「マンション解体 費用」と検索されている方の多くは、老朽化・建て替え・土地売却など、何らかの理由で既存のマンションを解体しなければならない状況に直面していることでしょう。
しかし、戸建てより規模が大きく構造が頑丈な「マンション」の解体は、どれくらい費用がかかるのか、どのような業者を選べばいいのか、不安や疑問が尽きないはずです。
本記事では、東京を中心とした中規模マンションを例に、解体費用の相場、内訳、近隣対策や関連法律、補助金の活用法などを一挙に解説していきます。
さらに、解体工事でよくあるトラブルと対策、そして解体後の土地活用のポイントも盛り込み、初めてマンション解体を検討する方にもわかりやすいようにまとめました。
ぜひ最後までお読みいただき、あなたのマンション解体計画の一助としてご活用ください。
Contents
マンション解体費用の相場
戸建てに比べ、マンション解体は躯体が鉄筋コンクリート造(RC造)や鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)など重厚な構造が多く、大規模になるほど費用も増大しがちです。以下はRC造やSRC造を含む、マンション解体費用の「ざっくりとした相場感」です。
延床面積あたりの解体費用
建物の構造・階数によって解体単価は大きく異なりますが、東京近郊でよく言われる一般的な坪単価(1坪≒3.3㎡)の目安は下記のとおりです。
- 鉄骨造(S造):2.5万~5万円 / 坪
- 鉄筋コンクリート造(RC造):4万~8万円 / 坪
- 鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造):4.5万~10万円 / 坪
たとえば、延床30坪の住戸が20戸あるRC造マンションであれば、建物全体の延床面積は600坪ほど。坪5万円~8万円とすると、3000万円~4800万円程度が解体費の目安です。また、「マンション1戸あたり200万円前後」というざっくりした試算もあります。ただし、実際は条件次第で1戸あたり100万円台~1000万円近くまで変動するため、必ず現地調査を経た詳細見積もりをとることが大切です。
階数・立地による上振れ要因
マンションが高層になるほど、足場組立や重機の使用が増え、また隣地との距離が近い密集地の場合、近隣対策(騒音・振動・粉じん防止など)にコストがかかります。
東京23区内は、敷地が狭く重機搬入が難しいケースも多いため、同じ延床面積でも郊外より割高になる傾向が強いです。周囲に配慮した手作業中心の解体や、道路使用許可の取得・誘導員配置などが必要になれば、追加費用が発生します。
近年の費用上昇傾向
近年は、人件費上昇・廃棄物処分費の高騰・アスベスト規制強化などの要因により、解体費用が全体的に上昇する傾向にあります。特に大都市圏では処分場のキャパシティの問題や若手職人不足もあり、今後も大幅に下がる見込みは薄いと考えられています。
「早めに解体を検討したほうが結果的にコストを抑えられる可能性がある」という専門家の声も多いため、解体が必要とわかった段階で複数社に相見積もりをとるなど、早めの準備を進めましょう。
解体費用の内訳
解体費用の見積もりには、さまざまな項目が含まれます。大まかには以下のような内訳となり、それぞれの割合によって最終金額が大きく変動します。
仮設工事費
解体工事に伴い仮設トイレや仮囲い、養生シート、仮設電気・水道の引込みなど、一時的に必要な設備を設置・撤去するための費用です。
解体費用全体の5%前後と比較的小さな項目ですが、近隣への粉じんや騒音対策に不可欠のため、省略は難しいと考えましょう。
労務費(人件費)
解体作業員、重機オペレーター、現場監督などに支払う「人件費」です。大規模マンション解体では、解体工事費の3~4割を占めることも多く、最も大きなウェイトを占めることも珍しくありません。
作業日数が延びれば人件費はさらに増加しますが、むやみに作業員を減らすと安全管理がおろそかになる恐れがあるため、適正な人員配置による効率化が鍵となります。
重機・設備費
解体に用いるクレーンやショベル(ユンボ)、ブレーカー、高所作業車などの「重機レンタル料・運搬費」です。高層マンションでは大型重機が必要となり、この項目が高額になる可能性があります。
また、業者によっては重機費用を他項目(人件費や産廃処理費)に含めて計上する場合もあるため、見積書の項目名に注意しましょう。
産業廃棄物の運搬・処分費
解体で発生するコンクリートがれき、金属くず、木材、石膏ボードなどの廃材を収集・運搬・処分場で処理する費用です。
RC造の解体では大量のコンクリートがれきが発生し、運搬・処分費が大きく膨らむケースが多いです。都市部は処分場までの距離が遠く、処分費の単価が高い傾向もあるため、解体費用全体の3~5割程度を占めることも珍しくありません。
付帯工事費
建物本体以外の「門扉・塀・庭木・物置・駐車場設備」などを撤去する場合、別途「付帯工事費」がかかります。例えばブロック塀の撤去は、平米単価で5千円~1万円前後が加算される、といった形で見積もりに計上されます。
規模によっては数十万円以上の追加費用につながるため、事前の現地調査でしっかり確認してもらいましょう。
諸経費
現場管理費、近隣挨拶の粗品代、道路使用許可の手数料、工事保険料など、その他の雑多な費用が「諸経費」としてまとめて計上されることが多いです。「諸経費〇%」という一括記載になっている場合も多いため、見積書でどのように計上されているか業者にしっかり確認することをおすすめします。
アスベスト処理費用(追加費用)
2000年代前半までに建築されたマンションに多いのが、アスベスト含有建材の使用です。アスベストがある場合、解体前に専門調査を行い、石綿除去工事が義務付けられています。
アスベスト除去は、厳重な養生と特殊な処理が必要なため費用が高額になりやすく、別途高額な見積が発生する可能性があるので要注意です。都道府県や市区町村によっては補助制度を設けているところもあるため、自治体のHPをチェックしてみましょう。
業者による費用差
解体費用は、依頼する業者によって数百万円単位で差が出ることもあります。特に東京など業者数が多いエリアでは、保有重機や処分場ルート、人件費などの違いから、同規模同構造でも見積額が大きく異なるケースが珍しくありません。
したがって、複数社から相見積もりをとり、費用内訳を比較検討することが重要です。極端に安い場合は不法投棄や手抜き工事のリスクがあるため、信用できる業者を慎重に選びましょう。
解体費用に影響する主な要因
上記で解説した内訳以外にも、以下のような要因でマンション解体費用は変動します。
建物の階数・構造
同じ延床面積でも、階数が多いマンションは足場の規模が大きくなり、騒音・振動対策も複雑になるため、単価が上がりやすい傾向にあります。
また、RC造やSRC造など構造自体が頑丈で重いほど、重機使用や廃棄物排出量も増え、処理費や人件費に影響します。
立地条件・周辺環境
東京23区内など、密集市街地での解体は、近隣配慮が徹底的に求められます。作業スペースが十分に取れず、重機搬入が制限される場合、手作業解体が増えて費用アップするケースもあるでしょう。
また、道路使用許可が取りづらい場所や、通行量の多い道路沿いだと、誘導員追加によるコスト増が考えられます。
アスベスト含有の有無
前述の通り、アスベスト(石綿)含有建材があると調査・除去費用が高額になる恐れがあります。現在は大気汚染防止法などで全量除去が義務付けられ、診断・届出も厳格化されているため、昔よりもアスベスト関連の負担が増大している状況です。
地中埋設物の有無
解体工事中に想定外のコンクリートガラや古い基礎、タンクなどの埋設物が見つかると、追加撤去費用がかかります。
解体前にボーリング調査などを行うこともありますが、実際に掘ってみるまでわからないことも多いため、「追加費用リスクがゼロにはならない」という点を認識しておきましょう。
解体を行う時期
解体業界には比較的繁忙期(年末や年度末など)と閑散期があり、繁忙期は人手や重機の確保が難しく、見積価格がやや高止まりしがちです。閑散期を狙うことで若干交渉しやすくなる可能性がありますが、天候不順や工期の延長リスクもあるので、一長一短ともいえます。
近隣住民への影響と対策
マンション解体は工事規模が大きく、近隣トラブルのリスクも高まります。以下の点を押さえ、しっかりと対策を講じましょう。
騒音・振動
重機やブレーカーを使ったコンクリート破砕音、振動が長時間続くと、住民の生活や精神的ストレスに大きく影響します。
対策としては、防音シートの使用、作業時間帯の厳守、低騒音機器の導入などが挙げられます。東京都など多くの自治体では、早朝や夜間工事の制限があり、「日祝日は原則工事不可」という地域も少なくありません。
粉じん(ほこり)
コンクリートを壊すと大量の粉じんが出ます。近隣住宅の洗濯物や車を汚してしまうため、工事中は散水をしながら解体し、粉じん飛散を抑制することが重要です。
さらに、敷地周囲をしっかりと養生シートや防護ネットで囲い、粉じんや破片の飛散を防ぎます。
落下物・飛散物
高所からの作業が多いマンション解体は、破片の落下など重大事故につながるリスクがあります。足場を厳重に組み、防護ネットを張り、解体範囲への第三者の立ち入りを禁止するなど、安全対策を徹底する業者を選びましょう。
事前の近隣挨拶
解体工事着工前に、管理組合や施主(発注者)が中心となって、近隣住民への挨拶・工事内容説明を行うことが欠かせません。
特に東京23区では、解体作業にあたって建築リサイクル法の届出や騒音・振動特定建設作業の届け出を行ったうえで、着工7日前までに近隣説明を実施しなければならない制度(例:江東区、大田区など)があります。
きちんと工期や作業時間、対策内容を説明し、理解を得ることで、後々のトラブルを大幅に減らせます。
関連する法律・条例
マンション解体は建設リサイクル法や騒音規制法、大気汚染防止法など、複数の法律に則って行わなければなりません。東京都内ではさらに区市町村単位で細かい条例や要綱が設定されるケースも多いです。
建設リサイクル法
延床80㎡以上の建物を解体する場合、工事開始の7日前までに管轄行政へ「建設リサイクル法に基づく届出」を提出する義務があります。
コンクリート・木材など資材別の分別解体や再資源化を徹底する目的の法律で、届出後は行政から「分別解体等通知書」が交付され、適切な解体が行われているか監督を受けます。
騒音規制法・振動規制法
ブレーカーなどで騒音・振動を発生させる解体は、一定規模以上の工事の場合特定建設作業に該当し、作業開始7日前までに届出が必要です。
各自治体は区域ごとに工事可能時間や最大騒音・振動レベルを定め、違反すると工事停止命令の対象となることもあります。特に住宅密集地では慎重な施工が求められます。
大気汚染防止法(アスベスト規制)
アスベスト含有建材の使用状況を有資格者が事前調査し、その結果を自治体に届け出たうえで除去工事を行います。
2021年の法改正以降、対象範囲が拡大され、ほぼすべてのアスベスト含有建材が届出義務化の対象となりました。違反すると厳しい罰則が科せられるため、アスベストの可能性がある古いマンションは特に注意が必要です。
廃棄物処理法
解体で排出される廃棄物は産業廃棄物に該当し、許可業者(収集運搬業・処分業)に委託して適正処分しなければなりません。
不法投棄などのトラブルが起これば、発注者も責任を問われる可能性がありますので、マニフェスト(産廃管理票)を活用して適切に管理しましょう。
補助金・助成金制度の活用
老朽マンションや空き家化したマンションを解体する際、自治体や国の補助制度を利用できる場合があります。
東京都・区市町村の主な支援策
東京都では、空き家対策事業の一環として老朽建物の解体費用を一部補助する制度(例:空き家家財整理・解体促進事業)を行っているほか、各区市町村独自で木造住宅除却助成やブロック塀撤去補助などを設けています。
補助額は数十万円から数百万円、条件によっては1000万円を超える高額助成が出るケースもあります(例:品川区の老朽木造建築物除却助成など)。
ただし、対象となる建物の築年数や危険度、空き家の状態など細かい要件が定められているため、着工前に必ず申請手続きを済ませ、交付決定を受けることが必要です。
不燃化特区の支援
東京都の防災対策として指定される「不燃化特区」では、老朽家屋の除却費用補助や、除却後の土地に対する固定資産税の減免、建替え費用補助などが拡充されている場合があります。
更地にすると住宅用地特例が外れて固定資産税が大幅に上がるのが通常ですが、不燃化特区内では一定期間税金が免除されたり、建替え支援が受けられるメリットがあります。
詳細は東京都および各区の防災担当部署へ問い合わせてみてください。
信頼できる解体業者の選び方
マンション解体は費用・規模ともに大きく、安全管理も厳格さが求められます。業者選びのポイントを押さえ、トラブルを回避しましょう。
建設業許可・実績の確認
解体工事業としての建設業許可(とび・土工工事業など)を持ち、RC造・SRC造解体の実績が豊富な業者かどうかをチェックします。無許可業者や実績不明の業者は避けるのが賢明です。
見積もりの内訳と明瞭性
複数社から相見積もりを取った際、産廃処分費・重機費・人件費などの項目が丁寧に明記されているか確認しましょう。費用が極端に安い場合は手抜きや不法投棄のリスク、逆に高額すぎる場合は相場を踏まえて交渉してみる余地があります。
廃棄物処理の適正さ
産廃処理ルートやマニフェスト管理の方法について業者に尋ね、スムーズに回答が得られるかチェックしてください。いい加減な業者に委託すると不法投棄などの重大トラブルに巻き込まれる可能性があります。
保険加入・アフターフォロー
解体工事中の事故や近隣損傷を補償する工事保険や賠償責任保険に加入しているかどうかも重要です。また、工事後の不具合・追加撤去に柔軟に対応してくれるか、アフターサポートも業者選定のポイントとなります。
解体後の土地活用と注意点
マンション解体後の「更地」をどう活用するかも、計画時から考えておく必要があります。
整地と埋設物の撤去
解体後に新たな建物を建てる予定がある場合は、基礎や地中埋設物を完全撤去し、再開発に支障がない状態まで整地しておく必要があります。将来的に建物を建てるなら、最初からきちんと撤去したほうが無駄が少ないです。
駐車場など暫定利用であれば、基礎を残して舗装するケースもありますが、後の再建築時に再度撤去が必要になる可能性があるため、トータルコストで検討しましょう。
固定資産税への影響
住宅用地に適用されていた固定資産税・都市計税の軽減措置は、更地にすると外れるため翌年度から税額が上がる可能性が非常に高いです。
不燃化特区などで税負担の軽減策がある場合もありますが、対策がない地域であれば、土地活用や売却タイミングを慎重に検討しなければなりません。
土地売却か再建築か
更地のほうが買い手がつきやすいケースもありますが、解体費用を売却額で回収できるかを見極める必要があります。また、自ら建て替え再開発を行う場合は、解体費用に加えて新築工事費も含めた資金計画が欠かせません。
一時的にコインパーキングやトランクルームとして活用する方法もあり、解体後の収益化を検討することで固定資産税負担を補える場合もあります。
まとめ
マンション解体は戸建て解体に比べ、費用も手間も大きい工事になります。しかし、正しい知識を持ち、複数社からの相見積もりや補助金制度の活用、近隣対策の徹底を行えば、スムーズに進めることが可能です。
以下、マンション解体に向けての最重要ポイントを再確認しましょう。
- 東京の中規模マンションでも解体費用は数千万円規模に及ぶことが多い。早めの予算立てが肝心。
- 労務費や産廃処理費が大きな割合を占める。業者によって費用差が大きいので相見積もりは必須。
- アスベスト含有や地中埋設物の追加費用リスクに留意。法令上の除去・処分ルールを厳守する。
- 近隣トラブルを避けるため、事前挨拶と工事時間・粉じん・騒音対策をしっかり行う。
- 建設リサイクル法や騒音規制法などの届出を忘れずに。東京23区は独自の条例もある。
- 補助金や助成金を調べ、活用できる制度があれば申請する。着工前の手続きが必須。
- 解体後の固定資産税増額に注意。更地で売却するか、再活用するか、事前に検討する。
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