路線価

【完全ガイド】2025年銀座の最高路線価で相続税はいくら減らせる?特例80%減を徹底解説

この記事の要点・結論

2025年の最新路線価に基づき、日本一地価が高い銀座の土地を相続した場合の相続税をシミュレーションします。2025年の銀座中央通りの最高路線価は1㎡あたり4,808万円と過去最高を更新しました 。この記事では、路線価を用いた土地の評価額の計算方法から、具体的なケーススタディを通して、相続税がいくらになるのかを徹底解説します。さらに、「小規模宅地等の特例」や「配偶者控除」といった制度を活用することで、税負担がどれだけ軽減されるのかを具体的な金額で示します。この記事を読めば、銀座の土地相続に関する税金の基本と、効果的な節税対策の第一歩がわかります。

銀座の路線価2025 ─ 史上最高値を更新?

2025年7月1日に国税庁が公表した路線価で、東京都中央区銀座5丁目の銀座中央通り(鳩居堂前)が1㎡あたり4,808万円を記録し、40年連続で全国最高路線価の座を維持するとともに、過去最高値をも更新しました 。これは前年の4,424万円から8.7%の大幅な上昇です 。この上昇の背景には、インバウンド需要の完全な回復や、継続的な大規模再開発、さらには海外からの投資マネーの流入など、複数の要因が絡み合っています

主要地点(銀座四丁目交差点など)の数値

  • 最高路線価地点:東京都中央区銀座5丁目 銀座中央通り(鳩居堂前)
  • 2025年路線価:48,080,000円/㎡
  • 前年比:+8.7%

銀座の路線価は、コロナ禍で一時的な下落を見せたものの、2023年から回復基調に転じ、2025年にはついにコロナ前の水準を超える歴史的な価格となりました。以下の表は、近年の価格推移をまとめたものです。

路線価 (円/㎡) 前年比 出典
2019 45,600,000 +2.9% 日本経済新聞 [8]
2020 45,920,000 +0.7% 旭化成ホームズ [9]
2021 42,720,000 -7.0% 税理士法人チェスター [10]
2022 42,240,000 -1.1% KTC税理士法人 [11]
2023 42,720,000 +1.1% KTC税理士法人 [12]
2024 44,240,000 +3.6% 株式会社大蔵屋 [13]
2025 48,080,000 +8.7% PLAZA HOMES

(表)銀座中央通り(鳩居堂前)の路線価推移。2021年・2022年はコロナ禍で下落したが、2023年以降はV字回復を遂げている。

相続税評価額の算定ステップ

土地の相続税評価額は、単純に「路線価 × 面積」ではありません。土地の形状や利用状況に応じて評価額を補正するルールが定められています。正確な評価額を出すには各種補正率の理解が不可欠です。これにより、実際の価値に即した公平な課税が行われます。

1㎡あたり路線価 × 地積 × 補正率

土地の評価額を算出する基本の計算式は「正面路線価 × 各種補正率 × 地積(面積)」です。銀座のような高度に利用される商業地では、様々な補正が評価額に影響します。

  • 奥行価格補正率:土地の奥行が標準的な長さに満たない、あるいは長すぎる場合に評価額を調整します。例えばビル街地区では奥行4m未満だと評価額が20%減額されます
  • 間口狭小補正率:道路に接する間口が狭い土地は利用しにくいため、評価額が減額されます。高度商業地区で間口4m未満の場合、15%の減額補正が適用されます
  • 容積率補正:指定された容積率を十分に活用できない土地の場合、評価額が調整されます。銀座は都市再生特別地区として容積率が最大1360%まで許容されるため、この補正の重要性が高まります [14, 15]。
  • 借地権割合:土地を借りて建物を建てている場合、その土地の権利は地主と借地権者に分かれます。銀座中央通りのような主要な商業地では、借地権割合は90%(A)に設定されており、土地全体の価値のうち9割が借地権者のものとして評価されます

これらの補正を適切に行うことで、土地の個性に応じた適正な評価額が算出されます。特に複数の補正が絡む場合は、専門家である税理士への相談が賢明です。

最新試算モデル:ケーススタディ3パターン

それでは、2025年の最新路線価(銀座中央通り:4,808万円/㎡)を基に、具体的な相続税額をシミュレーションしてみましょう。相続人は子2人(法定相続人2名)と仮定し、基礎控除額は「3,000万円 + 600万円 × 2人 = 4,200万円」とします。

① 70㎡商業ビル用地(貸宅地)

父親が所有する70㎡の土地にテナントビルが建っており、土地を第三者に貸しているケース(貸宅地)です。

  • 土地の状況:70㎡、銀座中央通り沿い、貸宅地
  • 路線価:48,080,000円/㎡
  • 各種補正:簡略化のため補正なし(1.0)と仮定
  • 借地権割合:90%(A)

【評価額の計算】
まず自用地としての評価額を計算します。
48,080,000円/㎡ × 70㎡ = 33億6,560万円

次に、貸宅地の評価額を計算します。貸宅地の評価は「自用地評価額 × (1 – 借地権割合)」で求められます [36] 。
33億6,560万円 × (1 – 0.9) = 3億3,656万円(相続税評価額)

【相続税の計算】
課税遺産総額:3億3,656万円 – 4,200万円(基礎控除) = 2億9,456万円
法定相続分(子1人あたり):2億9,456万円 ÷ 2人 = 1億4,728万円
税額(子1人あたり):1億4,728万円 × 40% – 1,700万円 = 4,191.2万円
相続税総額:4,191.2万円 × 2人 = 8,382.4万円

② 200㎡自宅用地(小規模宅地等の特例)

父親が居住していた自宅の土地200㎡を、同居していた長男が相続するケースです。この場合、「小規模宅地等の特例」が適用できます。

  • 土地の状況:200㎡、自宅用地
  • 路線価:48,080,000円/㎡
  • 特例の適用:特定居住用宅地等として330㎡まで80%減額

【評価額の計算】
自用地評価額:48,080,000円/㎡ × 200㎡ = 96億1,600万円

小規模宅地等の特例を適用します。居住用なので、200㎡全域で80%の評価減が受けられます。
減額される評価額:96億1,600万円 × 80% = 76億9,280万円
相続税評価額:96億1,600万円 – 76億9,280万円 = 19億2,320万円

【相続税の計算】
課税遺産総額:19億2,320万円 – 4,200万円 = 18億8,120万円
法定相続分:18億8,120万円 ÷ 2人 = 9億4,060万円
税額(子1人あたり):9億4,060万円 × 55% – 7,200万円 = 4億4,533万円
相続税総額:4億4,533万円 × 2人 = 8億9,066万円

③ 600㎡複数筆保有(店舗兼住宅)

父親が600㎡の土地に店舗兼住宅を建て、事業(店舗部分)と居住(自宅部分)に利用していたケースです。長男が事業と家を引き継ぎます。

  • 土地の状況:600㎡、店舗兼住宅(店舗400㎡、自宅200㎡)
  • 路線価:48,080,000円/㎡
  • 特例の適用:特定事業用宅地等(400㎡まで80%減)と特定居住用宅地等(330㎡まで80%減)を併用 [19]

【評価額の計算】
自用地評価額:48,080,000円/㎡ × 600㎡ = 288億4,800万円
・店舗部分(400㎡):特定事業用宅地等の特例を適用
 評価額:(48,080,000円/㎡ × 400㎡) × (1 – 0.8) = 38億4,640万円
・自宅部分(200㎡):特定居住用宅地等の特例を適用
 評価額:(48,080,000円/㎡ × 200㎡) × (1 – 0.8) = 19億2,320万円

相続税評価額:38億4,640万円 + 19億2,320万円 = 57億6,960万円

【相続税の計算】
課税遺産総額:57億6,960万円 – 4,200万円 = 57億2,760万円
法定相続分:57億2,760万円 ÷ 2人 = 28億6,380万円
税額(子1人あたり):28億6,380万円 × 55% – 7,200万円 = 15億809万円
相続税総額:15億809万円 × 2人 = 30億1,618万円

控除・特例を適用した税額比較

相続税の計算において、各種控除や特例の適用は税負担を劇的に変える力を持っています。特に「小規模宅地等の特例」は、銀座のような地価が高いエリアでは絶大な効果を発揮します。ここでは、特例の有無で税額がどれほど変わるのかを比較してみましょう。

基礎控除・配偶者控除・小規模宅地等特例

相続税の負担を軽減する主要な制度は以下の通りです。

  • 基礎控除:すべての相続で適用される最も基本的な控除です。計算式は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で、これを下回る遺産総額なら相続税はかかりません
  • 配偶者の税額軽減(配偶者控除):配偶者が相続する遺産額が「1億6,000万円」または「配偶者の法定相続分相当額」のいずれか多い金額まで、相続税がかからない制度です。
  • 小規模宅地等の特例:被相続人の自宅や事業に使われていた土地の評価額を、一定の面積まで最大80%減額できる、最も節税効果の高い特例の一つです

それでは、ケーススタディ②(200㎡自宅用地)で、小規模宅地等の特例を「適用した場合」と「適用しなかった場合」の税額を比較します。

項目 特例適用なし 特例適用あり (80%減額)
土地評価額 96億1,600万円 19億2,320万円
基礎控除 4,200万円 4,200万円
課税遺産総額 95億7,400万円 18億8,120万円
相続税総額(子2人) 約51億8,370万円 約8億9,066万円
軽減額 約42億9,304万円

(表)小規模宅地等の特例の適用有無による税額比較(ケーススタディ②)。特例を適用することで、相続税額が約43億円も圧縮されることがわかります。

この表が示す通り、特例の適用だけで相続税評価額が約77億円、納税額が約43億円も減少します。特例の適用要件は複雑ですが、銀座の土地を相続する際は、この制度を最大限活用できるかどうかが納税の成否を分けると言っても過言ではありません

税負担を軽減する5つのプランニング手法

銀座の土地のような高額資産の相続には、計画的な準備が不可欠です。税負担を法的に正しく軽減するための代表的なプランニング手法を5つご紹介します。

  1. 小規模宅地等の特例の徹底活用
    これまで見てきたように、この特例の効果は絶大です。自宅であれば同居する、事業用であれば事業を引き継ぐなど、適用要件を満たすための準備を早くから始めることが重要です。店舗兼住宅であれば、居住用と事業用で最大730㎡まで併用適用が可能です [19]。
  2. 生前贈与による財産の移転
    暦年贈与(年間110万円まで非課税)や、相続時精算課税制度(2,500万円まで非課税)を活用し、計画的に財産を次世代へ移転する方法です 。特に相続時精算課税制度は2024年の改正で年間110万円の基礎控除が創設され、使い勝手が向上しました。
  3. 生命保険の非課税枠の活用
    死亡保険金には「500万円 × 法定相続人の数」という非課税枠があります。この枠を利用して、納税資金対策と相続財産の圧縮を同時に行うことができます。例えば相続人が2人なら1,000万円までが非課税となります。
  4. 法人化による資産管理
    不動産を個人で所有するのではなく、資産管理法人を設立して所有する方法です。家賃収入を役員報酬として家族に分散させることで所得税を平準化したり、株式の評価額を引き下げる対策を講じたりすることが可能になります。
  5. 不動産への資産組換え
    相続税評価において、現金・預金は額面通り100%評価されますが、不動産は路線価や固定資産税評価額で評価されます。銀座エリアでは、路線価が実勢価格(時価)の7割~8割程度になることが多く、現金で持つより評価額を圧縮できる効果があります 。この価格差を利用した対策も有効です。

まとめ

本記事では、2025年の最新路線価(銀座中央通り:4,808万円/㎡)を基に、銀座の土地にかかる相続税をシミュレーションしました。日本一の地価を誇る銀座では、わずかな土地でも相続税評価額が数十億円に達し、納税額も巨額になる可能性があります 。しかし、計算の仕組みを正しく理解し、「小規模宅地等の特例」のような強力な制度を計画的に活用することで、税負担を大幅に軽減できることもお分かりいただけたかと思います。

シミュレーション結果が示すように、特例の適用有無で納税額に数十億円もの差が生まれることも珍しくありません。また、貸宅地や店舗兼住宅など、土地の利用状況によって評価方法や使える特例が異なるため、ご自身の状況に合わせた最適なプランニングが不可欠です。銀座に土地をお持ちの方、また将来相続する可能性のある方は、本記事を参考に、できるだけ早い段階から税理士などの専門家へ相談し、来るべき相続への備えを始めることを強くお勧めします。

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参考サイト

初心者のための用語集

  • 路線価:国税庁が毎年公表する1㎡あたりの土地評価額。相続税・贈与税の計算基準となる。
  • 相続税評価額:路線価に地積や補正率を掛けて算出する土地の課税上の価値。
  • 小規模宅地等の特例:居住用・事業用宅地を最大80%まで評価減できる相続税の減額制度。
  • 借地権割合:更地価格に対する借地権の価値割合。銀座の商業地では90%が一般的。
  • 基礎控除:3,000万円+600万円×法定相続人数で計算する非課税枠。
  • 配偶者軽減:配偶者が取得した遺産について法定相続分または1億6,000万円まで非課税にできる制度。
  • 課税価格:評価額から各種控除を差し引いた後、相続税率を適用するベースとなる金額。
  • 補正率:奥行や間口など土地形状に応じて評価額を増減させる係数。
  • 容積率:敷地面積に対する延床面積の上限比率。評価補正や開発計画に影響する。
  • 相続時精算課税制度:2,500万円まで贈与税ゼロで生前贈与し、最終的に相続財産に合算する制度。
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松田 悠志
㈱ビーシアップ代表。宅建士・FP2級。人材採用・営業・Webマーケ・資産形成を支援し、採用コンサルやマネープラン相談も対応。株12年・FX7年のスイングトレーダー。ビジネス・投資・開運術を多角的に発信し、豊かな人生を後押しします。