、多岐にわたる業務が求められています。単に不動産取引だけを行うだけではなく、「ワンストップ」で顧客のニーズに対応できる専門家が重宝される時代になっているのです。
- 業務範囲の拡大: 宅建士資格だけでは対応しきれない許認可申請や各種管理業務、法律手続きなどに携われるようになる
- 収入アップ: 資格手当が支給されたり、専門性が高い業務を任されたりして年収が大きく上がるケースも少なくない
- 他資格者との差別化: 不動産関連資格を複数持つことで「総合力の高い専門家」として業界内での希少価値が高まる
- 顧客満足度の向上: 賃貸・売買・管理から法的手続き、資産運用・相続相談までトータルなサポートができる
こうした理由から、宅建士資格を活かしつつ、ダブルライセンスを取得してさらに専門性を伸ばしていくことが、キャリアアップや収入アップにおいて非常に効果的といえます。
宅建士と相性が良い代表的な資格5選
宅建と組み合わせると相乗効果が高く、かつ比較的多くの方が狙いやすい資格を厳選してご紹介します。自分の興味やキャリアプランに合わせ、ぜひ参考にしてみてください。
1. 賃貸不動産経営管理士
【どんな資格?】
賃貸不動産経営管理士は、賃貸住宅の管理に特化した国家資格です。オーナーと入居者の間に立ち、募集から契約・管理・トラブル対応、退去精算など幅広い業務を行います。2021年に国家資格化されたことで注目度が高まり、試験の難易度は徐々に上昇傾向にあるものの、宅建士に比べると合格しやすいとされています。
【メリット】
- 宅建士が担う契約業務とセットで、「入居後の管理」まで一貫サポート可能
- 不動産管理会社や大手賃貸仲介会社での就職・転職で差別化が図れる
- 国家資格化により社会的評価が上昇し、資格手当やポジションアップに繋がりやすい
- 宅建試験で学んだ民法や不動産法令が一部重複しており、学習の効率が良い
【デメリット】
- まだ宅建士ほどの知名度がないため、資格の効果を実感できるかは企業次第
- 賃貸不動産経営管理士の試験範囲は管理実務が中心のため、宅建とは異なる分野も学ぶ必要がある
【難易度・勉強時間・合格率の目安】
合格率は30%前後(年度により変動あり)。
勉強時間は100~200時間程度。
宅建と比べるとやや易しめ~同等程度と言われています。
【活かし方・収入アップ事例】
不動産会社で賃貸仲介+管理部門の両方を任されるようになり、業務範囲拡大とともに資格手当が月1万円支給されるケースなどがあります。また、賃貸管理のコンサルティングができるようになるため、オーナーとの深い信頼関係を築け、将来的には独立開業の選択肢も見えてくるでしょう。
2. 管理業務主任者
【どんな資格?】
管理業務主任者は、マンション管理に関わる国家資格です。マンション管理会社と管理組合の間で重要事項を説明し、管理事務報告を行う法定業務を担います。分譲マンションの管理組合をサポートするための法律・建物設備知識が求められ、宅建との重複範囲はそこそこありますが、より「管理組合運営」「区分所有法」などに踏み込んだ内容が中心です。
【メリット】
- マンション管理業界で必須となる場合が多く、就職・転職で有利
- 管理組合運営の専門知識を身につけることで、分譲マンションの売買仲介+管理相談をワンストップで対応
- 宅建士以上にマンション管理に詳しい人材として現場で頼られる
- マンション管理士試験の一部科目免除がある
【デメリット】
- 知名度はまだ宅建士ほど高くはなく、業務が専業化している
- クレーム対応や管理組合との折衝など、精神的に大変な場合もある
【難易度・勉強時間・合格率の目安】
合格率は例年20~25%。
勉強時間は300時間前後のイメージ。
宅建士試験と同程度かやや易しめです。
【活かし方・収入アップ事例】
マンション管理会社に勤務すると、管理組合・理事会への提案や修繕計画立案など、より専門性の高い仕事を任されます。宅建士とダブル取得していることで管理物件の売買仲介も手掛けやすくなり、管理+仲介で収益を増やす仕組みづくりが可能。また、経験を積んで管理職になると収入アップに直結します。
3. マンション管理士
【どんな資格?】
マンション管理士は、マンション管理のコンサルタント的な立ち位置で、管理組合の運営や建物維持管理に関してアドバイスを行う国家資格です。管理業務主任者とよく比較されますが、マンション管理士はさらに高度な専門知識を持ち、管理組合と一緒に長期修繕計画やトラブル解決に踏み込むなど、より総合的なコンサル力が求められます。
【メリット】
- 宅建+マンション管理士で「マンション売買~管理コンサル」まで全てを担える
- 管理組合との信頼関係が築きやすく、独立開業も視野に入れられる
- マンションの高経年化が進む中、専門家としてのニーズが高まっている
【デメリット】
- 試験の難易度が高く、合格率は10%前後とかなり厳しい
- マンション管理士自体の知名度は決して高くない(ただし業界内需要は拡大傾向)
【難易度・勉強時間・合格率の目安】
合格率は10%前後。
勉強時間は500時間程度。
宅建士や管理業務主任者よりさらに難しいといわれています。
【活かし方・収入アップ事例】
管理会社で管理組合のコンサルを行いつつ、マンション売買の仲介にも関わるなど業務の幅が大きく広がります。また、マンション管理士として独立し、複数の管理組合からコンサル契約を得ている方もいます。マンション管理特化型のコンサルタントとして顧問契約を複数持てれば、年収1,000万円以上を目指すことも可能です。
4. 不動産鑑定士
【どんな資格?】
不動産鑑定士は、不動産の価値評価の専門家として、不動産鑑定評価書の作成を独占業務としています。宅建士は取引(仲介・売買など)を中心に扱うのに対し、不動産鑑定士は不動産そのものの「適正価格」を算定する役割を担います。国家資格の中でも最難関クラスの難易度です。
【メリット】
- 不動産鑑定の独占業務を行えるため、不動産業界最上位レベルのステータスを得られる
- 不動産投資や開発、相続評価など、より高度な領域でも活躍可能
- 宅建資格の知識が鑑定理論や法律分野で活かせる
- 独立開業すれば、成功時の報酬は非常に大きい
【デメリット】
- 合格率5%前後の超難関。学習時間は2,000時間以上が目安
- 取得費用・実務修習費用など経済的負担が大きい
- そもそも就職できる企業数も限られ、資格を活かすポストは狭き門
【難易度・勉強時間・合格率の目安】
短答式・論文式の2段階試験で合格率は5%前後。
学習時間は2,000~3,000時間以上とも。
【活かし方・収入アップ事例】
大手鑑定事務所に就職すれば、不動産開発や投資コンサルティングを手掛けるポストに就く場合もあります。独立すれば受任件数次第で年収1,000万円以上も狙えます。売買仲介+鑑定評価の両方ができる専門家として珍重されるケースもあり、宅建とセットならさらに差別化が可能です。
5. 行政書士
【どんな資格?】
行政書士は、官公署に提出する書類の作成・提出手続き代行などを行う法律系国家資格です。不動産業では、開発行為や農地転用などの許認可申請、相続や遺言書作成支援などで活躍します。宅建士が契約締結前後の仲介業務に強いのに対し、行政書士は官公庁関連の書類手続きを幅広く扱えるのが強みです。
【メリット】
- 不動産取引における各種許認可申請や法律的な相談にも対応可能
- 相続・遺言など財産管理領域にも踏み込めるため、顧客のライフプランに長期で関われる
- 独立開業しやすく、宅建士事務所+行政書士事務所でのワンストップサービスが実現
- 民法知識や法令分野が宅建試験と重複しており、学習効率が良い
【デメリット】
- 行政書士試験は宅建士より難易度が高く、合格率10%前後
- 業務範囲が非常に広いため、専門特化しないと埋もれる可能性がある
- 開業直後は集客が難しく、収入が安定するまで時間がかかるケースも
【難易度・勉強時間・合格率の目安】
合格率は例年10%前後。
勉強時間は800時間程度が目安。
【活かし方・収入アップ事例】
不動産売買の仲介業務を行いながら、開発許可や農地転用の申請などを自社内で完結させられれば、サービスの付加価値が高まります。また、相続問題や遺産分割協議書の作成など法務関連業務も請け負えるため、お客さまから見て「この事務所に任せれば、すべて解決してくれる」という存在になれるのが強みです。
ダブルライセンス資格の費用・学習時間目安
資格取得にかかる費用は、受験料・講座受講料・登録費用など含めると大きな出費となる場合があります。以下はあくまで目安ですが、ダブルライセンスを目指すうえでの参考にしてください。
資格 | 受験料 | 講座受講料 | 勉強時間 | 合格率 |
---|---|---|---|---|
賃貸不動産経営管理士 | 12,000円 | 20,000円~90,000円 | 100~200時間 | 30%前後 |
管理業務主任者 | 8,900円 | 40,000円~100,000円 | 300時間 | 20~25% |
マンション管理士 | 9,400円 | 60,000円~130,000円 | 500時間 | 10%前後 |
不動産鑑定士 | 12,800円 | 300,000円~500,000円 | 2,000時間以上 | 5%前後 |
行政書士 | 7,300円 | 40,000円~100,000円 | 800時間 | 10%前後 |
特に不動産鑑定士は難関度が群を抜いており、費用・時間的負担ともに大きい反面、取得すれば非常に高い専門性が手に入ります。また、管理業務主任者や賃貸不動産経営管理士は宅建試験の知識が活きるため、勉強効率が高いとされています。「自分が将来どうなりたいか?」によって最適な資格は異なるので、あらためてキャリアプランを見つめ直すことが重要です。
ダブルライセンス以外の収入アップ方法
ダブルライセンス以外にも、宅建士の収入を増やす方法は多彩です。以下のような戦略も併せて検討すると、より早い段階で収益アップを実現できるかもしれません。
1. スキルアップ・専門性の強化
- 研修・セミナー受講: 不動産流通推進センターなどが開催する宅建実務講座、投資用不動産セミナー、建築やリフォームに関する講習を受ける
- ITスキル向上: 不動産営業支援ソフトや顧客管理(CRM)、Excelの活用で業務効率を上げる
- 語学力: 外国人投資家・購入希望者が増えるなか、英語や中国語でのやり取りができれば大きな武器に
こうしたスキルアップにより、自社内での評価を高めて役職に就いたり、専門家として独自のポジションを確立したりできます。特定分野への特化も大きな差別化要因となるでしょう。
2. 不動産投資に挑戦
宅建士として培った不動産市況や物件評価、法令知識を活かし、自ら投資家として不動産投資を行うケースも増えています。例えば区分マンション投資や戸建投資など、小規模なものから始めるのもありです。投資家目線を持つことで、業務にもプラスのフィードバックが生まれます。
3. 転職・キャリアチェンジ
「今の会社では年収が頭打ち」「宅建資格をもっと評価してもらえる職場に移りたい」という場合は、転職エージェントや不動産専門の求人サイトを活用するのがおすすめです。特に大手不動産会社やデベロッパーなどは、資格手当の額や給与体系が整備されていることが多く、キャリアアップにつながる可能性が高まります。
4. 独立開業
宅建士は、不動産会社を開業する際に必須の国家資格です。将来的に独立して自分の会社を立ち上げたい方は、まずは不動産仲介会社で経験を積むと良いでしょう。開業すれば仲介手数料をダイレクトに収益化できる一方、顧客開拓や事務所経営のリスクをすべて負う必要があるため、計画性が必須です。
ダブルライセンス取得の学習方法・合格のコツ
ここまでご紹介してきたように、管理業務主任者や賃貸不動産経営管理士、行政書士などの資格を取得するには、それぞれ相応の勉強時間・対策が必要です。宅建との重複範囲を意識した効率的な学習が、合格への近道となるでしょう。
- 通信講座の活用: アガルート、スタディング、TAC、LECなどが提供する通信講座は、動画やオンライン教材が充実しており、隙間時間を活かして学習できます。
- 過去問中心の反復: 不動産系資格は毎年の出題傾向が類似しやすいため、過去問演習が非常に重要。知識を定着させるためにも、テキストと過去問集を繰り返し使いましょう。
- 宅建知識を活かす: 民法や不動産関連の法令、税制など、宅建で学んだ基礎知識は他の不動産系資格でも活きる部分が多いです。既存の知識をうまく流用して学習効率を高めましょう。
- 試験スケジュールを把握: 賃貸不動産経営管理士、管理業務主任者、マンション管理士など、年内に試験日が集中している資格もあります。宅建と同年ダブル受験を狙う方は学習計画を綿密に。
- モチベーション管理: 短期合格を目指す場合、一定期間を集中して学習する必要があります。SNSや学習コミュニティに参加し、お互いに励まし合うのも有効です。
将来性とキャリアビジョン|自分に合ったダブルライセンスを選ぶポイント
今後の不動産業界は、人口減少・高齢化・空き家増加などの社会的要因に直面すると同時に、AI・IT技術の進化、リモートワーク普及によるライフスタイル変化など、多彩な変化が進んでいくと予想されます。こうした環境下で柔軟に対応できる人材が求められており、ダブルライセンス取得はその手段として有効です。
- 【不動産管理特化】賃貸不動産経営管理士+宅建、管理業務主任者+宅建、マンション管理士+宅建
- 【法務・手続き特化】行政書士+宅建、司法書士+宅建
- 【評価・コンサル特化】不動産鑑定士+宅建、ファイナンシャルプランナー+宅建
「どこで働きたいか」「どんなキャリアを積みたいか」「独立開業を視野に入れているか」など、自分の将来像に応じた資格選びが大切です。たとえば、早めに安定収入を得たい方は、難関度が比較的低めの管理業務主任者や賃貸不動産経営管理士を狙うのも良いですし、弁護士や司法書士、税理士など強力な法律系資格に挑戦して大きくステップアップする道もあります。
まとめ|宅建士がダブルライセンスで収入を伸ばす最短ルート
本記事では、宅建士が次に取るべきおすすめの資格や、ダブルライセンスのメリット・デメリットを解説してきました。重要なのは「自分のキャリアプランに合う資格を見定め、効率的に学習し、早期に取得すること」です。
- 宅建士は不動産業界の基礎資格。さらに専門性を深めることで収入アップのチャンス拡大
- 賃貸不動産経営管理士・管理業務主任者などは宅建の知識が活かせ、学習負担も比較的少ない
- 行政書士・不動産鑑定士など難関資格は費用・時間かかるが大幅なキャリアアップが期待できる
- ダブルライセンス以外にも、スキルアップ・転職・独立開業・副業など収入を伸ばす手段はいくつもある
「これからどの資格を取れば良いのかわからない」「なるべく早く収入を上げたい」と感じる方は、まずは宅建の取得で培った知識を活かせる資格(管理業務主任者や賃貸不動産経営管理士など)から検討してみましょう。また、すでに現場経験が豊富な方は、より難関な資格や専門性の高い資格に挑戦し、不動産業界のスペシャリストとして差別化を図るのも戦略的です。
資格取得はゴールではなく、新しいキャリアを切り拓くための手段です。取得後に実務でどう活かすか、将来的にどう展開していくかをイメージしながら学習を進めましょう。変化の激しい不動産業界で生き抜くために、ぜひダブルライセンスを視野に入れて実力を磨いてください。あなたの次なる飛躍を応援しています!