マーケティング

【ビル解体案件の受注】マーケティング戦略

「ビル解体の受注を増やし、利益率の高い案件を取る」ことを目指した際に見落とされがちな、やや“異色”かつ実務的に導入可能なマーケティング戦略や営業施策を提案します。いずれも「単純なSNS広告やSEO対策、同業との横の繋がり強化」といったベーシックな施策にとどまらず、比較的見落とされやすい視点や提携先の発掘法を取り入れています。ぜひ自社の強みやリソースに合わせて検討してみてください。

「合法的な“先回り営業”」による大型案件の早期発掘

● 概要
ビルオーナーは「解体を決断するまで時間がかかる」ケースが多いため、解体が決定してから見積依頼を受けるだけでは大手・競合に先を越されがちです。そこで、解体せざるを得なくなる“予兆”(建築基準法違反の是正勧告、耐震診断結果による建物補強困難、固定資産税の増税対象化、テナント退去続出など)をいち早く把握し、正式な解体依頼前にオーナーと接点を持ちます。

● 具体策

  1. 行政による耐震性不足建物への勧告情報
    耐震補強が非現実的な老朽ビルリストを自治体から公文書開示請求などで入手し、通知書発送時期をリサーチ。オーナーに先回りして「無料建物診断+解体の仮見積り」を提案。
  2. 建物管理会社や消防設備点検業者との提携
    「補修がかさみすぎて改修不可」と判断された物件情報をキャッチ。建物管理会社に「解体を検討する際に良い業者を紹介」する仕組みを作り、見込案件を横流ししてもらう。
  3. 不動産鑑定士・相続コンサルとの連携
    相続時に、老朽ビルを「取り壊し前提で土地査定」するケースが増加。専門家に「ビル解体の相談先」として認知してもらい、相続相談時点で自社を推奨してもらう。

● ポイント
解体が確実視される“きっかけ”をいち早く察知できるルートを複数持つことが重要です。単に「提携してください」ではなく、「耐震診断・補修コスト比較を無料で手伝う」など付加価値を示すことで先回り感を強調します。

「デベロッパー・設計事務所×ファンド案件」の“橋渡し請負”で中~大規模案件を確保

● 概要
再開発や大型リノベーションを狙うデベロッパー、投資ファンドは物件取得後に解体工事がセットとなるケースが多いです。固定の解体業者を持たないファンドや海外デベロッパーもあり、「解体+跡地活用」をワンストップで提案できると高い付加価値を評価され、高単価案件を受注しやすくなります。

● 具体策

  1. 投資ファンドや不動産投資顧問会社のニーズ調査
    外資系や新興ファンドは築古ビル再生・売却で利益を狙う際、解体 → 新築を検討することが多い。正確な見積もりと施工管理を重視するため、工期管理やコスト管理のノウハウをアピール。
  2. 提案内容の差別化:跡地プランニング支援
    単純な「解体費の安さ」だけではなく、「部分解体やアスベスト撤去を含めたトータルコスト最適化」「段階解体で投資家のキャッシュフローに合わせる」など高度な提案をする。
  3. 小さめの設計事務所・一級建築士と組んだ“ワンストップチーム”構築
    解体後の設計や用途変更を同時に紹介できる体制を作り、「設計・施工・解体まで一本化」という形でデベロッパーに売り込む。

● ポイント
ファンドやデベロッパーは「スピード・正確性・リスク管理」を重視します。そこに付加価値を提供できれば価格競争に巻き込まれず、利益率を高められます。

「建替融資サポート」×「解体ファイナンス仲介」でオーナーの資金繰り問題を解消

● 概要
老朽ビルオーナーが解体に踏み切れない大きな理由のひとつは「解体・建替費用の資金負担」です。ここを金融機関と連携して解消すれば、高額なビル解体でも受注を取りやすくなります。

● 具体策

  1. 金融機関との提携メニューを整備
    地銀や信金、不動産投資専門ローンなどと連携し、「解体費用+建替資金+つなぎ融資」をワンパッケージで紹介できる仕組みを構築。
  2. 解体後の土地担保評価アップを根拠に融資実現
    古いビルが残存している状態より、更地にしたほうが担保評価が上がる立地も多い。担保評価シミュレーションを提供し、「解体したほうが有利」と説得しやすくする。
  3. 融資サポートサイトや簡易診断ツールのWeb展開
    「あなたのビル解体でどれくらい融資が可能か?」という簡易試算ツールを設置→見込み客の連絡先を取得→金融機関紹介→解体受注、という流れを作る。

● ポイント
資金負担を解消できれば、オーナーが解体を決断しやすくなり、価格競争なしで高単価受注も可能になります。

「解体後の暫定活用」サポートでオーナーの収益ブランクを埋める

● 概要
ビルを解体すると建て替えまで更地が生まれ、一時的に収益が途絶える問題があります。そこで、暫定的な収益化(駐車場・イベントスペースなど)をセットで提案し、解体を後押しする方法です。

● 具体策

  1. タウンマネジメント会社・パーキング運営会社との連携
    更地を低コストでコインパーキング化したり、期間限定で活用できるプランを標準メニュー化。
  2. イベンターやポップアップ運営企業との連携
    更地を短期的に屋外イベントやキッチンカーのスペースに活用し、オーナーが賃料収益を確保できるようにする。
  3. 一部解体・段階解体の提案
    建物の一部だけ解体し、残存部分を倉庫や短期貸しスペースにするなど、複合プランを提示。工事が複雑になるため利益率アップが見込める場合も。

● ポイント
「解体工事をするほどに収益がゼロになる」という不安を解消することで、オーナーの解体意思決定が早まり、利益率も維持しやすくなります。

「SDGs・カーボンニュートラル」を前面に押し出した“リサイクル型解体”のブランド確立

● 概要
建設リサイクル法やCO₂削減などが社会的に注目される中、特に法人オーナーや行政案件はESG・SDGsを重視しています。環境配慮型解体をアピールし、CSRの観点で高単価を容認してもらう戦略です。

● 具体策

  1. CO₂排出量可視化サービス
    解体現場の廃材量・排出量を数値化し、「従来工法と比べ○%削減」などのレポートを提示。大手企業や行政のCSRにも対応しやすい。
  2. 先進解体技術・機材の導入
    ウォータージェット工法や部材選別解体など、騒音・埃・廃材削減の技術を持つことで「難易度が高い案件」でも受注しやすくなる。
  3. 工事副産物のリユース・販売
    古レンガや古木材、金属スクラップなど、適切に仕分けすれば売却益が出る可能性あり。施主に「廃材買い取り」という形で提案し、追加収益化。

● ポイント
SDGs志向のオーナーほどコストよりも環境パフォーマンスを重視する傾向があります。こうした案件では価格交渉に陥りにくく、利益率が高まりやすいです。

「アスベスト・有害物質除去をセットにした“一括請負”」で高収益化

● 概要
小~中規模ビルにはアスベストや有害物質を含むケースが多く、特殊撤去の需要も高まっています。外注せずに自社で対応できる体制を整えれば、一括請負で利幅を拡大することが可能です。

● 具体策

  1. アスベスト診断・除去のプロ資格取得
    ダイオキシン類、PCB、鉛含有塗料なども含めて対応できる許可や資格を揃え、外注ゼロで完結できる体制を目指す。
  2. 新築工事ゼネコンの下請けから“協力会社”へ
    大手ゼネコンは大型物件でアスベスト除去業者を探す際、少数の協力会社を重宝する。解体+アスベスト除去の両方をこなせる業者として登録されれば、大型案件が回ってくる可能性大。
  3. 除去後の証明書発行やモニタリング
    アスベスト濃度測定などの「安全証明書」発行まで行うと、オーナーからの信頼度が高まり、リピートや紹介も増える。

● ポイント
アスベスト撤去は解体本体よりも高額になりやすく、高利益率が期待できます。投資や資格取得が必要ですが、中長期的には安定して“高額・高収益”案件を取れるようになります。

データ活用・自動化を軸にした「BtoBリードジェネレーション」強化

● 概要
戸建解体はBtoCが多いのに対し、中小ビル解体はBtoBがメインです。そこで、Webを駆使した法人向けデジタルマーケティングに注力し、ビル解体の見込み客を効率的に獲得する仕組みを作ります。

● 具体策

  1. 築古ビル情報のクローリング
    賃貸ポータルや不動産ポータルに掲載されている物件データをスクレイピングし、築年数や稼働率をチェック。オーナー情報を登記簿で調べ、解体提案を打診。
  2. 「ビル解体コスト試算ツール」+問い合わせフォーム
    自社サイトに「RC造・S造解体の概算費用」を算出するツールを設置し、メールアドレスを収集。見込み客リスト化→営業に繋げる。
  3. オンラインセミナー&アーカイブ動画
    「老朽ビル解体・建替ノウハウ」「アスベスト規制への対応」など法人オーナー向けテーマのウェビナーを定期開催し、視聴者から問い合わせを獲得。

● ポイント
BtoBリードジェネレーションにより、潜在顧客の中規模ビルオーナーにリーチできます。工事金額が大きい案件ほど利益率を確保しやすく、営業効率化にも繋がります。

「公共施設やインフラ系解体工事」参入のための資格・入札枠拡大

● 概要
市町村の公共施設(公営住宅・学校・図書館など)やインフラ系(橋梁・高架など)の解体は高額案件が多く、安定した利益を見込める一方、入札資格や施工体制が厳しいのが特徴です。一定規模をクリアすると、長期的に安定受注を確保できる可能性があります。

● 具体策

  1. 経営事項審査(経審)点数の向上
    公共工事の入札では経審点数が最重要。技術者資格や実績、財務状況を整え、より高い等級での入札参加を可能に。
  2. JV(ジョイントベンチャー)で実績を積む
    大手ゼネコンや他の解体業者とJVを組んで公共工事に参画し、実績を獲得。その後、単独での高額入札参加がしやすくなる。
  3. 自治体・独立行政法人へのPR
    災害後の危険建物撤去など緊急案件に対応できる業者リストに登録しておく。短納期・特殊技術保有をアピールし、指名競争に備える。

● ポイント
最初の参入ハードルは高いものの、公共施設解体は一度実績を積むと継続して大規模案件を獲得しやすく、結果的に年間の利益率が底上げされます。

まとめ

  1. “先回り営業”で解体必須物件のオーナーに早期接触し、競合に差を付ける。
  2. デベロッパー・投資ファンド・設計事務所と組んで「トータル提案」を行い、価格競争を回避。
  3. ファイナンス仲介や暫定活用などでオーナーの資金・収益リスクをカバーし、解体意思決定を加速。
  4. SDGs・アスベスト撤去などの高付加価値分野に参入し、1件あたりの利益率を拡大。
  5. BtoBリードジェネレーションを活用して中~大規模ビルオーナーに効率的にリーチ。
  6. 公共施設解体へ参入し、安定した大型案件ポートフォリオを獲得。

上記は“単なる営業訪問やWeb集客”を超えて、金融・行政・不動産専門家・技術(資格)・資源リサイクルなど多方面を巻き込む戦略です。ビル解体は戸建解体よりも規模・複雑性が高いため、「解体工事+α」の付加価値を備えるほど価格競争から抜け出して利益率を高めやすくなります。ぜひ自社の経営スタイル・リソースに合った施策を優先的に検討し、段階的に導入してみてください。

参考サイト