ファイナンシャルプランナー(FP)2級試験の「リスク管理」は、生命保険や医療保険、損害保険など幅広い保険制度を学習し、私たちが抱える様々なリスクに対してどう備えるかを考える科目です。
- 学科試験の60問中、リスク管理は10問を担当し、10点分を占めます。
- 合格ラインは36点(60点の60%)とされるため、リスク管理で高得点を狙うことが合否に大きく影響します。
とはいえ、
- 保険商品の種類が多い
- 法律ルールや計算問題が絡んでくる
など、初学者にとってはとっつきにくい部分も多々あります。しかし、過去問を分析すると問われるポイントはある程度固定化されており、**重要論点(基礎知識)をしっかり学べば、得点しやすい科目**です。
Contents
この記事のポイント】
ここでは、
- リスク管理で扱う主な範囲
- 過去問でも繰り返し登場する重要論点
- 学習で陥りがちなミスへの対処法
- 効率的な勉強法
を踏まえて、丁寧に解説します。初心者の方もぜひ「これならやれそう!」と思えるよう、詳しく読み進めてください。
【2.試験で問われる範囲】
リスク管理で学ぶ対象は、大きく以下の4つに分類できます。
◇ 1.生命保険
生命保険は、死亡リスクや高度障害リスクへの備えが中心となります。
- 定期保険、終身保険、養老保険、収入保障保険など多彩な商品が存在
- 保険料の仕組み(予定死亡率・予定利率・付加保険料など)
- 告知義務、保険金受取人、契約者と被保険者の関係
- 税制(死亡保険金の課税関係、生命保険料控除など)
また、近年は標準生命表の改定により保険料が見直されるケースもあるので、その影響も含めた出題があることがあります。
◇ 2.第三分野保険
いわゆる医療保険やがん保険、介護保険が該当します。
- 医療保険:入院給付金、手術給付金、先進医療特約、短期・長期入院
- がん保険:診断給付金、一時金支給、入院・通院補償、三大疾病保障など
- 民間介護保険:要介護認定を受けた際の一時金または年金給付、公的介護保険との補完関係
「公的医療保険・介護保険だけでは不足する部分をどう民間保険で補うか」という視点で出題されるのが特徴です。
◇ 3.損害保険
火災保険、自動車保険、傷害保険、賠償責任保険などがメインとなります。
- 火災保険:住宅火災保険と住宅総合保険の違い、地震保険特約、保険金額は時価か再調達価額か
- 自動車保険:自賠責保険(強制保険)と任意保険、対人賠償・対物賠償・車両保険・搭乗者傷害、ノンフリート等級
- 個人賠償責任保険:日常生活での賠償リスク(自転車事故など)を補償
- 傷害保険:普通傷害保険、旅行傷害保険など
近年は自然災害の増加に伴う火災保険・地震保険の料率改定、また自動車事故対策の観点での自賠責保険・任意保険の仕組みなどが重点的に問われやすいです。
◇ 4.保険法や契約時の法律ルール
保険契約には特有の法律的ルールがあります。
- 告知義務・告知義務違反の効果
- クーリングオフ制度:書面を受け取った日を含め8日以内は契約解除可能
- 責任開始日:契約成立と初回保険料払込みが完了した時点で補償スタート
- 保険金請求手続き:請求権の時効など
これらを理解することで、実際の保険加入や顧客へのアドバイスでも役立ちます。数字や期間を厳密に問われることが多いため注意が必要です。
【3.重要論点(基礎知識)を徹底網羅】
ここではFP2級の過去問でも繰り返し登場する重要ポイントをまとめました。これらを確実に押さえるだけでもリスク管理で高得点が狙えます。
1.生命保険の種類と特徴
- 定期保険:
- 一定期間の死亡保障を行う。満期保険金がない分保険料が低め。
- 更新型と全期型があり、更新型は保険期間満了時に更新可能だが、年齢上昇で保険料が増加。
- ライフステージに合わせて高額保障を確保したいときによく使う。
- 終身保険:
- 生涯にわたり死亡保障がある。解約返戻金があり、長期的な貯蓄性も兼ねる。
- 相続時の資金確保や葬儀費用対策などの目的で契約されることが多い。
- 保険料は定期保険より割高になりやすい。
- 養老保険:
- 死亡保障+満期保険金(生存時にも満期保険金を受け取る)。貯蓄性が最も高いが保険料も高い。
- 満期まで生存していれば保険金が支払われ、死亡時には死亡保険金が支払われる。
- 収入保障保険(逓減定期保険):
- 被保険者の死亡時に遺族が年金形式で受取れる。必要生活費が高い子育て期に適している。
- 保険期間が経つほど支給総額が逓減していくため、一定期間だけ高額保障したい場合に有効。
2.保険料算出と標準生命表
- 保険料=純保険料(予定死亡率・予定利率)+付加保険料(保険会社の事業費)。
- 標準生命表の見直しが行われると、保険会社は死亡率に応じて保険料を再計算する。
- 死亡リスク低下=死亡保険料が下がる方向、長寿化=年金保険や医療保険の保険料上昇方向、という傾向が出やすい。
3.第三分野:医療保険・がん保険・介護保険
- 医療保険:
- 入院給付金(1日〇〇円×入院日数)、手術給付金(手術の種類に応じて定額や倍率)など。
- 先進医療特約:健康保険が適用されない先進医療の費用を保障。
- 三大疾病(がん・急性心筋梗塞・脳卒中)特約を付けられる商品もある。
- がん保険:
- がんと診断された場合の診断給付金や入院・通院費用を保障。
- 抗がん剤治療や放射線治療への給付など、商品により保障範囲が異なる。
- がんは長期治療になりやすい点から、一時金だけでなく通院や再発保障の有無をチェック。
- 介護保険(民間):
- 要介護状態になったとき、一時金または年金形式で保険金が支払われる。
- 公的介護保険ではカバーしきれない介護費用を補完する目的。
4.損害保険:火災・地震・自動車・賠償責任など
- 火災保険:
- 住宅火災保険と住宅総合保険で補償範囲が異なる(風災・水災などの有無)。
- 地震保険は単独契約不可で、火災保険とセット契約。
- 保険金の評価方法:時価と再調達価額(新価)を区別。最近は再調達価額が多い傾向。
- 自動車保険:
- 自賠責保険(強制保険)は対人賠償のみ、保険金額に限度あり。
- 任意保険は対人・対物・車両・搭乗者傷害などを細分化し、ノンフリート等級で保険料が変化。
- 免責金額を設定する場合あり。車両保険では全損・分損に注意。
- 個人賠償責任保険:
- 日常生活での賠償リスク(自転車事故、子どもの過失、ペットによる被害など)を補償。
- 火災保険や自動車保険の特約として付加するケースが一般的。
- 傷害保険:
- 普通傷害保険、旅行傷害保険など。ケガによる通院・入院・死亡・後遺障害を補償。
- 業務中のケガや特定のリスクを対象外とする場合もあるため、約款に注意。
5.保険契約の法律ルール
- 告知義務:
- 被保険者の健康状態や既往症を正しく告知しなければ、保険会社は契約解除や保険金不払いが可能。
- 特に生命保険・医療保険は健康状態の申告が必須。
- クーリングオフ:
- 書面を受け取った日を含め8日以内に書面で解除申出が可能。
- 営業職員などから不十分な説明で契約した場合など、早期解約したいときに有効。
- 責任開始日:
- 保険契約成立&初回保険料の払込み完了が要件。
- 申込書・告知書提出日と初回払込み日が異なる場合の扱いに注意。
- 保険金請求期限・時効:
- 保険法で保険金請求権の消滅時効が定められている。生命保険・損害保険などで期間が異なるケースあり。
6.保険金・給付金の計算問題
- 死亡保険金の計算:定期保険と逓減定期で支払われる保険金の総額が異なる。
- 医療保険:入院日数×日額+手術給付金。免責日数の有無を見落とさない。
- 火災保険:損害額と保険金額の比較、免責金額を差し引いて計算。
- 自動車保険:車両保険における自己負担金(免責金額)や全損・分損の計算。
いずれもパターン化されていることが多いので、過去問を通して計算手順を覚えれば対応可能です。
【4.過去問の活用法】
FP2級のリスク管理は過去問演習が最も有効です。
- 同じテーマが繰り返し問われる:例えば「保険の種類と特徴」「告知義務」「火災保険と地震保険」など。
- 直近5回分を解くだけで、多くの重要論点に触れられる。
- 過去問解説の中で、契約形態や保険金計算など、より詳しい理解が深まる。
また、問題集を解くだけでなく、
- 各選択肢の誤り理由を読む(〇×を判断するだけでは知識が定着しにくい)
- 計算問題では必ず途中計算を書いて手順を確認
といった丁寧な復習が得点アップに直結します。
【5.学習のコツ(初心者向けアドバイス)】
◇ 1.最初に押さえるべき論点
- 定期保険・終身保険・収入保障保険の違い(どんな人にどんな保険が合うか)
- 医療保険・がん保険の基本給付、先進医療特約
- 火災保険・自動車保険の補償範囲と免責金額
- 告知義務・クーリングオフ・責任開始日などの契約上のルール
頻出度が高いこれらの論点をまず優先的に勉強しましょう。
◇ 2.インプット3割:アウトプット7割
保険の知識は暗記だけではなく、実際に「どの状況でどの保険が適切か」を判断する力が重要です。
- テキストを通読するより、過去問や問題集を解く時間を多めに取る。
- わからない部分はテキストや解説書に戻って確認し、理解を深める。
この循環を続けることで、用語や計算も着実に身につきます。
◇ 3.計算問題を苦手とする人は手順に慣れる
- 問題文の「免責日数」「入院日数」「日額」「自己負担額」などをまず書き出す。
- 一歩ずつ計算していく練習を重ねれば、問題を見た瞬間に解法が見えてくる。
- 電卓操作をマスターし、本番で焦らないようにすることも大事。
◇ 4.陥りがちなミス
- 「契約者」「被保険者」「保険金受取人」の区別を誤る。
- クーリングオフ期間(8日以内)や告知義務違反の解除期限を曖昧に覚える。
- 地震保険は火災保険に付帯する形でしか加入できない点を見落とす。
- 医療保険の先進医療特約とがん保険の先進医療特約をごちゃ混ぜにする。
◇ 5.リスク管理を得点源にしやすい理由
- 頻出論点が定型化しているので、集中的に対策すれば取りこぼしが減る。
- 暗記要素が強い分、繰り返し演習するだけで得点率が上がりやすい。
- 他の科目に比べて計算問題の難易度がやや低い傾向がある。
「苦手意識があるから後回し」というより、早めに手を付ければ大幅に点数を稼ぎやすい科目です。
【6.まとめ】
ファイナンシャルプランナー(FP)2級のリスク管理は、生命保険・医療保険・損害保険など多岐にわたる保険商品を扱う一方、実は過去問分析で重要論点が絞りやすく、しっかり対策すれば得点源になりやすい科目です。
- 定期保険・終身保険・養老保険・収入保障保険など、死亡保障の基本構造を明確にする。
- 医療保険・がん保険・介護保険と公的保険の関係や特約の種類を理解する。
- 火災保険・地震保険・自動車保険の補償範囲や免責を正確に把握する。
- クーリングオフ・告知義務などの法律や制度は数字・日数をしっかり暗記。
- 計算問題はパターンを掴めば難しくないので、過去問で慣れておく。
学習の進め方としては、インプットばかりではなくアウトプット(過去問・演習)を優先的に行い、わからないところをテキストで補うやり方が最も効果的です。また、陥りがちなミスを事前にチェックしておけば本番での失点を減らせます。
「保険が苦手…」と敬遠せず、ぜひ早い段階でリスク管理に取り組んでみてください。体系的に理解すれば、保険の意義や実務への活かし方も見えてきて、試験対策だけでなく実生活やキャリアにも役立つ知識が身に付くはずです。
本記事は合格を保証するものではありません。必ず公式教材や最新の法改正情報も併せて確認し、ご自身の学習計画を最適化してください。皆さんがFP2級試験に合格し、リスク管理の知識を存分に発揮できることを応援しています!