宅地建物取引士(以下、宅建士)は、不動産の売買や賃貸借において重要事項を説明するなど、不動産取引に必須の国家資格です。合格率は例年15~17%前後と、比較的合格しやすい資格ではあるものの、科目数は多岐にわたるため、学習方法をどうするかで合否が分かれるケースも少なくありません。
そんな中、「宅建 YouTube」と検索して、動画で学習する方法に興味を持つ方も増えています。実際、YouTubeには宅建試験対策を中心に配信しているチャンネルが多数存在し、「無料だけどわかりやすい」「スキマ時間に学習できる」といった評判も。
しかし、「本当にYouTubeだけで合格できるの?」「予備校や通信講座との違いは?」といった疑問の声もあります。本記事では、YouTubeを使った宅建試験対策のメリット・デメリットから、効果的な学習法、そして成功する人・失敗する人の具体例まで、徹底的に解説します。最後には、よくある質問にもお答えしていますので、ぜひ参考にしてください。
Contents
宅建試験とYouTube学習の特徴
YouTube学習が注目を集める背景
近年、通信環境やスマートフォンの普及によって、場所を選ばずに学習できる環境が整ってきました。その中でも、動画プラットフォームであるYouTubeは、多くの人が利用しているサービスの一つです。資格試験対策の動画コンテンツも豊富にあり、テキストでは理解しづらい難解な法律や制度を、図解や口頭でわかりやすく解説してくれるのが特徴です。
また、無料または低コストで学習できる点や、スキマ時間を活用しやすい点も受験生にとって大きな魅力となっています。
宅建試験の基本概要
まず、YouTube学習のメリットやデメリットを見る前に、宅建試験のおさらいをしておきましょう。
- 試験日:毎年1回、10月の第3日曜日
- 受験資格:年齢・学歴を問わず誰でも受験可能
- 出題形式:4肢択一問題・50問
- 主な出題科目:
- 権利関係(民法・借地借家法など)
- 宅建業法
- 法令上の制限(都市計画法・建築基準法など)
- 税・その他(不動産取得税・固定資産税など)
- 合格率:例年15~17%程度
合格ラインは例年50問中35〜38点程度が目安とされています。「出題される範囲が広い」「法律用語が多くて難しい」という理由から、学習量はかなり多めです。だからこそ、効率的かつ継続しやすい勉強法を確立することが重要になります。
YouTubeで宅建試験を学習するメリット
YouTubeを活用した宅建対策には、下記のようなメリットがあります。
1. 低コストまたは無料で学習できる
やはり「無料または低コスト」で動画が見られるのは、受験生にとって最大のメリットです。書籍や通信講座、予備校に比べて支出が格段に抑えられるため、費用をかけずに資格取得を目指したい方には最適といえます。
2. スキマ時間を活用しやすい
動画はスマホやタブレットで視聴可能なので、通勤・通学の電車内や、ちょっとした休憩時間にも勉強ができます。特に宅建のように暗記事項が多い試験では、短時間のインプットとアウトプットを繰り返すことが重要。YouTube学習なら、いつでも再生ボタンを押すだけで学習が再開できます。
3. 視覚・聴覚の両面から理解できる
法律学習は活字を読むだけだと難解な部分が多いですが、動画で講師の解説を「耳」で聞き、「目」で補足資料を確認することで、理解が進みやすくなります。民法や宅建業法など、取っつきにくい科目ほど動画のメリットを感じやすいでしょう。
4. 自分に合ったチャンネルを選べる
宅建系のYouTubeチャンネルは、講師の個性や解説スタイルがさまざまです。たとえば、テンポよくサクサク解説するチャンネルから、じっくり図表を使って論点を掘り下げるチャンネルまで豊富です。自分が「わかりやすい」と感じる講師を見つけやすい点は、モチベーションの維持にもつながります。
5. 繰り返し学習しやすい
わからない部分を繰り返し見られるのも動画学習の強みです。テキストと違って、解説をする“声”や“口調”そのものが記憶に残りやすく、苦手分野の克服に役立つことも多いでしょう。
YouTubeで宅建試験を学習するデメリット
一方で、YouTube学習には以下のようなデメリットや注意点もあります。
1. 情報が網羅されていない場合がある
動画タイトルを見ると「〇〇の重要ポイント」といった解説が多いですが、実際には宅建試験の全範囲をカバーしているわけではないチャンネルも少なくありません。全体像を理解しきれないまま学習を進めると、出題範囲に漏れが出てしまう可能性があります。
2. 情報が最新でないリスク
法律は度々改正されるうえ、宅建試験も出題傾向が微妙に変化します。YouTubeの動画は一度公開するとアップデートされない場合もあり、古い情報を見続けてしまうリスクも。法改正情報を随時チェックするなど、受験生自身が情報の新旧を確認する必要があります。
3. 学習計画を立てにくい
動画は基本的に講師のペースで作られたコンテンツです。そのため、視聴順序や学習スケジュールを自分で管理・調整しないと、やみくもに動画を見てしまい、学習が散漫になる恐れがあります。特に初学者は、どの論点から手をつければよいか迷いがちです。
4. 質疑応答などのサポート体制が弱い
予備校や通信講座では、講師に直接質問できたり、フォローアップの添削指導が受けられたりしますが、多くのYouTubeチャンネルでは個別サポートを行っていません。コメント欄やSNSで質問を受け付けるケースもありますが、確実かつタイムリーな回答を得られる保証はないという点は留意が必要です。
5. モチベーションの維持が難しい
無料動画学習は、強制力や締め切り効果が薄いため、学習が長続きしないという声もあります。特に宅建試験の学習は、長期的に継続することが鍵です。自分の意思だけで継続するのが難しい方は、他の学習手段との併用も検討しましょう。
YouTubeで学ぶ宅建試験の効果的な活用法
ここからは、YouTube学習をより効率的に進めるためのポイントをご紹介します。
1. テキストや問題集と併用する
YouTubeはインプット用のツールとして大いに活用できますが、アウトプット(問題演習・過去問など)は別途行う必要があります。動画で理解を深め、過去問演習や問題集で知識を定着させるというサイクルを回しましょう。
2. 学習範囲を把握した上で動画を選ぶ
宅建の試験範囲は、大きく分けて「権利関係」「宅建業法」「法令上の制限」「税・その他」の4科目です。あらかじめテキストや試験概要を確認し、自分の苦手分野や優先度の高い科目を把握した上で、不足している内容の動画を選びましょう。
3. 倍速再生・巻き戻しを活用する
YouTubeならではの機能として、再生速度の変更が挙げられます。内容をすでにある程度理解している箇所は1.5倍速〜2倍速で再生して時短化し、逆に理解が浅いところは何度も巻き戻して確認するなど、柔軟に学習速度を調整できるのは大きなメリットです。
4. ノートを取りながら視聴する
動画を見ているだけでは、受動的な学習で終わってしまいがちです。重要なポイントや疑問点をノートに書き出しながら視聴することで、より能動的に学習できます。後でテキストや問題集を開いたときに、メモを参照できるので便利です。
5. 最新情報へのアンテナを張る
法改正は毎年のように行われることがあるため、「法改正まとめ」の動画や、「直前対策」をキーワードに検索するのも有効です。ただし、動画投稿者がいつアップデートを行うかは分からないので、国土交通省や不動産適正取引推進機構など公式情報にも目を通すクセをつけましょう。
おすすめの宅建系YouTubeチャンネル
実際にどのチャンネルを見ればよいのか迷っている方向けに、いくつかのおすすめチャンネルをピックアップします。視聴スタイルや解説の好みに合わせて選ぶと良いでしょう。
棚田行政書士の不動産大学【公式チャンネル・宅建】
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毎日18時頃に更新される動画が特徴。宅建だけでなく、不動産実務全般にも詳しい行政書士の棚田氏が、初心者でも分かるようにテンポよく解説してくれます。無料でもかなりの情報量があり、独学者の学習をサポートするオンラインサロンも展開。
マジでイケてる宅建講座【ゆーき大学】
![](https://shyakariki.com/wp-content/uploads/2025/01/スクリーンショット-2025-01-24-21.18.58-1.png)
弁護士や行政書士など複数資格を持つ講師による動画が人気。重要ポイントを凝縮し、短い動画で効率良く学べるのが特徴です。民法分野など、理解が難しい範囲の講義をわかりやすく噛み砕いてくれるため、時間のない社会人受験生にもおすすめ。
あこ課長の宅建講座
![](https://shyakariki.com/wp-content/uploads/2025/01/スクリーンショット-2025-01-24-21.19.19-1.png)
不動産会社で営業課長を務める「あこ課長」が、実務目線で基礎から丁寧に解説しています。学習計画表や演習シートなどの無料教材が充実しており、「テキストいらずのすごい問題集」と銘打った書籍も人気。初学者がゼロから学べるように工夫されています。
宅建みやざき塾
![](https://shyakariki.com/wp-content/uploads/2025/01/スクリーンショット-2025-01-24-21.19.46-1.png)
大手予備校・日建学院で長年講師を務めてきた実績を持つ「みやざき先生」が運営。2時間で1科目を集中的に講義する「出るとこ集中講義」など、効率的な学習に特化した動画が多いのが特徴です。学習範囲をきっちり網羅しているのも強みの一つです。
吉野塾
![](https://shyakariki.com/wp-content/uploads/2025/01/スクリーンショット-2025-01-24-21.20.14-1.png)
資格の大原で宅建講師を務めていた吉野先生が展開するチャンネル。過去問解説動画や直前対策講座が充実しており、独学者が特に苦手とする部分を重点的にフォローします。講義のテンポが良く、重要論点のピックアップも上手いので、短期間で要点をつかみたい人に向いています。
YouTube学習と予備校・通信講座との比較
宅建は独学でも十分合格可能な試験といわれていますが、通信講座や予備校に通う方もたくさんいます。YouTube学習との違いを把握するため、主なメリット・デメリットを整理してみましょう。
費用面
- YouTube:ほぼ無料
- 予備校・通信講座:数万円〜十数万円
費用重視ならYouTubeが圧倒的に安上がりです。一方、予備校や通信講座は教材費や講師のサポート費用が含まれており、学習管理がしやすい点が特徴です。
学習範囲の網羅性
- YouTube:網羅性はチャンネルによる
- 予備校・通信講座:合格に必要な範囲を漏れなく網羅
宅建試験の範囲は広いため、体系的に学びたい場合は予備校や通信講座が安心。YouTubeだけだと、動画のラインナップ次第で漏れが生じるリスクがあります。
サポート体制
- YouTube:個別サポートは基本的になし(コメント欄などは限定的)
- 予備校・通信講座:講師への質問制度や添削指導、受験仲間との交流など
疑問を素早く解決できるかどうかは学習効率に大きく影響します。モチベーション維持が苦手な方や、疑問点が次々湧いてくる方は予備校・通信講座のサポートを活用した方が良いでしょう。
モチベーションの維持
- YouTube:自己管理が必要
- 予備校・通信講座:カリキュラムや仲間との交流で継続しやすい
独学はどうしても孤独感が強く、途中で挫折する方もいます。仲間と一緒に学ぶ環境を求める場合は、予備校や通信講座が向いています。
YouTube学習の失敗例と成功例
失敗例:情報過多で手が止まる
YouTubeには大量の宅建関連動画があるため、「片っ端から視聴してしまい、学習が散漫になる」「メイン教材を決められず時間だけが過ぎる」というケースがあります。学習計画をしっかり立てないと、結果的に何も身についていないまま試験日を迎えてしまうことも。
成功例:苦手科目の補強としてYouTubeを活用
一方で、あらかじめ市販のテキストや過去問集をメイン教材にしつつ、「どうしても理解しにくい科目や論点だけYouTubeで動画解説を視聴」というスタイルを取った合格者も多数存在します。自分の躓いたところを的確に補完できると、理解が格段に深まり、効率的に合格に近づけるケースが多いです。
YouTube×宅建学習に関するよくある質問
ここでは、YouTube学習を検討している方から寄せられる代表的な疑問にお答えします。
- Q:YouTubeだけで合格できますか?
A:可能性は十分ありますが、学習範囲を網羅できるかと、モチベーションを維持できるかが大きなカギになります。テキストや問題集で弱点補強・アウトプットするなど、自己管理が必須です。 - Q:おすすめのチャンネルを1つに絞るなら?
A:チャンネルの好みは人それぞれなので一概には言えませんが、「棚田行政書士の不動産大学」は更新頻度も高く実務知識も豊富なので、まずはチェックしてみると良いでしょう。 - Q:最新の法改正情報は動画だけで足りますか?
A:動画だけだとカバーしきれないリスクがあります。国土交通省や不動産適正取引推進機構の公式サイトも並行してチェックしましょう。 - Q:通信講座との併用がおすすめされるのはなぜ?
A:通信講座は体系的なカリキュラムや添削・質問対応などサポート体制が手厚いのがメリット。YouTubeでインプットしつつ、わからない点を講座で質問するなど、ハイブリッド学習が効果的です。 - Q:倍速再生は活用した方がいい?
A:慣れていない学習範囲は、まず通常速度で理解し、復習やおさらいの段階で倍速再生を活用すると効率的です。最初から速すぎると内容が頭に入らない場合があります。
まとめ:YouTubeを上手に取り入れて宅建合格を目指そう
YouTubeは、宅建試験勉強の補助ツールとして大いに活用価値があります。特に、
- 無料または低コストで学習したい
- スキマ時間を有効活用したい
- 講義形式で視覚・聴覚を使って理解を深めたい
という方にとっては、大きな味方となるでしょう。ただし、一方で
- 動画だけでは全範囲を網羅しにくい
- 法改正情報を自力でフォローする必要がある
- 自己管理でモチベーションを維持しにくい
といった課題も存在します。宅建合格に必要な学習量は決して少なくありません。そのため、通信講座や予備校のカリキュラムを軸に、苦手分野だけ動画で補うといった「併用スタイル」もおすすめです。
最終的には、どのような学習スタイルが自分に合っているかを見極めることが何よりも大切です。無料で始められるYouTubeは、まず試しやすいツールの一つ。一度視聴してみて、自分に合う講師やチャンネルを探してみましょう。
みなさんが、効率よく学習を進め、宅建試験合格という目標を達成できるよう応援しています!