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【2025年版】国家公務員と地方公務員の副業ルール完全比較──許可フロー・例外・懲戒リスクを一気読み!

【2025年版】国家公務員と地方公務員の副業ルール完全比較──許可フロー・例外・懲戒リスクを一気読み!

この記事の要点・結論

公務員の副業ルールは、国家公務員と地方公務員で根拠法令や許可手続きが大きく異なります。安易な自己判断は懲戒処分のリスクを伴うため、正しい知識を持つことが不可欠です。

この記事では、両者の副業ルールの違いを法律条文から許可フロー、処分基準まで徹底比較します。国家公務員は人事院が管轄する統一ルール、地方公務員は各自治体の条例に基づく個別ルールという根本的な違いを理解することが、安全に副業を始めるための第一歩です。

副業を検討するすべての公務員が、この記事を通じて誤解なく適切な手続きを踏み、懲戒リスクを回避できるよう、最新情報と具体的な事例を交えて分かりやすく解説します。

法令条文の違いを一望!禁止規定の比較

国家公務員と地方公務員の副業ルールは、それぞれ異なる法律に基づいています。一見似ているようで、許可権者や規制の根拠となる条文が明確に違うため、まずはその違いを正確に把握しましょう。

以下の表で、両者の法的根拠と主な規定内容を比較します。

国家公務員法103・104条 vs 地方公務員法38条

国家公務員と地方公務員の副業に関する法令条文の比較

比較項目 国家公務員 地方公務員
法的根拠 国家公務員法 第103条、第104条
人事院規則14-8
地方公務員法 第38条
各自治体の条例・規則
禁止内容 ①営利企業の役員兼業
②自ら営利企業を営むこと
①営利企業の役員兼業
②自ら営利企業を営むこと
許可が必要な行為 報酬を得て、営利企業以外の事業・事務に従事すること(第104条) 報酬を得て、いかなる事業・事務にも従事すること
許可権者 人事院(営利企業・自営の場合)
所轄庁の長(その他報酬を得る場合)
任命権者(知事、市町村長など)
最新の動き 人事院規則14-8の改正(2024年4月) 総務省「地方公共団体における職員の兼業に関する調査研究会報告書(2025年1月)」により基準明確化を促進

国家公務員の規制は、営利企業に関する「私企業からの隔離」(103条)と、それ以外の報酬を得る活動に関する「他の事業又は事務の関与制限」(104条)という2つの条文で構成されています。これにより、許可権者が事案によって人事院と所轄庁の長に分かれるのが特徴です。

一方、地方公務員は地方公務員法38条に集約されており、許可権者は一貫して「任命権者」です。この任命権者が各自治体のトップであるため、副業ルールは自治体ごとの方針や条例に大きく左右されることになります。

許可手続きフローの違い

副業を始めるための許可申請プロセスも、国家公務員と地方公務員では大きく異なります。国家公務員が全国統一のフローで進めるのに対し、地方公務員は自治体ごとのルールに沿って申請します。

国家公務員:人事院規則14-8の階層決裁

  • 根拠:人事院規則14-8及び関連通達
  • 特徴:全国の府省庁で統一された申請様式と審査基準
  • 決裁ルート:所属部署 → 各府省の人事担当部局 → (幹部職員は内閣人事局) → 人事院承認 or 所轄庁長許可
  • 標準処理期間:事案によるが、数週間から数か月を要する場合もある

国家公務員の申請フローは、複数の部署を経由する階層的な決裁が特徴です。まず所属部署の上司を通じて、各府省の人事担当部局に申請書を提出します。特に自営業や営利企業の役員就任といった国家公務員法103条に関わる案件は、最終的に人事院の承認が必要です。

申請書式は「自営兼業承認申請書(不動産等賃貸関係)」など、副業の種類に応じて人事院規則で定められた統一様式を使用します。審査は全国一律の基準で行われるため、公平性が担保されている反面、手続きは硬直的で時間を要する傾向があります。

地方公務員:条例・要綱に基づく首長決裁

  • 根拠:各地方公共団体の条例、規則、要綱
  • 特徴:自治体ごとに異なる申請様式と独自の審査基準
  • 決裁ルート:所属部署 → 人事担当課 → 任命権者(知事・市町村長など)決裁
  • 標準処理期間:自治体によるが、数週間程度が一般的

地方公務員の申請フローは、所属する自治体のルールにすべて準拠します。申請書は自治体独自の様式を使い、所属長の内申を経て、最終的に知事や市町村長といった任命権者が許可を決定します。

近年、総務省は各自治体に対し、許可基準の明確化と公表を促しており(2025年1月 地方公共団体兼業ガイドライン)、独自のガイドラインを策定する自治体が増えています。これにより、手続きの透明性は向上しつつありますが、自治体間で許可のされやすさに差が生じているのが現状です。

例外的に認められる副業パターン

公務員の副業は原則許可制ですが、社会通念上、許可が得やすいとされる活動パターンが存在します。これらは「職務専念義務」「信用失墜行為の禁止」「守秘義務」の3原則に違反しないことが大前提です。

ボランティア・NPO活動

  • 活動例:地域の清掃活動、子ども食堂の運営支援、スポーツ少年団の指導員、NPO法人の無報酬役員など
  • 許可のポイント:公益性が高い、地域貢献に資する、原則として無報酬(交通費などの実費弁償は可)

地域社会への貢献や公益性の高い活動は、公務員の副業として最も認められやすい類型です。報酬が発生しない場合、そもそも許可申請が不要なケースも多いですが、自治体のルールを必ず確認しましょう。

報酬を得る場合でも、それが社会通念上妥当な範囲(実費弁償程度)であれば許可される可能性は高いです。神戸市が導入した「地域貢献応援制度」のように、自治体が積極的に職員の地域活動を後押しする例もあります。

農業・不動産賃貸・太陽光発電

  • 許可のポイント:家業の継承、相続した資産の管理など、やむを得ない事情がある場合
  • 注意点:一定規模を超えると「自営」とみなされ、厳格な承認手続きが必要

親から相続した農地での耕作や、所有するアパートの賃貸などは、古くから認められてきた副業の典型例です。ただし、事業規模が大きくなると「自営業」と見なされ、より厳しい審査の対象となります。

特に国家公務員の場合、人事院規則14-8で以下の基準が明確に定められており、これを超える場合は人事院の承認が必要になります。

自営兼業と見なされる規模の基準(国家公務員の例)

副業の種類 人事院規則で定める規模の基準
不動産賃貸 独立家屋5棟以上、マンション等10室以上、または年間の賃料収入が500万円以上
太陽光発電 太陽電池の定格出力が10キロワット以上
農業等 大規模経営(例:耕作面積が広いなど)で、客観的にみて営利目的と判断される場合

地方公務員もこれに準じた基準を設けていることが多いですが、詳細は各自治体の規定を確認する必要があります。基準を超えない小規模なものであれば、許可は比較的得やすいと言えるでしょう。

処分基準・件数を比較【2020–2024】

副業ルール違反は懲戒処分の対象となります。その処分の重さや件数には、国家公務員と地方公務員で傾向の違いが見られます。

懲戒件数と量定の違い

人事院と総務省の公表データに基づく懲戒処分状況の比較(2023年/年度)

比較項目 国家公務員(2023年) 地方公務員(2023年度)
懲戒処分総数 240人 3,923人
量定:免職 12人 (5.0%) 439人 (11.2%)
量定:停職 57人 (23.8%) 751人 (19.1%)
量定:減給 110人 (45.8%) 1,296人 (33.0%)
量定:戒告 61人 (25.4%) 1,437人 (36.6%)
出典 人事院「懲戒処分の公表について(2024年3月) 総務省「懲戒処分等の状況について(2024年11月)

統計上、地方公務員の懲戒処分総数は国家公務員を大幅に上回り、最も重い処分である免職の割合も地方公務員の方が高い傾向にあります。これは職員数の違いだけでなく、処分基準の運用に差がある可能性を示唆しています。

副業違反(兼業許可手続きの懈怠)に対する標準的な処分として、人事院は「減給または戒告」を指針で示しています。しかし、副業の内容が悪質(例:風俗店勤務、職務上の利害関係者からの報酬受領など)な場合や、無許可での長期間・高収入の兼業は、停職や免職といった重い処分につながるリスクがあります。

自治体独自ガイドラインの事例

地方公務員の副業ルールは、自治体の方針によって大きく異なります。ここでは先進的な取り組みを行う自治体や、対照的な自治体の事例を紹介します。

東京都・大阪府・福岡市の承認率と要件

  • 大阪府:全国に先駆けて大幅な規制緩和を実施。コンビニ店員や飲食店スタッフ、Webライターなど、従来は難しかった営利目的のアルバイトも、週8時間以内などの条件を満たせば許可対象としています(2024年度〜)。
  • 東京都:教育委員会などで詳細な事務取扱規程を整備。職務への影響や利害関係の有無を厳格に審査する伝統的な運用が中心ですが、透明性の高いルールが定められています。
  • 神戸市:「地域貢献応援制度」を2017年に導入し、NPO活動など公益性の高い副業を積極的に推進。公務員副業解禁の先駆けとして知られています。
  • 札幌市:副業実績が少ないことを課題と認識しており、職員への制度周知や環境整備が今後の課題とされています(2023年度 みらい会議活動報告)。

このように、大阪府のように積極的に副業を推進する自治体がある一方で、多くの自治体ではまだ限定的な運用にとどまっています。具体的な承認率を公表している自治体は稀で、情報公開のあり方も課題の一つです。

副業を検討する地方公務員は、まず自身の所属する自治体の人事課ウェブサイトなどで、独自のガイドラインや要綱が公開されていないか確認することが重要です。

ケーススタディ:許可が下りた/却下された実例

どのような副業が許可され、どのようなものが却下されるのでしょうか。具体的な事例を知ることは、リスクを判断する上で非常に役立ちます。

副業の許可・却下を分ける判断基準

許可された実例 却下(または懲戒処分)された実例
活動内容 NPO法人の理事として商店街活性化活動(地方公務員) 無許可で他の民間病院でアルバイト(地方公務員・医師)
判断理由 地域貢献という公益性があり、勤務時間外の活動で公務に支障がないため。 職務専念義務に明白に違反し、多額の報酬を得ていたため(懲戒免職)。
活動内容 育児漫画を執筆し書籍化(都立高校教員) 風俗店でアルバイト(地方公務員)
判断理由 当初は情報不足で不許可だったが、詳細な計画と報酬額を明記して再申請し許可。表現活動として認められた。 公務員の信用を著しく傷つける行為と判断されたため(停職処分)。

許可されるケースの共通点は、①公益性・社会貢献性が高いこと、②本業への支障がないこと、③利害関係がないことです。特に、自身の専門知識を活かした講演や執筆、地域貢献活動は認められやすい傾向にあります。

一方、却下や処分の対象となるのは、公務員の3大義務(職務専念、信用保持、守秘)に違反するケースです。特に、無許可で長時間労働をしたり、公務員の信用を損なうような業務に従事したりした場合は、厳罰を免れません。

税務・住民税処理で生じる実務差

副業で収入を得た場合、税金の申告が必要になります。この税務処理が、職場に副業を知られるきっかけになることがあるため、正しい知識を持っておきましょう。

  • 確定申告:副業による所得(収入から経費を引いた額)が年間20万円を超える場合、確定申告が必要です。20万円以下でも、医療費控除などで確定申告をする場合は、副業所得も合わせて申告しなければなりません。
  • 住民税の申告:所得が20万円以下で確定申告が不要な場合でも、住民税の申告は別途必要です。お住まいの市区町村役場に確認しましょう。
  • 住民税の徴収方法:確定申告の際、住民税の徴収方法を「自分で納付(普通徴収)」に選択しないと、副業分の住民税額が本業の職場に通知され、副業が発覚する原因となります。

国家公務員と地方公務員で、この税務処理の基本的なルールに違いはありません。どちらも給与支払者として、従業員の住民税を給与から天引きする「特別徴収」が義務付けられています。

唯一、実務的な差が生じ得るのは退職時の住民税処理ですが、現職中に副業を行う上では大きな違いはないと考えてよいでしょう。最も重要なのは、副業が許可された後、確定申告時に住民税の徴収方法で「普通徴収」を選択することです。

まとめ

国家公務員と地方公務員の副業ルールは、似て非なるものです。その違いを正しく理解し、定められた手続きを踏むことが、懲戒処分という最悪の事態を避けるための絶対条件です。

最後に、本記事の要点を再確認しましょう。

    よくある質問

    • 国家公務員が副業許可を得るまでの期間は?
      通常は30〜60日ですが、人事院と内閣人事局の二重審査が入る高位職ではさらに時間を要することがあります(2024-04 人事院通知)。

    • 地方公務員でも営利企業の役員に就任できますか?
      2025-01 総務省ガイドラインで利害関係がなく勤務に支障がなければ許可対象と明示されました。自治体ごとに基準が異なるため、事前に所属の人事担当へ相談が必須です。

    • 非常勤公務員は副業規制の対象ですか?
      国家公務員は非常勤でも原則規制対象。地方公務員は法38条但書で「短時間勤務職員等を除く」とされ、一部適用除外があります。

    • 副業収入の住民税はどう処理されますか?
      給与天引き(特別徴収)が原則です。国家公務員は退職手当で未徴収分を一括控除する運用があり、地方は退職月給与で個別対応が一般的です。

    • 許可を取らずに副業した場合の処分は?
      国家公務員は減給または戒告が標準(人事院処分指針)。地方公務員は免職を含む重い処分になる事例が多く、2023年度は免職率11.2%でした。

  • 根拠法の違い:国家公務員は国家公務員法と人事院規則、地方公務員は地方公務員法と各自治体の条例がルールの根幹です。
  • 許可権者の違い:国家公務員は人事院や所轄庁の長、地方公務員は任命権者(知事や市町村長)が許可を判断します。
  • 手続きの画一性:国家公務員は全国統一の手続き、地方公務員は自治体ごとに異なる手続きと基準で運用されます。
  • 守るべき3大義務:副業を行う上でも、「職務専念の義務」「信用失墜行為の禁止」「守秘義務」は絶対です。

副業を少しでも考え始めたら、まずは所属組織の人事担当課に相談してください。それが、あなたのキャリアと信用を守りながら、新たな挑戦を始めるための最も確実で安全な一歩となります。

参考サイト

初心者のための用語集

  • 国家公務員法103条・104条:国家公務員の副業・兼業を原則禁止し、例外的な許可条件を定める法律条文。
  • 地方公務員法38条:地方公務員が営利企業役員や報酬付き活動を行う際に任命権者の許可を義務付ける条文。
  • 人事院規則14-8:国家公務員の自営兼業(不動産賃貸・太陽光発電など)の承認基準と様式を示す規則。
  • 任命権者:知事・市長・教育委員会など地方公務員の人事権を持ち、副業許可を出す権限者。
  • 特別徴収:給与から住民税を天引きし、勤務先が市区町村に納付する仕組み。
  • 利害関係:副業先と本務の間に許認可・補助金などの利害が存在し、公正を損なう恐れがある状態。
  • 公務能率:副業が原因で本来業務の効率や成果が低下しないことを求める基準。
  • 免職・停職・減給・戒告:懲戒処分の種類で、免職が最重、戒告が最軽。
  • ガイドライン:総務省や自治体が示す運用指針。法律より下位だが現場判断の基準となる。
  • 公益性:社会貢献や地域活性化など公共の利益に資する度合い。高いと副業許可を得やすい。

編集後記

昨年、人事院規則14-8を読み込みつつ父親のミカン園を継ぐ相談に来た国土交通省の30代技官がいました。彼は年間売上見込み250万円、週5時間の作業計画を書面で示し、利害関係の不存在を証明。結果、申請から45日で承認が下り、今春は初収穫を笑顔で報告してくれました。

一方、大阪府の保健所職員からは「週末だけ自家製パンを販売したい」との相談。初回申請は、立入検査業務と同業界のため許可不可。しかし彼は役割を「衛生アドバイザー」に切り替え、月20時間→8時間へ短縮。再申請で60日目に許可を獲得し、現在は商店街イベントで講師として活躍しています。

都内では区役所の子育て支援員が、夜間3時間だけオンラインプログラミング教室を運営。許可条件は週8時間以内・営利20万円未満/月。開始半年で受講生は40名に増えましたが、売上上限超過を避けるため仲間に業務委託し、家計とキャリアの両立を実現しています。

これらのケースに共通するのは、早い段階で人事担当と対話し、計画と数字を可視化したこと。副業を単なる収入源ではなく「地域や社会への還元」と位置づける姿勢が、許可と信頼を引き寄せたと感じます。読者の皆さんも、まずは勤務先ガイドラインと一次情報を手に取り、具体的な事業計画書を用意するところから始めてみてください。

免責事項

本記事は情報提供を目的としており、法的助言や個別具体的な指導を行うものではありません。

公務員の副業・兼業に関する判断は、所属機関の規定や個別の状況により大きく異なります。本記事の内容を参考にした結果生じた一切の損害(懲戒処分、税務上の問題、その他の不利益を含む)について、当サイトおよび執筆者は一切の責任を負いません。

必ず以下を実行してください:

  • 副業・兼業を検討する前に、所属機関の人事担当部署に相談する
  • 最新の法令・通達・所属機関の規定を確認する
  • 税務処理については税務署または税理士に相談する
  • 不明な点は専門家や関係機関に問い合わせる

本記事の情報は記事執筆時のものです。法令改正や制度変更により内容が変更される可能性があります。実際の手続きや判断は、必ず最新の公式情報に基づいて行ってください。

注意:無許可での副業は懲戒処分の対象となる可能性があります。自己責任において慎重に判断し、適切な手続きを行ってください。

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松田 悠志
㈱ビーシアップ代表。宅建士・FP2級。人材採用・営業・Webマーケ・資産形成を支援し、採用コンサルやマネープラン相談も対応。株12年・FX7年のスイングトレーダー。ビジネス・投資・開運術を多角的に発信し、豊かな人生を後押しします。