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1/20 – 1/25 日本・米国相場を振り返りながら、来週のドル円シナリオを考察

今週の日本市場・米国市場の動向を詳しく振り返りつつ、来週の展望やFXトレーダーの方々に向けた具体的なドル円のシナリオをお届けします。私は基本的にトレンドフォロワーで、デイトレードから2週間程度のスイングトレードをメインとしています。この記事では、そうしたトレードスタイルを念頭に置きながら相場分析を行っていきます。

今週の日本市場の動向:日銀の利上げ発表と株価調整

まずは日本市場から。今週最も大きなニュースは、なんといっても日銀が長らく続けてきた金融緩和スタンスに変化をもたらしたことです。1月24日まで開かれた金融政策決定会合において、無担保コール翌日物金利の誘導目標が0.25%から0.5%へと引き上げられました。これは2024年7月会合以来の利上げであり、政策金利としては17年ぶりの水準に達したということで、市場に大きなインパクトを与えました。

利上げの意図としては、物価上昇の抑制や金融システムの安定を図る狙いがあるとされています。会合後の記者会見では、今回の利上げが「金融緩和からの完全な脱却」ではなく、金利操作の柔軟性を高める一環であるという説明がなされました。しかし、投資家の間では日銀の追加利上げペースが速まるのではないかという見方も根強く、株式市場には一定の調整圧力がかかった形です。

実際、日経平均株価は一時的に4万円台を回復する場面があったものの、最終的には5営業日ぶりに反落。終値は前日比26円89銭安の3万9931円98銭となりました。また、TOPIXも同様に下落し、0.70ポイント安の2751.04で取引を終えています。市場全体としては、「これ以上の大幅上昇には金利上昇リスクを織り込む必要がある」という雰囲気が漂っていたといえるでしょう。

金利が上昇すると企業の借入コストが増加するほか、将来キャッシュフローの割引率が上昇するため、株式価値が理論的に目減りしやすいという側面があります。また、債券利回りが上昇すれば投資資金が株式から債券へシフトする可能性も高まり、特にバリュエーションが高まっていた一部のグロース株やハイテク株などには売りが出やすくなるわけです。

日本市場のセクター動向と今後の注目点

日銀の利上げによって注目が集まったのは、やはり金融セクター、そして為替の影響を受けやすい輸出関連のセクターです。金利上昇は一般的には銀行株などにとってプラス材料とされますが、世界的な金利上昇や経済状況によっては損失が増える懸念もゼロではありません。複数の要素が絡み合うため、安易に「銀行株=買い」と決めつけるのは危険です。

  • 自動車セクター:円高が進めば業績に逆風になる可能性がある一方、海外でのEV需要の拡大など、構造的な成長要因も存在します。
  • 海運(船株):国際物流の回復や運賃相場の動向が株価を左右しやすいセクターです。決算発表のタイミングや世界経済の先行き次第で変動が大きくなるため、監視が必要です。
  • 機械・電子部品:為替レートの影響を受けやすく、特にドル円の動向が大きく響くセクター。日米金利差の変化を注意深く見る必要があります。

このようにセクター別に見ても、それぞれが為替や金利動向、さらには海外の経済状況に大きく依存しています。今後は、日銀が追加の利上げを行うのかどうか、そして米国の金融政策がどう推移するのかという点が、日本市場全体の方向性を決定づける重要な要素となるでしょう。

米国市場の動向:トランプ大統領再就任と金融セクターの好調

次に米国市場を見てみます。今週はドナルド・トランプ大統領が再就任し、新たな政策への期待感が高まりました。特に彼の掲げる大型減税やインフラ投資、さらにAI関連のインフラ投資などが注目を集めています。トランプ大統領は関税政策などで市場を揺さぶることが多かったですが、就任直後の演説や声明では比較的穏健なトーンで、AI投資拡大のような前向きな政策を発表。これがテック株を中心に一定の好感を得ました。

一方で、米国の金融セクターが好調です。主要銀行の決算が市場予想を上回ったことや、次回FOMC(1月末開催予定)を控えつつも「金利引き締め局面が続くのではないか」という思惑が銀行株にはプラス要因に働いている面があります。S&P500の金融セクターは週間で+6.1%の上昇という顕著な動きを見せました。

そのほかエネルギーセクターも堅調で、これを受けてダウ平均株価は+2.2%、S&P500は+1.7%、ナスダック総合指数も+1.7%と3指数ともに堅調に推移。VIX指数は22付近まで上昇しており、株式市場のボラティリティがやや高まっている点にも注目が必要です。

米国の主な経済指標と金融政策の行方

今週発表された米国の経済指標はややまちまちでした。消費者物価指数(CPI)はエネルギー高の影響で総合指数がやや上振れする一方、中核CPIは前月比+0.2%と鈍化傾向にあります。生産者物価指数(PPI)は+0.2%で、こちらも市場予想の+0.3%を下回る形。インフレが再加速するかどうかは今後の指標次第ですが、少なくとも今のところは「急激に再燃している」という状況ではないようです。

小売売上高は前月比+0.4%と市場予想を下回り、個人消費の先行きにやや不透明感を残しましたが、コントロールグループは前月比+0.7%と好調。雇用関連では、1月18日までの週の新規失業保険申請件数が223,000件とわずかに増加するなど、やや微妙な結果です。それでも失業率は4.1%をキープしており、「米国の雇用は総じて堅調」という評価が続いています。

FRB(連邦準備制度理事会)の金融政策は、次回会合での利下げ観測が一部後退。10年物国債利回りは一時4.8%の14カ月ぶり高水準をつけた後、インフレ関連指標が落ち着きを見せたことで利回りはやや低下しました。とはいえ、依然として「FRBがどのタイミングで利上げを完全停止し、さらに利下げへと転換するか」は最大の注目点となっています。

来週に向けての注目材料:日米双方での政策と決算

来週以降の相場を見通す上で注目されるのは、以下のようなポイントです。

  • 日銀の追加利上げの可能性:今回の引き上げを皮切りに、さらに短期間で利上げが行われるかどうか。インフレ率や景気指標に左右されやすいので、関連する経済指標にも要注目。
  • FOMCでの利下げの有無:市場の一部では「年内に利下げを行う」との観測もありますが、最新の経済指標がまちまちであることや、労働市場の強さを考えるとFRBが慎重な姿勢を保つ可能性も。
  • 企業決算の本格化:米国では金融セクターが概ね好調ですが、テックセクターや一般消費財セクターなど他セクターの業績見通し次第では、指数全体のセンチメントが変化するリスクあり。日本企業でも自動車、海運など注目セクターの決算発表が相次ぐため、注意が必要。
  • 地政学リスク:米中関係、ウクライナ情勢、中東情勢などは常に潜在リスクです。政策や制裁、関税などが為替や株式市場に直接影響を与えやすいため、ニュースヘッドラインにはこまめにチェックを入れてください。

ドル円のシナリオ:日足・週足で見るトレンドフォローのポイント

ここからは、私がメインに取引しているドル円についてシナリオを紹介します。トレンドフォロワーとして、日足や週足の重要な移動平均線や直近の高値安値をどう見ているのかをまとめます。

日足チャートのポイント

 

2024年9月に底値を打って以降、ドル円は高値・安値を切り上げるダウ理論的な上昇トレンドが続いていました。しかし、直近では20日移動平均線(20MA)を下抜けし、今はその20MAが上値を抑える形になっています。

  • レジスタンス:直近高値の160円付近、さらには162円付近が意識されている。
  • サポート:20MAを下抜けたことから、155円台や150円台後半が短期的なサポートゾーンになる可能性。
  • エントリー戦略:もしロングで入りたい場合は、20MAを再度明確に上抜けし、直近高値160円近辺を突破する動きを確認したい。ショート目線の場合は、20MAに頭を抑えられたまま下落が進行していくか、あるいは週足レベルの上昇トレンドラインを割り込むかを注視。

心理的節目として、昨年の円買い介入が行われた160円前後は多くの市場参加者に意識されています。ここを超えられるかどうかで、次のドル買い・円売りのトレンドが再加速するかが分かれ目になるでしょう。

週足チャートのポイント

週足でも高値・安値が切り上がり続ける上昇トレンドが継続していますが、やはり直近では上値の重さが顕在化。20週移動平均線との乖離も大きく、「調整が入るときは大きめの下落になるかもしれない」という警戒感があります。

  • トレンドライン:2024年9月から続く上昇トレンドラインを割り込むかどうかがカギ。
  • 材料出尽くし感:日銀の利上げ自体は“想定外”ながら、ある程度織り込み済みの部分もあり、材料出尽くしで一旦円高に振れるリスク。
  • 米金利との連動:米国の長期金利が再び上昇局面に入るとドル買いが進みやすく、ドル円は160円台〜162円台にチャレンジする可能性も。

結論として、週足では上昇トレンドが続いているものの、勢いが落ち始めているため「加速か減速か」の局面にあるといえます。

私のドル円トレード戦略(デイトレ~スイング)

私はデイトレードから2週間程度のスイングトレードがメインですので、次のようなプランを組んでいます。

  • ロング戦略:20MAを明確に上抜けし、かつ160円をブレイクアウトする形になったら順張りで買いエントリーを検討。目標は162円手前までをひとつの目安とし、それ以上伸びる場合はトレンドフォローで利を伸ばす。
  • ショート戦略:20MAを回復できずに反落する動き、あるいは大きな陰線が出て日足の下値支持を割り込むようなら短期的に売りエントリー。目安としては155円付近や、それを下抜けしたら150円台半ばまで狙う余地があるかもしれません。
  • リスク管理:金融政策イベント前や重要指標(米雇用統計、CPIなど)前にはポジションを薄くしてリスクを抑える。スイングの場合でもストップロスは必ず設定し、想定外の急騰・急落に備える。

基本は「順張り思考」ですが、日銀の政策転換やFRBの金融政策次第で相場の根本的な流れが変わるリスクもあります。特に日銀が追加利上げやYCC(イールドカーブ・コントロール)の修正をさらに踏み込んで行うようなサプライズがあると、一気に円高が進むシナリオにも備える必要があるでしょう。

日本株・米国株への影響と銘柄選択のヒント

ドル円が上昇(円安)すれば輸出企業にとってはプラス要因になりやすく、自動車や機械セクターは注目度が高まります。一方、円高が進むようだと輸入企業や内需関連銘柄にとってはプラス材料になりやすいです。加えて日銀の金利上昇により、銀行株や保険株などの金融セクターが注目される局面も続くでしょう。

  • 自動車株:為替の影響を受けやすいので、ドル円チャートを定点観測しながら対応。決算シーズンには想定為替レートが修正されることもあり、そこがサプライズにつながる場合も。
  • 海運株:利上げとは直接関係ないように見えますが、世界的な金利動向と景気サイクルによって物流需要が変化するため、結果的には為替や金利市場の動きと連動する側面もあります。
  • 米国金融セクター:米金利が上昇すれば利ざや拡大が見込まれ、好決算が続きやすい。ただし、インフレ再燃で急速に利上げペースが進むと債券ポートフォリオに大きな影響が出るリスクもあるため、銘柄選定は要注意。

こうした観点から、投資スタイルにもよりますが、為替ヘッジをするかどうか、金利上昇リスクをどの程度織り込むかなどを検討してポートフォリオを組むとよいでしょう。特に短期トレードでは、相場が荒れたときに損切りが遅れるとダメージが大きくなるため、あらかじめシナリオを複数用意しておくことが大切です。

まとめ:今週の振り返りと来週の展望

今週は日本市場での日銀利上げが象徴的な出来事でした。ここ数年の超低金利政策からの転換点として、国内外の投資家に強いインパクトを与えています。同時に、米国市場ではトランプ大統領の再就任や金融セクターの好調、インフレ指標の鈍化などプラス材料があり、相場全体としてはリスクオンに傾きやすい雰囲気も残っています。

ただし、どちらの市場も金利上昇の影響を避けては通れず、特にハイテク・グロース銘柄などバリュエーションが高めのセクターにとっては慎重な見極めが必要です。日本株では一部の銘柄に割高感が出ており、米国株でもバフェット指標が過去最高水準に近いなど、高バリュエーションへの警戒感はぬぐえません。

ドル円の動向は引き続き「日米金利差」と「世界的な金融引き締めの動き」が焦点となります。週足レベルで上昇トレンドが継続しているとはいえ、上値が重くなれば急落のリスクもあるため、今後の経済指標や各国中銀の発言には慎重に耳を傾ける必要があります。私が取り得る戦略としては、日足・週足の主要な移動平均線とレジスタンス(160円〜162円)を注視し、ブレイクアウト確認後の順張りロングか、あるいは反落を狙ったショートのエントリーを見極める形です。

最後に、私たちトレーダーにとって大切なのは「リスク管理」と「冷静なシナリオ分析」です。いかに優れた分析ができても、相場は予想外の動きを見せることがあります。ポジションを持つ際にはストップロスを徹底し、資金管理を怠らないようにしましょう。来週はFOMCや企業決算といった材料が豊富なので、ボラティリティが高まる可能性があります。その流れに柔軟に乗りつつ、トレンドフォロワーとして適切なタイミングでのエントリーとイグジットを心がけていきたいところです。

今回は今週の日本市場・米国市場の振り返りから始まり、来週のドル円シナリオと株式の注目ポイントにまで言及しました。情報量が多くなりましたが、FXや株式投資においては一見関係なさそうに見える事象も、実は大きく連動していることが少なくありません。ぜひ幅広い視野を持って相場に臨んでいただければと思います。皆さんのトレードがより良い結果につながることを願っています。来週も相場を楽しみつつ、慎重かつ大胆にトレードを行っていきましょう!

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