株価下落で利益を狙う「空売り」の基礎知識から準備方法、メリット・デメリット、暴落局面での銘柄選定・チャート分析、リスク管理、実践的な戦略&事例を余すところなく解説します。初心者〜中級者向けに失敗を防ぐ損切りルールや注意点を解説しますが、投資はあくまでも自己責任である旨をご認識ください。
Contents
空売りとは?その仕組みと基本的な流れ
空売りの定義(信用取引の空売り・CFDなど)
空売りとは、株価が下落するほど利益を得られる投資手法です。通常の株式投資は「安く買って高く売る」ことで利益を狙いますが、空売りの場合は「高く売って安く買い戻す」ことで差益を得ます。
信用取引における空売りは、証券会社あるいは証券金融会社から株式を借りて先に売り(売建)、後日その株式を買い戻して返却するという仕組みです。たとえば1株1,000円の銘柄を100株空売りし、その後700円に下がったタイミングで買い戻すと、「1,000円 – 700円 = 300円 × 100株 = 3万円」の利益が得られます。
一方、CFD(差金決済取引)では、実際に株式を借りるわけではなく、株価の値動きによる損益のみを差金で決済します。CFDの場合も空売りが可能で、現物を保有しない分スムーズにポジションを取れる利点がある反面、レバレッジにより損失が膨らむリスクなど、注意点は信用取引と似通った部分があります。
空売りが利益になる仕組み(株価下落による差益)
空売りでは、以下のステップを踏むことで利益を狙います。
- 証券会社から株式を借りて売却(「売建」)
- 株価が下落した後に買い戻し(買戻し)
- 売却価格と買戻し価格の差額が利益または損失
「高く売って、安く買い戻す」という取引ですが、株価が下がるとは限らない点に最大のリスクがあります。もし株価が予想に反して上昇すると、損失が膨らむ可能性があるうえ、株価の上昇に理論上の上限はないため、損失が青天井になるリスクが伴うのです。
空売りを行うための準備 – 口座開設・信用取引の基礎
信用取引口座の開設条件・証拠金
空売りをするためには、まず信用取引口座を開設する必要があります。信用取引口座の開設には、以下のような条件・手続きが一般的です。
- 年齢条件:多くの証券会社で満20歳以上(高校生は不可、18歳以上OKのところもあり)
- 投資経験や資産状況:一定額以上の金融資産や株式投資の経験が求められる場合がある
- 信用取引の理解度:講習を受ける・確認テストを受けるなどで、信用取引のリスクを十分理解していること
口座開設後は、証券会社に委託保証金(証拠金)を預けることで、実際に信用取引ができるようになります。証拠金は現物株や現金などが担保となり、原則的に証拠金の約3倍程度までの売買が可能です。ただし、レバレッジをかけ過ぎると損失拡大につながる点に注意しましょう。
初めてでも分かる注文方法(逆指値注文、成行・指値など)
空売りにおける具体的な注文方法は、現物取引と大きくは変わりません。主な注文方法は以下の通りです。
- 成行注文:現在の市場価格で即座に売買を成立させたい場合に使う。相場変動の激しい局面でも、まずは約定を優先したいときに便利。
- 指値注文:売買したい価格をあらかじめ指定する。空売りの場合、「◯◯円以上になったら売りたい」といった使い方はできず、「◯◯円以下になったら売りたい」のような逆指値指値注文と組み合わせて使うケースもある。
- 逆指値注文:あらかじめ決めた価格に達したら自動的に買い戻し(または新規売り)注文を出す方法。とくに空売りでは損失拡大を防ぐための損切りラインとして役立つ。
例えば1,000円で空売りした銘柄が1,050円を超えたらロスカットする、と決めている場合は、1,050円に逆指値を設定し、そこを超えた時点で自動的に買い戻しが執行されるように設定しておきます。これにより、不意の暴騰による大損を防ぎやすくなります。
空売りのメリット&デメリット
メリット(下落相場での利益獲得、ヘッジ手段など)
- 下落相場でも利益を得られる:通常の現物取引では、株価下落時に利益を得る方法は限られますが、空売りなら下落トレンドでも稼ぐチャンスが生まれます。
- ヘッジ手段として活用:保有株(現物)のリスクを一部相殺する「つなぎ売り」として利用可能。保有株が値下がりしても、同銘柄(あるいは関連セクター)の空売りで損失を抑えられます。
- ポートフォリオ全体の安定化:空売りを組み合わせることで、全体として相場変動の影響を緩和できるケースがある。
デメリット(損失無限大リスク、逆日歩・配当落ちなど)
- 損失が青天井:理論上、株価の上昇に上限がないため、損失が無制限に拡大する可能性がある。空売りの最大のリスク。
- 追加コスト(逆日歩・配当落調整金):空売りしている間、貸株料や逆日歩が発生することがある。さらに配当の権利日をまたぐ場合、配当金相当額を支払う必要がある。
- 期限付き(制度信用取引の場合):信用取引の空売りには最長6ヶ月程度の返済期限がある。長期的に保有したい場合は一般信用取引を検討する必要がある。
- 踏み上げリスク:空売りが多く溜まった銘柄で好材料が出ると、買い戻し(ショートスクイーズ)が相次ぎ、短期間で株価が急騰する危険が高い。
暴落局面で狙う銘柄・チャートパターン
高PER・業績悪化銘柄の下落傾向
暴落相場では、特に高PER(割高な銘柄)や業績悪化が明確な銘柄が狙われやすい傾向があります。具体的には以下のような特徴をもつ銘柄が空売りのターゲットになることが多いです。
- PERが極端に高い:マーケット全体が弱気に傾くと、株価が実態以上に膨れ上がっていた銘柄が急激に売り込まれる。
- 業績下方修正の可能性が高い:売上や利益が目標に届かないと見込まれる銘柄は、市場の失望感で大幅安に陥りやすい。
- 不祥事やスキャンダル:企業イメージが悪化し、投資家心理が急激に冷え込むケースでは、一気に売りが膨らむことがある。
ただし、高PER銘柄でも成長期待が高い企業の場合は、暴落後にリバウンドする力が強いケースもあるため、業績の実態や将来性をしっかり見極めることが重要です。
チャート形状(天井圏・ヘッドアンドショルダー・移動平均線割れなど)
テクニカル分析において、下落トレンドへの転換サインとしてよく挙げられるパターンは以下の通りです。
- ダブルトップ・トリプルトップ:同水準で2回または3回天井を形成し、その後ネックラインを割れたタイミングで大きく下落する可能性が高い。
- ヘッドアンドショルダーズ:中央の高値(頭)が両肩より高く、その後ネックラインを割ると下落が加速する形状。
- 移動平均線割れ:長期移動平均線(200日線など)を大きな出来高を伴って下回ると、下落相場が長期化しやすい。
- サポートラインの明確なブレイク:これまで支えになっていたラインを割り込むと売りが殺到し、一段安となるケースが多い。
下落相場では、「天井をつけてからどのように推移しているか」を丁寧に観察しましょう。天井圏でのモミ合いが長期化した後に大きく崩れた場合、相場全体のセンチメントもネガティブになりやすく、空売りに有利な流れが続く可能性があります。
空売りのリスク管理と損切りのコツ
損失無限大リスクを避けるための逆指値設定
空売りでは強力なリスク管理が必須となります。その中心となるのが逆指値注文の活用です。
- 逆指値注文を使った損切り:新規で空売りを仕掛ける際に、どの価格まで上昇したら買い戻す(損切りする)かを決めておく。
- 大きめの値幅を設定するか、こまめに損切りするかは投資スタイル次第:損切りラインがあまりにも近いとノイズで簡単に刈られる可能性もあり、遠すぎると損失が大きくなる。
- 感情的な判断を排除:あらかじめ決めたルールに従い、自動的に損切りを執行することが重要。
空売りの場合、株価が意外な材料で急騰するリスクを常に抱えています。「ここまで上がったらダメージが大きい」と感じる水準に逆指値を置き、最悪の事態を回避しましょう。
ポジションサイズ調整と分散ショート
一銘柄への集中投資は、空売りにおいて大損失につながるリスクが高まります。そこで、以下の点に留意しましょう。
- ポジションサイズを抑える:1回のトレードで失っても痛手にならない範囲でエントリーする。
- 分散ショート:複数の銘柄に小分けして空売りすることで、1銘柄特有のリスクを分散する。
- レバレッジを低めに設定:信用取引はレバレッジをかけられる魅力があるが、リスク管理を徹底し、追証発生リスクを最小化する。
また、追証(追加保証金)を求められる事態にならないよう、証拠金維持率が低下し過ぎないように気を配ることも大切です。
空売りの勝ち方 – 戦略・手法を具体例で解説
短期トレード vs 中長期ショート(リスク・リワード比較)
空売りには大きく分けて、短期勝負(デイトレード・スイングトレード)と中長期で持ち続ける手法があります。それぞれにメリット・デメリットがあります。
- 短期トレード
メリット:
・株価の微妙な変化を捉えて、リスクを限定しやすい
・踏み上げられるリスクを素早い利確や損切りで回避
デメリット:
・頻繁にトレードするため手数料や貸株料がかさむ
・本業がある場合、リアルタイムで監視が難しい - 中長期ショート
メリット:
・業績悪化やバブル化している銘柄の大きな下落トレンドをじっくり狙える
・小さな値動きに振り回されにくい
デメリット:
・踏み上げリスクが長期間にわたり存在
・制度信用の場合は返済期限(最長6ヶ月)があるため、想定どおりの下落が起きないと損失が拡大するリスクも
自身の資金量や、どれだけ相場に張り付けるか(監視できる時間)などのライフスタイルから、どちらが合っているかを判断すると良いでしょう。
イベント投資(決算発表前後、悪材料報道など)
空売りのタイミングとして有効なのがイベント投資です。決算や大きなニュースなどが出るタイミングは株価が急変動しやすく、短期間で大きな利益が狙える反面、逆方向に動いたときは損失リスクも高まります。
- 決算発表前後:市場予想を大きく下回る決算が出れば、その銘柄だけでなく関連セクター全体で売りが膨らむこともある。
- 不祥事・業績下方修正などの悪材料:インサイダー情報を掴むのは違法ですが、一般公開された悪材料でもタイミング次第では急落に乗れる可能性がある。
- 経済指標・政策金利発表などのマクロイベント:特定のセクターが影響を受けるケースでは、そのセクターの代表銘柄を空売りする戦略が考えられる。
ただし、イベント後に「悪材料出尽くし」などで株価が急上昇に転じるケースもあるため、ニュースの内容と市場の反応を冷静に見極める必要があります。
成功例・失敗例から学ぶ空売り実例
リーマンショックやコロナショック時のショート事例
- リーマンショック(2008年)
アメリカの住宅バブル崩壊から派生した世界的な金融危機で、金融関連株や輸出関連企業が大暴落しました。特にサブプライムローン問題を抱えていた大手金融機関の株価が大幅下落し、そのタイミングで空売りを仕掛けていた投資家は大きなリターンを得ています。ただし、一方で時期を誤った空売りや下げ止まりを見誤った投資家は、大きな損切りに追い込まれた事例もあります。 - コロナショック(2020年)
新型コロナウイルスの感染拡大を受け、世界各国で経済活動が制限されました。その影響で旅行・航空・飲食などのサービスセクター銘柄が急落。当初のロックダウンや渡航制限をいち早く察知して空売りを仕掛けていた投資家は、短期間でまとまった利益を得ました。しかし、コロナ後半には金融緩和や財政出動によって株式市場が急回復し、空売りを持続しすぎた投資家が踏み上げに遭うケースもありました。
配当落ちや踏み上げ相場で大損した失敗談
- 配当落ちリスク:権利確定日の前に空売りしていると、配当相当額を支払う義務が発生します。狙いどおりの下落が起こらず、配当相当額をまるまる負担する形になり、結局トータルの損益がマイナスということもあるため注意が必要です。
- 踏み上げ相場:悪材料と思われたニュースが、マーケットには既に織り込まれていたケースや、想定外の好材料報道が出たケースで、空売りが積み上がっていた銘柄が急騰する「ショートスクイーズ」が発生します。一気に株価が跳ね上がり、空売り投資家が買い戻しを余儀なくされ、大損する事例は枚挙にいとまがありません。
失敗談から学べることは、常にリスク管理を怠らないことと、相場のセンチメント転換を感じたら潔く撤退する勇気を持つことです。
空売り実例
著者が空売りを仕掛ける際、どういう根拠見ているか参考をお伝えします。 実際は、プライム銘柄を空売りするときは、日経平均の動きや、アメリカ市場の動向なども考慮する必要があります。 しかし、今回はそこまで含めると複雑になってしまうので、各銘柄の日足チャートを見ながら、タイミングの取り方の例をお伝えします
例1:資生堂の空売り


例2:トヨタ自動車の空売り


例3:商船三井の空売り


まとめ・次のアクション – 空売り初心者へのアドバイス
最終的な注意事項・「自己責任」の再強調
空売りは下落相場でも利益が狙える非常に強力な武器である反面、理論上の損失が青天井になる可能性や、逆日歩などの追加コストが発生するなど、通常の現物取引とは異なるリスクが多々存在します。
以下の点を改めて強調します。
- 信用取引の仕組みを理解する:レバレッジの高さは魅力ですが、追証やロスカットの危険が付きまとう。
- リスク管理を徹底する:逆指値による損切り設定、ポジションサイズの調整は必須。欲張りすぎないことが肝心。
- 常に自己責任で判断する:投資助言やネット情報を参照するのは有効ですが、最終判断は自分自身で行う意識を忘れない。
投資は利益と損失が表裏一体です。特に空売りは「損切りが難しい」「精神的にストレスが大きい」と感じる人も少なくありません。自分の性格やライフスタイルに合った手法かを検討したうえで、慎重に取り組むようにしましょう。
関連コンテンツ・専門家への相談を促すCTA
- 投資セミナーやオンライン講座を活用:証券会社や投資関連サイトが提供する無料のWebセミナーは、空売りや信用取引の基本を体系的に学ぶのに適しています。
- ファイナンシャルプランナーや投資顧問に相談:専門家にヒアリングすることで、自分の資金状況やリスク許容度に合ったアドバイスが得られます。
- 各種投資情報サイト・SNSをチェック:空売り比率や日々の逆日歩情報などを公開しているサイトを日常的に確認し、需給状況を把握しましょう。ただし、SNS上の噂や推測情報に踊らされないよう気をつけることが重要です。
空売りは確かに魅力的な戦略ですが、正しい知識とリスク管理なくしては大きな損失を被る可能性も大いにあります。「自己責任である」という認識を常に持ちつつ、必要な知識を深め、慎重に挑戦してみてください。暴落相場で利益を狙う大きな武器になる一方、反対に自分が“踏まれる”ことがないよう、しっかりと準備をしていきましょう。
以上が「空売りの作法・やり方、狙い方、勝ち方」を網羅した完全ガイドです。投資初心者から中級者まで、下落相場を有効活用したい方は、ぜひ本記事を参考にしていただき、無理のない範囲で空売りを検討してみてください。投資で大切なのは、何よりもリスクを把握したうえで正しい行動を取れるかどうかです。焦らず、一歩ずつ着実に経験を積んでください。投資家としての武器を増やしておけば、暴落時に掴むチャンスは格段に増えるはずです。
空売りに関する主要な参考サイト
- ライジングブル
株の空売りの仕組み、やり方を解説|気になる注意点やポイントも!
・具体的な事例(1万円の株を100株借りて売却→株価半減時に買い戻す)を用いて解説。
・初心者にも分かりやすい空売りの基本的な流れを紹介。
・売却から買い戻しまでのステップを丁寧に説明。 - SMBC日興証券
「空売り」とは? 仕組みやメリット、リスクを解説
・制度信用取引と一般信用取引の違いを分かりやすく解説。
・貸借銘柄や逆日歩など、空売り特有の注意点について言及。
・株価急上昇による損失拡大リスク、貸株料負担などのリスクも詳細に紹介。 - ダイヤモンド・ザイ
「一般信用取引の空売り」ができる証券会社なら、低コスト&低リスクで株主優待・配当をゲット可能!
・一般信用取引を使ったつなぎ売り・IPO株の空売りなど、具体的な活用法を紹介。
・楽天証券、SBI証券など、複数証券会社の一般信用取引の手数料比較も掲載。
・優待クロスや配当狙いにおける空売り活用方法を提案。 - 空売りラボ
空売りの方が簡単?初心者でも理解できる株の基本
・初心者視点から空売りを分かりやすく解説し、メリット・デメリットを整理。
・銘柄選定や市場動向の分析など、実践的なポイントを提示。
・初めて空売りを検討する投資家に役立つ基礎知識を網羅。 - GoFund
空売りとは?仕組みやメリット・デメリットをわかりやすく解説
・2024年4月更新の最新記事。空売りの基礎を事例(株価1,500円→1,200円)で示して理解しやすく整理。
・貸株料や逆日歩、損失拡大などのリスクを含むメリット・デメリットを紹介。
・初心者が躓きがちな部分を事例を用いて丁寧にカバー。
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