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この記事の要点と結論
結論:在留資格の適合×公正な給与設計×多言語OJTで採用と定着は両立します
飲食業界は有効求人倍率2.97倍という深刻な人手不足に直面し、外国人材の活用が経営の生命線となっています。しかし、採用可否を判断する在留資格の理解不足や、労働条件の設計ミス、定着支援の欠如により、せっかく採用した人材がすぐに離職するケースが後を絶ちません。本記事では、合法かつ効果的な外国人採用の全手順を、厚生労働省や出入国在留管理庁などの一次情報に基づいて体系的に解説します。
- 在留資格ごとにできる業務と不可業務を明確化し、違法就労のリスクを回避
- 求人票は日本語基準・シフト・手当の具体的記載で応募者とのミスマッチを防止
- 研修プログラムと生活支援を組み合わせることで離職率を大幅に改善
- 助成金を活用すれば採用・育成コストを最大75%削減可能
2025年の飲食×外国人採用の前提
業界を取り巻く3つの厳しい現実
- 求職者1人に対し約3件の求人が競合する極度の売り手市場
- 最低賃金は全国平均1,121円で過去最大の上昇幅を記録
- 非正社員の人手不足率は81.3%で全業種トップの深刻度
厚生労働省の令和7年6月一般職業紹介状況によると、飲食物調理の職業における有効求人倍率は2.97倍に達しています。これは全職種平均の1.20倍を大幅に上回り、求職者1人に対して約3件の求人が存在する極めて厳しい売り手市場です。
帝国データバンクの人手不足に対する企業の動向調査(2025年4月)では、飲食店における非正社員の人手不足率が81.3%という驚異的な数値を記録しました。8割以上の店舗が人員確保に苦しむ状況が明らかです。
賃金面でも大きな変化が起きています。令和7年度地域別最低賃金改定状況では、全国加重平均が1,121円となり、前年度から66円という過去最大の引き上げ幅を記録しました。東京都は1,226円、神奈川県は1,225円と、史上初めて全47都道府県で1,000円を突破しています。
論点 | 現状(2025年) | 実務への影響 | 出典 |
---|---|---|---|
有効求人倍率(飲食物調理) | 2.97倍 | 求職者1人に3件の求人が競合。採用難易度が極めて高い | 厚労省 令和7年6月 |
非正社員人手不足率 | 81.3% | 8割超の店舗が人員不足。外国人材活用が急務 | 帝国データバンク 2025年4月 |
最低賃金(全国平均) | 1,121円(+66円) | 人件費が大幅上昇。給与設計の見直し必須 | 厚労省 令和7年度 |
最低賃金(東京都) | 1,226円 | 首都圏での採用コストがさらに増加 | 厚労省 地域別最低賃金 |
宿泊・飲食業平均給与 | 279万3千円 | 全産業平均を下回る。処遇改善が競争力の鍵 | 国税庁 令和6年民間給与実態統計 |
表の条件:2025年6月~10月調査データ。倍率は正社員・パート含む全体平均。給与は年間平均。出典は各省庁公式サイトより取得。
在留資格の全体像と採用可否マップ
飲食業で雇用できる7つの在留資格
- 特定技能1号・2号は外食業全般の業務に従事可能な最有力候補
- 技術・人文知識・国際業務は管理職採用のみで調理・接客は不可
- 留学・家族滞在はアルバイト雇用で週28時間まで就労可能
- 永住者・定住者など身分系資格は就労制限なし
出入国在留管理庁の特定技能制度運用要領および技術・人文知識・国際業務の基準に基づき、飲食業で採用可能な在留資格を整理します。最も重要なのは、各資格で許可される業務範囲を正確に理解し、資格外活動による不法就労助長罪(5年以下の拘禁刑または500万円以下の罰金)を回避することです。
在留資格 | 飲食で許可される主業務 | 不可業務例 | 在留期間 | 日本語基準 | 家族帯同 | 留意点 |
---|---|---|---|---|---|---|
特定技能1号(外食業) | 調理、接客、店舗管理全般 | 風俗営業関連 | 通算5年 | N4相当以上 | 不可 | 外食業技能測定試験合格必須 |
特定技能2号(外食業) | 現場管理・指導業務 | 風俗営業関連 | 更新可(無期限) | N4相当以上 | 可 | 2023年秋から対象拡大。熟練者向け |
技術・人文知識・国際業務 | 管理業務、通訳、企画 | 調理・接客の単純作業 | 5年/3年/1年 | 業務による | 可 | 大卒または実務経験10年が条件 |
技能(調理師) | 外国料理の調理のみ | 調理補助、掃除、接客 | 5年/3年/1年 | 要件なし | 可 | 本国で10年以上の実務経験必須 |
特定活動46号 | 通訳含む現場業務 | 単純作業のみ | 5年/3年/1年 | N1またはBJT480点 | 可 | 日本の大学卒業が前提条件 |
留学(資格外活動) | すべての業務可 | 風俗営業関連 | 4年/2年/1年 | N5~N2(学校による) | 不可 | 週28時間以内。長期休暇は週40時間 |
家族滞在(資格外活動) | すべての業務可 | 風俗営業関連 | 5年/3年等 | 要件なし | 本人が家族 | 週28時間以内。資格外活動許可必須 |
永住者・定住者等 | 制限なし | なし | 無期限/更新可 | 要件なし | 可 | 日本人と同等。最も安定した雇用形態 |
表の条件:2025年10月時点の制度。家族帯同の可否は配偶者・子の在留資格取得可否を示す。日本語基準はJLPT(日本語能力試験)レベル。出典は出入国在留管理庁公式サイトより取得。
求人設計:募集要件と採用チャネル
応募者を集める求人票の3要素
- 職務範囲とシフトを具体的な時間帯と曜日で明示
- 日本語基準はN2/N3相当と業務内容を紐づけて記載
- 手当・昇給ルールを数値で示し透明性を確保
外国人求職者は日本の労働慣行に不慣れなため、曖昧な表現は大きな不安材料となります。厚生労働省の外国人雇用管理指針では、労働条件の明示を母語併記で行うよう推奨しています。
項目 | 推奨記載 | 悪例 | 改善例 |
---|---|---|---|
職務範囲 | 調理補助・ホール接客・清掃を明記 | 「飲食店業務全般」 | 「調理補助(食材カット・盛付)、接客(注文受付・配膳)、清掃(テーブル・床)」 |
シフト | 曜日・時間帯・休日を具体化 | 「シフト制」 | 「週5日/月~金 11:00~15:00、17:00~22:00。土日祝は応相談」 |
日本語基準 | N2/N3相当と業務要件を併記 | 「日常会話レベル」 | 「N3相当。お客様対応・指示理解ができること」 |
給与 | 時給・月給+諸手当を分離表示 | 「月給25万円」 | 「時給1,226円(東京都最賃)+深夜手当25%+交通費全額支給」 |
試用期間 | 期間・条件・本採用基準を明記 | 「試用期間あり」 | 「3ヶ月(同条件)。基本業務習得で本採用。評価面談あり」 |
昇給 | 頻度・条件・金額目安を提示 | 「昇給制度あり」 | 「年1回(4月)。勤務評価により時給30~100円UP」 |
表の条件:東京都の最低賃金1,226円を基準(2025年度)。試用期間中も同一賃金が原則。出典は厚労省 同一労働同一賃金ガイドラインより。
採用チャネルは大きく4つに分類されます。紹介会社は即戦力確保に有効ですが、紹介手数料が年収の20~35%と高額です。求人媒体(Indeed、求人ボックス等)は応募数を確保しやすい一方、選考負荷が大きくなります。ハローワークは無料で利用でき、外国人雇用サービスセンターでは専門相談も受けられます。学校連携は留学生アルバイトの安定確保に適しており、日本語学校や専門学校との関係構築が鍵となります。
採用~入社までの法的手続と期限
期限を守らないと罰則が科される7つの手続
- 社会保険資格取得届は雇用開始から5日以内が最短期限
- 雇用保険資格取得届は雇用月の翌月10日までに提出
- 外国人雇用状況届は雇保加入者で翌月10日、非加入者で翌月末
- 在留カード確認の怠りは不法就労助長罪のリスク
外国人雇用に関する手続は、日本人雇用と共通の労務手続に加え、在留資格確認や外国人雇用状況届など特有の義務が発生します。厚生労働省 外国人雇用状況の届出では、届出義務違反に対し30万円以下の罰金が定められています。
工程 | 提出先 | 期限 | 必要書類 | 注意点 |
---|---|---|---|---|
在留カード確認 | – | 雇用前 | 在留カード原本・資格外活動許可書(該当者) | 出入国在留管理庁FAQで有効性確認。偽造は不法就労助長罪 |
雇用契約締結 | – | 雇用前 | 労働条件通知書(日英併記推奨) | 労働条件明示ルール。母語併記で誤解防止 |
社会保険資格取得届 | 年金事務所 | 雇用開始から5日以内 | 健康保険・厚生年金保険資格取得届 | 日本年金機構。最短期限なので最優先 |
雇用保険資格取得届 | ハローワーク | 雇用月の翌月10日まで | 雇用保険被保険者資格取得届 | 厚労省 雇用保険。週20時間以上が加入対象 |
外国人雇用状況届 | ハローワーク | 雇保加入:翌月10日/非加入:翌月末 | 外国人雇用状況届出書(様式第3号等) | 厚労省届出ページ。義務違反は30万円以下の罰金 |
給与所得者異動届出書 | 市区町村 | 異動発生月の翌月10日まで | 給与所得者異動届出書 | 横浜市など自治体HP参照。住民税特別徴収 |
年末調整関連書類 | 税務署 | 翌年1月31日まで | 源泉徴収票・法定調書合計表 | 国税庁。外国人も日本人と同様の手続 |
表の条件:2025年10月時点の法令。期限は土日祝の場合は翌営業日。雇用保険は週所定労働時間20時間以上・31日以上雇用見込が加入要件。出典は厚生労働省・日本年金機構・国税庁の公式サイトより。
特に注意すべきは在留カードの確認です。在留カードの有効期限切れや、資格外活動許可のない留学生をアルバイト雇用した場合、雇用主は改正入管法(2025年6月施行)により5年以下の拘禁刑または500万円以下の罰金という重い刑事罰の対象となります。
給与・シフト設計と同一労働同一賃金
外国人だからといって低賃金は違法です
- 最低賃金は国籍を問わず適用。東京都は時給1,226円
- 時間外労働は月60時間以内25%、超過分50%の割増
- 深夜労働(22時~5時)は25%割増、複合時は合算
- 住宅手当・食事補助は現物給与として適切に評価
厚生労働省 同一労働同一賃金ガイドラインでは、正規・非正規雇用間の不合理な待遇差を禁止しています。外国人労働者に対しても同様に、国籍を理由とした差別的な賃金設定は労働基準法違反となります。
論点 | 基準 | 実務例 | 注意点 |
---|---|---|---|
最低賃金 | 地域別最低賃金(2025年度) | 東京都1,226円/神奈川県1,225円/大阪府1,177円 | 厚労省 地域別最低賃金。国籍問わず適用 |
時間外割増(月60時間以内) | 25%以上 | 時給1,226円×1.25=1,533円 | 厚労省 割増賃金リーフレット。中小企業も適用 |
時間外割増(月60時間超) | 50%以上 | 時給1,226円×1.50=1,839円 | 2023年4月から中小企業も50%義務化 |
深夜労働(22時~5時) | 25%以上 | 時給1,226円×1.25=1,533円 | 厚労省FAQ。深夜+時間外は合算50% |
休日労働(法定休日) | 35%以上 | 時給1,226円×1.35=1,655円 | 法定休日は週1日または4週4日 |
住宅手当・社宅 | 実費補填は差別禁止 | 家賃相当額を支給または社宅提供 | 同一労働同一賃金GL。現物給与は適正評価 |
食事補助 | 福利厚生として平等提供 | まかない無料提供/食事手当月5,000円 | 日本人と同条件。差別はGL違反 |
昇給ルール | 能力・成果に応じ公平設定 | 年1回評価面談→時給30~100円UP | 評価基準の明示で透明性確保。GL推奨 |
表の条件:2025年度最低賃金。割増率は労働基準法に基づく。住宅・食事は
現物給与として適正評価が必要。出典は厚生労働省公式サイトより取得。
特に注意が必要なのは固定残業代の扱いです。固定残業代を導入する場合、基本給と固定残業代を明確に分離し、何時間分の残業代が含まれるかを雇用契約書に明記する必要があります。実際の残業時間が固定残業時間を超えた場合は、超過分を追加支給しなければなりません。厚生労働省 労働条件明示ルールでは、2024年4月から固定残業代の内訳明示が義務化されています。
定着率を上げる育成・多言語OJT
離職率を40%から15%に改善した3つの施策
- 多言語マニュアルとピクト図解で言語の壁を解消
- メンター制度で1on1面談を四半期ごとに実施
- 生活支援窓口で行政手続や住居探しをサポート
外国人労働者の離職理由の上位は、言葉の壁、孤立感、生活面の困難です。人材紹介会社の2025年調査では、メンター制度と日本語研修を併用した企業で、離職率が40%から15%へ大幅に改善した事例が報告されています。
施策 | 効果 | コスト | 運用のコツ |
---|---|---|---|
多言語マニュアル | 研修期間30%短縮 | 翻訳費15~30万円(初回) | 厚労省外国人雇用管理指針。英語・中国語・ベトナム語など主要言語対応 |
ピクト図解マニュアル | 理解度20%向上 | デザイン外注5~10万円 | 調理手順・清掃方法を写真とイラストで視覚化。文字に頼らない |
eラーニング+チェックリスト | 生産性40%向上 | 月額5,000円/人~ | AI活用事例。反復学習と自動アセスメント |
メンター制度 | 離職率40%→15% | メンター手当月5,000円/人 | 四半期ごと1on1面談。業務・生活の相談窓口 |
日本語研修(月1回) | 6ヶ月後満足度20%UP | 講師費3~5万円/回 | 業務用語と日常会話を並行指導。厚労省指針推奨 |
生活支援窓口 | 定着率30%上昇 | 担当者人件費相当 | 住居探し、銀行口座開設、行政手続を代行支援 |
社宅・住宅手当 | 採用応募数2倍 | 家賃補助2~5万円/月 | 2024年調査で定着率大幅改善 |
食事補助(まかない) | 離職率50%→10% | 材料費500~800円/食 | チケットレストラン導入で大幅改善事例あり |
表の条件:2024~2025年の実績データ。コストは従業員10~30名規模の飲食店想定。効果は導入6ヶ月後の平均値。出典は人材紹介会社調査および厚生労働省指針より。
特に効果的なのはメンター制度です。日本人従業員または先輩外国人従業員をメンターに指名し、業務指導だけでなく生活相談にも対応する体制を整えます。四半期ごとの1on1面談では、仕事の悩み、人間関係、給与・評価への不満などを早期に把握し、離職の芽を摘むことができます。メンター手当として月額5,000円程度を支給することで、メンター自身のモチベーション向上にもつながります。
コンプライアンス:NG行為と罰則の整理
知らなかったでは済まされない4大リスク
- 在留資格外活動は雇用主に5年以下の拘禁刑または500万円以下の罰金
- 偽装請負は1年以下の懲役または100万円以下の罰金
- 賃金未払い・労働時間違反は是正勧告と30万円以下の罰金
- ハラスメント放置は企業名公表と損害賠償請求のリスク
外国人雇用におけるコンプライアンス違反は、刑事罰だけでなく、特定技能の受入停止処分(5年間)や企業名公表など、事業継続に致命的な影響を与えます。改正入管法(2025年6月施行)により、不法就労助長罪の罰則が大幅に強化されました。
典型NG | 法的根拠 | 想定リスク | 回避策 |
---|---|---|---|
在留資格外活動 | 入管法73条の2 | 雇用主:5年以下の拘禁刑or 500万円以下罰金/外国人:在留資格取消・退去強制 | 在留カード確認。資格外活動許可書の有無確認。定期的な期限チェック |
偽装請負 | 労働者派遣法、職業安定法、労基法 | 1年以下の懲役or 100万円以下罰金/行政指導・改善命令・企業名公表 | 厚労省リーフレット。業務委託は指揮命令権なし |
賃金未払い・時間外違反 | 労働基準法24条・37条 | 労基署是正勧告/30万円以下の罰金/特定技能認定取消(5年間受入停止) | 正確な勤怠管理。36協定締結。割増賃金の適切計算 |
暴行・脅迫・監禁による強制労働 | 労働基準法5条、技能実習法46条 | 1年以上10年以下の懲役or 20~300万円罰金/技能実習計画認定取消(5年間) | 人権尊重の徹底。暴力絶対禁止。パスポート等は本人管理 |
ハラスメント(差別的言動) | 労働施策総合推進法30条の2 | 企業名公表/損害賠償請求/従業員の大量離職 | 相談窓口設置。研修実施。差別禁止方針の明示 |
保証金徴収・違約金設定 | 労働基準法16条 | 6ヶ月以下の懲役or 30万円以下罰金 | 厚労省FAQ。いかなる名目でも徴収禁止 |
特定技能基準不適合 | 入管法19条の20 | 在留資格不許可/受入停止処分/3年以下の懲役or 300万円以下罰金 | 14日以内の届出。基準適合性の継続確認 |
表の条件:2025年10月時点の法令。罰則は最大値を記載。技能実習計画認定取消は特定技能受入にも影響。出典は法務省・厚生労働省の公式サイトより。
実際の処分事例として、株式会社銀嶺食品は労働安全衛生法違反により罰金刑を受け、技能実習計画認定が取り消されました。また、フジオフードシステムでは着替え時間を労働時間として扱わず、川崎北労働基準監督署から是正勧告を受け、推計で全アルバイト総額3億円の未払いが発覚しています。
助成金・補助金・支援制度(2025年)
採用・育成コストを最大75%削減できる6制度
- 人材開発支援助成金で研修費の75%+賃金助成を受給
- 外国人労働者就労環境整備助成コースで最大80万円を確保
- キャリアアップ助成金で正社員転換に80万円支給
- トライアル雇用助成金で採用リスクを軽減
飲食業で活用できる助成金は複数あり、うまく組み合わせることで人材育成コストを大幅に削減できます。厚生労働省 事業主の方のための雇用関係助成金で最新情報を確認できます。
制度名 | 対象 | 上限額 | 要件 | 申請先 |
---|---|---|---|---|
人材開発支援助成金(人材育成支援コース) | 10時間以上の研修実施 | 経費75%(中小)+賃金助成960円/時(中小) | 事前計画届/OJT+OFF-JT/雇用保険加入 | 都道府県労働局 |
人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース) | 新規事業・DX関連研修 | 経費75%(中小)+賃金助成960円/時(中小) | 新規事業計画/デジタル化/10時間以上 | 都道府県労働局 |
人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース) | 通訳費・多言語マニュアル等 | 最大80万円(4措置×20万円) | 外国人雇用/就労環境整備計画/雇用保険加入 | 都道府県労働局 |
トライアル雇用助成金(一般トライアルコース) | 初めて雇用する外国人材 | 月額4~5万円×最大3ヶ月 | ハローワーク紹介/原則3ヶ月試行雇用 | ハローワーク |
キャリアアップ助成金(正社員化コース) | 非正規→正社員転換 | 80万円/人(中小) | 6ヶ月以上雇用/転換後6ヶ月以上継続/賃金5%以上UP | 都道府県労働局 |
業務改善助成金 | 賃上げ+設備投資・研修 | 最大600万円 | 事業場内最低賃金引上げ/生産性向上設備 | 都道府県労働局 |
小規模事業者持続化補助金 | 従業員5人以下の飲食店 | 通常枠50万円/創業型200万円 | 販路開拓・業務効率化/補助率2/3 | 商工会議所 |
表の条件:2025年10月時点の制度。中小企業は資本金3億円以下または従業員300人以下(小売・サービス業は50人以下)。申請には事前計画届が必要な制度あり。出典は厚生労働省・中小企業庁の公式サイトより。
特に人材開発支援助成金は活用しやすく、外国人従業員向けの日本語研修や調理技術研修を実施する際、経費の75%(中小企業)と賃金助成(1時間あたり960円)を受けられます。2025年度から賃金助成額が引き上げられ、より利用しやすくなりました。ただし、事前に計画届を提出する必要があるため、研修開始の1ヶ月前には準備を始めましょう。
KPIとROI:採用の成果を測る
数値で管理すべき5つの指標
- 応募単価で募集チャネルの費用対効果を比較
- 採用単価で1人あたりの総コストを把握
- 90日定着率で初期離職を早期検知
- 勤怠安定率で欠勤・遅刻の傾向を可視化
外国人採用の成果を測定し、PDCAサイクルを回すことで、採用プロセスを継続的に改善できます。特に重要なのは90日定着率で、入社後3ヶ月以内の離職は研修コストが完全に無駄になるため、最優先で改善すべき指標です。
指標 | 計算式 | 目安 | 改善施策 |
---|---|---|---|
応募単価 | 募集費用÷応募者数 | 3,000~10,000円/人 | チャネル別に測定し、費用対効果の高い媒体に集中投資 |
採用単価 | (募集費+選考費+研修費)÷採用者数 | 正社員:30~80万円/アルバイト:5~15万円 | 選考プロセスの簡素化。助成金活用で研修費削減 |
90日定着率 | (90日後在籍者数÷入社者数)×100 | 80%以上が望ましい | メンター制度。1ヶ月・3ヶ月面談で不満を早期把握 |
1年定着率 | (1年後在籍者数÷入社者数)×100 | 60%以上が望ましい | 評価制度の透明化。昇給・キャリアパスの明示 |
勤怠安定率 | (出勤日数÷所定労働日数)×100 | 95%以上が望ましい | 健康管理サポート。シフト柔軟性の確保 |
生産性(人時売上高) | 売上高÷総労働時間 | 業態による(目安:3,000~5,000円) | OJT効率化。多能工化による柔軟配置 |
離職要因分析 | 退職理由のカテゴリ別集計 | トップ3要因で全体の70% | 退職面談で本音を聞き出し、構造的問題を特定 |
表の条件:飲食業の平均値を参考。90日定着率は初期研修完了時点での評価指標。生産性は業態(ファストフード・居酒屋・高級店)で大きく異なる。
KPI管理のポイントは定期的なモニタリングです。月次で採用・定着の数値をダッシュボード化し、経営会議で共有することで、問題の早期発見と迅速な対応が可能になります。特に90日定着率が70%を下回った場合は、研修内容やメンター制度の見直しを即座に実施しましょう。
初回導入チェックリスト
外国人採用を始める前に確認すべき30項目
初めて外国人を雇用する飲食店向けに、法令遵守と円滑な受入のためのチェックリストを整理しました。すべての項目をクリアしてから採用活動を開始することで、トラブルを未然に防げます。
カテゴリ | 確認項目 | 合否基準 | 証跡 |
---|---|---|---|
在留資格 | 採用職種で就労可能な資格を特定 | 出入国在留管理庁の資格要件を確認済 | 在留資格一覧表 |
在留カード確認方法を理解 | ICチップ読取または目視確認手順を把握 | 確認マニュアル作成 | |
資格外活動許可の要否を判断 | 留学・家族滞在は許可書確認必須 | チェックシート作成 | |
在留期限管理体制の構築 | 3ヶ月前アラート設定 | 管理台帳またはシステム | |
不法就労助長罪のリスクを理解 | 5年以下の拘禁刑または500万円以下の罰金 | 社内研修実施記録 | |
労働条件 | 最低賃金の確認 | 都道府県の最低賃金以上を設定 | 地域別最低賃金一覧 |
割増賃金の計算方法を確認 | 時間外25%/60時間超50%/深夜25%/休日35% | 給与計算マニュアル | |
労働条件通知書の多言語化 | 日本語+英語または母語併記 | 通知書ひな形 | |
同一労働同一賃金の確認 | 国籍による差別的取扱いなし | ガイドラインチェック | |
36協定の締結・届出 | 時間外労働の上限を遵守 | 労働基準監督署届出控 | |
手続 | 社会保険加入手続の理解 | 雇用開始から5日以内に提出 | 手続フローチャート |
雇用保険加入手続の理解 | 雇用月の翌月10日までに提出 | 手続フローチャート | |
外国人雇用状況届の理解 | 雇保加入:翌月10日/非加入:翌月末 | 届出様式 | |
住民登録・税金手続の案内 | 転入届・マイナンバー・住民税の説明資料 | 案内資料(多言語) | |
銀行口座開設のサポート | 必要書類と手続の案内 | 案内資料(多言語) | |
受入体制 | 多言語マニュアルの準備 | 業務手順書を英語等で
作成 |
マニュアル一式 |
メンター制度の設計 | 担当者指名・面談頻度・報告ルール | 制度規程書 | |
相談窓口の設置 | 業務・生活相談の担当者明確化 | 連絡先一覧(多言語) | |
ハラスメント防止方針の策定 | 差別禁止・相談窓口を明文化 | 厚労省指針準拠の方針書 | |
緊急連絡先の把握 | 本人・家族・母国の連絡先を記録 | 緊急連絡先リスト | |
研修 | 初期研修プログラムの作成 | 業務・安全・コンプライアンス研修 | 研修カリキュラム |
日本語研修の計画 | 業務用語・接客表現の指導計画 | 研修計画書 | |
OJTチェックリストの準備 | 習得すべき業務を項目化 | チェックリスト | |
評価基準の明確化 | 試用期間・本採用・昇給の判断基準 | 評価シート | |
助成金申請の検討 | 人材開発支援助成金等の要件確認 | 申請可能制度リスト | |
コンプライアンス | 偽装請負の理解 | 業務委託と派遣の違いを把握 | 社内研修実施記録 |
強制労働の禁止事項確認 | 暴力・脅迫・パスポート取上げ等の禁止 | 厚労省資料 | |
保証金徴収の禁止を理解 | いかなる名目でも徴収不可 | 雇用契約書確認 | |
労働時間記録の正確性確保 | タイムカード・勤怠システムで客観記録 | 勤怠管理方法 | |
定期監査の実施計画 | 四半期ごとに法令遵守状況を確認 | 監査チェックリスト |
表の条件:初回導入時の最低限クリアすべき項目。証跡は監督官庁の調査時に提示可能な状態で保管。出典は厚生労働省・出入国在留管理庁の公式サイトより。
このチェックリストはすべての項目を「合」にしてから採用活動を開始することが理想ですが、準備に時間がかかる場合は、最低限在留資格の確認、労働条件の適法性、必須手続の理解の3カテゴリをクリアしてください。受入体制や研修プログラムは採用決定後に並行して整備することも可能です。
まとめ
飲食業における外国人採用は、有効求人倍率2.97倍という深刻な人手不足の解決策として不可欠です。しかし、在留資格の理解不足や労働条件の不備により、違法就労や早期離職といった問題が後を絶ちません。本記事で解説した在留資格の適合、公正な給与設計、多言語OJTの3本柱を実践することで、合法かつ効果的な採用と定着を両立できます。
まず、採用可能な在留資格を正確に理解し、特定技能1号・2号を中心に検討しましょう。調理・接客・店舗管理の全業務に従事でき、正社員雇用が可能です。留学生アルバイトは週28時間以内の制限があるものの、柔軟なシフト対応に有効です。在留カード確認を徹底し、不法就労助長罪(5年以下の拘禁刑または500万円以下の罰金)のリスクを回避してください。
給与設計では、最低賃金1,121円(全国平均)、時間外労働月60時間超50%割増、深夜労働25%割増など、労働基準法の基準を厳守します。国籍を理由とした差別的な賃金設定は違法であり、同一労働同一賃金ガイドラインに基づく公正な処遇が求められます。
定着率向上には、メンター制度と多言語マニュアル、生活支援の組み合わせが効果的です。実際に離職率を40%から15%へ改善した事例もあり、初期投資は採用コスト削減で十分に回収できます。人材開発支援助成金を活用すれば、研修費の75%と賃金助成を受けられるため、コスト面の不安も解消されます。
手続面では、社会保険資格取得届(5日以内)、雇用保険資格取得届(翌月10日まで)、外国人雇用状況届(翌月10日または末日まで)の期限を厳守してください。期限違反は罰則や督促の対象となり、事業運営に支障をきたします。
KPI管理では、90日定着率を最重要指標とし、80%以上を目標に設定します。入社後3ヶ月以内の離職は研修コストが無駄になるため、1ヶ月・3ヶ月面談で不満を早期に把握し、改善策を講じましょう。
外国人採用は一朝一夕には成功しません。本記事で紹介した一次情報とチェックリストを活用し、計画的に準備を進めてください。法令遵守と従業員への敬意を忘れず、長期的な信頼関係を構築することが、人手不足時代を乗り越える最大の武器となります。飲食業の未来を担う外国人材とともに、持続可能な店舗運営を実現しましょう。
よくある質問
- Q1:外国人スタッフを雇う際に、まず確認すべき書類は何ですか?
A:必ず在留カードの表裏と資格外活動許可書を確認してください。就労可能な在留資格かどうかを判断するのが第一歩です。詳しくは出入国在留管理庁の特定技能ページを参照してください。 - Q2:特定技能と技能実習の違いは何ですか?
A:技能実習は「学ぶ」ことを目的とした制度で、転職や業務範囲に制限があります。一方、特定技能は即戦力として「働く」ことを目的としており、飲食店での調理・接客・店舗運営まで幅広く従事可能です。詳細は法務省公式サイトで確認できます。 - Q3:留学生をアルバイトとして雇う場合の注意点は?
A:週28時間以内の就労制限があり、資格外活動許可の取得が必須です。深夜勤務や風営法対象の業務は禁止されています。違反すると不法就労助長罪の対象となります。 - Q4:外国人スタッフの給与はどのように設定すべきですか?
A:日本人と同等の職務であれば、同一労働同一賃金の原則に基づき、同水準の給与を支給する必要があります。最低賃金や割増率は厚生労働省の最低賃金一覧で確認しましょう。 - Q5:助成金は外国人雇用にも使えますか?
A:はい。人材開発支援助成金や人材確保等支援助成金など、多言語研修や職場環境整備にも活用できます。申請前に計画書の提出が必要なので、厚労省の助成金ページで最新情報を確認してください。 - Q6:在留資格の更新時に企業がやるべきことは?
A:更新期限の3か月前から申請可能です。勤務証明書・雇用契約書・給与明細を準備し、在留期間内に入管へ提出します。申請中は2か月間の特例滞在が認められます。 - Q7:外国人スタッフとのトラブルを防ぐには?
A:日本語だけでなく、英語や母国語を併用した労働条件説明書を交付し、勤務ルール・評価基準・相談窓口を明確にしましょう。ハラスメント防止研修を年1回実施するのが望ましいです。 - Q8:初めて外国人を採用する飲食店におすすめの支援機関は?
A:登録支援機関を活用すると、入管手続・生活支援・日本語教育を包括的にサポートしてもらえます。外食分野専門の登録支援機関リストは特定技能情報総合サイトで公開されています。
参考サイト
- 厚生労働省「外国人労働者の雇用・労働条件に関する指針」 — 雇用管理上事業主が注意すべき基本方針が整理されています。リンク
- 厚生労働省「外国人を雇用する事業主への支援策」 — 多言語化や就労環境整備の助成制度が紹介されています。リンク
- KJ Times「外国人雇用管理、指針や改正されたポイントを押さえよう」 — 指針改正点をわかりやすく解説する記事です。リンク
- 弘済堂グローバル「特定技能“外食”の活用方法と採用時の注意点」 — 外食分野での特定技能採用上の実務リスクと対応がまとめられています。リンク
- LinkAsia「特定技能“外食業”ベトナム人材採用マニュアル」 — 外食業分野に特化した在留資格運用や応募者傾向が具体的に述べられています。リンク
- BusinessLawyers「外国人を雇用する際に守るべき法令(入社から退職まで)」 — 実務的な法令チェック一覧が整備されています。リンク
初心者のための用語集
- 在留資格:外国人が日本でどのような活動を行えるかを定めた法的な資格。例として「特定技能」「技術・人文知識・国際業務」などがあります。
- 特定技能:人手不足の業種で外国人が就労できる制度。飲食・外食業でも利用でき、即戦力人材として採用されます。
- 技能実習:開発途上国の人材が日本の技術や知識を学ぶ制度。転職や業務変更の制限があります。
- 資格外活動許可:本来の在留資格で認められていない活動(例:留学生のアルバイト)を行うための許可。
- 特定活動46号:日本の大学を卒業した外国人が、通訳や観光業などで働ける特別な就労資格。
- 同一労働同一賃金:正社員・非正社員・外国人など雇用形態に関係なく、同じ仕事には同じ賃金を支払うべきという原則。
- OJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング):職場内で実際の業務を通じて行う教育訓練のこと。外国人スタッフの定着支援にも有効。
- CPA(Cost Per Acquisition):1件の採用・資料請求・応募を得るためにかかった平均コスト。広告効果の指標として使われます。
- 定着率:採用したスタッフが一定期間(例:3か月、1年)働き続けている割合。高いほど職場満足度が高いといえます。
- 助成金:国や自治体が企業の人材育成や雇用安定のために支給する資金。返済不要ですが、申請条件が定められています。
- 外国人雇用状況届出:外国人を雇用するすべての事業主に義務付けられた届出。ハローワークへの提出が必要です。
- 偽装請負:雇用関係にあるのに、外部委託のように装って働かせる違法行為。職業安定法で禁止されています。
- 人材開発支援助成金:従業員の職業訓練や教育を実施した企業に支給される国の助成制度。
- 登録支援機関:特定技能外国人の受け入れを支援するために国から認可を受けた機関。生活支援や手続代行を行います。
- 入管法:正式名称「出入国管理及び難民認定法」。外国人の入国・在留・退去などに関する日本の基本法。
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在留資格や採用制度、助成金の活用等については、法令や行政の通達・運用により内容が変更される場合があります。また、企業や外国人本人の状況により必要な手続きや判断が大きく異なります。
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- 最新の入管法・技能実習制度・特定技能制度の情報を、出入国在留管理庁・厚労省・自治体等の公的機関で確認する
- 制度利用前には、行政書士・社労士などの専門家に相談する
- 助成金や補助制度については、地域の労働局・支援機関へ事前に問い合わせる
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