特定技能実習

【2025年版】特定技能スタッフ離職理由TOP5と即効対策まるわかりガイド

この記事の要点・結論

本記事では、特定技能外国人の離職問題に直面する企業様向けに、データに基づいた離職の主要因と、即日実行可能な5つの具体的な対策を解説します。2024年の調査では、特定技能スタッフの66.9%が入社後1年以内に離職しており、特に「賃金」「生活支援」「キャリアパス」への不満が深刻です。この記事を最後まで読めば、離職理由の根本原因を理解し、費用対効果の高い定着率改善策を自社に導入するための、明確なロードマップとチェックリストを手に入れることができます。

最新統計で見る特定技能スタッフ離職の現状(2025)

2024年12月末時点で特定技能外国人の総数は28万人を突破し、多くの産業で不可欠な存在となっています。しかしその裏側で、高い離職率が深刻な経営課題として浮上しています。出入国在留管理庁の2022年11月末までのデータによると、自己都合による離職率は全体で16.1%に達し、さらに2024年12月の民間調査では、退職者のうち実に66.9%が入社1年以内に離職しているという衝撃的なデータが示されました。これは、多くの企業が採用コストを回収できないまま、人材流出の痛手を被っている現状を物語っています。

業種別離職率・平均在籍期間の比較表

特定技能スタッフの離職率は、業種によって大きなばらつきがあります。特に、対人サービス業である宿泊業や外食業で高い傾向が見られます。

業種 離職率(自己都合) 主な離職要因の傾向
宿泊業 32.8% 業務内容との不一致、人手不足による業務過多
農業 20.1% 季節労働の不安定さ、地方での孤立感
外食業 19.6% 長時間労働、他業種との賃金比較
飲食料品製造業 19.3% 業務の単調さ、夜勤・交代制への不適応
建設 12.1% 現場環境の厳しさ、安全管理への不安
介護 10.6% キャリアパスの明確さ、日本語能力向上機会により比較的安定
自動車整備 8.9% 技術専門性の高さ、安定した雇用環境

(出典:2022年11月 出入国在留管理庁「特定技能在留外国人数の公表」ほか)

離職理由 TOP5 と根本原因

なぜ特定技能スタッフは職場を去ってしまうのでしょうか。2024年6月に発表されたマイナビグローバルの調査(対象350人)によると、離職理由は5つのカテゴリーに集約されます。これらの表面的な理由の裏に隠された「根本原因」を理解することが、効果的な対策の第一歩です。

順位 離職理由 割合 根本原因の分析
1 業務・職場の不満 31.4% 労働時間、業務負荷、仕事内容のミスマッチ
2 給与の不満 29.1% 日本人との賃金格差、昇給が見込めないことへの不満
3 結婚・妊娠・母国の家族都合 21.4% ライフイベント(本人の意思によるもので不可避な側面も)
4 人間関係の不満 15.1% コミュニケーション不足、文化的背景の違いによる誤解
5 その他(キャリアなど) 3.0% キャリアアップの展望が描けないことへの不安

(出典:2024年6月 マイナビグローバル「特定技能外国人の離職に関する実態調査」)

① 賃金ギャップ:日本人との比較、昇給への期待

内閣府の2024年の分析では、特定技能労働者は同職種の日本人と比較して約15%賃金が低いというデータがあります。多くの外国人が「より良い収入」を求めて来日しているため、この賃金ギャGAPは離職の直接的な引き金となります。特に、同郷のコミュニティ内で給与情報を交換する中で、自社の待遇が他社より劣ると感じた瞬間に転職意欲が高まる傾向があります。

② 生活支援不足:住居と相談相手の不在

日本での生活基盤が不安定なことは、業務への集中を妨げ、精神的なストレスを増大させます。特に住居の確保は大きな課題であり、企業からの支援が手薄だと「大切にされていない」と感じてしまいます。また、業務上の悩みや生活上の不安を気軽に相談できる相手がいない孤立感も、離職を決意させる大きな要因です。ある調査では、多言語の相談窓口を利用した外国人の定着率は、利用しなかった層より21.4ポイントも高い結果が出ています。

③ キャリア停滞:将来が見えない不安

「この会社にいても、スキルアップや昇進は望めないのではないか」。こうしたキャリアパスへの不安は、特に向上心の高い人材ほど強く感じます。外国人労働者へのアンケートでは、「明確なキャリアパスがない」ことが不満であるとの回答が23.8%に上りました。入社時に将来のキャリアステップや昇進・昇給の基準が示されていないと、3〜5年後の自分の姿を想像できず、より良い条件を求めて転職市場に目を向けるようになります。

④ 人間関係/文化差:コミュニケーションの壁

言葉の壁はもちろんのこと、文化的な背景の違いから生じるコミュニケーションギャップは、本人も周囲も気づかぬうちに深刻化します。指示の受け取り方の違い、良かれと思って取った行動が日本では非常識と見なされるなど、日々の小さなすれ違いが積み重なり、職場での孤立感を深めます。メンター(相談役)がいない環境では、こうした問題が解決されず、最終的に「居場所がない」と感じて離職に至ります。

⑤ 労働時間超過:聞いていた話と違う

「業務・職場の不満」の根底には、長時間労働や過度な業務負荷の問題があります。特に、求人票や面接時の説明と、入社後の実態が大きく異なる場合、企業への不信感は一気に高まります。勤怠管理が曖昧で、サービス残業が常態化しているような職場環境では、心身ともに疲弊し、より健全な労働環境を求めて離職するのは当然の結果と言えるでしょう。

今すぐ打てる対策 5 連発

離職の根本原因がわかれば、打つべき手は明確です。ここでは、明日からでも着手できる、費用対効果の高い5つの対策を「コスト・効果・実行ステップ」の形式でご紹介します。

賃金モデル改訂:公平性と透明性の確保

  • コスト:中(人件費の増加、評価制度の構築費用)
  • 効果:大(離職の最大要因である給与不満の直接的な解消)
  • .

  • 実行ステップ:
    1. 同業他社の外国人材の給与水準を調査し、自社の立ち位置を把握する。
    2. 「スキル評価シート」などを作成し、能力や成果に応じて昇給する仕組みを明文化する。
    3. 日本人従業員と同一の賃金テーブルを適用し、国籍による不合理な格差を撤廃する。

家賃補助/寮提供:生活基盤の安定化

  • コスト:中(家賃補助費、寮の維持管理費)
  • 効果:大(経済的・精神的安心感を提供し、定着率を大幅に改善。ある調査では定着率が20ポイント以上改善)
  • 実行ステップ:
    1. 月額2万円程度の家賃補助制度を導入する。または、家具・家電付きの寮を提供する。
    2. 物件探しや賃貸契約、ライフラインの契約などを会社がサポートする体制を整える。
    3. 自治体の外国人向け家賃補助制度などを活用し、企業負担を軽減する。

昇進ロードマップ:未来への希望を提示

  • コスト:小(資料作成、面談の時間コスト)
  • 効果:大(学習意欲とモチベーションを向上させ、長期就労を促進。定着率が30ポイント改善した事例も)
  • 実行ステップ:
    1. 入社1年後、3年後、5年後のキャリアモデル(役職、給与水準)を多言語で可視化する。
    2. 資格取得支援制度(例:介護福祉士、調理師免許)を設け、費用を会社が負担する。
    3. 3ヶ月に1度のキャリア面談を実施し、本人の目標と会社の期待をすり合わせる。

メンター制度:孤立を防ぐ「お兄さん・お姉さん」役

  • コスト:小(メンター手当、研修の時間コスト)
  • 効果:極大(離職率が19ポイント改善した介護施設の事例や、1年以内離職率が17%→0%になった製造業の事例あり)
  • 実行ステップ:
    1. 年齢や社歴の近い日本人従業員をメンターとして任命し、1対1でペアを組ませる。
    2. メンターには、業務だけでなく日本の生活習慣や文化についても教える役割を担ってもらう。
    3. 週1回のランチミーティングなど、気軽に話せる場を会社が費用負担で設定する。

勤怠DX:労働時間の見える化

  • コスト:小(1人あたり月額300円〜)
  • 効果:中(残業時間を15〜30%削減、コンプライアンス遵守、公平な労働環境の証明)
  • 実行ステップ:
    1. 多言語対応のクラウド勤怠管理システム(KING OF TIMEなど)を導入する。
    2. スマートフォンやICカードで簡単に出退勤を打刻できるようにする。
    3. 蓄積されたデータをもとに業務配分を見直し、特定の従業員に負荷が集中しないように改善する。

成功企業 3 社の実例:離職率 −20pt の裏側

理論だけでなく、実際に特定技能スタッフの定着に成功している企業は、どのような取り組みを行っているのでしょうか。ここでは、離職率を20ポイント以上改善した3社の事例を比較分析します。

企業(業種) 改善実績 成功の鍵となった施策
飲食A社(都内居酒屋) 定着率が50% → 80%以上へ改善
  • 日本人と全く同じ労働条件(週休2日、残業削減)を適用。
  • 公平性を徹底し、「聞いていた話と違う」という不満を根絶。
介護B社(ハンディネットワーク) 離職率が業界平均10.6%に対し0.8%
  • 来日時に借金を負わせない独自の奨学金制度を構築。
  • 金銭的な理由での転職動機をなくし、腰を据えて働ける環境を提供。
食品製造C社(アミュード) 1期生の高い離職率を乗り越え、2期生は25pt以上改善
  • 採用基準を「日本語能力」最優先に変更。
  • 円滑なコミュニケーションにより、現場での指導や人間関係の悩みを解消。

これらの事例に共通するのは、外国人を「労働力」としてだけでなく、共に働く「仲間」として尊重し、彼らが抱える特有の課題(言語、文化、生活基盤)に対して、企業側が積極的に歩み寄っている点です。根本的な原因にアプローチすることが、持続的な定着率向上につながることを示しています。

費用対効果シミュレーション:コスト<離職削減益

定着率改善への投資は、コストではなく、将来の利益を生む「戦略的投資」です。従業員1名の離職には、採用コストや再教育コストなどを含め、約300万円〜600万円の損失が発生すると言われています。仮に従業員100名の企業で考えてみましょう。

  • 投資(コスト):
    • 勤怠管理システム導入:約40万円/年(月額330円×100名×12ヶ月)
    • メンター手当など:約60万円/年(月額5,000円×10名×12ヶ月)
    • 合計投資額:年間 約100万円
  • 削減効果(リターン):
    • 離職率が3ポイント改善した場合(例:15%→12%)
    • 削減できる離職者数:100名 × 3% = 3名
    • 削減できる離職コスト:300万円/人 × 3名 = 年間 900万円

この簡易シミュレーションでも、年間100万円の投資が900万円の損失を防ぐ、つまり800万円の純利益を生み出す計算になります。これは、定着率改善がいかにROI(投資対効果)の高い施策であるかを明確に示しています。

チェックリスト:導入前に確認すべき 25 項目

自社の体制を客観的に評価し、どこから手をつけるべきか明確にするためのチェックリストです。YESの数が少ないカテゴリーが、貴社の最優先課題です。

カテゴリ1:制度・賃金

  • □ 1. 日本人従業員と同一の賃金テーブルが適用されているか?
  • □ 2. スキルや経験に応じた明確な昇給・昇格基準があるか?
  • □ 3. 評価制度は多言語で説明され、本人が納得しているか?
  • □ 4. 同業他社の給与水準と比較して、競争力のある給与を提示しているか?
  • □ 5. 賞与や手当(家族手当など)の支給基準は公平か?
  • □ 6. 勤怠管理システムが導入され、労働時間が正確に記録されているか?
  • □ 7. サービス残業は一切発生していないか?

カテゴリ2:キャリア・育成

  • □ 8. 入社時に3〜5年後のキャリアパスを具体的に提示しているか?
  • □ 9. 資格取得支援制度(費用補助など)は存在するか?
  • □ 10. 定期的な研修(技術、日本語)の機会を提供しているか?
  • □ 11. 上長とのキャリア面談が定期的に(例:3ヶ月毎に)実施されているか?
  • □ 12. 本人の希望や適性を考慮した業務・部署配置を行っているか?

カテゴリ3:生活支援

  • □ 13. 寮の提供や家賃補助制度があるか?
  • □ 14. 来日時の初期費用(敷金・礼金など)を会社がサポートしているか?
  • □ 15. 銀行口座開設や携帯電話契約などをサポートする体制があるか?
  • □ 16. 社内に母国語で相談できる窓口や担当者がいるか?
  • □ 17. 病気や怪我の際に、病院への同行や通訳サポートを提供できるか?
  • □ 18. 日本のゴミ出しルールや騒音問題など、生活習慣に関するオリエンテーションを実施しているか?

カテゴリ4:コミュニケーション・文化理解

  • □ 19. メンター制度が導入され、機能しているか?
  • □ 20. 日本人従業員向けに、異文化理解を促進する研修を行っているか?
  • □ 21. 社内の掲示物や重要書類は、多言語で併記されているか?
  • □ 22. 宗教上の配慮(礼拝場所の確保、食事制限への対応など)は可能か?
  • □ 23. 外国人従業員も含めた懇親会やイベントが定期的に開催されているか?
  • □ 24. 経営層が、外国人材の活躍の重要性を社内に発信しているか?
  • □ 25. 感謝や称賛を伝える文化が職場に根付いているか?

まとめ

特定技能外国人の高い離職率は、多くの企業にとって頭の痛い問題ですが、決して解決不可能な課題ではありません。最新のデータは、離職の根本原因が「賃金」「生活」「キャリア」「人間関係」「労働時間」という5つの領域に集約されることを示しています。そして、それぞれの原因に対して、成功企業が実践済みの効果的な対策が存在します。

本記事で紹介した「賃金モデル改訂」「家賃補助」「昇進ロードマップ」「メンター制度」「勤怠DX」といった施策は、いずれも高い費用対効果が期待できるものです。重要なのは、彼らを単なる労働力ではなく、会社の未来を共に創るパートナーとして迎え入れ、その声に真摯に耳を傾ける姿勢です。本記事のチェックリストを活用し、自社の課題を明確にすることから、定着率改善への第一歩を踏み出してください。

よくある質問

  • Q. 施策導入までの期間はどれくらいですか?
    A. パイロット検証を含め約3か月が目安です。詳細ステップは本文の「今すぐ打てる対策 5 連発」を参照してください。
  • Q. 対策コストは高くありませんか?
    A. 家賃補助や勤怠DXは月額1人あたり2,000〜330円程度から始められます。費用対効果は「費用対効果シミュレーション」で解説しています。
  • Q. 国や自治体の補助金は利用できますか?
    A. はい。たとえば室蘭市の「寮整備補助」は上限30万円です。最新の応募方法は自治体公式ページをご確認ください。
  • Q. メンター制度を始める際のポイントは?
    A. 日本語N2以上かつ入社3年目以上の社員を選任し、多文化研修をセットで実施すると定着率が大幅に向上します。
  • Q. 多言語相談窓口を外部委託できますか?
    A. 可能です。24時間多言語対応のヘルプデスク例はSTAY WORKERに掲載されています。
  • Q. キャリアパスの雛形は入手できますか?
    A. 飲食・製造業向け多言語スキルマップの無料テンプレートはこちらの記事からダウンロード可能です。

参考サイト

初心者のための用語集

  • 特定技能:人手不足分野で働く外国人向けの在留資格。転職可で最長5年まで就労できます。
  • 離職率:一定期間に退職した従業員の割合。高いほど人材流出が多いことを示します。
  • 定着率:一定期間在籍し続けた従業員の割合。離職率と対になる指標です。
  • 賃金ギャップ:同じ仕事をする日本人と外国人の賃金差。格差が大きいと離職要因になります。
  • メンター制度:先輩社員が新入社員を個別にサポートする仕組み。文化・業務両面で早期適応を促進します。
  • DX(デジタルトランスフォーメーション):ITツールを活用して業務を最適化し、競争力を高める取り組み。本記事では勤怠管理DXを指します。
  • スキルマップ:職務ごとに必要な技能と習熟度を可視化した表。キャリアパス提示に用いられます。
  • KPI:重要業績評価指標。離職率・定着率など、施策の効果を測定する数値目標です。
  • ROI:投資利益率。施策に投じた費用に対して得られる利益の割合を示します。
  • IRR:内部収益率。将来キャッシュフローから見た投資案件の収益性を表す指標です。

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松田 悠志
㈱ビーシアップ代表。宅建士・FP2級。人材採用・営業・Webマーケ・資産形成を支援し、採用コンサルやマネープラン相談も対応。株12年・FX7年のスイングトレーダー。ビジネス・投資・開運術を多角的に発信し、豊かな人生を後押しします。