「ドル円」の相場環境認識から具体的なトレード戦略までを深堀りしてお伝えします。トレンドフォロワー目線で、デイトレ~約2週間程度のスイングトレードを想定した目線を中心にまとめています。とりわけ近日発生した米国株の急落、さらに中国のスタートアップ「DeepSeek(ディープシーク)」発表のAIモデルが世界的にインパクトを与えている点に注目しながら、最新のファンダメンタル要因とテクニカル要因を整理していきましょう。
Contents
1.全体の相場状況:リスクオフが強まる背景
● AI関連株の急落と世界株式市場への影響
- 中国「DeepSeek」のAIモデルがもたらす衝撃
- 中国のスタートアップ「DeepSeek」が、米オープンAIなどに匹敵するAI技術を低コストで提供可能と発表。
- このニュースを受け、米ハイテク株は「AIセクターの既存優位が崩れるのでは」という懸念から大幅に売られています。
- エヌビディアなど、AI分野で高い市場評価を得てきた銘柄が軒並み急落し、総額1兆ドル以上の時価総額が吹き飛ぶ可能性が報じられました。
- 急速なリスク回避(リスクオフ)へ
- AI関連のほか、電力セクターや関連インフラ企業も急落し、株式市場全体で売りが波及。
- VIX(ボラティリティ指数)は一時21.5まで上昇し、投資家心理が不安定化。
- 安全通貨の円やスイスフランが買われ、ドル円は約1.5%下落し、一時153円台を付ける大幅な円高進行が見られました。
● 日銀の利上げ観測と米国金利動向
- 日銀:1月に0.5%へ利上げ、さらに追加利上げの思惑
- 日銀は1月24日の会合で政策金利を0.5%へ引き上げ、2008年以来の高水準となりました。
- 賃金上昇が進み、物価上昇率も2%を超えてくるとの見方から、追加利上げ観測も市場で浮上。
- 円金利の上昇は海外投資家からの円買い材料となりやすく、ドル円の下落圧力につながっています。
- 米国:FOMCと利下げ観測
- 一方、米連邦準備制度(FRB)は2025年内の利下げ幅を50bp(0.50%)程度とする観測が台頭。
- 足元の米経済指標(雇用統計やGDPなど)の強弱によっては、利上げ継続と利下げ開始の思惑が交錯し、市場は神経質な動きになりやすい状況。
- 今後のFOMC声明やFRB高官の発言次第では、急激なドル買い・ドル売りどちらにも振れる可能性があります。
● その他のファンダメンタル要因
- 米国の景気後退懸念
- テクノロジー企業を中心に「AI投資の見直し」が広がるなか、消費や投資意欲の後退が意識されはじめています。
- 耐久財受注や景気先行指数など一部の指標はすでにやや減速を示唆。
- 地政学リスク
- 中東や欧州での緊張が和らいだニュースもある一方、中国が台頭しているハイテク分野や貿易問題が再燃すれば、為替相場に大きな波乱が起きやすい局面です。
- 米国債利回りの動向
- リスクオフが強まると米国債が買われ、長期金利が低下(価格は上昇)することが多いため、ドル安の要因にもつながりやすい。
2.ドル円チャート分析:マルチタイムフレームで確認

(1)週足:上昇トレンドの勢いが鈍化、20MAが試される
- 週足20MAはまだ上向きだが、足元の価格が20MA近辺に迫る局面。
- 152円付近が強いサポートライン(週足ベースでの伏し目)。これを大きく割り込むようなら、週足単位でのダウントレンドが本格化する懸念がある。
- 週足レベルで見ると「ここ数カ月の上昇が一服するのでは」というシグナルが出始めており、投資家心理はややネガティブに傾きつつある。
(2)日足:155.2の直近安値割れ、下降トレンドの始まりを示唆
- 日足20MAが完全に下向きへ移行。
- 155.2円のサポートを割ったことで、日足ベースでは下降トレンド転換が明確化。
- 200MA(現在は154円~153円台付近か)を割れると、中期的にも強い売りが加速する懸念。
(3)4時間足:高値安値の切り下げが連続、明確なダウントレンド
- 4時間足では高値安値の切り下げが続き、20MAや50MAが下向きで揃ってきている。
- 200MAが上向きとはいえ、価格がすでにそれを下回って推移するため、テクニカル的に戻り売りが優勢。
- 急反発があっても、節目に引きつけたショートが狙いやすい形状。
(4)1時間足:戻り売りのタイミングを待つ展開
- 1時間足でもMAが収束しつつ下向き傾向。
- 155円~155.2円付近はかつてのサポートがレジスタンスに転じやすいポイント。そこへの「戻り」を待って売りで狙うのがセオリー。
- ロングは基本的に「上位足と逆張り」になるため、短期の急騰などでサッと利幅を抜くに留める方がリスク管理上は無難。
(5)15分足:細かいプルバックとブレイクを狙う
- 15分足では下降圧力が強い局面が続いており、戻りの浅いまま下落加速する可能性も考えられる。
- 直近の安値更新時や、少し戻してからMA付近で反転するポイントを狙うのが短期デイトレの王道パターン。
- 逆張りロングは4時間足以上の大きな下落を踏まえると危険度が高く、あくまで限定的に。
3.ニュース&ファンダメンタルの詳細解説
ここでは、ドル円の方向性に影響を与えうる注目材料をもう少し掘り下げてみます。
(1)米国テクノロジー株の急落とAIブーム後退懸念
- 中国DeepSeekの新モデル発表
- 世界を席巻してきたAIブームですが、DeepSeekは「大量に投資が必要なハイパースケーラーのモデルを覆す可能性」を示唆。
- エヌビディアやマグニフィセント・セブン(アップル、マイクロソフト、メタ、テスラ、アマゾン、アルファベット、エヌビディア)など、高いバリュエーションがついていた銘柄ほど売りを浴びやすい地合いに。
- 米国株式市場の地合いが悪化
- リスク資産が売られる一方で、安全資産(円・スイスフラン・米国債)が買われている。
- 今後の企業決算(アップル、マイクロソフト、メタなどが今週発表予定)でAI関連の投資がどう正当化されるかが焦点。
(2)日銀の金融政策が円高をサポート
- 利上げ幅0.25%→0.5%に拡大
- 日本での物価上昇(消費者物価指数3.6%上昇)や、賃金上昇が相まって「追加利上げの余地があるのでは」という観測。
- 海外投資家がこれを意識して、円を買い戻す動きが起きている。
- 経常収支の改善傾向
- 輸出産業の回復や円安メリットが一巡しつつも、ここにきて円高時には日本への投資資金流入も期待される。
- 金融政策発表や声明に加え、日銀総裁や副総裁の記者会見には注目が集まる。
(3)米国の利下げ観測と経済指標
- FOMCの開催日程・声明内容
- 近々開催されるFOMCでは、インフレ動向や雇用統計の強さを踏まえて金融政策が議論される。
- 利上げペースの鈍化、あるいは早期利下げへの前倒し観測が出ると、ドルは売られやすくなる。
- 主要指標の発表スケジュール
- 米GDP速報値、耐久財受注、ADP雇用統計、雇用統計、個人消費支出(PCE)など重要指標の公開が目白押し。
- 指標が予想と大きく乖離した場合、ドル円は急変動もあり得るので要注意。
4.今日のトレード戦略
(1)基本方針:戻り売りメイン(下目線)


- 主な理由
- 日足・4時間足が下降トレンド入り。
- リスク回避の流れ+日銀利上げ思惑が円買いを誘発。
- 155円~155.2円が直近レジスタンス帯として意識されやすい。
- 具体的なシナリオ
- 155円~155.2円付近までの戻しを待つ。
- そこで反転のプライスアクション(ピンバーや陰線包み足など)を確認してショート。
- 損切りラインは155.5円~156円程度に設定し、上抜けたら撤退。
- 利確(利食い)目標は154円前後もしくは更に下落加速で152円台まで視野。
(2)サブシナリオ:急激な反発での短期ロング


- ロングを考慮するタイミング
- 米国株の急反発やポジション整理によるショートカバーが入って、155円をしっかり上抜けた場合。
- ただし4時間足や日足では下落トレンドが濃厚。長期的には逆張りになり、リスクが高い。
- エントリーポイント例
- 155円を明確に上抜ける。
- 1時間足以上で高値安値の切り上げを確認。
- 押し目を待ってロングエントリー。
- 損切りラインは抜けた155円前後を再度割ってきたら撤退。
- 利確目標は短期的に156円~157円台を想定。
5.今後の注目イベントと要チェックポイント
- 1月28~29日:FOMC開催
- 利上げペース鈍化or据え置きor早期利下げ示唆など、ドルの方向感に大きなインパクト。
- 米国主要指標(GDP・雇用統計・PCEなど)の連続発表
- 予想を上回る強い結果ならドル買い、下回る場合はドル売り(円高)に傾きやすい。
- 日銀の追加発言や会合議事録
- 利上げ観測がさらに強まれば、ドル円は一段安へ。
- 「想定ほど利上げには慎重」というメッセージが出れば、短期的なドル買い戻し(円売り)もあり得る。
6.リスク管理のポイント
- 損切りラインの明確化
- 「もう少し耐えれば戻るかもしれない」という感情的な保持は厳禁。
- トレンドフォロワーであっても、逆行した際はスパッと手仕舞う。
- 資金管理とレバレッジコントロール
- 不安定な相場状況では、普段よりポジションサイズを小さくするのも一手。
- 長めにスイングする場合は、指標発表前に証拠金維持率を十分に確保。
- 指標発表前後のポジション調整
- 急変動しやすい時間帯は、デイトレーダーならフラットにするか、ポジションを軽くしておく。
- スイング派も、ストップロス設定や逆指値を常に最新の値にアップデート。
- ファンダメンタルとテクニカルを両輪でチェック
- 「利下げ観測が強まり始めた」「株式急落が想定以上に長引いている」など、相場の前提が変われば戦略修正が必要。
7.まとめ:リスクオフ継続か、急反発か。ドル円は下目線優勢
- 総合判断
- 米国株式市場でのAI銘柄の急落が市場センチメントを悪化させ、円が買われやすい環境が続いています。
- 日足・4時間足ともに下落トレンドが鮮明であり、基本方針は「戻り売り」が有利とみられます。
- 短期急反発シナリオ
- もし米国株が決算やポジション調整で急反発し、投資家のセンチメントが一時好転するような状況になれば、ドル円も短期上昇が起こる可能性は否定できません。
- しかしトレンドの大局は下向きのため、上昇が続くかどうかは不透明。慎重にエントリーポイントを探りましょう。
- 指標発表や金融政策での変動に注意
- 週内に集中する重要指標やFOMCの結果次第では、大きく上下に振れやすい相場です。
- 余裕をもった資金管理と、冷静なテクニカル分析を常に心がけましょう。
本日のまとめとしては、テクニカル面でもファンダメンタル面でも「ドル円は下落トレンド」という見立てが強まっています。週足レベルではまだ上昇トレンドの余力が残るとはいえ、日足や4時間足がしっかり下向きに転換した局面ですので、トレンドフォロワーとしては「戻り売り」が優先度の高いシナリオになるでしょう。
一方で、ニュース一つで市場センチメントが一変する可能性もあります。株式市場が急反発すれば、為替市場も瞬間的にショートカバー(買い戻し)を誘発することがあります。ただし、その場合でも上位足に逆らう形のロングとなるため、利幅はこまめに確保し、深追いしないのが得策です。
リスクオフが継続し、円高がさらに進行するのか、それとも株式市場が自律反発で買い戻しが起きドル円が巻き戻すのか──。いずれにせよ、チャートの節目や移動平均線の向きをしっかり確認しながら、無理のないトレードを心がけてください。皆さんのトレードが今日も成功しますよう願っています。
※本ブログ記事は情報提供のみを目的とし、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。投資における最終判断はご自身の責任で行ってください。損失を被る可能性も十分にありますので、許容可能なリスクに基づいたトレードを行いましょう。