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1. 結論:2026年の日本株は「基調は堅調、局面調整に注意」
- 実体経済の好転:賃金上昇とインフレ定着により、名目GDPの拡大が続く
- 金利のある世界:日銀の利上げにより、金融・バリュー株が優位な展開へ
- 選別の年:全面高ではなく、政策テーマ(防衛・AI)や稼ぐ力のある企業に資金が集中
2026年の日本株式市場は、「成長期待と調整リスクが同居する年」になると予測されます。2025年に日経平均株価が一時5万円の大台を突破し、新たなステージに入った日本株ですが、2026年は一本調子の上昇ではなく、より「実力」が問われる相場展開となるでしょう。
最大のポイントは、長年続いたデフレ経済からの完全脱却と、それに伴う企業収益の構造変化です。為替の追い風に頼らずとも利益を出せる筋肉質な企業と、金利上昇コストに耐えられない企業の二極化が鮮明になります。
投資家としては、マクロ経済の動向を注視しつつ、「どのセクターが伸びるか」を見極める選別眼が求められます。楽観論だけに流されず、リスク要因も冷静に把握することが、2026年の市場を乗り切る鍵となります。
2. 2026年を取り巻くマクロ経済環境
| 項目 | 2026年見通し | 主な背景・要因 |
|---|---|---|
| 実質GDP成長率 | +0.9% 前後 | 内需主導の回復、実質賃金のプラス転換 |
| インフレ率(コアCPI) | +1.8% ~ +2.0% | コストプッシュからディマンドプルへの移行 |
| 米国経済 | ソフトランディング | FRBによる予防的利下げと底堅い消費 |
(出典:第一生命経済研究所 2025年12月、OECD 2025年6月予測等より作成)
2026年の日本経済は、外需頼みから「内需主導」への転換が期待される重要な年です。2025年までは円安による輸出企業の好業績が目立ちましたが、2026年は国内のインフレと賃上げの好循環が経済を支える構図になります。
特に注目すべきは「実質賃金のプラス転換」です。2025年春闘での5%超の賃上げを経て、2026年初頭には物価上昇を賃金上昇が上回る局面が定着すると見られています。これにより、長らく低迷していた個人消費が回復し、GDPを押し上げる効果が期待されます。
一方で、海外経済には不透明感が残ります。米国経済はソフトランディング(軟着陸)がメインシナリオですが、AI投資ブームの一服感や、トランプ政権下の通商政策リスクは依然としてくすぶっています。中国経済も不動産市況の調整が続き、成長率は4%台前半へと鈍化する見通しです。
3. 金融政策・財政政策が株式市場に与える影響
- 日本銀行:年内に政策金利を1.0%〜1.25%へ引き上げる「正常化」を継続
- 政府(高市政権):「責任ある積極財政」により、防衛・科学技術へ重点投資
2026年の市場環境を決定づける最大の要因は、日本銀行による「金融正常化」のプロセスです。日銀は2025年末に政策金利を0.75%へ引き上げましたが、2026年も賃金と物価の好循環を確認しながら、半年ごとに0.25%刻みの利上げを行う公算が高まっています。
「金利ある世界」の到来は、株式市場にとって諸刃の剣です。金利上昇は企業の借入コストを増加させ、株式の理論価格(バリュエーション)を下押しする要因となります。しかし、それは同時に日本経済が「非常時」を脱した証左でもあり、海外投資家からは「正常な投資対象」として再評価されるきっかけとなります。
一方、財政政策においては、高市政権が掲げる「17の重点投資分野」への資金配分が市場のテーマを作ります。AI・半導体、防衛、防災インフラなどへの巨額投資は、関連企業の受注増に直結するため、国策銘柄としての注目度が年間を通じて高まるでしょう。
4. 企業収益・業績見通しのポイント
| 視点 | 2025年まで | 2026年の焦点 |
|---|---|---|
| コスト要因 | 原材料高・円安コスト | 賃上げによる人件費増・金利負担 |
| 価格戦略 | コスト転嫁の値上げ | 付加価値による単価アップ |
| 投資スタンス | 内部留保の積み増し | 設備投資・M&A・自社株買い |
(出典:野村證券 2025年12月 市場展望レポート等を基に作成)
2026年の企業収益は、増収増益基調を維持するものの、その中身は大きく変化します。これまでの「円安による追い風」は剥落し、代わって「値上げ力」と「生産性向上」が業績格差を生む要因となります。
賃上げ5%時代が定着する中、企業にとって人件費は重い固定費となります。これを吸収できるだけの「価格決定力(プライシング・パワー)」を持つ強いブランド企業や、独占的な技術を持つ企業は、利益率をむしろ改善させていくでしょう。一方で、下請け構造から抜け出せない企業は、コスト増による減益リスクに晒されます。
また、東証によるPBR(株価純資産倍率)改革の要請を受け、企業は「現金を貯め込む」ことから「投資に回す」ことへ舵を切っています。2026年は設備投資や自社株買いが過去最高水準で推移すると予想され、これが株価の下支え要因として機能します。
5. 為替・金利が株価に与える影響
- 為替:日米金利差の縮小により、緩やかな円高(1ドル=138円〜150円)へ
- 金利:長期金利2.0%超えが常態化し、グロース株の頭を抑える可能性
2026年は「円安=株高」という単純な図式が崩れる年になるかもしれません。FRB(米連邦準備制度理事会)が利下げサイクルに入り、日銀が利上げを進めることで、日米の金利差は縮小に向かいます。これにより、為替は緩やかな円高トレンドを描く可能性が高いです。
円高は輸出企業(自動車・機械)にとっては業績の重石となりますが、輸入コストの低下を通じて内需企業(小売・食品・電力)にはプラスに働きます。2026年の投資戦略では、為替感応度の高い輸出株への過度な依存を避け、内需株をポートフォリオに組み入れるバランス感覚が重要になります。
国内の金利上昇は、銀行や保険会社にとっては運用利回りの改善という直接的な恩恵をもたらします。一方で、借入金の多い不動産セクターや、将来の成長期待で買われている高PER(株価収益率)の新興グロース株にとっては、逆風となる局面に注意が必要です。
6. 2026年に注目されるセクター・テーマ
| セクター | 注目理由・カタリスト |
|---|---|
| 半導体・AI | 「スーパーサイクル」入り。データセンター投資の継続と国産化支援策。 |
| 金融(銀行) | 金利上昇による利ざや拡大。PBR1倍割れ是正への還元強化。 |
| 防衛・宇宙 | 防衛費GDP比2%への増額予算が執行段階へ。地政学リスクへの備え。 |
| 建設・インフラ | 国土強靭化計画(20兆円規模)の始動。老朽インフラ更新需要。 |
(出典:内閣府「日本成長戦略本部」資料 2025年11月等を基に作成)
2026年に特に注目されるのは、構造的な需要増が見込める「国策テーマ」です。筆頭は半導体・AI関連です。かつてのシリコンサイクル(好不況の波)を超え、AI普及による長期的な需要拡大期「スーパーサイクル」に入ったと見られています。日本の製造装置や素材メーカーは世界シェアが高く、海外投資家からの資金流入が継続するでしょう。
金融セクター、特にメガバンクや地方銀行は、「金利のある世界」の最大の勝ち組です。貸出金利の上昇が収益を直接押し上げるほか、潤沢な資金を使った自社株買いや増配も期待でき、バリュー株投資の核となります。
また、防衛・宇宙産業や建設・インフラ関連も、政府予算という裏付けがあるため、景気変動の影響を受けにくいディフェンシブな成長株として機能します。特に国土強靭化や防災投資は、災害大国日本において数十年単位で続く息の長いテーマとなります。
7. リスク要因:調整局面を招く要素
- 米国発のショック:AIバブルへの懸念や、商業用不動産の信用不安
- 地政学リスク:台湾有事リスクや米中対立の激化によるサプライチェーン分断
- 政策の副作用:急激な金利上昇による住宅ローン負担増と消費の冷え込み
順調に見える2026年の日本株ですが、落とし穴も存在します。最大のリスクは「米国のAIバブル崩壊」懸念です。エヌビディアなどのハイテク株が、期待されたほどの収益を上げられないと市場が判断した場合、ナスダック市場が急落し、連動性の高い日本の半導体株も巻き込まれる恐れがあります。
また、地政学リスクも無視できません。特に台湾周辺の緊張が高まれば、アジア市場全体からの資金引き揚げ(キャピタルフライト)が起きる可能性があります。トランプ政権の予測不能な関税政策も、日本の輸出産業にとっては潜在的な脅威です。
国内要因としては、日銀の利上げペースが市場予想よりも早まった場合のリスクです。住宅ローン金利の急騰などが家計の心理を冷やし、せっかくの内需回復の腰を折る「オーバーキル」の懸念も、頭の片隅に置いておく必要があります。
8. 投資家心理と需給構造の変化
| 主体 | 想定される行動 | 市場への影響 |
|---|---|---|
| 海外投資家 | ガバナンス改革評価で選別買い | トレンド形成の主役。大型株を主導。 |
| 事業法人 | 過去最高水準の自社株買い | 下落局面での強力なサポート要因。 |
| GPIF(年金) | 株高に伴うリバランス売り | 相場の上値を抑える重石となる。 |
| 個人(NISA) | 高配当株への長期資金流入 | 需給の底上げと安定化に寄与。 |
(出典:日本取引所グループ 投資部門別売買状況等の傾向より分析)
2026年の需給関係は、海外投資家と事業法人が「買い」、年金基金などが「売り」という構図になりそうです。海外投資家は、日本企業の資本効率改善(ROE向上)を評価し、引き続き資金を投入する構えです。特に、高市政権の安定性と政策遂行能力は、海外マネーを呼び込む安心材料となります。
特筆すべきは、事業法人による自社株買いです。持ち合い株の解消売りを吸収するため、企業は年間10兆円規模の自社株買いを行うと見られ、これが市場の強力な「岩盤(フロア)」として機能します。
一方で、株価が上昇すればするほど、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)などはポートフォリオの資産配分を維持するために、日本株を売却(リバランス)する必要があります。これにより、一本調子での急騰は抑制され、ボックス圏での推移や緩やかな上昇トレンドになりやすい需給構造と言えます。
9. 2026年をどう向き合うべきか(スタンス整理)
- 時間軸の分散:短期的な急落は「買い場」と捉え、積立投資を淡々と継続する
- コア・サテライト戦略:インデックス(コア)に加え、高配当や防衛などのテーマ株(サテライト)を持つ
2026年の日本株市場に対して、個人投資家はどのようなスタンスで臨むべきでしょうか。最も重要なのは、「短期と中長期の視点を分ける」ことです。金利や為替の変動により、短期的には株価が乱高下する場面(ボラティリティの上昇)が予想されますが、企業収益の拡大という長期トレンドは崩れていません。
新NISAを活用している層は、市場のノイズに惑わされず、全世界株式や日経平均への積立を継続することが正解です。一方で、個別株投資を行う場合は、「金利上昇に強い銀行株」や「国策に売りなしの防衛・インフラ株」などをサテライト的に組み入れることで、ポートフォリオの安定性を高めることができます。
また、これまでは「円安メリット株」を持っていれば勝てた相場でしたが、2026年は「円高でも稼げる内需・高付加価値株」へのシフトを検討する時期に来ています。
10. まとめ:2026年は「冷静な期待管理」が鍵
2026年の日本株式市場は、デフレからの完全脱却と金利ある世界への移行という、歴史的な転換点の中にあります。企業業績の拡大やガバナンス改革といった構造的な強気材料は健在であり、中長期的には上昇トレンドが続く可能性が高いでしょう。
しかし、日銀の利上げや海外情勢の変化といった「向かい風」も同時に吹くため、2024年〜2025年前半のような熱狂的な上昇を期待しすぎると、足元をすくわれるかもしれません。投資家には、楽観と悲観のどちらにも偏りすぎない「冷静な期待管理」が求められます。
「何を買っても上がる」相場は終わりました。2026年は、真に価値のある企業を見極め、変化に対応できる柔軟な投資家が報われる「選別の年」となるでしょう。
初心者のための用語集
- PBR(株価純資産倍率)
企業の「解散価値」に対して株価が何倍かを示す指標です。「1倍」を割れていると、会社が持っている資産よりも安く株が売られている状態を指します。東証は企業に対し、この数値を1倍以上にするよう経営改革を求めています。 - EPS(1株当たり利益)
企業が発行している株1株あたり、どれくらいの利益を出しているかを示す数字です。株価は基本的に「EPS × PER(期待値)」で決まるため、この数値が増え続けることが株価上昇の基本条件となります。 - シリコンサイクル
半導体産業特有の、約3〜4年周期で訪れる好況と不況の波のことです。ただし近年は、AIやデータセンターなどの需要が爆発的に増え、不況期が短く成長が長く続く「スーパーサイクル」に入ったと言われています。 - ソフトランディング(軟着陸)
景気が過熱した際、中央銀行が金利を上げるなどして、景気後退(不況)を引き起こさずに、インフレを抑え込んで安定成長へ移行させることです。これが成功するかどうかが、米国株および日本株の行方を左右します。 - プライシング・パワー(価格決定力)
原材料費や人件費が上がった際、その分を商品の価格に上乗せ(値上げ)しても、顧客が離れずに買い続けてくれる力のことです。インフレ時代の企業選びで最も重要な要素の一つです。
よくある質問
- Q. 2026年の日経平均株価はどこまで上がりますか?
多くの専門家は、企業業績の拡大を背景に年末5万2,500円~5万5,000円程度を予想しています。強気派の中には6万5,000円への到達を予測する声もありますが、海外情勢による変動リスクも織り込んでおく必要があります。 - Q. 金利が上がると株価は下がってしまいますか?
金利上昇は借入の多い企業や新興株には逆風ですが、一方で銀行や保険などの金融セクターにとっては「利ざや改善」という強力な増益要因になります。市場全体が下がるというよりは、主役となる業種が交代するイメージです。 - Q. 円高が進んだ場合、どのような投資が有効ですか?
円高は輸出企業の利益を圧迫しますが、輸入コスト低下の恩恵を受ける内需関連(食品・小売・電力など)にはプラスです。外需株一辺倒にならず、内需株も組み入れる分散投資が有効な対策となります。 - Q. 2026年の新NISAはどう運用すべきですか?
金利や為替の変動で株価が乱高下する場面も想定されますが、長期・積立・分散の原則は変わりません。短期的な下落は「安く買える機会」と捉え、積立を停止せずに継続することが重要です。
参考サイト
- 日本取引所グループ|資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応等
東証によるPBR(株価純資産倍率)改革要請の詳細や、企業の対応状況がまとめられています。企業ガバナンス改革の根拠となる一次情報です。 - 日本銀行|金融政策の概要
日銀の金融政策の仕組みや、「長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)」からの移行プロセスなど、金利動向を理解するための基礎資料です。 - 経済産業省|半導体・デジタル産業戦略
半導体産業への支援策やデジタルインフラ整備に関する政府の公式戦略です。「国策テーマ」としての半導体・AI関連の裏付けとなります。 - 金融庁|NISA特設ウェブサイト
新NISAの制度概要や非課税枠の仕組みについて解説されています。個人投資家の資金動向を把握するための基本情報です。 - 内閣官房|国土強靭化
防災・減災対策やインフラ老朽化対策に関する政府の計画が掲載されています。建設・インフラセクターへの投資需要の背景を知るのに役立ちます。
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